IS 天元突破グレンラガン~穴掘り王が多元宇宙に迷い混みました。~   作:ガルウィング

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圧倒的短さ


俺が直すって言ってんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さてと、どこから話したらいいかしら」

 

軽くパニックに陥ったシモンをなんとか宥め改めて再会を喜びあった三人は互いの事情を把握しあうため食堂でコーヒー片手に情報を交換しあっていた。

 

ヨーコはテッペリン攻略戦時の身長程に縮んでおり、年を少々重ねたため帯びていた奥ゆかしさとは違った、あのときの活発さを取り戻していたようだ。

 

リーロンはというと大分若返ったと喜んでいたが、正直二人の目にはどこがどう変わったのかさっぱり検討もつかなかった。知る限りではリーロンは幾つ年を重ねてもその見た目は一向に変わる気配が無かったことは大グレン団でも有名な七不思議のひとつ。。

 

等の本人が若返ったと言っているのでそういうことにしておこうということで落ち着いた二人。暫く昔ばなしに花を咲かせていた三人はやっと互いの事情を確認する会話を始めた。

 

「私は知ってる通り、あの島で先生をやっていたわ。生徒も移り変わって、やっと仕事も板に付いてきたってところで、突然青緑の光に包まれたの……そう、まるで何かに……どこか懐かしい物に誘われるように。」

 

ヨーコはアンチスパイラルとの戦いを乗り越えた後もいつも通り離島の小学校の先生として人生を歩んでいた。

 

離島の美人教師として保護者からも厚い信頼を受けており、リーロンの元で得た知識を糧に先生としての職務を全うしていた。

 

しかしある日突然、テストのプリントを作っていたヨーコは突然青緑の光に包まれ、その姿を消失させる。

 

そして気がついたら広大なIS学園の敷地内で見知りの顔と共に倒れていた。

 

かなりふわっ、としているが、紛れもない事実である。

 

「背も縮んじゃったし……はあ。離島の美人先生が台無しね」

 

「あはは……リーロンはどうしてここへ?」

 

「アタシも似たようなものよ……他の惑星の螺旋族から提供された技術の研究に勤めてたらいきなり光に包まれたの……原因はこれから解析するわ」

 

千冬から預かったノートパソコンのキーを叩き元の世界の超銀河ダイグレンのクルーへ通信を試みるリーロン。しかし何度も試してみるが結果は散々。凄腕メカニックリーロン・リットナーが苦戦を強いられているのだ。

 

アンチスパイラルによって種の繁栄を封印されていた他の螺旋族と共に歩んでいたロシウとその右腕、リーロン。

 

全宇宙超螺旋会議等で提供しあった技術を研究していたリーロンは突然光に包まれヨーコと共にこの世界に流れ着いてしまう。ヨーコと同じく若返ったらしいが昔から容姿が微塵も変わる様子がない。その事実を二人に告げても帰ってきたのは曖昧なリアクションだけだった。負けるなビューティフルクイーン。

 

「頼んだ。……さて。これからどうする?」

 

「どうするもなにも、私もシモンもこの学園で過ごすしか無いんでしょ?あんた、動かしちゃったんでしょ?IS」

 

「動かしちゃった……っていうのか?あれは……」

 

「さっき紅蓮螺巌を解析してみたけど、アタシがいじった痕跡が多々見つかったわ。このIS『紅蓮螺巌』はあっちのグレンラガンがISに変化したものと見て間違いないようね……原因は不明だけど」

 

空中投影ディスプレイに二人に見えるように解析結果を表示するリーロン。そこには詳しいことはチンプンカンプンな二人にはよくわからないが、確かに紅蓮螺巌がガンメンだったときにリーロンが調整した痕跡があった……らしい。

 

どういう思考回路をしていたらこの0と1が乱立している文面から自身が手を付けた痕跡があるとわかるのだろう……天才とは分からないものだ。

 

なんとか互いの事情を把握しあえた三人は取り合えず気持ちを落ち着かせるためにゆっくり休むことに、

 

ヨーコとシモンは学園で居場所を確保するために生徒として、リーロンは研究の資本と設備を確保するためにISの改修員として仕事を始めることにしたらしい。

 

流石に科学局長官時代ほどの資本は確保できないだろうがリーロン程の腕前ならなんとかなるだろう。学園からの支援も期待していい。

 

寮に戻ったシモンはベッドに倒れこむように横になる。

 

驚きの連続で精神的にも疲労しているのだろう。そのまま夕食を待たずにシモンは深い闇の中へ身を投じていった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「「……は?」」

 

「……盲点だった」

 

場所は千冬の部屋、そこに呼び出されたシモンとヨーコ。

 

ヨーコは射撃部にお邪魔して鈍った腕の調整を、シモンは校庭の真ん中にコンクリートの塊を置いてそれを自前のドリルで削る趣味であり特技のドリル彫刻に励んでいた。

 

そんな入学前のひとときを過ごしていたある日呼び出されたのだ、一体何事なのか。

 

「なんでも、寮の家賃ぐらいは面倒見れるが、授業料は自分で払えと学園の上層部から通達を受けたのだ……すまん、これは私もすっかり忘れていた。」

 

「「じ、授業料……」」

 

仮にもここは学校だ。しかるべき授業料は存在する。寮賃くらいは特例として目を瞑ってくれるらしいが授業料までは学園もビジネスなので見ないふりはできないらしい。

 

授業料自体は国が力を入れているIS事業に少しでも人材を産み出したいがために割安にはなっているが払わなくても良いレベルの金額のわけがない。

 

しかし千冬も払えないのなら出ていけというほど人間腐っていない。考えがあってここに呼び出したのだ。

 

「そこでだお前ら、バイトをする気は無いか?」

 

「「バイト?」」

 

千冬の突然の提案に目を丸くする二人。その反応が面白いのかククッ、と悪戯に笑う千冬はくるくると後ろから伸びた髪を指で弄び答える。

 

「そうだ。……シモン、お前は確か物を直すのが得意と言ったな?」

 

「え?ああ……あっちの世界にいたときはダイグレンの崩れた甲板やら何やらを直してたからな……それがどうかしたか?直せるといっても機械系はからっきしだぞ?建築物だけだ」

 

「十分だ。よし……それではシモン、お前はこれよりIS学園営繕部部長に任命する!」

 

ばんっ!と机に叩きつけられる書類。そこにはシモンとヨーコが営繕部へ入部するための旨が記されていた。

 

営繕部とはその名の通り修理や修繕を目的とした部活であり、現実にも一部の高校で活動が見られる部活だ。

 

本来なら部活としての活動なので賃金等は一切発生しないが今回の話題は「バイト」だ。十中八九その言葉の意味とは……

 

「いや実はな、何故かこの学園は校舎しかり寮しかりアリーナしかりよく壊れるのだ。それらの修繕は専門の業者にいつも依頼しているのだが…はぁ、足元を見られているのかこれがまた割とかかるのだ。上からもできるだけ修繕費を押さえるように言われているしな……」

 

「はぁ……」

 

なんとなく、千冬の意図が読めたシモンはまたふわっとしたリアクションを取る。

 

「で、だ。もう察しているとは思うがその道のプロに大枚はたくよりプロ並の技量を持ったお前に今お前が必要としている言い値を払った方が圧倒的に安上がりだし更にはお前も授業料を払うことができる。どうだ?まさにWin-Winというヤツではないか?」

 

「うーん…」

 

「システムはこうだ。定期的に学園を回り修繕の必要がある場所を直していく。更には要請があった場合も修繕を行う。最低限授業料が支払える程度働かせてやる。だがこちらもどこぞの健康機器メーカーのようにブラックな鬼ではない。普通の学生並の文化的な暮らしや遊びができる程度の賃金が得られるよう善処しようじゃないか。どうだ?」

 

実際悪い話ではない。シモンの得意分野で授業料の面倒が見られ、かつ小遣いまで頂けるのだ。どこの馬の骨とも知らない自分等にここまでの待遇をしてくれるとはこれも千冬の苦労あってのことだろう。それを千冬の切れ長の瞳の下にうっすらと残る隈で察したシモンはその提案に乗ることを決める。

 

「ありがとう。その話乗った!」

 

「そうこなくてはな」

 

パシッ!とハイタッチのような握手をする(おとこ)乙女(おとこ)。ヨーコはなんだかのけ者にされたような気がしたがなんとか食い意地が繋げたことに安堵する。

 

「『螺旋の英雄』にこんなことを依頼するのは罰当たりだが…よろしく頼む」

 

「よせ、『穴掘りシモン』にはお似合いだ」

 

軽口に軽口で帰すと受け取った「営繕部 部長」の腕章を腕に通し部屋から席を外す。後ろについて歩くヨーコは「相変わらず鼻に掛けない男ね…」と今も昔も変わらない彼の筋の通し方に笑みを溢していた

 

「どこの誰に似たんだか…」

 

「ん?なんだヨーコ」

 

「ん?ううん、なんでもないわ」

 

曲がらない生きざまも、無邪気な笑みも、なにもかもまるであの男を連想させる。きっと彼には見えていたのだろう。シモン自身の変革を、シモンが回りに及ぼす影響を、きっとそこを彼も目指したのだろうと、少しだけ昔の思い出に浸る。

 

「きっとそうでしょ…カミナ」

 

愛した男は帰って来なかった。だけど彼が命を燃やして貫いたトンネルがあったから今の自分があり、今の世界があるのだ。

その死を悔やんだりはしない。もしももう一度やり直せたらなんて頭の片隅にも在りはしない。

 

それ即ち、彼の死を無駄にすることになるから、そして何より、彼の背中に笑われるから。

 

きっと自分は今とてつもない状況に置かれているのだろう。真っ暗で何も聞こえない。手掛かりさえ見つけることもできない。

 

しかし、いつだってそうだった。可能性ゼロパーセントをひっくり返し、何もないところから明日を何度も作ってきた。手探りでぶち当たった壁にドリル突き刺し捩じ込んで、虚無のキャンパスに未来という極彩色をぶちまける。

 

未来は見つけるものではない、自らの手で造り上げるものだと。

 

そう教えてくれた漢と背中はいつもこの炎のドクロにいるから。

 

 

 

少しずつ、ドリルは回り始めた。




ドクロマークには相手への威嚇の他に「この命尽きても戦う」という覚悟を意味しているらしいですよ

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