FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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三話にわたっての戦闘………疲れる(。>д<)

あと、師匠にあんな設定を加える予定はなかったのだが、急遽入れることになってしまった………。後悔はない。
因みに師匠とどこか似たようなキャラが他にいるなぁ………と思った人、間違いないです、その人を参考にしているので、似ているのです。口調と性格だけですけど。

───では、どうぞ!!


第u話 竜虎対決・終盤

 ソウの前に立ち塞がった星霊。

 正直───普通の蛇………とは表現しがたい。

 くねくねとした細い体は蛇特有だが、その蛇の鋭い眼光はソウの顔とほぼ同等。いや、それ以上かもしれない。ピスケスなど足元にも及ばないだろう。

 さらにそいつの出現と同時に不吉な雰囲気を漂わせている。空は真っ黒に覆われて、そいつの存在感をより一層強調させていた。

 ───これが、十三番目の鍵。

 ───蛇遣い座“オフィウクス”。

 

「不運とか、誰が決めつけたか分からないものに、勝手に絶望するのは呆れる。思いっきり笑える」

 

 ソウは上を見上げて呟く。

 その態度に動揺する様子はなく、冷静沈着になっていた。

 

「どういう───えっ!?」

 

 ユキノが聞き返そうとした、その瞬間だった。

 彼は一切の迷いなくオフィウクスの足元へと潜り込むと、右手をぎゅっと握りしめた。

 そして、渾身の一撃となる拳をオフィウクスの真下からぶち当てた。

 

『まっ!!まさか!!う、う、浮かび上がって!!』

 

 ドゴン、と衝撃が響き渡る。

 すると、ソウの拳を喰らったオフィウクスの巨体がゆっくりと浮かび上がっていく。

 刹那、また衝撃が響き渡る。

 その衝撃を合図にオフィウクスは完全に空中へと身を投げた。ユキノはあまりの事態に呆然としている。

 

「出てきてもらって悪いが即退場してもうぞ。代わりにとっておきを見せてやる」

 

 ソウは両手を丸めると、魔力を集中。

 一瞬で、波動球が形成された。

 その波動球を前へと押し出すと、解放。

 

「滅竜奥義『波動竜砲』」

 

 ソウの波動球は彼の手元から離れると、一瞬で姿を消す。と同時に消えた箇所から飛び出たのはとつてもないエネルギーを秘めたレーザー砲だった。

 あまりの威力に会場の空気が一気に重くなっかのような錯覚を覚える。

 一直線に進むレーザー砲はオフィウクスの巨体を躊躇いなく貫いた。

 

「ギャァァアア!!」

 

 オフィウクスは短い悲鳴を上げる。続けざまに白く光らせたかと思えば、姿を消した。

 規定以上の負傷により、星霊界へと強制送還されたのだ。

 空からはレーザー砲が貫いた一点のみを中心に日差しが入り込む。しばらくして、何もない光景に戻った。

 

「え………う………ウソ………?」

 

 自身の最強と誇る星霊が一撃で葬られた。ユキノはその現実を受け止めるのに、数秒の時間を要した。

 ソウは彼女の前に現れる。

 

「君は十分強い。だが、だからと言ってそう簡単に自分の命を差し出すことをするとは安い賭けに出たな」

「そ………そんな………」

 

 ソウはユキノに近づくと、

 

「え?」

 

 ユキノの頭に手を乗せた。そして、頭を撫でる。彼女の口からは予想外の行動に腑抜けた声が出てしまった。

 既にソウはある魔法を発動していた。

 ユキノは彼に頭を撫でられた直後、すぐに自分の体に起こった異変に気付いた。

 

「う………()()()()………」

 

 金縛りにあったようにユキノの体がびくとも動かなくなったのだ。筋肉が急激に硬直して、手足が止まる。

 

「君の脳に軽い振動を流さしてもらった。まぁ、数分したら回復するから心配することはない。この試合ももう終わりだ」

 

 彼が軽くユキノの肩をつつくと、無抵抗に彼女は仰向けに倒れた。

 ───『波動式八番』流震。

 急な震動を直接脳に刺激することで、ユキノの脳から筋肉に送られる信号に異常をきたす。時間が経てば、自然と回復するが一度喰らうと体が不自由となり、完全な隙が出来る。今回の場合、その魔法を味わうことは敗北と同義であった。

 倒れたユキノを見下し、彼は優しい笑みを浮かべると冗談っぽく口にした。

 

「今宵、竜は虎を喰らう………ってね」

 

 試合の終了を告げるゴングが鳴り響く。

 

『し、し、試合終了ーーーー!!!勝者は!!三首の竜!!ソウ・エンペルタントだぁぁーー!!』

 

 静まり返っていた会場が、どっと盛り上がりを見せた。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)………まさかの2日目0ポイントォォーーー!!』

 

 競技パートではスティングが棄権。

 バトルパートではユキノが敗退。

 

「わ、私が………敗北………剣咬の虎が………」

 

 あの天下の王者と称されるギルド“剣咬の虎”にとっては屈辱的な結果に終わってしまっていた。

 

「そういえば………」

 

 自分の待機席へと戻ろうとしたソウだったが、あることを思い出して歩みを止める。

 

「君の命は俺が預かってるって解釈で良いんだよね?」

「はい………仰せの通りに………」

 

 ソウは残酷な現実を突きだしていた。自身から持ち出した賭け。ユキノは何も返すことが出来ない。

 彼はその場を去り、彼女はその場に取り残される。

 ユキノの頬筋に水滴が通る。

 透き通った空と一緒にユキノはゆっくりと現実を見た。

 彼に負けたのだ。それも大差で。

 ユキノの体はまだしばらくは動きそうになかった。代わりに今の彼女が出来ることは、後悔と溢れ続ける涙に歯を食い縛ることぐらいしかなかった。

 

 

 ───妖精の尻尾A、選手待機席───

 

 試合の顛末を見届けた。

 結果はソウの勝利となり、彼の実力の一部が試合に垣間見れた。

 ただ………ただ、ソウの強さを改めて思い直す機会となったが、新たな一面も発見出来た。

 それは彼が魅せた最後の大技。

 

「初めて………見た」

 

 ルーシィの声が震えている。彼女の中に、まだ余韻が残っているのだ。

 ナツもゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「俺、ソウの滅竜奥義は初めて見た」

「あぁ………凄かったな………」

 

 彼の滅竜奥義『波動竜砲』。

 生で見たのはここにいた全員が初だ。グレイの脳裏を過ったのは、彼の放ったその砲撃がユキノ最強の星霊、オフィウクスを容赦なく貫いたかと思えば一撃で星霊界へと送還した、あの光景だった。

 波動竜砲を放つ瞬間、彼の足元では地面にあちこちに彼の中心から亀裂が入り、会場の空気がガタンと重くなっていた。

 

「セイバーの女も強かったと思うが………」

「完全にソウの方が一枚上手だったと言うわけだな」

 

 ユキノも彼と善戦を繰り広げた。

 だが、ソウはそれを越えてくる。

 自分達はさらにその上を越えないといけないのだ。大魔闘演武で優勝するには彼を倒さないといけない。

 エルザは仲間にこう告げた。

 

「私たちはこれから数々の強敵を乗り越えないといけない。厳しい闘いになるだろう。だが、これだけは忘れてはいけない。妖精の尻尾には自分達を応援してくれて、また一緒に戦ってくれる仲間がいる。私達は一人ではないってことを忘れてはいけない。分かったな?」

 

 ───仲間。

 エルザの魂の篭った台詞に、聞いた妖精の尻尾の魔導士は力強く頷く。

 ───敗けない。絶対に敗けられない。

 全てを覆す戦いがここにあるのだ。

 

 

 ───通路───

 

「お疲れ!」

 

 試合を終えて、お疲れの様子で戻ってきたソウにサンディーが元気よく声をかけた。

 彼を迎えるためにサンディー達は通路へと移動していたのだ。

 

「ん。サンキュー」

「今日もポイントは順調だね」

「ああ。想像以上だ」

 

 一日目、二日目とそれなりに三首の竜はポイントを獲得している。このまま順調にいけば、優勝という可能性も浮かび上がってくるだろう。

 すると、ジュンはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「闘った感想はどうだ?」

「まぁ………強かった。ただ、彼女の場合はその強さが表面上に広がってばかりで中まで浸透していなかったような感じだったな………」

「どういうこと?」

「相当負けることに怖れていたようだ。だから、とにかく強くなることだけを求めたって感じだな」

「う~ん………」

 

 サンディーは何度も瞬きをして考えている。

 まだ、少女である彼女には難しい話だ。

 アールが剣咬の虎の内部事情にはある程度気になっていたようで、口にする。

 

「やっぱり、剣咬の虎って何かと厳しい風潮らしいから、強さを求めるのも無理はないと思うな」

「さらにこの7年の内で、だいぶ人気なギルドへと発展してきてるようだから、その成果はちゃんとあると」

 

 強者を欲し、弱者は切り捨てる。

 あまりソウにはその方針に好感が持てなかった。

 

「でも、相手はソウに負けちゃったよ~」

「貴方が気にすることはないわ。向こうは向こうで勝手にやっときなさいって話よ」

 

 ルーズにとっては無関心な話。確かに彼女が気にする要素などない。

 話も一段落落ち着いた所で、ジュンがこの場を仕切る。

 

「うし、早く戻ろうぜ」

 

 

 ───三首の竜、選手待機席───

 

 そして、本日最終試合。

 最後まで選ばれなかったのは“人魚の踵”。

 また、二日目バトルパートで敗北したチームの中から運良く試合を行える権利を獲得したのは“四つ首の犬”だ。

 戦場に降り立ったのは二人の魔導士。

 ───“人魚の踵”カグラ・イカヅチ。

 ───“四つ首の犬”イェーガー。

 未知数となる試合展開に誰もが期待を寄せていたのだが、結末は意外な方向で裏切る形となった。

 試合の開始と同時に終了の合図が出されたのだ。

 

『え?し………試合終了ーーー!!まさかの一発KOーーー!!』

 

 観客も唖然としている。

 

「瞬殺………まだ本領は発揮していないのに大したものだよ………」

「私、見過ごしちゃったのだけど何があったの?」

「試合が開始した瞬間、女の方が急接近して手に持っていた刀で峰打ちだな」

 

 カグラ。人魚の踵のリーダー。

 神速の如く動く彼女の姿は人間の目で追えるかどうか分からない。

 彼女の手にしている刀。ただその刀は一度も刀身を見せていない。イェーガーを刀を抜かずに一撃で葬ったその実力は計り知れない。

 自分とは当たりませんようにと両手を掲げて祈っているサンディー。遠慮願いたいとばかりに眉を潜めるルーズ。

 彼女達の反応も普通だ。あれほどの強敵とは好んで相対する余裕にはなれないだろう。

 

「すげぇ………」

 

 だが、例外がいた。ジュンだ。

 まさかの強敵の発覚に彼は興奮してきたようだ。

 

「いつか、勝負してみてぇなぁ」

 

 彼の夢は実現するのだろうか。

 

 ───二日目終了結果───

 

 1位,“大鴉の尻尾”(36ポイント)

 2位,“三首の竜”(32ポイント)

 3位,“剣咬の虎(20ポイント)

 4位,“青い天馬”(19ポイント)

 4位,“蛇姫の鱗”(19ポイント)

 4位,“人魚の踵”(19ポイント)

 7位,“四つ首の猟犬”(12ポイント)

 7位,“妖精の尻尾A”(12ポイント)

 7位,“妖精の尻尾B”(12ポイント)

 

 

 

 

 

 ◇

 

 “クロカッスガーデン“。

 剣咬の虎のメンバーが宿泊している施設である。

 その中の中央広場にはギルドのメンバーが勢揃い。全員が列に並んで、緊張した顔付きでこれからの出来事を待っていた。

 

「情けなくて涙も出ねえぞ、クズ共ォ!!」

 

 彼らの前でいかにも不満爆発しそうな一人の男が座っている。

 

「何故我々が魔導士ギルドの頂点にいるのか思い出せ。周りの虫ケラなど見るな、口を利くな、踏み潰してやれ。我々が見ているのはもっと大きなものだ。

 天を轟かせ、地を沸かし、海を黙らせる───それが剣咬の虎(セイバートゥースだ)

 

 “剣咬の虎”ギルドマスターの“ジエンマ”。

 漢服のような服を着た、筋骨隆々な強面の老人。仲間意識は皆無で捨て駒程度にしか思っておらず、強さのみを至上主義としている。

 

「スティング」

「はい」

 

 名指しされたスティングは一歩前へ出る。

 

「貴様にはもう一度だけチャンスをやる。二度とあんな無様なマネするな」

「ありがとうございます。必ずやご期待に応えてみせます」

 

 一礼。その後スティングは一歩下がる。

 

「ユキノ」

「はい」

 

 今度はユキノが一歩前に出る。

 

「貴様には弁解の余地はねえ。わかってんだろうな」

「はい………私は他のギルドの者に敗北し………剣咬の虎(セイバートゥース)の名を汚してしまいました」

「んな事じゃねえんだよっ!!貴様は“命”を賭けて敗北し、あろうことか敵に情けをかけられた!! この剣咬の虎(セイバートゥース)がだっ!!」

「はい………私はいかなる罰も甘んじて受ける所存です」

 

 試合でソウに敗北を喫したユキノに対し、ジエンマは激昂しながら怒鳴る。そこに彼女に対する同情などはない。あるのは、ただ剣咬の虎が敗北をしたという事実のみの追撃。

 そして、容赦なく彼女に対する罰を言い放った。

 

「全てを捨てろ」

「はい、仰せの通りに」

 

 ユキノは一瞬、迷いからなのか手が止まるがすぐに服へと手にかけた。その場で全てを脱いで、全裸となる。

 

「ユキノ………」

「黙ってください、フロッシュ」

 

 心配そうに見つめるフロッシュ。隣のレクターはフロッシュに注意した。

 床にユキノの服が寂しく置かれる。

 そして、全裸となったユキノ。彼女の左腹部には、剣咬の虎の紋章が刻まれていた。

 

「ギルドの紋章を───()()

 

 その言葉の意味はギルドからの追放。

 悔しながらも、ユキノにとってその現実は受け止めることしか出来なかった。

 頭を下げたユキノは剣咬の虎の最後となるであろう言葉を述べた。感謝の言葉。

 彼女の声は震えていた。

 

「短い間でしたが、お世話になりましたっ………」

「とっとと失せろ、ゴミめ」

 

 ジエンマはそう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 三首の竜、宿泊施設“宝石の肉(ジュエルミート)”。

 

「………と言うわけで、結果はあんまりじゃな」

「そうですか………」

 

 時刻は既に夜。日は沈み、暗闇が街を包んでいる。

 宿の玄関付近で、話しているのは二人。

 ソウと師匠。

 

「やはりしたっぱどもには何も知らさせておらんかった。上層の手掛かりは一切掴めずってところかのう」

 

 ソウが捕縛したあの誘拐犯。

 事情聴衆は師匠に一任していたので、ソウはその結果を聞いていたのだ。内容はソウの予想通りだった。

 分からないの一点張り。

 誘拐犯にどのようなことをしても口を割らなかったことから、本当に何も知らないと断定した。一体師匠がどのような拷問にかけたのかは分からないが、一生涯のトラウマとなるレベルらしい。

 誘拐犯を操った人物は不明。目的も不明。判明した事実は医務室にいた少女───断定とし難いが“ルーシィ“だろう───をとにかく連れてこいとのこと。もし、誰かに捕まることがあれば裏で手引きしたのは“大鴉の尻尾”と言えと、口裏を合わせていたことぐらいだ。

 完全に陰険な行為だ。

 だが、今犯人が誰なのか、影すら見えていない現状の中で推測して追い詰めるのは雲をつかむような話だ。

 ソウは話題を切り替えた。

 

「師匠の言っていたあれについては?」

「そっちも確証はまだ掴めずって所かのう。ちと、気になることはあったが」

「気になるところですか?」

 

 ソウは聞き返すが、師匠はそれには答えず───

 

「ソウや、妾に敬語は止めてくれんかのう。虫酸が走るわい」

「え?…………あぁ。分かった」

「よし、で話を戻して………妾の気になった所じゃったな。どうにもこの大魔闘演武なのじゃが………理由は分からんが、魔導士の魔力を集めているようじゃ」

「魔力を集めてなにかをしようってのか?」

「妾も同じことを考えた。じゃが、そうなるとこれを指揮したのはこの大魔闘演武を開催しておるここの主催者、つまりはここの王国しか当てはまらんのじゃよ」

「王国か………」

 

 可能性は捨てきれない。

 王国が意図的に行っているとなると、大掛かりな計画になっていることは間違いがないだろう。さらに公にしていないことから、極秘に遂行しているかもしれない。

 一端の魔導士が国の内部事情に干渉すべきでは無いかもしれないが、師匠の耳にした()()()が真実であれば、自分達にとってはなくてはならないチャンスとなるのだ。

 大魔闘演武にドラゴンが現れるという噂が本当であれば………。

 

「おっと!!そういえば、お主、おなごの命を頂いたらしいのう~」

 

 突如、師匠の口調が変わった。

 

「え?いきなり何の話だ?」

「よくよく見ると、なかなか熟しておったわい」

「もしかして………ユキノのことか………」

「そのユキノとやらは、お主の言うことなら何でも聞くということじゃのう。だとすれば、服越しでも分かる彼女の豊穣な乳房、一切の無駄のない美白な太股、美少女からの無愛想な表情というギャップに男の欲求は注がれるんじゃから、お主の脳裏では不埒な妄想で煮え繰り返っておるのじゃろ?」

「………こんな人だったかなぁ………」

 

 少なくともソウの認識では変態じみた発言をするような人ではなかった。

 すると、宿からアールが出てくる。

 

「師匠、またそんなこと言ってるとルーズに怒られるよ?」

「それは嫌じゃ!!」

 

 珍しく師匠がブンブンと首を激しく横に振る。

 ソウは目が点となっている。

 事情を飲み込めないソウを見て、アールが呆れ半分に説明をする。

 

「こう見えて師匠は時々、唐突にさっきのを連発するんだよ」

 

 唐突に言われるとなると、反応に困る。さらにそれが連発されたら反応するどころではない。

 

「あ、でも最近はルーズの説教で収まりつつあるんだけどね」

「アールや、妾が病気にかかっておるような言い方は止めんかい」

 

 師匠は不満そうに口を尖らせていた。

 だが、ルーズの説教されている件については否定はしていない。肉体的にはルーズは師匠に太刀打ち出来ないので、精神的に攻撃しているらしい。彼女の説教は想像するだけでも恐そうだ。

 

「え?そうじゃないの?」

「違うわ!!」

「えぇーー!!」

「今までに何回も言ったじゃろが………」

 

 本気でそう思っていた様子のアール。師匠の間髪なきツッコミにびっくりしていた。師匠の呟きから察するに、彼は師匠の変態癖は病気でないということを冗談のように解釈していたようだ。

 意外な事実が判明したところで、アールは急にソウへと話を振る。

 

「僕も気になっていたんだけど、彼女のことはどうするつもりなの?」

 

 まさかのびっくり発言。

 命を賭けとした試合の行方は誰だって気になるものらしい。特に仲間が実際にそれを体感しているのだから、アールがソウにその実感について尋ねるのも当たり前だ。

 

「どうするって………何もするつもりはないが………」

 

 ソウの答えに不満を抱いた師匠の視線がきつくなる。

 

「つまらんのー!!」

 

 すると、師匠は両手を前に出して指を曲げる。目を光らせると、揉み揉みと手を怪しく動かし始めた。

 

「もっと、こういうことを言わんと面白くないぞい!!」

「こういうことってどういうことかしら?」

 

 背後からの少女の声。

 師匠の額にどっと冷や汗が溢れでる。

 

「ル………ルーズや………」

「アールとソウが見当たらないから探しに来たと思えば、まさかまた貴方って人は………」

「いや………これには色々と訳があっての………」

「その言い訳は前にも聞いたわよ!!」

 

 ルーズのお陰でこれ以上の師匠の暴走はないようだ。アールも黙って二人のやり取りを見ているだけのようで、にこにこと微笑んでいる。

  一難を逃れたソウ。彼は体の向きを変えると、宿とは真逆の方へと歩いていく。

 

「ソウ、どっか行くの?」

 

 アールが彼の背中に問うと、彼はこう答える。

 

「ちょっと散歩にでも行ってくるわ」

 

 

続く────────────────────────────




裏設定:師匠の極秘捜査

合間をぬって、師匠は一人、独自に調査を進めている。内容は魔法を使って、水面下で行われようとしている何かを探しているところだ。が、まだ雲をつかむような話なので、今のところ結果は殆んど無いに等しい。
因みに誘拐犯の狙いがウェンディではなく、ルーシィだと後々判明したのはレモンがさりげなくシャルルへと尋ねていたからである。その時、シャルルはレモンにルーシィが標的だという確証はない、あくまで私の嫌な予感にしか過ぎないと話している。

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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