FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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 一先ずGW中になんとか間に合って一安心。ふぅーー。
 現在、大魔闘演武編を書かせてもらってますが………正直、三首の竜のポイントが凄いことになってます。計算メンドイ。
 最後に何かしらの調整が必ず必要となってくるかも。

 そんなことより!!!!!!

 ────感想ばんばんカモン!!



第ad話 水面下での疑惑

 観客席。

 とある一角ではローブに身を包んだ一人の怪しい人物が試合を観ていた。

 ミストガンこと、ジェラールである。

 訳あってミストガンに扮装している最中のジェラールは三日目の最終試合の途中に感知した謎の魔力の正体を追っていた。

 初め、シェリアという少女を疑っていたが彼女とサンディー、ウェンディの交える拳に自分ごときが介入出来ない。そう判断したジェラールはただ固唾を飲んで見守る。

 

「………」

 

 そして、現在試合が終了した。

 ゼレフに似た謎の魔力はまだ途切れることなく感じていた。この魔力はシェリアではなかったのだ。

 漠然としたモヤモヤした、なんとも表現しにくいこの感触の中でジェラールは魔力の出所が徐々に自分から遠ざかっていくのを察する。この様子だと出口に向かっているようだ。

 正体を確かめるために、ジェラールは人混みにのまれながも謎の魔力の後を追った。

 その時、ジェラールは気付いた。自分も追跡されていることに。軽く舌打ちをしてしまう。

 評議院のドランバルト。

 偶然彼とは肩がぶつかったのだが、そのせいで運悪く彼に目をつけられていたようだ。

 

 ───流星(ミーティア)、発動。

 

 ジェラールは瞬時にその場から離脱。

 それと同時にドランバルトは目標が消失したことに目を見開いた。

 

「気付かれたか!?しかし………」

 

 ドランバルトの表情が変わる。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 会場、大広間。

 ジェラールは追跡者を撒いたことを確認した後に、自分も追跡を行っていた。魔力の現在位置を見失わないように慎重に伺っていく。

 ───見つけた。

 目的の人物と思われる人影を発見した。ジェラールは即座に後を追おうと動こうとしたが、

 

「っ!!」

「逃がさねえぞ」

 

 ドランバルトが出現した。瞬間移動によるものだ。

 歩みを止めてしまった。評議員に止められてしまったのだ。さらに魔力の根源も徐々に遠のいていく。

 すぐそこに正体がいるのに。

 折角のチャンスが離れていく。と思えば、今度はピンチが迫ってきていた。

 

「お前は何者だ」

 

 ドランバルトの冷たい問い。

 彼を気絶さして、強行突破という手もある。だが、今のジェラールは妖精の尻尾の魔導士ということになっており下手に人が多いこの場所で問題は起こせない。

 この状況をどうやって打破するかを考えるジェラール。

 さらに、不運は続く。

 

「ドランバルト、何の騒ぎだ」

 

 偶然、部下を引き連れたラハールが騒ぎを見つけて、来てしまったのだ。状況は最悪な方へと展開していく。

 ドランバルトは質問を続ける。

 

「お前がミストガンじゃない事はわかっている。誰なんだ?」

「すまない、急いでいるんだ」

「待て」

 

 彼の問いに答えず、その脇を抜けようとするジェラール。だが当然、彼に止められる。

 ドランバルトはここまで目の前の人物を偽者と疑う理由を口にした。

 

「ミストガンはこの世界(アースランド)にはいない」

「私はミストガンだ」

 

 きっぱりとそう返したジェラール。

 すると次の瞬間、ドランバルトの手がジェラールの顔を覆っている覆面へと迫る。

 

「何を!!」

「お前は誰だ!!」

 

 ───反応が遅れた。

 当然の彼の行為にジェラールは避けることが出来ず、目を見開いた。ドランバルトの手がジェラールの仮面へと触れる。

 

「しまっ……」

 

 ジェラールの声が仮面越しではなく、彼の口から直接漏れた。

 ドランバルトが剥がした仮面は床へと力なく落ちる。

 

「「ジェラール!!?」」

 

 ドランバルトとラハールの大声で、周りの人間が何事かと様子を探りはじめた。

 まさに絶体絶命と言えるこの状況にジェラールは内心、慌てていた。今はどうにか誤魔化してここを離れないといけない。

 が、公衆の面前で迂闊に動けない。そこに助け船を出したのは意外な人物だ。

 

「おーーこんな所におったのかね、ミストガン君」

 

 とことこと杖をつきながら、彼らの間へと歩いてきたのは小さな老人。

 

「ヤジマさん!!」

「!!」

 

 思わぬ人物の登場に、ジェラールだけでなくラハールも驚いてしまう。

 ヤジマは真剣な表情になったかと思うと声質を暗くして、尋ねた。

 

「ラハール君、ミストガン君が顔を隠スとる理由がわかったじゃろ」

「え?」

「あのズラールと同ズ顔を思って生まれてスまった不運。察スてやってくれんかの」

「別人………だと!?」

 

 あくまで彼と本物のジェラールは別人だと断言するヤジマに、ラハールは何度もジェラールを見比べる。

 

「エドラスという世界(スかい)は知スってるかね?」

「ええ………部下より聞いています」

「その世界(スかい)とこの世界(スかい)は繋がっておる。同ズ顔をスた人間が存在する」

「では、あなたはエドラスの人間だと?」

「……ああ」

 

 ここは乗っておくのが、最善策。

 そう判断したジェラールは素直にラハールの質問に頷いた。

 

 

 

 

 ◇

 

 ───彼らの騒ぎの近くをある一行が通ろうとしていた。

 他でもない“人魚の踵”の魔導士達だ。

 先頭をきって、歩いていたカグラ。出口を目指して後ろで楽しそうに談笑している仲間達に苦笑しながらも進んでいた。

 ふと、目を向けるとそこには───

 

「ジェラール!!」

 

 カグラの心臓が一気に鼓動する。

 駄目だ。ダメだ。ダメダ。

 あまりの唐突な出会いに、カグラは吐き気に襲われる。

 ここで仲間達が彼女の異変に気付いた。

 

「うっ………うぶっ!!」

「カグラ!?」

「ちょっと!!どうしたんだい!?」

「カグラちゃん!?」

「大丈夫!?」

 

 カグラは突然口元を手で押さえ、その場で膝をついた。

 仲間達は彼女の身に何事かと思いながら彼女へと駆け寄る。

 

「ううぅ………ううぅぅぅ………」

 

 不気味なまでに彼女は呟く。

 不倶戴天の刀が彼女の手に握られようとしていた。抜かれようとしていた。

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

「ちょっと誰か!!早く救護班を呼んでっ!!」

「カグラちゃんが!!」

 

 ミリアーナが周囲の野次馬にすぐに救護班を呼ぶように叫ぶ。

 野次馬も不思議そうにこちらを見てくる。

 ───その時だった。

 

「ジェラ………!!」

 

 ミリアーナが見つけてしまった。

 カグラの様子がおかしくなった原因。そして、自身の最も憎む敵。

 一瞬で表情を一変させたミリアーナ。下手すれば今にでも牙を剥いて襲いかかろうとしている。

 そこにミリアーナの腕に誰かの手が掴む。ぎゅっ、と握り締められた。

 そのお陰ではっとなり、正気を取り戻したミリアーナ。腕を掴んでいる本人を見た。

 

「もうよい、落ち着いた」

「でも………!!あそこに………!!」

「わかっている。もう大丈夫だ、すまない」

 

 何事もなかった。

 まるでそう感じさせるほどにあっさりと立ち上がったカグラ。唯一違うのは、彼女の瞳が深い闇へと沈んでいたこと。

 そして、ある事実を口にする。

 

「奴等がかくまっていたのか」

「ジェラールが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に? どうして? エルちゃん……」

 

 誰か、答えて。

 

 

 

 

 ◇

 

「理解していただいて感謝する」

「いえ………私の方こそ、事情を知らず失礼しました」

 

 数分後、ラハールに説明したことで納得してもらえた様子になった。

 ヤジマの助言もあったお陰で、目の前の人物はエドラスのジェラールだと認識してもらえたようだ。

 

「ジェラールは私にとっても邪悪な存在。見つけたら必ず報告する。では」

 

 ジェラールは再び覆面で顔を隠してミストガンに扮した。そそくさと、その場から歩き出す。

 ヤジマとのすれ違い様に───

 

『恩に着ます、ヤジマさん』

『1度だけじゃ。マー坊に迷惑がかかる前に出ていけ』

『はい………大会が終わる頃には必ず』

 

 念話で数言交わすと、姿を消した。

 ラハールは彼を見送ったあと、ドランバルトにだけ聞こえるように小さく耳打ちする。

 

「あれは本物だ」

「───っ!!」

「ここはヤジマさんの顔を立てておくが───逃がしはしない」

 

 そんなラハールは本物と断定したジェラールが去った先を鋭い目つきで睨み付けていた。

 ───必ず捕まえて見せる。

 

 

 

 

 ◇

 

 闘技場、北通路。

 

「お、戻ってきた」

 

 三首の竜メンバーが待機するなか、彼らの前に姿を見せたのは先程の試合で激闘を繰り広げた張本人。

 

「随分とへろへろだな」

「サンディーちゃん、お疲れ~。良い試合だったよ」

「えへへ………ありがと。結果は引き分けだったけどね」

「あなたにとっては十分なんじゃない」

 

 サンディーはぎこちない笑顔を浮かべる。試合の疲労が相当後になってきているようだ。

 

「ジュン、見てくれた?」

「おう。滅竜奥義はおしかったな」

「だよね。あれはもう少し練習しておかないと」

 

 ジュンに言われ、嬉しそうなサンディー。

 サンディーは一目見渡してあることに気付いた。

 

「ソウがいないよ?」

「あ、ソウならさっきレモンに連れていかれたよ」

「なら………きっとウェンディの元に………」

 

 次の瞬間に彼女の体がぐらり、と揺れる。

 足元がふらついて思考の回らないサンディーは倒れそうになった。

 

「おっと」

 

 ジュンが即座に彼女の体を抱えた。

 彼の腕の中で力なくサンディーは笑う。

 

「えへへ………思ったよりも魔力を使ったみたい。体に力が入らないや」

「ベールなんて使うからだろが」

「仕方ないよ~二人とも予想以上に強かったんだから」

 

 ジュンはそのままサンディーを抱えたまま、その場を立ち上がる。今の彼らの状態は女の子のサンディーにとって一大事なもの。

 所謂、お姫様抱っこと言う。

 サンディーは顔を真っ赤にして慌て出す。

 

「はわわ!!ジュン!!」

「大人しくしとけって、オレが宿まで運んでやるから」

「………ありがと」

 

 ジュンの有無も言わせない物言いにサンディーは恥ずかしそうに顔を俯かせた。が、それ以上の抵抗をしないようなので、彼に任せることにしたようだ。

 ジュンはアールとルーズに向けて一言告げる。

 

「んじゃ、先に戻っとくな」

「えぇ」

「うん。またね」

 

 ジュンは二人に見送られて、宿へと行ってしまった。

 ルーズは小さく呟く。

 

「羨ましいわね………」

「ルーズ、何か言った?」

「何も言ってないわよ」

 

 アールはちょこんと首を傾げたが、すぐにジュンの去っていた方向を見る。

 ふと彼の横顔を見たルーズ。

 相変わらずの能天気な表情。何を考えているのか分からない。

 よくよく考えてみれば、それは彼も同じなのかもしれない。やはり、他人の気持ちを理解出来るのは便利なのだろうかと考えてしまう。

 

「そんなもの………あったとしても私には不要ね」

 

 ルーズは思う。

 気持ちとは口に出して初めて気持ちになりうる存在なんだと。直接相手に伝えないと意味がない不確かな存在。

 ───特に好きな人にはなおさら。

 

「私の場合はもうちょっと後かしらね」

 

 まだ時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 闘技場、一般通路。

 

「こっち!!」

「はいはい………」

 

 (エーラ)を発動しているレモンに引っ張られ、ソウは歩いていた。どこに連れていこうとしてのかまったく見当がつかないままなのだが、レモンにされるがままになっている。

 しばらくして、レモンの動きが止まる。

 

「とうちゃーく」

「んで、何をするつもりだ?」

 

 レモンは答えない。

 ソウが眉を潜めていると、背後から少女の声がかかる。

 

「お兄ちゃん?」

 

 振り返ると、目の前にウェンディがいた。

 どうしてここにいるの?と不思議そうに彼を見つめている。

 

「後はソウに任せたよ」

 

 背中からのレモンの声。

 ソウはその時、全てを悟った。

 妖精の尻尾にはレモンから事情を話してあり、ウェンディの迎えに来ることはない。代わりにソウを迎えに寄越そうとレモンが提案したのだ。

 あっさりと承諾した妖精の尻尾メンバー達はあっさりと宿へと引き上げていってしまった。今頃、既にどんちゃん騒ぎの準備でも始めているだろう。

 彼に対する信頼が高いことが分かる。

 

「座るか」

「うん」

 

 立ったままは疲れるので、近くの壁にもたれる形で座る。ウェンディも彼の隣に座る。

 然り気無くレモンがいつもの定位置、彼の頭に乗った。

 

「試合惜しかったな」

「うん………サンディーもシェリアも強かった。私じゃ、とても………」

「ウェンディも強くなったじゃないか」

「本当?」

「ああ。滅竜奥義を使えるなんてのは流石に驚いたぞ」

「えへへ………お兄ちゃんに内緒で特訓した甲斐があったね」

 

 自然と笑顔が溢れるウェンディ。

 どこか彼女の仕草に力なさが感じられるが、試合後なので仕方のないことだ。

 ソウは無意識に近い形でウェンディの頭に手を伸ばしていた。

 見ていなかったウェンディは彼の指先が触れると同時にびくっと肩を震わす。

 

「えっ!?」

「あっ、悪いな」

「ううん。そんなことないよ?びっくりしちゃっただけだから。お願い、続けて」

「分かった」

 

 ソウは優しく彼女の頭を撫でる。

 懐かしい気持ちに包まれた。こうして、彼女の頭を撫でるのはいつぶりだろうか。

 

「お兄ちゃんにこうして撫でてもらうのは久しぶりの気がする………」

「そうか?」

「うん」

 

 気持ちが良いのか、ウェンディは目をつぶってしまった。一時の至福の感覚を堪能する。

 それっきり二人の間に無言が続く。

 嫌という気持ちではなかった。むしろ、ウェンディにとっては永遠に続いてほしい時間だった。

 

「………zzz」

 

 数分後。

 ふと、ソウの肩に重みがかかった。

 ふと隣を見ると、自分に体重を預けてすやすやと気持ち良さそうに寝ているウェンディの姿が視界に映る。

 試合での疲労がだいぶ溜まっていたようだ。

 

「寝たか………」

「凄い試合だったからね。無理もないよ」

「ちょうど良い。レモン、わざわざ俺をウェンディの元まで連れてきて、どういうつもりなんだ?」

「さあ?」

 

 レモンのわざとらしい返事。

 頭に乗っているので、表情が見えないのが悔やめる。下手に動けばウェンディを起こしかねないのだ。

 

「それでウェンディはどうするの?」

「勿論、宿まで送るつもりだ」

 

 ゆっくりと彼女を壁へともたれさす。

 彼女の無警戒な寝顔に若干意識しつつも、ソウはウェンディを背負うとその場を後にする。

 彼に背負われているウェンディの表情はとても嬉しそうにしていた。

 

「お兄ちゃんの背中………暖かい………」

 

 

 ───三日目最終結果───

 

 1位,“三首の竜”(45ポイント)

 2位,“剣咬の虎”(34ポイント)

 3位,“人魚の踵”(32ポイント)

 4位,“妖精の尻尾B”(30ポイント)

 5位,“蛇姫の鱗”(29ポイント)

 6位,“妖精の尻尾A”(27ポイント)

 7位,“青い天馬”(20ポイント)

 8位,“四つ首の猟犬”(14ポイント)

 

 “大鴉の尻尾”、ルール違反により失格。

 

 

 

 

 ◇

 

 王宮。とある部屋内。

 

「これで………よろしいのでしょうか………」

 

 不安そうな少女の声が部屋内にこだまする。彼女の他には誰もいない。

 

「えっと………確かアール様はこれに魔力を込めたら、よろしいと………」

 

 少女、ユキノは不安でいた。

 目の前の水晶のような物体。アールから授かったもので、その際にある程度説明は受けていた。

 これに魔力を込めると、彼と師匠に魔力が込められたという情報が伝わるらしい。彼の要望によれば、人気がないところで使ってほしい。そうしたら、すぐに魔法でそっちに行くからと彼から言われた。

 なので、先程から何度も試みているのだがユキノはこれに魔力を込められたのか実感がないので成功か失敗かすら分からない。

 数分思考して、結果的にアールが現れないということは失敗しているのだろうか、と考え付いたユキノは再びチャレンジしてみる。

 

「またやるの?」

「はい」

「もう十分なんだけど………」

「ですが、もしもの場合を考えて………」

 

 ユキノは視線を上げた。

 

「え?」

 

 今、誰かと会話した。

 魔力を込めることに集中していたユキノは後ろからの声に然り気無く答えてしまったが、本来この部屋には誰もいないはずなのだ。扉を開く音もしていない。

 なら、誰がユキノに声を────

 

「アール様!?いつからそこに!?」

 

 背後に、アールがいた。

 彼は少し困った顔を浮かべて、ユキノのことを見ている。

 

「ユキノちゃんが、水晶と睨めあいっこをしてる時かな?」

「それって………」

 

 つまり、数分間思考に浸っていた時のことだ。そうなると、彼は結構前からいることになる。

 

「どうして言ってくれなかったんですか!?」

「やけに頑張っていたからね」

「っ~~!!」

 

 恥ずかしい。

 ユキノは真っ赤に染まった両手を顔に当てて、隠した。アールはニコニコ笑っている。

 

「ソウを連れて来た方が良かった?」

「えっ………!?」

 

 何故、彼の名前が出るのか。

 アールは笑顔を浮かべているばかりで、内心何を企んでいるのかまったく読めない。

 ただユキノにはこれだけは言える。

 

「連れて来なくて良かったです!!」

「ふーん」

 

 面白げがないと言っているかのようにアールの表情が変わる。

 とにかく今の話題を逸らそうとユキノは頑張る。

 

「こ………これにどれくらいの魔力を込めたらよろしいのですか?」

「そうだね~………僕だったら、少量でも分かるよ」

「ですが先程………」

「あっ、それは謝るよ。ごめんね。遅れたのは僕がちょうど風呂に入っていた時にユキノちゃんから連絡が来たせいだったから着替えるのに時間かかっちゃってね」

「えっ………わざわざすみません」

「うん。そのまま来ちゃうのは流石に不味いからね。ルーズに怒られそうだし」

 

 よく見れば、彼の髪からはポカポカと蒸気が出ており、顔も少し火照っている。格好もラフな服装でどう見ても湯上がり直後だ。

 それが原因なのに、ユキノは失敗と思い込んで何度も魔力を彼の脳内に送りつけていたのだ。ちょっとした罪悪感が芽生える。

 

「お詫びにこれ、あげるよ」

「えっと………これは何でしょうか?」

「知らないの?」

 

 彼から渡されたのはビン。

 中には液体が入っているが、ユキノは知らない。

 

「これはなんと!!コーヒー牛乳!!」

「コーヒー牛乳………ですか………」

「風呂上がりに飲むと最高なんだよ!!」

「そうなんですか。では………頂きます………」

 

 ビンの蓋を開ける。思ったよりも力を込めないと開かなかった。

 少し中を覗いて匂いを嗅いでみた後、ユキノは恐る恐るコーヒー牛乳を口にしてみる。

 

「………美味しい」

「でしょ!!」

「はい。初めて飲みましたが、美味しいです!!」

 

 初体験の味に、ユキノは興奮する。

 と、ユキノは本来の目的を見失っていたことに気づいた。こんなことをしている場合ではない。

 でも、もう少しコーヒー牛乳を堪能したいのでユキノはビンを持ち上げて一気に飲み尽くす手段に出る。

 

「お!!良い飲みっぷりだよ!!」

「ぷはぁ!!アール様!!こんなことをしている場合では───」

「もう一本いる?」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 ユキノ、たまらずおかわり。

 

「では、なくて!!」

「なくて?」

「アール様にご報告をしないと」

「あ、そうだったね」

 

 ようやく本題に入る。

 

「で、どうだった?」

 

 大魔闘演武が佳境に近づくなか、着実に水面下で物事は動き出していた。

 やがて彼らは知ることになる。

 蠢く怪しい影と光を。

 

続く────────────────────────────





裏設定:ユキノの潜入捜査

 作者が現在一番困ってるのが、ユキノが現時点でどれほどのエクリプスについての情報を知っているかが分からないことである。多分、原作でも描写がないような気がする(うろ覚え)。
 知ってる人がいたら情報提供をお願いします!!


 アンケート募集中!!

 まだまだ続行してますよ!!
 あなたの一票がこの作品の運命を決めるかもしれない!!まだの人はお早めに!!

 ───以下略。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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