暗闇からのキボウの歌   作:skav

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プチ・アクシデント 2

・・・・朝だ。

何で私は床で寝ているんだ?

・・・思い出せない。

まあ、とりあえず朝メシを食わないと。

「・・・・あれ?」

起きあがろうとしても腕に力が入らない。

・・・・どうしたんだろ。

タッタッタッタ・・・・バン!

「お〜い、岩沢〜朝食にしよう・・・・・って、岩沢!?」

「ひさ子・・・ノックをしてから入れとあれ程・・・」

「そんなことよりお前もの凄い熱だぞ!風邪でも引いたのか!?」

ああ、だからさっきからこんなに身体がだるいのか。

「・・・・そうみたい」

「・・・・ったくちょっと待ってろ!」

そう言ってひさ子は入江と関根を呼び出して三人がかりで私を保健室に運んだ。

・・・そんなに私って重かったのか?

ちょっとショックだった。

「・・・・・風邪ね」

保健室に連れてこられた瞬間に即答された。

「・・・何か心当たりは?」

私は口を動かす気力もなく、ひさ子が代わりに話した。

 

 

「・・・・事情は分かったわ、とりあえず岩沢さんはここで休んでなさい。」

私は保健室のベッドに寝かされた。

「ほら、あなた達も授業が始まる時間でしょ。行った行った!」

ひさ子達は面倒臭そうに保健室から出て行った。

どうせ行き先は講義室だろうけど。

「ふ〜・・・・じゃあ、何かあったらいつでも言いなさいね」

そう言って保健の教師は事務仕事に戻った。

・・・・・寝るかな。

私はまぶたを閉じた。

それから眠るまで5分もかからなかった。

 

 

 

 

次に起きた時にはもう放課の時間だった。

・・・・寝過ぎたかな?

「・・・・・さんが風邪って本当ですか!?」

あの聞き覚えのある声は・・・

「本当よ、まあ、二・三日自分の部屋で大人しくしていれば大丈夫よ」

「良かった〜」

・・・間違いない、綾崎だ。

あの様子だと私が保健室にいると聞いてすぐにやって来たんだろう。

「じゃあ、岩沢さんは俺が運んでいきますんで」

「ああ、そう?・・・じゃあ、頼むわね」

・・・!、綾崎が運ぶ!?私を!?

その瞬間綾崎が私を背負っている光景が頭の中に映し出された。

・・・・・それも良いかもしれないな。

だけど、私は三人がかりで運ばれてきたんだぞ?

綾崎一人で私を運べるわけ・・・・

「・・・よっ・・・・と」

突然私の身体が浮いた。

綾崎私をお姫様だっこしているのに気が付くまで数分かかった。

「あ、ああ、あ、綾崎!!?」

「じゃあ、お世話になりました〜」

「お大事に〜(笑)」

綾崎が私を背負っている想像しかしてなかったのでこれは不意打ちだった。

「綾崎・・・なんでこんな事になってるんだ?・・・背負えばいいのに」

そうだ、背負えば綾崎も楽なはずなのに・・・どうして・・・

「なんでって、岩沢さんに負担はかけられないし、運びやすいからだけど・・・もしかして嫌?」

嫌なわけがない。

・・・・だってこんなにもお互いの顔が近いんだから。

だけど、一つだけ気になることがある。

「・・・・重くないか?」

「全然、ぜ〜んぜん重くない!むしろ軽い!」

即答されてしまった。

・・・・綾崎なりに気を遣ってくれてるのかな?

それはそれで嬉しいけど、何かヤだな・・・

「そ、そう・・・か・・?」

・・・・・よし、ちょっと悪戯してやるか。

私は少し腕の力を入れて綾崎と私の顔の距離を縮めた。

・・・・これ、すごいドキドキするな・・・

でも、これは綾崎悪戯するためなんだからな!

別に私がしたくてやってるんじゃないと言い聞かせ、さらに距離を縮めた。

・・・・綾崎が振り返ればお互いの距離がゼロになってしまうほどに。

・・・・それって・・・

つ、つまり・・・・

とたんに心臓の動きが速くなった。

あ〜もう!

なんで私だけこんなにドキドキしなくちゃいけないんだ!

私は悪戯を続行した。

「綾崎・・・・」

耳元でささやいてみた。

おお、ビクってした・・・。

なかなかおもしろいな♪

「な、何でしょうか?」

「・・・・なぜこっちを見てしゃべらない?」

こっちに振り向いたら私とお前は・・・・

・・・距離がゼロになって・・・

つ、つつ、つまり・・・・私と綾崎の・・・

く、唇と唇が・・・・・

フワッ・・・・

え?

突然私の身体が中を浮いた。

一瞬バランスを崩して頭の中が真っ白になった。

「わわわ・・・!」

一瞬パニックになったとき、私の身体がもう一度綾崎の腕の中に収まった。

「ほら、岩沢さんが悪戯するから」

・・・・ばれたか。

それにしてもずいぶん軽々と私を受け止めたな。

重くないって言いたかったんだろうか・・・

ま、まあ、それなら許してやっても良いか。

・・・・・!

よ、良くない良くない・・・。

だって、あのまま綾崎が振り向いてくれていたら・・・。

振り向いていてくれたら・・・。

あ〜も〜・・・綾崎の・・・

綾崎の・・・

「・・・・・ばか」

すると綾崎の顔がさっきよりもどんどん赤くなっていった。

・・・・どうしたんだろう?

「・・・綾崎?顔が赤いぞ?」

私の風邪が伝染(うつ)ったのかな?

「・・・・・岩沢さんがかわいすぎるからな」

「な・・・・!」

か、かわいい・・・・?

・・・・・・私が?

そ、そんなこと無いだろう・・・

・・・・・だけど確かに綾崎は私にかわいいって・・・・

かわいいなんて言われたことが無かったなぁ。

いつも男らしいとか、ぶっきらぼうだとか、我が道を進んでいるとかしか言われてないからな。

・・・・だけど、できれば風邪じゃないときに言って欲しかったな・・・

だって悔しいじゃないか。

風邪の時の私がかわいいなんて・・・

「はい、着きました〜・・・」

私がそんなことを考えている間にいつの間にか部屋の前に着いてしまった。

私はポケットから鍵を取り出して鍵を開けた。

ガチャ・・・キィィ・・・。

「・・・・・ん」

綾崎は、私をベッドに寝かせた。

そしておでこや首筋を触ってきた。

たぶん体温をチェックしてるんだろう。少し冷たい手が気持ちいい。

「とりあえず水分買って来るから、その間に着替えといてくれよ」

「・・・・分かった」

綾崎が部屋から出た後すぐにベッド下の引き出しからパジャマを取り出して着替えた。

それからしばらくベッドに横になっていた。

・・・そう言えば私、こんな感じで死ぬまでベッドにいたんだっけ。

何も言葉を発することもできず、身体も動かせず、ただずっと死ぬまで横になっていた。

今の私もまともに身体を動かすことができない・・・。

「・・・・・・れか・・・・」

言いようもない恐怖が私を襲った。

そのせいか声が上手く出ない。

声が出ないことから、さらに恐怖が増していく。

誰か・・・・誰か来て・・・一人は嫌だ・・・。

私を置いていかないで・・・・・。

早く来て・・・綾崎・・・。

 

 

 


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