Q.もし咲が鷲巣巌と邂逅したら?   作:ヤメロイド

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似非闘牌シーン満載です!
……本当は専用のツールでもあれば楽なんですけど、ガラケーじゃね……?


淡ちゃんマジダブリー

挨拶も早々に切り上げると、久は三人に卓に着くように勧めた。

「飲み物は何がいいかしら?」

「あ、すみません。私が煎れましょうか?」

申し訳なさそうに立ち上がる咲だが、久は手で制した。

「いいのいいの。今日は気にしないで」

そう言うと注文を取り付ける。

「わたし、ココア!」

「じゃあ、紅茶で」

「俺も咲と同じで」

俺もココアで。

「あん?」

……全員に飲み物が行き渡って少し世間話でもしようかという頃に、ドアをノックする音が聞こえた。

「ドーン!」

擬音語を口で言いながら侵入して来る女子生徒、片岡優希。どうでもいいが、ドアを開ける際「ドーン」なんて音が出てはたまったものではない。しかし、そこは華麗にスルーする久。

「あ、優希。ちょうど良かったわ」

そう言うと久は自分の分のカップを優希に渡す。

「紹介するわ。この子は片岡優希。一応麻雀部員だけど昨日入ったばかりだから、咲や淡と同じ一年生よ」

「よろしくだじぇ!」

その手には大量のタコスが入った袋が握られていた。それに淡が目聡く反応する。

「タコス!」

「む、何奴!?」

「あ、こっちは大星淡ちゃん。私は宮永咲です。よろしくね、片岡さん」

なんか面倒になりそうな空気を察して咲がさっさと流してしまう。

(あ~、なんか淡ちゃんと片岡さんって似たようなタイプの人だな)

要するに火と油。熱が入ると止まらない。案の定、高校生二人の口論は

「高校100年生の実力を持つ私に挑もうなんて99年早いね!」

「なにおう!なら私は通常の三倍のスピードで成長してやるじぇ!」

「……あの、結局33年はかかるんだけど」

「しまったじぇ!?」

よく訳の解らん領域に達していた。

「淡ちゃん、面白いな……」

しんみり呟く咲。そう言えば、いつの間に名前で呼ぶようになったんだ?

「昨日の放課後からだけど」

「咲、誰と話してんだ?」

「へ、あ……誰だろ?」

場は整いつつあった。何故か鷹のポーズを取る淡とタコスを構える優希……。

「何があったの……?」

「さあ……?」

 

場は整いつつあった。

 

優希に遅れること五分、遂に最後の部員がやってきた。

「わりー、わりー。村岡の奴に捕まっての」

爺言葉で喋る女子高生、染谷まこだ。見計らったように久がホワイトボードの前に立つ。

「はい、じゃ、みんな卓に着いてー」

注目というように、久が手を叩く。

「今日は新入部員の歓迎を兼ねて大星さんと宮永さんの実力を見たいと思います」

パチパチパチ……となぜか拍手。

久の話はこうだった。半荘二回の勝負で咲、淡が交代でまこの対面に入る。昨日のうちに実力を見てしまった優希と京太郎が数合わせで上家、下家に入る。赤ドラ、喰いタンあり。

「そんなに気負わなくて大丈夫よ。別に負けたからといって入部出来ないわけじゃないから」

知ってた。

「どうする?淡ちゃんが先に行く?」

「うん!」と快諾。

今、淡の中にはこんなプランがあった。

圧倒的点差で勝つ→淡ちゃんマジあわあわ→咲が惚れる→大勝利

単純極まりないが、案外悪い作戦でもなかった。かっこいいところを見せるのは王道ではあるし、事実淡はそれをするだけの実力もあった。……百合前提の恋愛があるということを無視すればの話だが。

結論を先に書くと、淡は麻雀には勝利する。しかし、今麻雀を見せようとしているのは闇の中で花を咲かせる天才だ。果たして、惚れるのはどっちになることやら……

こうして、清澄の旧校舎で新歓麻雀が始まった。

 

東1 親 優希 ドラ5ピン

久は優希の手牌を見る。

(粘れば三色が狙える手か。悪くはないけど……)

五シャンテン。面子が無く、下の三色を狙うよりは喰いタンで流すのも考える必要がある手だった。

(ここは様子を見るじぇ……)

親だがゆっくり字牌の整理をする。しかし、

「リーチ」

それを上回る速度でリーチをする人物がいた。

(ダブリーか……なんて強運)

それが久や、同席していた者の感想だった。しかし、後ろで見ていた咲は全然笑えてなかった。

(淡ちゃんの手、凄いことになってるよ)

12379m555p456s南南

つまりこの手、ドラ5!ドラ5!

 

ドラ5!

 

(赤五ピン二枚抱えてのドラアンコ……これは酷い)

唯一の救いは待ちが悪い事くらいだが、八ワンは山に三枚埋まっている。恐らく六巡もすればツモるだろうというのが咲の考えだった。案の定

「カン!」

淡は引いてきた5ピンをそのままカン材にした。

「フフ……嶺上開花ダブリーツモ。裏が乗って数え役満だ!」

東1から大荒れである。

「うう……親っ被りの上に流されたじぇ」

半泣きで点棒を渡す優希。

「流石にしょうがねーだろ。いきなり役満なんて運がなかっただけだって」

運が悪かっただけだと言って優希を慰める京太郎。しかし、その意見はあまりに鈍感に過ぎた。逆に、ツモられたものの優希にはある予感とも言うべき淡に対する直感が芽生えていた。それは、今のツモはただの運ではないということ。恐らく、淡の作った流れはそう簡単にはひっくり返らない。そんな波乱の予感を感じ取っていた。

東2 親は淡だが、配牌の時点で既に聴牌していた。役こそ無いもの、満貫への道が見えている。

「リーチ」

「またかいの!?」

「はいいい!?」

そう何度もダブリーがかかってはたまったものじゃないが、事実淡はしてきた。京太郎は気付くよしも無いが、ことここに至り久やまこも感づいた。

(こいつも人外の類……!なら逃げるわけにはいかんの)

「その南、ポンじゃ!」

オタ風をポンするなんて最悪極まり無い選択だが、結果的にその判断は正しかった事になる。

六巡目、まこは六ソウを引き当てる。

(周辺の牌が切られとる。これは通るか……)

そのとき、淡いの表情が少し揺らいだ。次順、

「京タロー、ロン。7700」

「のわっ!」

一気に点棒を毟られる京太郎。しかし、まこの目は淡の手牌にいっていた。

(六ソウをアンコで大星が抱えとったか……)

もしまこがポンをしてツモ順を変えなければ、六ソウは淡いの所に行っていただろう。

(カンしてドラが乗っかれば跳ね満まで行く手。須賀はとばされとった)

須賀 残り9300

「しゃーないか……」

東2 連荘

「チー!」

まこは作戦、というか方針を変えた。優希が鳴けそうなところを切っていって、

「それだじぇ!ロン!タンヤオ三色ドラ3の一本付け!犬、お前の箱テンだじぇ!」

「のわああああ!」

(大星に直撃させられればとおもったんじゃがな……)

全ては後の祭り。淡は+59の大勝利だった。

(これはとんでもないこが入ってきたわね……)

淡の力のおおよそを察した久は、その異常性に驚いた。

他家を強制的に5シャンテンからスタートさせ、自らは好配牌。加えてカンをすれば暗カンがごっそりドラになる。なにそれ怖い。

(勝負感さえ掴めば、淡はほぼ負けない強さを持っている。うまく行けばインターチャンプとだって闘える……でもこうなってくると問題は……)

もう一人の新入生、宮永咲だった。

(流石に淡ほどの強さは無いでしょうけど……)

それでも期待せずにはいられなかった。

「宮永さん、次入って貰えるかしら」

竹井久は考える。もし咲に期待が持てるなら、この長野を、魔窟を出られると。

しかし、後に思い知る。宮永咲が化け物というカテゴリーを超えた、神域に臨む打ち手だと。

 




いやー、ダブリーしかしない淡ちゃんの闘牌は書きやすい。お陰で筆者の底が簡単に知れる♪
……すいません、淡ちゃんの闘牌どう書けばいいの?完全なソリティアゲーになってしまう。
次回は咲さんの闘牌です。

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