岩沢さんに閉じこめられてからどのくらいの時間が経ったんだろう?
・・・まあ、確実に食堂の時間は過ぎてるよな〜。
仕方ない、今夜は自分で作るか。
「って、そんなことより誰かここから出して〜!」
ドンドンドン!!
とりあえず扉を叩いてみた。
「・・・そんなに強く叩くと扉が変形してしまうわよ」
「・・・・その声は、立華か?」
「そうよ・・・」
もうこの際誰でも良いので俺は必死に救助を求める。
「頼むからここから出してくれよ!腹が減って死にそうなんだよ!!」
実際俺の腹の虫はすばらしいハーモニーで騒ぎ立てている。
かちゃ・・・きぃ・・・
立華が扉を開けてくれた。
周りはすっかり夜になっていた。
「ありがとな、立華」
「別に・・・当然のことをしただけよ」
俺は岩沢さんが置いていったクリスタ○カイザーを手にとって一気に飲み干した。
「あ・・・・・(間接キス・・・)」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもないわ・・・・」
「ああ、そうだ。立華、お前もう夕食は食べた?」
ただ今の時間六時三十分。
ぎりぎり食堂は空いている時間だ。
たぶん暗闇で時間の感覚が麻痺していたんだろう。
「じゃあ、お礼と言っちゃあなんだけど夕飯おごるよ」
「おごるほどたいしたことはしてないわよ」
「あ、ヤバイ!!麻婆豆腐しか無ぇ!!」
ポケットを何度もあさるがずっとため込んでいた麻婆豆腐の食券しか出てこない。
ど、どうしよう・・・おごるって言いながらあの激辛豆腐の食券しかないなんて・・・。
「申し訳ないけど後日改めておごるってコトで・・・」
俺はそう言って食堂に向かおうとするが・・・。
「食べるわ」
立華に袖をちょこっとつままれて立ち止まった。
「・・・・はい?」
「まーぼーどーふ食べるわ」
まーぼーどーふって麻婆豆腐だよな・・・立華が言っても感じが思い浮かばなかった・・・。
「そ、そうか・・・」
と、いうわけで俺たちは食堂へ移動。
食堂の閉鎖時間が近いのか数人の生徒しかいなかった。
運良く生徒達は全員戦線のメンバーではなかった。
「はいよ、麻婆豆腐お待ち」
「どうも」
俺は先に夕飯を受け取って適当な場所に陣取った。
「はい、お水・・・」
「お、サンキュー」
立華が二人の分の水を持ってきたところで食べ始めた。
「よし・・・いただきます!」
「・・・・いただきます」
まずは麻婆豆腐だけを一口。
最初に来る風味も辛く、後味も辛く、見事に終始辛い麻婆豆腐だ。
「か、辛えぇ」
俺は水ではなく白米を口にかきこんだ。
あんまり水を飲みすぎると消化が悪くなるからな。
「・・・立華は平気なのか?」
「ええ、美味いわ」
そう言って平然と麻婆豆腐を食べていく立華。
ええい!生徒会長の舌はバケモノか!!?
〜中華の赤い彗星VS生徒会の白い悪魔〜
一口目で撃墜された俺はしばらくその様子を見ながら何とか完食した。
「そう言えばお前か?俺と岩沢さんを登録したのは」
「・・・・・ええ」
「なんでなんだ?」
「球技大会の日、あなた達は強引に参加するつもりでしょう?」
あ〜、やっぱりばれてたか・・・。
「私たちは正当な方法であなた達を排除するつもりなの」
正当な方法ね・・・、少なくとも妨害では無いようだな。
・・・・すでに俺たち側が妨害しているんだけど。
「だけど、あなたと岩沢さんは別。純粋に楽しんで欲しいの」
まあ、大体はそんなことだろうと思ってたけどね。
・・・・けどなぁ、何か引っかかるんだよなあ。
「立華って俺と岩沢さんの関係が良くなるように協力しているんだよな?」
「・・・・ええ、そうよ」
「じゃあ、なんで俺にキスをしたり部屋に呼んだりしたんだ?」
これじゃあ、まるで逆のことをしている気がするんだが・・・。
「・・・私も、好きだから」
「・・・・ん?あ、ちょっと!」
そう言って立華は逃げるようにして食堂を後にした。
「立華も・・・・岩沢さんが好きだったのか?」
まさかそんな趣味の子だったとは・・・。
・・・・・で、だから何で俺にキスをしたんだってば。