コツコツ・・・
「!」
サッ・・・
コツコツコツ・・・・
「・・・ふ~」
ソロソロ・・・
「そういえば生活科のあの教師がさ~」
やばい!
どこか、どこか隠れるところは・・・
「そこだ・・・」
俺は近くの段ボールの中に隠れた。
「・・・あれ?なんかいた?」
「まさか~気のせいなんじゃない?」
コツコツコツコツ・・・・
あ、危なかった・・・
・・・・この段階で俺が何をしているかわかっただろうか。
俺は今女子寮に潜入している。
別に怪しいことをするつもりはない。断じてない。
ただ、練習後に歓迎会をするといわれて何の疑いもなく承諾してしまったのが間違いだっただけだ!
・・・普通気がつくよな。女子四人が男子寮に行くより男一人が女子寮に行くほうがリスクが低いわけだし。
だけど、あの時の俺は少し舞い上がっていたのかもしれない。
誰かに祝ってもらうなんて数えるくらいしかなかったもんな・・・
そんなこんなで俺は某、蛇の名前の軍人さんのごとく段ボールに身を隠している。
「・・・さあ、困った」
岩沢さんの部屋(歓迎会は岩沢さんの部屋でやる)はこの寮の最上階にありしかも一番奥の部屋らしい。
廊下までは影があって隠れやすいが、問題は階段だ。
エレベーターは使えないから階段で最上階に行くしかない。
しかし階段は隠れるような場所が無い。
だから必然的に段ボールをかぶって進むしかないのだ。
「よし、綾崎紅騎行きま~す」
俺は慎重かつ迅速に階段を上った。幸い夕食時の時間なので人はいなかった。
「よし、何とかついた」
俺はドアに岩沢と書いてあるのを確認し、インターホンを押した。
ピンポーン
・・・ガチャ
ガン!
「おぶう!!」
勢い良くあけられたドアが俺の鼻先にクリーンヒットした。
「よくたどりついたな綾崎・・・って、どうした!その鼻!」
どうしたって・・・あんたがやったんでしょうが・・・
「・・・いや、大丈夫だ」
なんとなく悪い気がしてその言葉を押しとどめた。
「そう、じゃあ入って。もうみんな集まってるから」
「・・・おじゃまします」
案の定関根と入江の鼻には絆創膏が×状に張られていた。
ご愁傷様です・・・
「それじゃ、始めようか。綾崎、飲み物は何がいい?」
「一応聞くけど、何があるの?」
「えーと、○ルヴィックと、ク○リスタルカイザーと、ペ○エと、○ントリー天然水と・・・」
全部天然水じゃねーか・・・
「・・・なんでもいーよ」
「じゃあ、富○山のバナジウム天然水ね」
・・・もう、なんでもいいっす。天然水好きだし。
ちなみにほかの三人はペットボトルで自分の分を買ってきている。
「よし、じゃあ綾崎がうちらのバンドに入るってことで・・・」
『かんぱ~い!』
俺の歓迎会が始まった。
それから三時間後の午後十時
「お~い、あやさき~ちょぉっと、面かしぇや~」
・・・なぜだ、なぜ岩沢さんは酔っ払っているように見えるんだ?
「もしかして、岩沢さん酔ってます?」
「ら~にいってんだぁ、わらしは~ぜ~んぜん酔ってらいぞ~~」
酔ってる人のセリフだ!?
「ひさ子・・・岩沢さん、何か食べた?」
「ん・・・」
ひさ子は奈良漬けを差し出してきた。
ほかにアルコールが入っているようなものは無い・・・まさか・・・いや、確実に酔ってる。
「岩沢さん・・・めっちゃ酒に弱いじゃないか!」
「あ~岩沢さん食べちゃいましたか~・・・あ、それダウトです」
関根が他人事のように言った。
「そうなったら岩沢さん大変なんですよね・・・じゃあ、5です」
入江も確実に他人事だ。
「じゃあ、この勝負に負けたやつが後片付け兼、岩沢の相手な・・・綾崎、6だ」
・・・ひさ子の奴、楽しんでるな。クソッ俺がずっと全敗だからって。
俺の手札には6が2枚ある。
よし、勝負!
「・・・よし、受けて立つ。ひさ子、ダウトだ!」
「ふふふ、残念♪」
ひさ子が出したのは本当に6だった。
「・・・綾崎先輩~6はさっき私が1枚出しましたよ~」
「・・・何!?」
・・・てか、なんで関根は分かったんだ?
「がばー♪」
突然岩沢さんが後ろから抱きついてきた。
「なんだ~さっきからわらしのころを無視して~」
ぎゅう~~
岩沢さんはお構いなしに強く抱きしめてくる。
「ん~・・・なんだ~綾崎~手札に6と9しかないぞ~」
「わ~言っちゃダメ~!!」
「ふっふっふ・・・わらしを無視した罰なのだ~」
・・・助けて、誰か~~~
結局また俺は最下位になってしまった。