劣等生の兄は人気者   作:猫林13世

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良いコンビですね


漫才コンビ

 リーナの料理問題を重く見た他の住人も、おおむねミアをこの家に住ませる事に賛成した。答えを保留していたメンバーも、ミアの為人と、リーナの料理の酷さを深雪から聞き賛成し、後日ミアを迎え入れることでこの話は終結した。

 

「この度はいろいろと迷惑をかけてしまって申し訳ございませんでした」

 

「まぁ、反省しているなら今回はもうこれで良いわよ。今後料理をしようと思わなければね」

 

「さすがに反省してるわよ……」

 

 

 料理に魔法を使った事は、リーナでもさすがにやり過ぎたと思えるもので、自分の料理の腕が成長しないのも重なって、大人しく料理から身を引こうと思えたのだろう。

 

「だいたいリーナは家事に関しては期待されていないんだから、大人しくしておいた方が他の人のためよ」

 

「酷い言われようだけど、言い返せない自分が情けないわね……」

 

「大丈夫。リーナは侵入者とかが来た時に役に立つから」

 

「まぁ、戦闘力なら、達也の次くらいには位置してると思うし、そこは頼ってもらって良いわよ」

 

「でもリーナって、エリカに負けたんじゃなかったっけ?」

 

「ま、負けてないわよ! あれは引き分けだったんだから!」

 

 

 リーナは引き分けだというが、達也の目にはあれはエリカの勝ちだったと映っていた。エリカは服を斬られた程度だが、リーナは鎖骨をやられていた。あのまま続けていれば、エリカが勝つのは明白なのだ。だがあえて追い打ちをかけなかったのは、リーナが激高してエリカと再戦――という流れになるのを避けるためだ。

 

「エリカは遠距離攻撃の手段がそれほどないからな。距離があればリーナの方が上だろう」

 

「距離が無くたって、私は負けないんだから!」

 

「素直に認めなさいよ。近距離ならエリカの方が圧倒的有利よ。私だって手が届く範囲なら、エリカに勝てるかどうか分からないもの」

 

「深雪なら圧倒的な魔法力で相手の魔法を発動できなくしちゃうでしょうが……」

 

 

 深雪に慰められたと分かったが、あまり説得力を感じられなかったリーナは、肩をすくめながら達也に視線を向ける。

 

「達也はエリカに勝てるの?」

 

「達也様が負けるはず無いじゃないの。武器があろうが無かろうが、達也様は最強なんだから」

 

「深雪、それは言い過ぎだ」

 

 

 実際達也にも勝てないと思う相手はいる。八雲や風間には魔法ありでも勝てそうにないし、命を取らないというルールがあれば、克人にも楽には勝てないだろうと思っている。

 

「まぁ、達也はいろいろと規格外だし、最強だって思うのは私も分かるけどね」

 

「そもそも達也さんと敵対したいと思う人は、達也さんの実力を正確に知らないだけの愚か者ですよ!」

 

「ほのか、熱くなりすぎ。でも、私もそう思う」

 

「達也さんに敵対心を燃やしていた一条君や吉祥寺君には悪いですけど、そもそも同じレベルにいませんよ!」

 

 

 本人が聞けば絶対に凹むであろうことを平然と言ってのけるほのかに、達也は苦笑いを禁じ得なかったが、他のメンバーは力強く頷いた。

 

「一条さんや吉祥寺さんがどれだけ世間から認められていようと、達也様に適うはずはないのです。既に世界を相手に戦っている達也様と一条さん、世界的に有名なシルバーであられる達也様と吉祥寺さんとでは、相手にならないどころか挑もうとするだけ無駄なのです!」

 

「改めて聞くと、達也に勝てるとか思ってた私って、かなり恥ずかしい子じゃないかしら?」

 

「大丈夫、今も恥ずかしい子だから」

 

「フォローになってないわよ!」

 

 

 雫の追い打ちとも取れる言葉に、リーナはすかさずツッコミを入れた。その一連の流れを見て、深雪とほのかはニッコリと笑みを浮かべている。

 

「リーナと雫は、やっぱり仲良しになったわね」

 

「コンビとしての相性はいいと思ってたけど、ここまでだったとはね」

 

「何それ!? 私と雫ってコンビだったの!?」

 

「私はリーナよりほのかとの方が相性がいいと思ってる」

 

「私と雫は子供の頃からの付き合いだからね」

 

「ほのかがいてくれれば、私はボケられる」

 

「私はツッコミじゃないからね!?」

 

 

 こちらも見事なコンビネーションを見せる。どことなく寂しい気分になったリーナではあったが、この二人の付き合いが長いのはリーナにも分かっているので、気のせいだという事にして話を戻す事にした。

 

「達也の強さは公には出来ないものだから仕方なかったのかもしれないけど、実際に戦ってみて分かったわよ。この人は規格外の強さなんだって」

 

「私は初めて達也さんが魔法を使ってるのを見て、凄く綺麗な魔法を使う人なんだなって思いましたけど、それ以上に凄い人なんだって思いました」

 

「ほのかは光波ノイズに敏感だからね」

 

「光波ノイズって、魔法を使う時に無駄が少ない人ほど少ないんだよね? 私はよく分からないけど、ほのかが言うのならそうなのかもね。というか、達也は無駄が少ない上に威力が高い魔法を使うから、余計に質が悪いのよね……何で勝てるなんて思ったのかしら」

 

「自信過剰だったんじゃない?」

 

「そうなのかもしれないわね……周りから最強だとか言われて、浮かれていたのかもしれないわ」

 

「まぁ、リーナの立場だったら、少し浮かれても仕方なかったかもしれないわよね。しかもその年で」

 

「深雪に言われても嫌味にしか聞こえないわよ」

 

 

 深雪には完全に負けたと思える引き分けだったので、リーナも深雪の言葉に厭味っぽさを感じてしまうのだった。




三人で組んでもいい感じですね

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