暗闇からのキボウの歌   作:skav

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体育倉庫~岩沢編~

「じゃあ綾崎、ちょっと道具を取ってくるからな」

「分かった・・・あ、倉庫の扉はオートロックで内側からは開かないからなー」

「ああ、分かった」

なぜか我が校の体育館倉庫は必要以上に頑丈な作りをしている。

なぜかって?

ゆりに問いつめても知らないの一点張りだったので日向に聞いみたら、単なるゆりの気まぐれだって。

ただの気まぐれで体育館倉庫を改造するかね・・・。

結局ゆり自信も改造したことを忘れているらしい。

「ほら、持ってきたぞ」

「おう、サンキュー」

早速準備運動をして練習開始。

ちょくちょく分からないことはバドミントン部を捕まえて聞いたりして何とかラリーを続けられる程度までにはなった。

「あ、しまった!」

「はい、岩沢さんのミス」

「くそ〜・・・もう一回だ!」

「よし来い!」

そんな感じで約一時間俺たちはひたすらラリーを続けた。

 

 

 

「ふー・・・岩沢さん今日はここら辺で終わりにする?」

「そうだな・・・・じゃあ、また私が片付けてくる」

「その間に何か買っておこうか?」

「じゃあ、○ルヴィックね」

「了解〜」

岩沢さんは体育館倉庫へ、じゃあ俺も自販機に行くか。

自販機は体育館を出てすぐ脇の所に設置してある。

「・・・・しまった俺の分が買えない」

そういえば一人分の小銭しか持ってこなかったんだっけ・・・。

じゃあ、岩沢さんの分だけでいいか。

ピッ・・・ガコン。

「お、綾崎じゃねーか」

「おー日向、どうしたんだ?」

「いや、コーヒーを買いに来たんだけどここ意外全部売り切れでね」

そう言ってコーヒーのプルタブを開けた。

「ん〜苦ぇ・・・そう言えばお前は?」

「俺は岩沢さんの分の飲み物を買いに来ただけだ」

「ああ、バドミントンでペアに”なってた”んだっけ・・・」

「まあな・・・」

ピ・・・・ガコン。

「あ・・・・ヤベ」

出てきたのは○リスタルカイザー・・・岩沢さんがあまり飲まない奴だ。

「お前・・・女の子に水ってどうよ」

「・・・・そうか?」

「そうかって・・・そこはイチゴオレとか・・・」

「岩沢さんは基本水しか飲まないんだよ」

 

ついでに言うと前、関根が悪戯で水(ペットボトル)とイチゴオレ(紙パック)をすり替えた時があった。

普通の人は気が付くだろうが岩沢さんは手元を見ずにイチゴオレを飲んだ。

その瞬間軽くむせて微量のイチゴオレを吹き出してしまった。

・・・・・まあ、それではーはー肩で息している岩沢さんは少しエロかったが。

そんなこんなで岩沢さんはイチゴオレを避けている。

 

「そ、そうなのか?・・・でもさっきなんでヤバイなんて言ったんだ?」

「なぜか岩沢さんは○リスタルカイザーをあまり飲まないんだよな」

「よく見てるな・・・」

「まあ、同じバンドのメンバーだしな」

「それはそうとこんなトコで無駄話してて良いのか?綾崎クン・・・」

あ・・・ヤベ・・・。

「早く行け〜」

「お、おう・・・じゃあな」

 

 

そして再び体育館へ。

「お〜い岩沢さ〜ん・・・・ってあれ?」

体育館には人っ子一人いなかった。

漫画なら背景にシーン・・・と書かれている状況だ。

「帰っ・・・た?いや、ここに岩沢さんのタオルがあるし・・・」

一応岩沢さんのものかどうか確かめてみる。

・・・・・・うん、ちゃんと岩沢さんのにおいがする。

はっ・・・イカンイカン、これじゃただの変態だ。

考えろ考えろ考えろ・・・・・。

俺が日向と話していたのはほんの2〜3分、岩沢さんが体育館から出るとすれば必ず会うはずだ。

だけど岩沢さんは体育館から出てきてない・・・。

つまりまだ体育館にいる。

これだけ待っても岩沢さんが現れないってことはトイレではない。

じゃあ、選択肢はあそこしかないな。

俺は体育館倉庫の方へ歩いた。

案の定扉は閉め切っていた。

・・・・ただの用具入れにオートロックなんて邪魔だっての。

「岩沢さーん、いたら何かアクションを起こしてください」

ドンドンドン・・・。

扉を叩く音・・・やっぱり閉じこめられてたか。

扉近くに引っかけてあった鍵を取って解錠。

ガチャ・・・・・バン!!

「綾崎ぃぃぃぃ!!」

「うわ!?」

いきなり開いた扉でのけぞっていた瞬間に岩沢さんが飛びついてきた。

「暗かった・・・何も見えなかった・・・怖かった・・・」

倉庫内に明かりを取り入れる窓はない。暗いから電灯のスイッチなんて分かるはずもない。

てことは完全な暗闇の中に取り残されたわけだ。

・・・・確かに不安になるし心細いな。

岩沢さんは肩を細かくふるわせながら俺の胸に顔を埋めていた。

「ごめん・・・早く助けに来てやれなくて」

そんな岩沢さんの頭を優しく撫でてやった。

・・・・岩沢さんの髪、すげぇサラサラしてるな・・・おまけに良いにおいするし。

「・・・・どさくさに紛れて何で髪をかいでるんだ?」

・・・ばれた・・。

「そんな悪い子には・・・」

ズルズル・・・と岩沢さんは俺の顔の方に身体ごと移動してきた。

現在のお互いの顔の距離、約5センチメートル。

俺の視界は岩沢さんで埋め尽くされた。

岩沢さん近い、近い、近いぃぃぃぃぃ!!

おまけにさっきのタオルの香りなんて比較にならないほどダイレクトに岩沢さんのにおいが伝わってくる。

「お仕置きが必要だ!!」

・・・・ふわ。

「・・・・へ?」

岩沢さんは俺を体育館倉庫へ放り投げ、目にもとまらぬ速さで倉庫の扉を閉めた。

その間わずか三秒。

グルン!!ドサ!!キィィィバタン!!

「今夜そこで反省してな・・・ああ、水は今日はいらないからな、ここに置いておくぞ」

「わぁぁぁ!!暗い!!マジで何も見えねえ!?」

「じゃな☆」

スタスタスタ・・・。

・・・・・本当に帰ったよ。

・・・さっきまでの最高に守ってあげたいオーラ全開の岩沢さんはどこへ行ったんだ。

 


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