「それじゃここにいるメンバーだけでも紹介するわね。彼は日向君。その横が野田君バカっぽいけどバカよ」
日向が苦笑する。野田の方は別に気にした様子は見せていない。
「その隅っこにいるのが椎名さんで、そっちにいるのが岩沢さん、彼女は陽動班のリーダーなの」
岩沢だったっけ?がこちらをじっと見つめてきた。俺の顔に何か着いているかな?
「そしてわたしがゆり、戦線のリーダーよ」
「俺は綾崎紅騎だ。」
「俺は・・・音・・・無・・・?」
「音無か・・・記憶がないパターンはさほど珍しくない。まあ時期に思い出すさ。」
日向が音無の肩をぽんと叩いた。
「じゃあ、音無君はわたし達と実際に行動する方に入ってもらうわ。綾崎君は岩沢さんの陽動班に入って」
「ん?俺が陽動班?なんで?」
「だってさっきから岩沢さん綾崎君の方をずっと見てるんだもの。岩沢さん、気に入ったの?」
岩沢さんは黙って俺の方に近づいてきた。
「綾崎・・・紅騎・・・なのか・・・」
「そ、そうだけど・・・岩沢さんだっけ?俺の顔に何か着いてる?」
その瞬間岩沢さんは驚いたような表情を見せ、うつむいたかと思い切り俺に平手打ちをしてきた。
バシン!!
「・・・馬鹿!!」
そう叫ぶと岩沢さんは校長室、もとい前線基地から飛び出していった。
一瞬しか見えなかったが岩沢さんは泣いていた。
「・・・あ~あ紅騎、初日から女を泣かせやがって」
日向あきれたような顔をしていた。
「・・・浅はかなり」
ここにきて初めて椎名さんの声を聞いた気がする。
「・・・で、綾崎君、岩沢さんとは生きていた世界からの知り合い?」
俺が死後の世界に来てまだ一日もたっていない。それに岩沢さんとは初対面だ。
つまり生前岩沢さんと会っていた事になるのだが・・・
「分からない・・・というより思い出せないんだ・・・」
「何だ、お前も記憶がないパターンか?」
いや、生前のだいたいのことは覚えている。生まれたときから死ぬまで。
・・・けど何かが引っかかる。
「分からない・・・分からないんだ・・・」
「それじゃあ今日は解散よ、綾崎君はちょっと残って」
「・・・・はい」