劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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会話内容が物騒……


マンションまでの道中

 達也が運転する――実際は自動運転なのでハンドルは握っていない――コミューターで新居から四葉ビルに向かう途中、リーナは達也にいろいろと質問していた。

 

「具体的な事は何も聞いてないんだけど、達也の考案したプロジェクトって、USNAにとってそんなに不利益なものなの?」

 

「エネルギー産業は一時的に大ダメージを受けるかもしれないが、長期的に見ればむしろプラスに働く」

 

「じゃあ何でUSNAは達也のプロジェクトを邪魔しようとしているのよ? 幾ら達也が戦略級魔法師で、その脅威を取り除くためだからといって、魔法師だけでなく普通の人間にとっても有益なプロジェクトを邪魔する理由が、私にはよく分からないんだけど」

 

「俺の魔法は原理的に上限は存在しないからな。やろうと思えば今からUSNAという国を消し去る事だって可能だ。だからその脅威から逃れたいがために、俺を宇宙空間に追いやりたかったんだろう」

 

「達也の戦略級魔法って、実際に見た事ないから分からないけど、大亜連合艦隊を一瞬で消し去ったあれよね?」

 

 

 リーナはそれが原因で日本への潜入任務を命じられ、結局達也に正体を知られる結果になったのだが、彼女は映像でしか達也の戦略級魔法『マテリアル・バースト』を見た事がないのだ。

 

「戦略級魔法を易々と見られたら、今頃この世界は滅んでいたかもしれないな」

 

「……だけど達也はこの短期間で、二回もトゥマーン・ボンバで攻撃されたんでしょ? 戦略級魔法に対する枷が緩くなっているのは貴方だって感じているはずよ」

 

「まぁここ最近戦略級魔法が放たれたというニュースをよく耳にするからな。だが、霹靂塔やシンクロライナー・フュージョン程度の威力とは比べ物にならないのが、俺やリーナの魔法だ」

 

「……私の魔法はそこまでバカげた威力は無いわよ」

 

 

 達也の魔法と同列視されるのは心外だと言わんばかりに、リーナは視線を窓の外に向けて反論する。その姿が随分と子供っぽいと、黙って二人の会話を聞いていたミアは思わず吹き出した。

 

「なによ、ミア!」

 

「いえ、本当にリーナと達也さんは同い年なのかと思ってしまっただけです。私よりも年上だと言われても疑わないくらいの貫禄が、達也さんから感じられるのと同時に、リーナが随分子供っぽく見えてしまったもので」

 

「どうせ私は子供っぽいですよーだ! というか、達也といい克人といい、十師族の男性は皆年相応じゃないのかしら?」

 

「そんな事、俺に聞かれても知らん。少なくとも、一条は年相応だとは思うが」

 

「一条って、深雪に横恋慕してるって噂の? 相手にされないと分かっていてちょっかいを出してるんだから、年相応というよりかは子供っぽいんじゃない?」

 

「さぁ、普通に人間の恋愛感情は分からないからな。だが、一条の行動が子供っぽいかどうかは別問題だな。一条家の言い分も分からなくはないが、今回に限っては認めるわけにはいかないからな。何より、深雪自身が既に断っているのだから」

 

「そもそも、あの深雪が達也以外の男に抱かれたいとか思うわけ無いじゃない。結婚したからと言って、子孫を残せなければ意味がないんじゃないの?」

 

 

 一条家の――その裏では七草家も絡んでいるが――言い分を何となく知っているリーナは、当然だと言わんばかりの表情で言い放つ。彼女の横でミアが顔を真っ赤にしているのに気づき、リーナは首を傾げながら尋ねる。

 

「ミア、私変な事を言ったの?」

 

「いえ……ですが、平然と『抱かれる』とか言うものですから……」

 

「そんなにおかしいかしら? だって深雪が達也以外と子を成す行為をしないって事は、ミアにだって分かるんじゃない?」

 

「それはそうですけど……いえ、そういう事ではなくてですね」

 

「? じゃあ何が問題だっていうのよ」

 

「そういう経験がないわけですし、自分より年下のリーナが平然とそういう事を言ってのけるのが、ちょっと恥ずかしいだけです」

 

「あっ……」

 

 

 ここにいたり漸く、リーナは自分が凄い事を言っていたという事を自覚した。その所為で顔が真っ赤になってしまったが、達也は特に気にした様子もなく正面を向いていたのが幸いだった。

 

「と、とにかく十師族の男が全員達也や克人の様じゃないってのは分かったわ。それじゃあ、達也はどうしてそんなに大人っぽい雰囲気を纏っているの?」

 

「昔から大人の中で生活していれば、勝手に見につくものだと思うが? リーナだって、結構早くから軍属なのだから、それなりに大人な対応は出来るだろ?」

 

「まぁ、それなりには……」

 

 

 だが自分が子供っぽいから部下からなめられ、挙句に叛乱の隙を与えてしまったと思い込んでいるリーナにとって、達也の言葉は皮肉でしかなかった。そんなリーナの感情を読み取ったのか、ミアがリーナの肩に手を置き首を横に振った。

 

「そろそろ到着する。降りたらすぐヘリに乗り込むから、その憂鬱な気持ちはそれまでに追いやっておくんだな」

 

「誰が原因でこういう表情になったと思ってるのよ……」

 

「半分はリーナの自爆だろ」

 

「そうだったわね!」

 

 

 達也の言葉に憤慨したリーナではあったが、これが達也なりの励ましなのだろうと考えて、ビルに到着するまでの間に気持ちを切り替えられそうだと前向きになれたのだった。




やっぱりリーナはポンk……(ヘヴィ・メタル・バーストを喰らった)

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