暗闇からのキボウの歌   作:skav

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ゆりのとっておき

・・・・どうする?

定期テストの作戦が実施されて早三日。

その間日向と高松が空を飛んだり、大山の心に深い深〜い傷が生じたりしたが何とか天使の眼をごまかせた。

そして最終日の三限目、つまり最後の最後な訳だ。

・・・が、ついにネタが切れてしまった。

日向と高松はすでに天井に頭を突き刺して状態で沈黙している。

・・・・残るは未だに立ち直れていない大山と、焦った表情で俺を見ている音無、平然とした表情のゆりだ。

俺は隣の席のゆりにそっと声をかけた。

「・・・どうするんだよ?もう誰も見向きもしないぞ?」

「そう・・・じゃあ、最後にとっておきを見せてあげるわよ!!」

ゆりは自信たっぷりの表情でどこかと連絡を取り始めた。

「準備は良い?派手にやってちょうだい!!」

・・・・一体何をやるつもりなんだ?

「おい、ゆり・・・一体何をy」

ガッシャァァァン!!

盛大に窓をぶち破る音で俺の声がかき消された。

「な、何だ!?」

どうやら屋上からロープを使って誰かがト○・クルーズばりのアクションを決めたらしい。

生徒達はア然として”メイド服姿の赤髪少女”の方を見ていた。

「岩沢・・・・さん・・?」

もしかして・・・これがとっておき?

ゆりに方を見ると何か岩沢さんとアイコンタクトを取っている。

「ゆり・・・ホントに、やるのか?」

岩沢さんが何かゆりに向かって話している。

「ええ、これをしないと・・・分かってるわね?」

「く・・・分かった・・・」

・・・・一体何をするつもりなんだ?

岩沢さんは教卓の前に背中を向けて立った。

そして意を決したらしく、くるっとこちらに向いた。

「お、お帰りなさいませ・・・ご主人様♪」

パーフェクトスマイルだった。

「「・・・・・・」」

場にいた全員 (天井に刺さった二名を除く)が何が何だか分からずに硬直していた。

「・・・・・っ!」

岩沢さんは逃げ出すように教室から出て行った。

「作戦・・・終了ね・・・」

ゆりが満足そうにうなずいていた。

「岩沢さん!!待って!!」

俺はとりあえず岩沢さんを追いかけることにした。

とりあえず何があったか話を聞かないと・・・・。

 

 

 

 

「岩沢さん・・・あ、いたいた」

岩沢さんは屋上の隅っこでうずくまっていた。

無論メイド姿で。

・・・・あれ?罰ゲームって二日前に終わってるんじゃ・・・。

「岩沢さーん、なにしてんの?」

「・・・・綾崎」

「罰ゲームってとっくに終わってるはずだよね?」

「うん・・・・」

「じゃあ、何でまだその格好なの?」

「綾崎は・・・私のこの格好、好きか?」

正直に「たまらねぇ!!」っていうべきかな?

・・・いや、止めておこう。

さっきの岩沢さん、かなり無理してたっぽいから。

「好きと言えば好きな部類だな。カワイイし」

「か、かわいい!?」

「・・・けど、やっぱりいつも通りの岩沢さんが一番だな」

「そ、そう・・・か?」

・・・なぜそこで少しがっかりするのですか岩沢さん。

「・・・・ゆりが言ってたのと全然違うじゃないか」

「ゆりに何か言われたの?」

「うん、ああすれば綾崎イチコロだって・・・」

・・・・確かにイチコロ寸前だった。

「それに、拒否したら一日綾崎との接触を禁じるって・・・・はっ!い、今のはウソだ!!ウソだからな!!」

全力で否定をする岩沢さん。

・・・そんなに必死だったら逆にバレバレだっての。

「拒否すれば良かったのに、別に一日くらいどうってことないだろ?」

別に一生って訳じゃないんだからな。

岩沢さんなら一日くらい大丈夫なんじゃないか?

「・・・・・耐えられるわけ・・・無いだろ・・・・・・」

ぼそっと岩沢さんが何かを言ったのが聞こえた。

「ん?今なんて言った?」

「な、何も言ってない!言ってない・・・言ってないぞ!!」

さっきよりも激しく否定してきた。

・・・・・・絶対何か言ったな。

「ちなみに俺だったら耐えられないな」

「え・・・?」

もし俺と岩沢さんの立場が逆だったら・・・。

・・・まあ、無理だな。

「な、なんで耐えられないんだ?」

「そりゃあもちろん・・・」

「もちろん?」

岩沢さんが好きだから。

はっきりこう言えたらどんなに楽だろうか。

(あなたから告白しては駄目よ)

立華の言葉が脳裏によみがえった。

「も、もちろん・・・」

(あなたが消えるかもしれないから・・・)

「・・・・やっぱ何でもない」

「綾崎〜・・・」

岩沢さんが不満そうな顔をした。

「ほら、戻ろうぜ。それともずっとその格好のままでいる?」

「そ、それは困る!!」

焦る岩沢さんをからかいながら俺たちは校長室に戻った。

 

本当に・・・

 

 

・・・・このままで良いんだろうか?

 


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