劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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原作より具体的に


達也が考える解決策

 家に帰ってきた達也は、部屋で寛ぐ暇もなく来客を迎えていた。来客といっても、相手はほのかと雫だ。恐らく詩奈の耳を気にして打ち切った話を聞きに来たのだろう。

 

「それで、今日の集まりは何だったんですか?」

 

「いずれ皆に話さなければならない事だから良いが、あまり十師族の事に首を突っ込まない方が良い。結婚した後なら兎も角、今はまだほのかも雫も十師族ではないからな」

 

「大丈夫。気持ちは既に四葉の嫁だから」

 

「いや、だから……」

 

 

 何処かズレた雫のコメントに、さすがの達也もどう反応して良いのか悩んだが、その横でほのかも瞳に力を込めて頷いているのを見て、とりあえず流す事にした。

 

「九島家の光宣の事は知っているな?」

 

「二高に通ってる、九島家の末子ですよね? 去年の論文コンペで最優秀賞を獲得した」

 

「そうだ」

 

「その光宣君がどうかしたの?」

 

「アイツは生まれつき身体が弱く、しょっちゅう寝込んでいた。その原因はまぁ置いておくとして、それが光宣にとっての悩みだったんだ。それをどうすれば解決出来るのか、悩んだ挙句にアイツがとった行動が、今回問題になっているんだ」

 

「それがさっき言っていた、パラサイトになったとかいう事なんですか?」

 

 

 生徒会室で少し話題になっていたので、ほのかは確認の意味を込めて達也に問いかける。その事を知らなかった雫は、驚きで開いた口が塞がらなくなっている。

 

「そうだ。だが、それだけなら別に大した問題ではなかった。問題は、光宣が取り込んだのがパラサイトだけでは無かった、という事だ」

 

「まぁ達也さんなら、パラサイト相手に後れを取るわけがないですからね」

 

「それで。パラサイト以外に取り込んだものって?」

 

 

 漸く硬直から復帰した雫が、好奇心を隠しきれていない表情で尋ねる。基本的には無表情に見られる雫ではあるが、彼女はエリカと同等かそれ以上に好奇心が強く、良く達也に質問しているのだ。

 

「周公瑾、と言えば分かるか?」

 

「っ!? 横浜事変の首謀者とも言われている、大陸の魔法師……でも、達也さんが消し去ったんじゃなかった?」

 

「あぁ。だから光宣が取り込んだのは、周公瑾の亡霊だ。何時取り込んだのかは分からないが、アイツの中に確かに周公瑾はいる」

 

「達也さんの言葉を疑うわけでは無いんですが、どうしてそう言い切れるんですか? 光宣くんが自分で言った、というわけではないのですよね?」

 

 

 ほのかも深雪同様、達也の言葉を否定する事はしない。だが、達也がそう言い切れるだけの根拠が分からないのだ。

 

「エレメンタル・サイトで確認した。あいつが使った奇門遁甲、あれは周公瑾の癖が含まれていた」

 

「まさに、達也さんにしか出来ない確認の仕方だね」

 

「達也さん以外に、エレメンタル・サイトの持ち主はいないもんね」

 

 

 雫とほのかが納得したのを見て、達也はこれも言っておいた方が良いだろうと思い再び口を開く。

 

「光宣もエレメンタル・サイトの持ち主だ。前々から疑ってはいたが、この前対峙したときに確信した」

 

「光宣君もエレメンタル・サイトの持ち主!? って、対峙ってどういう事ですか?」

 

「光宣がパラサイトとなった要因というべきか、アイツは水波を治したいがためにパラサイトになったらしい」

 

「水波を治すのと、パラサイトになることにどんな関係が?」

 

 

 いかに成績上位者といえども、雫もほのかもその辺りの関係が理解出来ていない。魔法演算領域の事を詳しく勉強していないのもあるが、そもそもパラサイトが魔法演算領域にどう関係するのかなど、普通の魔法科高校生には分からない事だろう。

 

「人よりも魔法に近い物――魔の物であるパラサイトになれば、魔法演算領域のオーバーヒートによる突然死のリスクを下げる事が出来る、それが光宣が持ってきた治療法だ」

 

「達也さんは、それに賛成したんですか?」

 

 

 すがるような目をするほのかに、達也は厳しい表情を幾分か和らげて首を左右に振る。

 

「水波をパラサイトになどさせられない。たとえ『強い魔法師』でなくなるにしても、俺は水波に人として生きてもらいたいからな」

 

「じゃあ達也さんは、水波をどうするつもりなの?」

 

 

 ほのかとは違い、達也の事を試すような視線を向けてくる雫に、再び厳しい表情に戻った達也が答える。

 

「魔法演算領域を外側から封じ、過負荷が掛からないようにするのが一番効率的だろう。もちろん、水波がそれを拒否すれば別の方法を考えるが」

 

「外側から封印? そんな事が出来るの?」

 

「かつて司波深夜が行った人造魔法師計画の応用で、出来ない事は無い」

 

「それって、達也さんが感情の殆どを失った実験ですよね? でもあれって、精神干渉魔法に対して強い適性のある魔法師しか出来ないんじゃ……」

 

「やるとしたら俺だろうが、今のままじゃ厳しい。だからしばらくは水波に魔法を使ってほしくないと思っている」

 

「本来の魔法演算領域を封じて、人工の魔法演算領域を水波の中に製造するって事? かなりリスクが高いように思えるけど」

 

「最善策はそれだが、津久葉家の誓約で封じるのも手だろう。もちろん、水波が大人しくそれに従ってくれるかは分からないが」

 

 

 あくまでも水波の気持ちを優先するという意思を見せる達也に、ほのかと雫は嬉しそうに頷くのだった。




それで解決するのかは分かりませんけど

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