暗闇からのキボウの歌   作:skav

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最悪の事態

作戦日当日。

今回はいつものような小規模のライブではなく体育館を占拠する大規模なゲリラライブだ。

その分学校側の反発も強くライブの途中に教師達が押し寄せてきても不思議ではない。

「結局起きませんでしたね〜綾崎先輩・・・」

関根が独り言のようにつぶやいた。

そう、綾崎は当日になってもいっこうに目を覚ます様子を見せなかった。

結局元のガルデモに戻ってしまったわけだ。

「まあ、起きないのはしょうがないさ」

私たちはステージの裏で曲順などの最終チェックをした。

そして幕の下ろされたステージに上がった。

壁には一つのアコースティックギターが立て掛けてあった。

「・・・特等席だ」

私はそうギターに声をかけてマイクスタンドに立った。

同時に照明が落とされ、幕も上がってきた。

「さあ、派手にやろうぜ!」

そして、作戦が決行された。

 

 

 

 

「・・・・で?天使のねぐらってどこなんだ?」

俺たち実行班はある女子寮の前に集まった。

「音無君?見て分からないの?”ここよ”」

ゆりが当然でしょ?と言わんばかりの顔で言った。

ここ?・・・ここって女子寮しかないぞ?

「女子寮しか見あたらないんだけど・・・」

他の奴らも当然のような顔をしている。

「だ〜か〜ら〜・・・天使は”生徒”会長なんだから寮生活をしていて当然じゃない!」

ああ、なるほど。てっきり悪の秘密組織の研究所みたいなトコを想像しちまった〜

「て、それじゃあ不法侵入じゃないか!!」

「・・・時間がないわ、みんな!行くわよ!」

ゆり達は俺の言葉にも一切聞き耳持たず女子寮に突入していった。

俺?おれは松下五段に拉致られて一緒に突入する羽目に・・・

当然のことながら悪趣味な罠があるわけでもなく「せいとかいちょう」と書かれたドアの前に簡単にたどり着いた。

「ちっ、鍵がかかってるわね〜」

ゆりがガチャガチャとドアノブを動かす。

まあ、そりゃそうだろうな・・・じゃあ、退散しようよ。

「”なら”、松下君!」

「おう」

松下五段は俺をおろすとドアノブの前にかがんで何か針金のようなものを取り出した。

おいおい・・・まさか・・・

ガチャ

ああ、やっちまった   ※よい子は真似しないように

「最低だお前ら!ちくしょう、ちょっとは良い奴らだと見直したのに!」

ドタドタドタ・・・

再び俺に構わず部屋に侵入していった。

女子寮に突っ立てたら怪しまれるので俺も渋々、あくまで渋々部屋に入った。

そこで目にしたものは・・・・・!

「こ、ここは・・・」

 

 

 

 

〜〜〜♪

順調にCrow Songが弾き終わった。

だけど予想以上に生徒の入りが悪い。

まだ体育館の三分の一程度だ。

なんで?なんで集まらないんだ?

・・・綾崎がいないからだろうか?

脳裏にここにいないアイツの顔が浮かび上がった。

(やっぱこの曲は最後の方が良いよね?)

(ん〜・・・あえて最初にした方がいい気もするな)

(なんで?一番迫力があるから締めには適当じゃない?)

(いやあ、これを弾いてるときギャラリーの乗りの良さが異常だからさ。初めの方にしたらもっと集まると思うんだ)

(・・・だけどやっぱり最後の方が良いと思う)

(まあ、岩沢の好きにすればいいよ。俺はお前と演れれば十分だし)

(!・・・そ、そうか?)

(どうした、岩沢?顔が赤いけど熱でもあるのか?)

(な、何でもない!!)

・・・アイツは突然恥ずかしいことを口にするのが困るんだよなぁ。

確かにアイツはあの曲をギャラリーが集まるかもって言ってた。

いつもは最後の方で演る曲だけど・・・

今はアイツの言葉を信じてみよう。

私はフィードバックを始めた。

「え・・・・」

「何でここで・・・?」

「Alchemy!?」

三人の驚いた表情も気にせず前奏を弾き始める。

ギャラリーも早いAlchemyの登場に驚きと喜びの歓声を上げた。

 

 

 

 

「こ、ここは・・・」

俺が目にしたのは良く片付けられた本棚。

かわいらしい熊のぬいぐるみが置いてあるベッドる

ファンシーなデザインのスリッパ・・・etc

「どう見ても普通の女の子の部屋じゃないか!!」

ここのどこが天使のねぐらだ!一生徒の一般的な寮じゃないか!

「マジで最低な奴らだなお前ら!だいたい・・・・・!」

トン!

・・・・あ。

突然後頭部に打撃をくらい俺の意識はフェードアウト。

「ありがと、松下五段」

ゆりは特に興味なさそうな顔で礼を言った。

「じゃあ、天使のデータバンクにアクセスするわよ」

そして、机にあったデスクトップの起動スイッチを押した。

見たことあるような起動モーションをした後ユーザー選択画面が現れる。

「ち、パスワードロックがかかってる・・・・竹山君お願い!」

そこでゆりから竹山にバトンタッチ。

竹山は自分のパソコンとデスクトップをコードでつなぎ、いくつかのプログラムを起動さた。

雨のように数列が流れたかと思うと特定の数字とアルファベットが表示された。

竹山がそれをパスワードの欄に打ち込むとようこその文字と起動音が流れた。

「すごいわね・・・」

竹山はさらに厳重なプログラムのロックを解除していくとゆりがある場所で反応した。

「竹山君!ちょっとそこで止めて!」

そこには天使が使うhand sonicなどの情報が映し出されていた。

「これは使えるわ・・・」

情報をスクロールしていくと見たことのない名前が出てきた。

”unison”それは他のものと比べて情報が極端に少ない。

まだ未完成だということか。

「・・・なにこれ」

そこには見知った二人の名前があった。

・・・そういえば前、岩沢さんは綾崎君の記憶をどうしても戻したいって言ってたわね。

ゆりは全てのデータを保存するように竹山に命じた。

てことは、綾崎君の記憶が戻ったら岩沢さんは消える・・・?

『こちら遊佐です。綾崎さんの意識が戻ったそうです』

遊佐から無線が入ってきた。

まだ、岩沢さんは消えてしまっては困る。

「何か異常はないかしら?」

あそこに映っていた二人の名前は・・・

『綾崎さんは記憶が戻ったと言ってましたが』

「最悪ね・・・岩沢さんには絶対に伝えては駄目よ」

綾崎紅騎と、岩沢まさみ。

『岩沢さんの強い希望でゆりさんの前に伝えましたが』

「今すぐにライブを中止しに行くわよ!!」

ゆりはそう言って女子寮を飛び出した。

あのunisonに岩沢さんの名前があるって事は何かしら関係性があるということ。

それを確かめるまでは岩沢さんに消えてもらっては困る。

『陽動班、教師達に取り押さえられました』

そして短いノイズの後に遊佐からの通信が途絶えた。

事態はさらに悪化していく。

「急がないと・・・!」

 


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