Q.もし咲が鷲巣巌と邂逅したら?   作:ヤメロイド

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アニメ効果

咲の場合

「最近麻雀牌が飛ぶように売れますが、いったい何があったのでしょうか?」

ファフナーの場合

「最近胃薬が飛ぶように売れますが何があったのでしょうか?」

アカギの場合

「最近墓石が飛ぶように持って行かれるのですが何かあったのでしょうか?」


アニメ効果って凄いですね……


光の先

風評被害というものがある。それは偏見、もしくは偶々耳に入ってきた断片的な情報で人を判断する許し難いものである。

「全くです。勝負の最中に飲食しなかったり差し馬握った相手が死んだり破産したりしただけで妖怪呼ばわりとは納得出来ません」

おう黙れや。

 

ところ変わって、臨海のそばにある雀荘から数十キロほど行ったところ、バブル期の面影を残すアーケード街。パフェが美味しいと噂のお店に、そいつらはいた。

「……」

かたや言葉数少ない伝説の強者――

「偶然九蓮が出て対戦相手が死んだだけで人鬼呼ばわりなんて酷いと思いませんか?」

……。……かたやペラペラ饒舌に喋る人鬼様。

「酷いですよね……たかが20万点差をひっくり返しただけで清澄の白い悪魔だなんて……」

かたや風評被害の会会長兼会計担当、神域の少女……いや会長職が会計兼任したらアカンでしょ。

などというツッコミが入る事もなく、勝負を(まるで書くのが面倒くさいと言わんばかりに)キンクリしたかのようなスピードで終わらせた二人は喫茶店でパフェをつついていた。末原さん、出番ですよ!

咲が泣きそうな顔で言葉を漏らす。

「……どうします?このままだと私達、完全に勇者に倒される魔王側ですよ……」

だいたい合ってますよね……?

「そんなはずは……一応私達は主人公ですのでこの後に友情努力勝利という王道展開が……」

うーんと頭を悩ませる二人。このままでは特に苦戦すること無く物語が終わってしまうだろう。そうなれば最終回で「私が倒されても第二第三の――」というセリフを言いかねない……最早魔王である。

なんとか主人公っぽい「友情努力勝利」的なイベントを消化したいが、二人の力に拮抗出来る力を持った敵がいない――結果、二人は頭を悩ませていた。

「敵、敵……強大で……破滅させても苦情が来ないような……」

そのとき、咲がポンと手を打った。

「そうだよ!あの人達が居たよ!」

なんで今まで思い付かなかったかと言わんばかりに微笑む咲。

 

 

 

「傀さん、幾らお金を引っ張り出しても返さなくていいATMがあるって知ってます?」

 

 

帝愛という組織を知っているだろうか?裏カジノや法外な利息で金貸し業を営む、兵藤会長の率いる闇の組織である。

最近は環境保全、託児所経営など、地域密着型の経営態勢を整えつつあるが、彼等の主たる事業はやはりカジノ経営である。彼等は全国的に高レートの賭博を用意し、そこから資金を調達する。結果、沼は帝愛にとって非常に重要な役割を担っていた。

その沼の前。一人の男が古傷を撫でるかのように、沼をそっと撫でた。

(くっ……この時期になるとあの日の記憶が蘇る……!)

一条聖。今回の被害者である。

「いきなりネタばらししてどうする!?」

……季節は初夏。彼はまだ知らない。今日、そのトラウマがまた抉られることになるということを……

「……まあいい。あの日の敗北を糧に、僕は沼を攻略不可能な要塞にすることに成功した……」

うっとりと、取り憑かれたかのように沼を見る。その三段目には空気シェルターが作られていた。

(幾ら沼と言えど完璧ではない……全てをねじ伏せる剛運に出会ったなら負けてしまう)

そう、例えば宮永咲とか……

小学校の夏休みを利用してやってきた彼女に、五年分の蓄えを全て持って行かれたのはいい思い出です。お陰様で会長にどれだけ絞られた(物理)ことか……

しかしそのお陰で、沼は更に鉄壁の防御が敷かれることになった。その点だけは、彼は咲に感謝していた。いわば一条と咲の連携プレーでカイジを追い詰めていくスタイルである。

感極まって、周りが白い目で見ているにも関わらず哄笑する。

「来るなら来てみろ、宮永咲!今の僕に隙は無い!」

「お久しぶりです、一条さん」

「いやああああああああああ!?」

本気でびびって振り返る一条。その先には、あの頃の面影を残した少女が立っていた。

「み、宮永咲……」

ゴクリと唾を呑む。ややあって、周囲の喧騒が耳に入ってきた。

「バカヤロー!誰が宮永咲入れやがった!?」「犯人コイツです!」「愉悦(笑)」「キサマアアアアア!」

……これが10話以上かけてカイジを苦しませることになる中ボスの姿である。相手が隠しボスだから仕方ないとか言ってはいけない。

「あの、大丈夫ですか?」

心配そうな顔をする咲。一条は、まるでライオンに睨まれた兔のように怯えた表情を見せた。が、それも一瞬のこと。ぐにやぁ~となりそうな顔を手で抑えつて、精一杯の笑顔で

「マジでお帰り下さい、宮永様。」

深々と頭を下げた。

(いやいや無理無理!もう一度宮永咲と勝負とか勘弁して下さい!あっちの軍資金幾らあると思ってるの!?前回の勝ち分が丸々残ってるのよ!)

流石咲さん。ちゃんと貯金してるなんて偉い「もう使っちゃいましたけど?」ええー!?

まあ、それは兎も角。なにやら誤解が有ったようなので、咲は慌てて首を振った。

「ち、違いますよ!今日は私は見学ですから!」

「へ?見学?ではそちらの方が打つのですか?」

驚きながら咲の隣に立つ黒服を見る。

「……打てますか?」

紳士的に声をかける人鬼。彼を見て一条は、「流石に咲さん以上にヤバい相手ではないだろう」と独り合点し、

 

 

 

「ええ!当店自慢の一玉五千円のパチンコで存分に遊んで下さい!」

 

 

 

何を血迷ったのか、喜び勇んで死神とホップステップしながら地獄の釜に飛び込んで行きましたとさ。直後、

 

 

「御無礼一発です。終了ですね?」

 

 

友情(魔王&人鬼)努力(獲物の捜索)勝利……なんか違う。

 

 

さて、ここからが重要なのだが、二人は計画が出だしから失敗したのでいたく機嫌が悪い。こんなときの二人と誰が好き好んで卓を囲みたいと思うだろうか……いるわけない。

だが、話の展開上一人、どうしても二人と麻雀を打たなくてはならない人物がいる。

「……まったく。その人も大変ね。同情しちゃうわ」

その人物とは、

「さてと、明日で東京滞在も終わりか。そろそろ荷物纏めて帰る準備しないと」

……いま、卓を囲んでいる憧ちゃんのことである。

 

 

人鬼 53200

咲 48500

憧 15100

被害者 3200

 

 

 

(勘弁してよ……)

そう、これが新子憧の卒業試験であった……八つ当たりとか言ってはいけない。




ちょっと短いですが投下しました。次回で東京編は終了予定です。


予定です。大切なことなので二度言いました。

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