劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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嫉妬からの質問


二人に対する質問

 達也に家まで送ってもらったほのかと雫は、全員が帰ってくると同時に質問攻めに遭っていた。

 

「何で二人だけ達也くんと一緒に帰れたのよ」

 

 

 まず真っ先に質問してきたのはエリカだ。あの場にいなかった自分を恨んでいるようでもあったが、とにかく達也と一緒にいられた事を羨ましがるような表情で質問してきた。

 

「私とほのかは、マスコミに対して強く出らないから。あの場にいた人間で、達也さんの婚約者は深雪と私、ほのかと香澄の四人。まず達也さんが優先するのは深雪で、残った三人の中でマスコミに対する手段が少ない順に選んだだと思う。ほのかは一切そういった手段を持ってないし、私はあくまでも父に頼まないとそれが出来ない。香澄も同じような感じだけど、魔法界に対する影響力は強いから」

 

「それに、泉美を残してボクだけ連れていくのはお父さんに対して付け入るスキを見せるって達也先輩は言ってた。後で四葉家の人間が迎えに来るから、それまで泉美と他の婚約者たちを落ち着かせておいてくれとも」

 

「そう言えば、香澄さんが達也様からの伝言を持ってきてくれたのでしたね」

 

「お陰で、勝手に帰らなくて済んだのも確かだしの」

 

 

 愛梨と沓子が納得したような表情で頷く隣で、真由美がつまらなそうな表情を浮かべていた。

 

「一高だけじゃなくて魔法大学も結構大変だったのに、何で達也くんはそっちの対処をしてくれなかったのかしら」

 

「大学生なら自分で対処出来ると考えたんじゃないの? 前に七宝を裏で操っていた女に、そんな事を言ったって聞いた気がするし」

 

「誰から?」

 

「えっと……誰からだっけ?」

 

 

 達也がそんな事を香澄に話すわけがないと真由美も分かっているので、情報の出所を聞いたのだが、どうやら香澄は覚えていない様子だった。

 

「七宝君がそんな事を言っていただけですわ。フラれた時『高校生に興味が持てなくなった』とか言われたとぼやいていましたのを、偶々耳にしただけです。それから大分してから、あの件の裏で司波先輩が暗躍していたと知ったのです」

 

「それで達也くんが七宝君を操っていた人にそんな事を言ったって香澄ちゃんは思いこんだわけね」

 

「でもさ、達也くんなら魔法大学の方にも何かしらの対処をしても問題なさそうだとは思うんだけど」

 

「魔法大には今、十文字くんや真由美さんといった十師族の直系が在籍していますし、ましてや十文字くんは当主です。そちらで対処出来るだろうと達也さんが判断しても不思議ではないかと思います」

 

「でもさ、リンちゃん。私は兎も角十文字くんは魔法協会の考えに賛成してる訳だし、マスコミを使って達也くんを追い込もうと考えるかもしれないじゃない? もちろん、十文字くんがそんな姑息な事をするとは思わないけど、他の家の当主が決めて、また十文字くんが矢面に立たされる可能性はあるわけだし」

 

「達也さんと十文字くんの間には、例の問題を蒸し返さないという約定があると聞いています。幾ら魔法協会に言われたからと言って、十文字くんがその約定を破棄するとは思えないのですが」

 

「まぁ、十文字くんは変な所まで真面目だからね……」

 

 

 自分が達也に負け、生かされた事を自覚しているであろう克人が、今更他家や魔法協会に言われたからといって達也の事をマスコミにリークするとは真由美も思ってはいない。だが可能性がゼロではない以上、その事に考えを割くのは当然だとも考えていた。

 

「マスコミが押し寄せてきて、あーちゃんなんか泣きそうな顔をしてたんだから」

 

「中条さんがあのような表情をするのは、割と何時も通りの気がしますが」

 

「リンちゃんもなかなか酷い事言うわね……まぁ、あーちゃんは少し不安にさせればすぐ泣きそうになるけど」

 

「それで、ほのかと雫は、達也くんと何を話したの?」

 

 

 脇で盛り上がる真由美を無視して、エリカが本当に聞きたかったことを二人に尋ねる。

 

「達也さんが何時免許を取ったのとか、今日一高に顔を出した目的とかは聞いたけど、それ以外は大した話はしてないよ。普通に世間話」

 

「それで、達也くんがわざわざ一高に顔を出した理由って? 深雪を迎えに来ただけじゃなかったんでしょ?」

 

「達也さんは、マスコミに釘を刺しに来たって言っていた。金曜日にトーラス・シルバーの記者会見がある、とも言っていたけど」

 

「記者会見? そんな面白そうな事、何で教えてくれなかったのよ」

 

 

 エリカが少し不貞腐れたような表情を浮かべたタイミングで、この家で生活する住人がまた一人帰宅してきた。

 

「達也君が会見を開けるかどうか、まだ完全に決まったわけではないからじゃないかしら」

 

「藤林さん……どういう意味?」

 

「四葉家には多くのスポンサーがついているの。その中で最も力を持っている人物の許可が得られなければ、今回の会見は無かったことになる、という意味よ。ねっ、亜夜子さん」

 

「え、えぇ……藤林さんの仰られた通りです」

 

 

 何故スポンサーの事を知られているのかと亜夜子は驚いたが、響子の能力なら知っていてもおかしくはないと考えなおして、何とかそれだけ答えた。

 

「達也くんもまだまだ大変そうだね」

 

「エリカ、面白がってるのを隠せてないよ」

 

 

 ほのかに指摘され、エリカは満面の笑みを浮かべて頷いたのだった。




久しぶりに出しちゃキャラが多かったな

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