「じゃあ、オペレーション成功に乾杯!」
ゆりが高々とオレンジジュースの入ったコップを掲げた。
『かんぱーい!!』
それに合わせてみんなもコップを掲げた。
それにしてもここまで大胆な手段を使うとは思わなかった。
食事時をねらって陽動班がゲリラライブを始める。
当然天使は止めに来るが、そこは前線組が阻止する。
頃合いを見て、他のグループが用意した巨大扇風機を作動させて、学生達の食券を一気に外に舞いあげる。
そこを前線組が回収。
とんでもなく計画的な犯行だ。
「・・・で、俺の報酬は白米に漬け物と?」
俺に渡された食券はご飯特盛りとみそ汁、馬鹿でかいキュウリをまるまる一本漬け込んだぬかずけだった。
日本の朝の食卓か!
「ご愁傷様・・・」
俺の相向かいに座っている岩沢さんはカツカレーを食べていた。
ギュルルルル・・・・
い、いかん・・・カレーのにおいが俺の腹の虫を誘惑する〜・・・
「カツ、一個あげようか?」
岩沢さんがヒレカツをすくい取った。
「いいの!?」
「ああ、私肉あんま得意じゃないから・・・」
そう言って全てのカツを俺の所に移してきた。
「一個くらい食べなって、ヒレだから油も少ないんだろうし」
俺は一個カツを戻した。
「・・・分かった」
よし、これで食事に華が加わったぞ
「いただきま〜す」
ガツガツガツ・・・・ン!
「む、んぐ〜〜!?」
み、水!
あわててコップを傾けた。
な、無い!!?
「大丈夫か?ほら、水」
岩沢さんが水の入ったコップを差し出してきた。
バッ!
ゴッゴッゴッゴ・・・
「・・・はあ、はあ、・・・」
た、助かった。
「サンキュー、岩沢さん」
俺は、岩沢さんにコップを返した。
「あ、ああ・・・」
?、どうしたんだろう?岩沢さん。耳が真っ赤になってるが・・・
「岩沢さん・・・耳赤い・・・」
耳の所をつかんでジェスチャーをした。
「い、いや、何でもない!」
あわててカレーを食べ始めた。
かなり動揺しているのか、口に運んでいるスプーンには何も乗っていないことを岩沢さんは気づいていない。
パカッドバドバドバ〜
ん?何の音だ?
気のせいだろうか、俺の茶碗から七味唐辛子のきついにおいがするのは。
・・・気のせいじゃなかった。
「ひ、ひさ子!?なにしやがる!!」
ひさ子は空になった七味のビンを握りながら邪悪な笑みを浮かべていた。
「なにしやがる?それはこっちの台詞だよ」
ひさ子は七味のビンをテーブルに置いたかと思うと素早い動作でスティックシュガーを十本俺のみそ汁に入れてきた。
「Noooooooo!!」
「さっき、岩沢とさりげなく間接キスかましたのはどこのどいつかなぁ?
「ぶ!!」
突然岩沢さんが盛大に水を拭いた。
岩沢さんはあわてて紙ナプキンで後始末を始めた。
「ほらぁ、岩沢だって気にしてたんじゃないの。あんなにクールにはい、水・・・って言ってたのに〜」
岩沢さんはさっきとは比べものにならないほど赤面していた。
うわぁ、すげぇ・・・完熟のリンゴみてーだ。
「・・・綾崎」
岩沢さんがじぃぃぃ・・・っと見つめてきた。
どうでも良いけど岩沢さんってまつ毛長いんだな。
「は、はい・・・なんでしょーか?」
俺はおそるおそる聞き返した。
「・・・覚悟しとけよ?」
にっこりと岩沢さんが笑った。
ひさ子のような悪魔の笑みじゃなくいたずらっ子のような笑みが逆に怖かった。