劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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達也なら出来そうで怖い


邪魔者を消す算段

 長い事昔の事を思い返していたような感じがしたが、達也が時計に目を向けるとまだそれほど時間は経っていなかった。リーナと会話を終えてから、まだ一時間と経っていない。

 

「随分と長い間思い返していたような気もしたが、こんなものか」

 

 

 実際に動いたのも数日だけだったが、あの時はかなり内容の濃い数日を過ごしたと達也も自覚していた。

 

『達也くん、今ちょっといいかな?』

 

「どうぞ」

 

 

 気配で真由美がこちらにやってきているのには気づいていたし、部屋の前で数分考え込んでいるのにみ気づいていたので、達也はあっさりと入室の許可を出した。

 

「それで、何かあったんですか?」

 

「ううん、今のところは。久しぶりに九亜ちゃんたちに会いたくなったくらいかな」

 

「九亜たちに、ですか? 今は四葉の研究所でリハビリをしてるはずですが」

 

「盛永さんからそう聞いてるわよ。日に日に回復していってるらしいってね」

 

「そうですか。近況に関していえば、俺なんかより先輩の方が詳しいでしょうし、この部屋に来て九亜たちの話をする意味が分からないですね」

 

 

 達也は真由美がそんな理由でこの部屋を訪ねてきたんじゃないという事に気付いている。真由美もバレるのを前提に話していたので、軽く舌を出して本題に移ることにした。

 

「さっき十文字くんから電話があったんだけど、USNAのエドワード・クラークの研究参加名簿に、トーラス・シルバーの名前があるそうよ」

 

「十師族の当主に根回しをして、俺が断れないような状況を作ろうとしているのでしょうが、参加してやる理由にはなりませんね。十師族だけじゃなく、師補十八家、百家が敵になろうと、奴らの計画に付き合うつもりはありません」

 

「その研究がどういう物かは私には分からないけど、何があっても私たちは達也くんの味方だから。言われれば何でもやるわよ」

 

「それはありがたいですね。では時期が来たら、先輩にはやってもらいたい事があるので」

 

「それは?」

 

「今は内緒です」

 

 

 達也の人の悪い笑みに、真由美は苦笑いを浮かべた。自分に何をやらせるのか気にはなったが、達也から聞き出そうにも自分にはそんな話術は無いと理解しているので、今は好奇心に蓋をしたのだった。

 

「まぁ、達也くんなら世界をあっと言わせるようなことを考えているんでしょうけども」

 

「最悪USNAという国を消し去ればいいだけですから」

 

「それは怖すぎるわよ……」

 

「もちろん、冗談ですが?」

 

「分かってても冗談に聞こえないのよ、達也くんの魔法を知ってる人間からすれば」

 

 

 達也以外の人間が言えばすぐに冗談だと笑い飛ばせるのだが、達也が言うと冗談に聞こえないと感じてしまうくらい、真由美は達也の魔法について知っているのだ。

 

「実際に朝鮮半島の形を変えたくらいだし、USNAを消し去るくらい簡単に出来るんでしょ? あの時よりも達也くんの魔法力は高まっているんだし、その高まった魔法力を上手くコントロール出来るようにもなってるしね」

 

「実際にそんな事をするわけないでしょ。俺は世界大戦の火ぶたを切るつもりはありませんので」

 

「大戦になったとしても、相手にならないでしょうが……塵一つ残すことなく消し去るような魔法師なんだから。それに、リーナさんや深雪さん、四葉家の方々が敵になるという事がどういう事か、世界中が知ってるはずだしね」

 

「そもそもその四葉家の次期当主だと分かってるはずなんですけどね……参加出来るわけないんですが」

 

「そう言われればそうよね……でも何でそんな簡単な事を忘れてるのかしら? エドワード・クラークってそんなに間が抜けてる人なのかしら?」

 

 

 真由美のセリフがおかしかったのか、達也は割と本気で笑った。そんな達也の姿が珍しく、しばらく見惚れていた真由美だったが、自分が笑われている事に気が付き、頬を膨らませて抗議した。

 

「そんなに笑わなくても良いじゃないの!」

 

「すみません。先輩があまりにも可愛らしい事を言ったからつい」

 

「可愛らしいって、私の方が年上なんだけど?」

 

「知ってますよ」

 

 

 もう何度目かの抗議か分からないくらい抗議しているのだが、イマイチ達也に響いていない気がして、真由美はため息を吐きたい衝動に駆られた。

 

「まぁ良いわ。それじゃあ、何か情報が入り次第また伝えるわ」

 

「俺の方でも情報を得る事は出来るんですが、先輩の方が早いですからね」

 

「そりゃ、四葉家の次期当主様を巻き込もうとしている計画が、四葉家の耳に入るとは思えないしね。まぁ、達也くんなら知ろうとすれば知れるんでしょうけども」

 

「情報は早い方が良いですから、先輩に頼んでるんですよ」

 

「何だかいいように使われてる感じが凄いんだけど、まぁ達也くんに頼られるのは悪い気分じゃないし、私も達也くんがUSNAにいいように使われるのは嫌だしね」

 

 

 そう言い残して、真由美は達也の部屋から出ていった。達也は部屋に一人になった途端に、先ほどまでの雰囲気を一変させて考え込んだ。

 

「あえて敵の策に巻き込まれるふりをして、ウロチョロしているネズミ共を一掃するのも悪くないな……敵ではないが、何時までも視界の中で動き回れるのは鬱陶しいしな。何より、深雪たちに害をもたらすかもしれない」

 

 

 今回の件でも、情報部が出張ってくるのだろうと確信している達也は、彼らを一掃する計画を練るのだった。




情報部はつぶれても問題ない

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