エヴァと約束を取り付けた次の日、古菲を連れてエヴァのいるログハウスに来ていた。
「それで、師父、本当に教えてくれるアルか?」
そう古菲が不安そうに尋ねる。
一度逃げた前科があるため心配なのだろう。
そんな様子に古菲を安心させるため、笑って返す。
「ああ。外に影響が出ない場所の目処が付いたからな。見せてやるよ」
「……外に影響が出ない?どう見ても普通のログハウスなのに大丈夫アルか?」
「まあ中に入ればわかる」
そう言って俺はログハウスの呼び鈴を鳴らす。
チャイムが鳴りしばらく待っていると中から扉が開き一人の少女が現れた。
「お待ちしておりました。万さん。中でマスターが待っています。どうぞ中へ」
「な、なんで茶々丸が!?も、もしかして茶々丸も何か武術の達人アルか?」
そう現れた少女、まあロボットではあるがそれに驚く古菲。
クラスメイトの一人がそういう存在なのでは?という事実にほんの少しの期待と興奮を覚えているのだろう。
そんな古菲に茶々丸は律儀に答える。
「いえ、私は特にそういうわけではありません。一応、武術家等の動作データは入っておりますが」
「……でーた?なにアルかそれ?」
まあ仕方ないよな。
彼女がロボット(正式にはガノイドと言うらしいが)であることを知らない古菲はデータが入ってるとか言われてもちんぷんかんぷんだ。
どうせ後になったら話すことだし今はいいだろ。
「……後でわかるし積もる話は中でしようぜ。茶々丸、案内頼む」
そう言って強引に話を終わらせ、俺達は中に入っていった。
――――。
周りを見回すと南国のような雰囲気で2つの塔が建っている。
そのうちの1つの頂上に俺たちはいた。
「こ、これは何アルか!?」
まあ、いきなり何の知識もなしにここに連れて来られたら驚くよなー。
自分が最初にここに連れて来られた時は前知識あったとはいえけっこう驚いたし。
そんな驚愕している古菲を眺めつつ目の前に向けるとゴシックロリータな服装をきた少女が歩いてくるのが目に写った。
「来たか……疫病神め……」
「いきなりなご挨拶だな。エヴァ」
「当たり前だ。また修理しなければならないかもしれないのにニコニコ笑顔で迎え入れられるとでも思っているのか?」
「わかってるよ。それよりほんとうに良いのか?」
「……これは必要経費だ。それに―――、」
そう言うとエヴァは一枚の紙を取り出した。
「……ギアスペーパーまで持ちだすとか本気かよ」
「当たり前だ。これはもともと魔法使いたちが力の有無で物事が進まないように作り出した、苦肉の策だ。相手がいかなる強者であろうと魂ごと縛ってしまえば約定を取り違えることはなかろう。……まあお前に効くかは知らんがな。だいたい、『おわるせかい』が効かない奴に魂に干渉する魔術使って(ry」
そういうエヴァの悔しそうな声を聞き流しながら差し出された紙を読んでいく。
1、『五三 万』は『エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル』の吸血の邪魔をしない。ただし『五三 万』に生命の危機が生ずる場合はこの限りではない。
2、『五三 万』は『ネギ・スプリングフィールド』に対して関わることを禁ず。ただし、『ネギ・スプリングフィールド』の方から関わってきた場合は出来る限り干渉を避けるものとする。ここで言う最低限度の干渉とは、『殺害しない』、『攻撃しない』、『行動の妨害をしない』の3つである。
3、『五三 万』は『エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル』の持つ『ダイオラマ球』を3回まで使用する権利を持つ。ここで言う1回とは『ダイオラマ球』に入ってから外部時間で1時間、内部時間で24時間のことである。また『ダイオラマ球』の使用に際して『ダイオラマ球』が破損した場合でも『五三 万』が責任を負うことはない。
4、この契約の期間は『エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル』の『登校地獄』の呪いが解けるまでとする。
5、以上に従い、絶対遵守の契約とし、これを破るものに死を与える。
さて、読んだけどなかなかめんどいのが多いな。
1はまあいいだろう。エヴァがどこで誰の血を吸ってようと知ったことじゃない。それに俺の生命の危機が生じる場合が除外されてるから俺の血を吸い尽くして殺すなんてことは出来ないしな。
2はちょっとめんどいけど、もともと原作に関わるつもりなかったしこれもオーケーだ。
3はエヴァの方の契約だな。ダイオラマ球を貸してくれる。そして壊しても文句言うなよってことね。しかし3回も貸してくれるなんて太っ腹だな。まあそんなに使うつもりもないけど貸してくれるというなら借りておこう。
で、4は契約の期間ね登校地獄が解けるまで、と。
原作通り進めばエヴァが次の卒業式迎えるまでだから約2年ってとこか、まあいいだろう。
それで5は破ったら死ぬよってことか。まあこれくらい書いとかないと抑止力にもならんし想定の範囲内か。まあエヴァが言うように俺に効くか知らんけど死ぬかもしれない実験をためそうとか思わないし抑止力にはなるか。
そして内容を見た後、紙を透かしてみたり色んな角度から見てみる。
魔法に関してはド素人だからそういう偽装されるとお手上げだが、こういう契約書を端から端まで見とかないと後で痛い目にあったりするからな……
「ん?なんだ?そこに書かれている5つ以外特にないぞ?真祖の名に誓ってそれ以上の契約はないと言っておく。というよりアレか?私を疑ってるのか?」
「……別にそういうことじゃねえよ。ただ契約関係でちょっと痛い目にあったことがあるからこういうのはちゃんと端から端まで見る主義なんだよ」
まあ、前世の話なので今は関係ないがな。
みんなもちゃんと契約書は端から端まで読もうぜ!痛い目見るからな!
「フンッ。まあいい。それで、契約の方はそれでOKか?いいなら、サインして血判を押せ」
特に気になる文章もないしいいか。
というわけでサインして親指の皮の部分を歯で噛みちぎり血判を押す。
……普通針とか使うんだろうけど針刺さんねえからな、痛いけどしゃーない。
そういやどうでもいい話だけど『NARUTO』とかで口寄せの術やる時に毎回カリって親指ちぎってるけど痛くないのかね?
もし仮にあっちの世界に転生してたら日常的にこれやらないといけなかったりしたんだよな……
そこそこ平和な『ネギま』の世界で良かったな……
と、どうでもいいことを思いつつ、俺が書くとエヴァもサインをして血判を押し、契約は完了した。
「よし、これで契約は完了だ。後はお前の好きにしろ」
そう言ってエヴァは立ち去っていった。
ふむ、まあ修行の手伝いとかはしてくれないよな。
さて、そろそろ始めるか。
弟子にしちゃったの俺だしそれくらいはやらないと……
そうしてまだ驚きから抜け出せていない古菲に話しかける。
「おーい古菲。いつまで呆けてるんだ。そろそろ始めるから戻ってこい」
そう言って肩を叩くとまだ驚愕から覚めてはいないが返事を返す。
「こ、ここは何アルか!こんなところが麻帆良にあったなんて初めて知ったアル。というか現実じゃないような……いや魔法みたいネ……」
……なかなか鋭いな。まあ魔法の存在については後で説明するか。
後でタカミチとか麻帆良の裏の方にも説明入れとかないと行けないし面倒なことだらけだ。
「ここについては後で説明してやるから、昨日言った『氣の開放』についての説明やるぞ」
「わ、分かったアル」
「あんまりわかってることも多くないが『氣の開放』はその名の通り氣を開放する方法だ。まあ今まで使ってた氣と何が違うんだって話になるんだが。おそらく肉体の持つ『生命力』そのものをそのまま持ってくる術だと俺は思っている」
「生命力アルか?」
「ああ、多分そんなやつだ。俺もあんまり知らない。ただ、消耗が結構激しいから大元となる『生命力』を持ってきてるのではないかと考えている。肉体から漏れ出す『氣』を使っているのがいつものやつなら、これは大元を使う方法だからな。危険も伴うしそれなりに『氣』がないとすぐに枯渇する」
だからある程度『氣』が増えてきた今こそ教えられるというわけだ。
「なんだか適当アルね……そんなんで覚えられるカ?」
「……気にするな。お前は中華拳法だから結構理論派だけど俺は独学だからだいたい直感的にしかわかんねえんだよ。その辺りが気になるなら自分で調べろ。別にこんなもん理論がわかんなくても使えればいいんだよ」
「むー、なんかしっくり来ないけど分かったアル」
「というわけで『氣の開放』の方法だがその辺りは気の量が増えてくると多分その大元みたいなところも感覚的につかめるようになってくる。……はずだ」
いや実際、気が増えるとその大元がつかみやすくなるとか知らない。まあ小学生より小さい時は自分もあんまり気の量が今より多くなく、成長するにつれ指数関数的に増えてきて、いつの頃からかなんとなくつかめるようになってきた。
だから多分、気の量が増えるとその大元もつかみやすくなるというのが俺の大体の感想だ。
まあ『開放』じゃなくて、気を『抑制』するために大元から閉じればいいんじゃね?と覚えたものだがまあその辺りはどうでもいいだろう。
ここで必要なのは気を抑えるために考えだしたという過程ではなく、気を開放するという結果なのだから。
「はず……って結構適当アルね。それでどうやるカ?」
「あー、まあその辺りは個人個人のイメージがあるんだがまあ大体、蛇口をひねるようなイメージで俺はやってる。まあ論より証拠というわけで取りあえず手本見せるからそこで見てろ」
そうして俺は―――。
「分かったアル、って師父?どこいくアルか?そっちは崖―――」
塔の端からまるで飛び降り自殺するかのように足を踏み出した。
まだまだ続くよ修行回
今回初めてスマホから投稿したので読みにくい所とか有るかもしれません。
誤字脱字とか有りましたら感想の方にどうぞ。