と言ってもフェアリーテイルにそもそもクリスマスがあるのか知らないので、代わりと言っては何ですが、今回の話はいつもより長めとなっています。
具体的には7000文字→10000文字程度になってますよ。
───試合、開始ぃ!
エルフマンの勝利に歓喜していたのは、ナツ達も同じだ。ちょうど、通路からでも戦場の様子は見える。
まさに今、妖精の尻尾の大反撃の幕が降りようとしていた。
「うおっ!!すげぇ歓声だなぁ!!」
「さすがです!!エルフマンさん、勝ったんですね!!」
ウェンディも先程目を覚ましており、すっかり元気になったようで仲間の勝利に純粋に喜んでいた。
同じく目を覚ましていたシャルルは不安そうに彼女に尋ねる。
「ウェンディ、もう大丈夫なの?」
「うん、もう平気!!グランディーネもありがと!!」
「だから、その名で呼ぶんじゃないよ」
グランディーネはそう答える。そして───あの話題について口に出す。
「それよりさっきの連中」
男達が言うには大鴉の尻尾に依頼された為にしたまでだと言っていた。その後はソウが引き連れて行ってしまったので、分からずじまいだ。
ウェンディは黒いローブの袖をぎゅっと握り締めた。ローブから漂うこの匂い。彼女はこの匂いの正体は知っていた。故にそれがより一層彼女を困惑していた。もしかして………誘拐犯から助けてくれたのは……。
──駄目。お兄ちゃんは今はいない………。
ウェンディは頭を横に振り、これ以上の詮索は止めた。ゆか喜びになるのだけは避けたかった。
そして今突き当たっている問題についてウェンディは思考を凝らす。と、彼女はあることに気付く。
「医務室に
「一人いたじゃないか。ナツを運んできた」
シャルルはハッとする。
「ルーシィ!!」
───闘技場、極秘通路───
「作戦は失敗です」
「バカモノ、そもそも対象を間違えるとは。外見の特徴は伝えなかったのか?」
「申し訳ありません」
高価な鎧に身を包んだ髭面の男性。彼は騎士団団長の“アルカディオス”。
そして彼の話し相手を務めているのは誘拐犯の男達を連行した兵士。少し前に着物の少女から男達を引き取ったのだが、兵士はあることに気付いていなかった。
「まあよい、計画をプランBに移行するだけの事。実行犯どもは?」
「我々が捕らえ、牢へ送りました」
「バレてはいまいな」
「は! 依頼主は
「
そう言うと、アルカディオスはその場を後にした。兵士も敬礼した後、本来の仕事をするために何処かへと走っていった。
誰もいないなか、突如空間が歪む。
「う~む」
中から難しい顔をした師匠が現れる。
「水面下ではあやつ達の企みは進んでおるようじゃのう………用心すべきか…………」
密かに何かが蠢いていた。
───三首の竜、選手待機席───
「ソウ、どこ行ってたんだ?」
「ちょっと野暮用でな」
「
「あぁ。ちゃんと見てたさ」
戻ってきたソウに対して、色々と声をかける仲間達。
彼の姿を見たアールはあることに気付く。
「ローブは脱いだの?」
「………あ!置いてきて………」
………それから、何処に置いた?
ソウは少し前の記憶を引っ張りだす。誘拐犯の男達を確保するまでは着ていた。その後は、尋問を始めた。その時は────多分、着ていなかった。
その前にウェンディにローブをかけたままにしたはずだ。つまり、今のソウのローブは───
───彼女が持っている。
ソウは大失態を犯してしまった。既に気付いた時には手遅れになっており、どうすることも出来ない。
別にソウとしてはここに居ることはバレても構わないのだ。ただ、彼女は律儀なので誰にも頼まずに自分自身でローブを本人の元へ返却しに来るだろう。なので、必然的にソウは彼女と会わないといけないことになる。だが今の立場と言い、ソウはどうしても気まずい態度をとってしまいそうで、憂鬱な気分だった。
「………どうすっかな~」
彼は頭を掻いて、虚ろな瞳で天を見上げた。
───妖精の尻尾、医務室───
ベッドに横たわっているのはウェンディやシャルルではなく、包帯でぐるぐる巻きにされて仲間からの称賛に照れくされているエルフマンだ。
特に驚いたのはエルザから男として認められていたことだ。その強靭な精神力は妖精の尻尾の中で一番かもしれない。彼女はエルフマンにそう告げた。
エルザに続いて、ナツ達も感動の声を上げていく。それは良い意味でまるで死者を惜しむかのような光景だった。
椅子に座り看護をしているリサーナは笑顔で言った。
「まぁ、昔から頑丈だけが取り柄だけみたいだからね」
妹目線からの兄の自慢。そんな兄は少し嬉しそうであるが、ナツのちょっとした一言で態度を変える。
「なんか………淋しい取り柄だな」
「オメーも似たようなもんだろ!!」
思わず突っ込んでしまった。ナツにだけは言われたくないからだ。
「でも、本当に凄かったですよ」
「情けねえが、オレがこのザマだ。後は任せたぞ、ウェンディ」
エルフマンの負傷により、この後の試合はリザーブ枠を使ってウェンディが出場することが決まっていた。
ウェンディは元気よく「はい!」と頷いた。
「さ…………次の試合がもう始まってる。さっさと行きな。敵の視察も勝利への鍵だよ」
「ばっちゃん、気をつけてな」
ポーリュシカの言葉に頷きながらも、先ほどの誘拐騒ぎの事もある為、ナツは彼女にそう忠告しながらメンバーたちと共に医務室を退室していった。
廊下では主に大鴉の尻尾についての話をナツ達はしていた。何処か疑問に思う点も浮上してきている。
オーブラという魔導士がいる。彼なら一瞬で魔力を空に出来るが為に捕獲には最適のはずなのだ。だが、実行したのはあの男達で、呆気ない幕切れとなっている。
結論からして方法よりも結果を拘ったというものに至った。シャルルは一人納得いかなさそうにしていた。
シャルルが危惧しているのはルーシィが狙われたという事実。どっちにしろ、ここで思考を凝らしても理由は分からないので、シャルルは考えるのを止めていた。
「あの………」
ウェンディは通路を一緒に歩くなか、唐突に声をだした。それに反応して返事を返したのはルーシィ。
「どうしたのよ?ウェンディ?」
「お兄ちゃんは来てるのでしょうか………いえ、今何処にいるんですか?」
「え………何で分かるの………!?」
ルーシィはたじろぐ。
ウェンディはまるでソウが既に会場の何処かにいるかのように尋ねた。来ていない可能性も有りながら彼女は来ていると断定していたのだ。
「これが………」
「そういえば、さっきから大切そうに持ってるよな」
グレイが黒いローブを大切そうに抱えていることに気付き、指摘する。
ルーシィはウェンディがその黒いローブを見せた意図を理解して、逆に困惑する。どうして彼女がそれを持っているのかと。
「え?それって…………」
「お兄ちゃんの匂いがするんです」
「ソウの匂いか………」
エルザは感心するかのように呟く。
確か彼女が持っているのはソウがずっと着ていたものと酷似しているが、それが本人の物とは分からない。が、ずっと着ていると自然とその人の匂いは付着している。大抵の人は匂いの違いには分からないのだが、ナツを筆頭に滅竜魔導士は鼻が人一倍効く。
故に彼女は好いた彼の匂いのついたローブに気付いたのだ。このローブは少し前に目覚めたときには既に自分の体に掛かってあって、誰が掛けてくれたのかは不明。ナツにも尋ねたのだが、ソウに口止めされていた為にナツははぐらかしていた。彼女の手にいれた唯一の持ち主の手掛かりはソウの匂いがするということだけだった。
「エルザ………」
「あぁ………バレるのも時間の問題だ」
ナツは不安そうにエルザを見た。グレイも緊張した顔つきで彼女を見つめていた。
「ウェンディ、今から話すことは嘘ではない。よく聞いてくれ」
「は、はい!」
エルザの真剣さからウェンディは思わず声が裏返ってしまう。
「確かにソウは来ている。だが───」
「「「「おおーーー!!!」」」」
エルザの言葉を遮った。それは人々の雄叫びだった。
廊下を進みながら会話をしていたので、いつの間にか選手待機席へと到着していたようだ。
観客がけたたましい歓声を上げる様子がウェンディの視界に入る。戦場を一望出来ると同時に他のギルドの待機席もここから見える。
ウェンディは迫力ある会場を精一杯見渡して───ふと、ある一点で目が止まった。
「え………」
懐かしい彼女の友達がとあるギルドの待機席にいたのだ。
蒼海の活発少女と、深紫の長髪少女。
サンディーとルーズ。
彼女達は同じギルドの魔導士と楽しそうに話しており、さらに驚くことにその話し相手もウェンディは知っていた。
アールとジュン。どちらもソウの昔ながらの友達である。
そして───待機席に設置されたベンチに座り、頭を抱えている少年は───
ウェンディの兄の“ソウ”。
ウェンディはどうして兄があそこにいるのかという事実を受け止められず、しばらくの間ずっと彼の方を見つめていた。
エルザも彼の方を見ながら説明を始めた。
「ソウは三首の竜と言うギルドの一員として、大魔闘演武に出場している。それに予選も2位で通過しており、妖精の尻尾にとっては敵となっている」
「それにソウの友達も出てるのよ」
ルーシィの補足も、ウェンディは黙って聞いていた。
すると、遠くの彼が顔を上げる。
ウェンディと目があった。
「お兄ちゃん………」
彼はウェンディと目があったのに、気付くと気まずそうに手をふってきた。
「おい、試合が始まるぞ」
グレイが皆に呼び掛ける。
───後で………聞かないと………。
ウェンディは心の中で誓っていた。
───三首の竜、選手待機席───
「あ、可愛い人だよ!」
「ミラか………まぁ、そんなに心配するまでもないだろ」
「そんなに強いのか?」
───第四試合。
“妖精の尻尾B”ミラジェーン・ストラウス対“青い天馬”ジェニー・リアライト。
その試合はまさに始まる直前だった。
ジュンはソウの呟きに聞き返した。彼が心配するまでのないと見込まれた人物が気になった。
「俺と同じS級魔導士だからな」
「ほぉ~、そうなのかぁ」
「私、ミラさん好きなんだよね~。前行った時に色々と教えて貰ってたりしてね~」
「………何を教えてもらったのよ」
「ふふ、乙女の秘密だよ♪」
サンディーのどや顔に対するルーズの視線は冷徹だった。
───妖精の尻尾、応援席───
「ただいま~」
「おう!お帰り」
リサーナは医務室からこちらへと戻ってきていた。試合を観戦するためだ。
ベンチに座っているカナが心配そうに尋ねる。
「エルフマンの容態は?」
「ボロボロだけど心配ないよ」
彼は安静しておくだけで、いずれは完治してするだろうと言うのがポーリョシカの見解だった。
レビィが戦場の方を眺めながら言う。
「元モデル同士の対決かぁ~」
「ジェニーって凄い人気があって、確か7年前の週ソラで“彼女にしたい魔導士”No.1だったよね」
「元々、先輩のミラ姉に憧れて目標にしてたって」
側で聞いていたロメオが話に入る。
「でも、ミラ姉は7年間眠ってたから、今はジェニーの方が年上ってことか」
“ジェニー・リアライト”。
青い天馬のリザーブ枠を使って、一夜と交代して出場している。
金髪の髪を靡かせて、堂々と立つその姿は美貌という言葉を彼女が独り占めにしているかのようだ。
「お、お前回復したのか?」
ちょうど、その時にシャルルも到着。リリーが尋ねる。
「ウェンディももう大丈夫よ。なんか出場者以外はこっちの席にいなきゃいけないんだって」
「うわーん! オイラ心配したよぉ~!」
「いいから。試合始まってるんでしょ?」
シャルルはハッピーを軽くあしらってから、闘技場の方へと視線を向ける。
不安ごとは山積みだったが、今はギルドの応援が先決。
心を切り替えたシャルルは、さっそく闘技場に立つミラジェーンへと声援を送ろうとする。
「ミラジェーン!! がんばりなさいよっ!!……って───何……!? コレ……」
そこには歪な戦況が露にしていた。
───妖精の尻尾A、選手待機席───
ウェンディは涙目で戦場を指差す。
「バトルパートってあんなことまで………するんですか………!?」
「これは特別ルールじゃないのかなぁ………というかそうであってほしい………」
ルーシィは神に祈る。
自分の出番ではこんな目に逢いませんようにと。
───三首の竜、選手待機席───
「こんな感じ?」
「こうかしら?」
お互いに魔法を使わず、堂々と魅力的なポーズをとりあっているミラとジェニー。
───しかも水着姿で。
どうも、元モデルだったせいなのか変則でグラビア対決に急遽変更していたのだ。
「「「「「おぉーーーっ!!」」」」」
無論、観客席の男性陣は歓喜。むさ苦しい雄叫びが会場に響き渡る。
「「「…………」」」
ただし三首の竜の男子陣は修羅場と化していた。原因はルーズのとつてもない気迫を含んだ瞳。
「なによあれ」
「二人とも美人だね~、良いなぁ~」
サンディーだけは例外で、感心するかのように試合をじっと見ていた。
「アール、早くどうにかしてくれぇ」
「流石の僕でも、難しいかも………」
ソウの隣では、隠れてジュンとアールがこそこそと話していた。ソウはなんとも言えない表情になっている。
「ルーズ、どうしたの?」
男3人はハッとした。サンディーが普段通りにルーズに接したからだ。彼女は戦場の方を向いたまま、答えた。
「私だったら棄権するわ」
「でも、もうルーズはバトルパートには出てるんだよ。心配することないじゃん!」
同じ女の子なのか、スルスルと会話が進む。よくサンディーはあんな怖そうなルーズに話しかけられる。もしかして、気付いていないのだろうか。
「………そうね」
彼女の雰囲気が少し和らいだような気がした。後ろから黙って様子を伺っていたアールとジュンは心の中で思っていた。
───君は勇者!そして、ありがとう!
ソウはため息をついた。
「何やってんだか………」
───戦場───
「さすがにやるわね、ミラ」
「ジェニーこそ。なんか久しぶりよ、こういうの」
「まさかグラビア対決なんて乗ってくれるとは思わなかったわ」
「うん………だって殴り合うのとかあんまり好きじゃないないし、こんな平和的に決着がつくならその方がいいじゃない」
ミラはそう言いながら、ニッコリと優しい笑顔を浮かべる。
戦いを好まない彼女らしい理由だった。
『元グラビアモデル同士!! そして共に変身系の魔法を使うからこそ実現した夢のバトル!! ジャッジは我々、実況席の3人が行います!!』
『責任重大だねぇ』
『どっちもCOOL&ビューティ!!』
『さあ、次のお題は──』
「お待ちっ!!」
『『『!!?』』』
突如として遮る声が入る。
「小娘ばかりに目立たせておく訳にはいかないからねえ!!」
「強さだけでなく美しさでも……」
「「私たち
「なんでアチキまで………」
闘技場に舞い降りたのは人魚の踵の魔導士。彼女達の魅力的な美貌により一層男達はテンションがヒートアップする。
───三首の竜、選手待機席───
チラッとサンディーが横目でルーズを見る。
ルーズはそっぽを向いた。
「イヤよ」
「何も言ってないよ!?」
───戦場───
『これは大変な事になりましたー!!
「お待ちなさいっ!!」
『『『!?』』』
そこへまた、新たな乱入者が出現する。
「あなたたちには“愛”が足りませんわ!!水着でポーズをとれば殿方が喜ぶと思ったら大間違い!!やはり愛…愛がなければっ!!」
「私も負けてられないもんね!!」
次に現れた乱入者は
『今度は
彼女たちの登場により、会場のボルテー
ジがさらに上昇した。
───妖精の尻尾、応援席───
まるで他人事のように観戦していたレビィやリサーナだったが、一人の少女によってピンチに追い込まれていた。
「水着持ってないよ!?」
初代妖精の尻尾マスターのメイビスだ。ついつい彼女はこの大魔闘演武が気になって来てしまっていたのだ。
メイビスが両手を広げた次の瞬間、空には大量の女性の水着が降ってきた。
「大丈夫!!こんな事もあろうかと、全員分の水着を用意してきちゃいましたーー!!」
………出場しないといけないのだろうか。
───三首の竜、選手待機席───
「ジィーーーーー」
「………絶対イヤよ」
二人の冷戦が続いていた。
───妖精の尻尾A、選手待機席───
メイビスがルーシィとウェンディ、エルザの前に姿を現す。
「あなたたちも見てるだけじゃダメですよ!!みんなで参加しましょーー!!」
「ふえっ!!?」
ウェンディとルーシィは仰天する。
「「なんで!!?」」
「応援席の者が出るというのに、我々が何もしない訳にもいくまい」
「「「ええっ!!?」」」
するとエルザはウェンディに耳打ちをした。
「ソウに接近出来るチャンスだ。この機会を逃すわけにはいかないぞ」
「───は、はい!」
───三首の竜、選手待機席───
寒気がソウの背筋を通る。
「な、なんだ!?」
原因は不明だ。
「ルーズ、行こ!!」
「イヤよ………水着なんて持って………」
ルーズの動きが固まる。何故なら彼女はサンディーの両手に持っている女性ものの水着を見つけてしまったのだ。
「ふふん!念のために、持ってきておいたんだよ!!」
「いや、さっき師匠に貰ってただろ」
「///っ!余計なこと言わないの!!」
ジュンの挟みに顔を真っ赤にしてサンディーは言った。
アールはルーズの肩をポンポンと叩いた。ルーズは彼の方へと振り向いた。
「ルーズ、楽しみにしてるね」
「~~~~~~~~~~っ/////」
彼の無邪気な笑顔にルーズは選択肢を失ってしまった。
彼女も大変そうだ。
───戦場───
「なんだかおかしな事になっちゃったわね~」
「ま…お遊びとしては悪くないんじゃないかしら?」
いつの間にか、殆どのギルドから女性たちが乱入してしまい戦場は魔導士だらけで埋め尽くされていた。
『大変な事態になってしまいました!!! しかしみんな大喜びなので、このまま試合を続行します!!』
『こんなに盛り上がっとるのに、止めたら暴動が起きるだろうからねぇ』
『グゥレイトCOOOL!!』
『しかし試合はあくまでもミラジェーン選手、ジェニー選手の間で行われるものとします』
それにピクリと反応したのは水着姿のルーズ。
「私達の出る意味ないじゃない!!」
「まあまあ」
同じく水着姿のサンディーが咎める。
悪乗りした会場は新たなお題を出した。
───スク水。
リサーナは苦笑する。
「ウェンディは違和感ないね」
「嬉しくないですっ!!」
───ビキニにニーソ。
「何か………水着より恥ずかしい気が………」
ルーシィはもじもじとする。
───眼鏡っ子。
普段からしている人は意味ない。
「あ、ルーズ似合ってるよ」
「あまり嬉しくないわね」
───猫耳。
「私がしても意味なくない?」
シャルルは猫耳を付けながら呟く。
───ボンデージ。
「これも1つの愛♡」
「ハマり過ぎだよ!!シェリー」
会場は盛り上がる一方だ。
その頃、サンディーとルーズは歩き回って、ある人を探していた。
「あ、ウェンディだ!!」
「あ、サンディーにルーズさん、お久しぶりです!!」
「ふふ、久しぶりね」
ウェンディだ。再会を果たした二人は嬉しそうにして、今にもその場で飛び跳ねそうにしている。
会話に花を咲かせようとしていたのだが、そこにアナウンスが割り込んできた。
『次のお題はウエディングドレス!!パートナーも用意して、花嫁衣裳に着替えてください!!』
「ルーズ、どうする?」
「どうするも何も、連れてくるしかないでしょ」
そう言うとルーズはそそくさとその場を去っていった。サンディーもジュンを呼ぼうとするが───
「待って、サンディー」
「どうしたの?」
すると、ウェンディは目線を落とす。そして覚悟したのか顔をあげて、はっきりと口にした。
「お兄ちゃんを連れてきて欲しいの」
───三首の竜、選手待機席───
先程のアナウンスが流れた瞬間、ソウは絶壁へと追い込まれていた。
「どうすんだ?」
「行くしかないだろ………」
「まぁ、頑張ってね」
ソウの肩にジュンの手がおかれた。
───戦場───
花嫁衣装のミラは花婿衣装のマカロフを相手に選んだ。まるで親子のように見える。
ジェニーが選んだのはヒビキであり、周りから見れば美男美女夫婦だ。
「はぁ………」
レビィは花婿衣装に着替えたガジルが興味なさげに地面に寝そべっている姿にため息をついていた。
「シャルルの相手はやっぱりオイラだよね」
「まあ、エクシード同士って事でね」
「じゃあ、私はリリーだね」
「ウ…ウム……」
シャルルはハッピー、レモンはリリーとエクシード同士で組んでいた。
ルーシィは目の前で繰り広げられているジュビア争奪戦を傍観していた。リオンが彼女を抱えたかと思うと、グレイが乱入して強奪。ジュビアは喜んでいた。
自分はどうなんだろうとルーシィは思っていると、いつの間にかロキが現れてしまっていた。
「ルーシィ、このまま結婚しよう」
ルーシィの頬は赤く染まっていた。
「ナツーーーーー!!!」
ナツの元に駆け付けてきたのは、リサーナだ。
「お!?似合ってんじゃん!!」
「そういうナツこそ」
ナツは一瞬でスーツ姿になった自分にたじろいでいた。と、そこにルーシィを抱えたロキが激突。
「うぅ~………」
「ルーシィ、何すんだよ!?」
昔話を切り出そうとしていたリサーナだったが、その後の二人の微笑ましいやり取りにただ笑みを浮かべていた。
「うん、可愛いよ、ルーズ」
「…………そう?」
「ねぇねぇ、ジュン!!私は?」
「まだいろんな意味で早いよな」
「もうっ!いけずっ!!」
言われずともルーズはアールを、サンディーはジュンと組んでいた。軽口を叩いているジュンは少し照れくさそうにしており、サンディーの花嫁衣装を直視するのを避けているように見える。
「………お兄ちゃん」
「………元気になったんだな」
「うん」
ソウはウェンディといた。
どこか彼は気まずそうにしており、対するウェンディは彼をじっと見つめている。
「はい、これ」
「あ、ありがと」
ウェンディは綺麗に折り畳まれたローブを彼に返した。
「お兄ちゃん、大魔闘演武が終わったら説明してもらうからね」
「あー………分かった」
逃げられないと悟った彼は素直に頷いた。
その時、ウエディングドレス対決終了を告げるアナウンスが流れる。つまり、男達は引き返すことになる。
「ウェンディ」
「何?」
「似合ってるぞ、ウエディングドレス」
「あ///う、うん///」
最後に告げられた彼の一言。
しばらくの間、彼女は自然と上機嫌になっており、それに気付いたルーシィが思わず心配するほどだった。
再び試合は水着対決へと戻った。
「そろそろアタシの出番のようだね!!」
『あ…あれは……!!』
そこへまたもや新たな乱入者が現れた。
「
ギルドマスターであるオババが直接登場してきたのだ。
「女の魅力って奴を教えてやるよーーー!!」
オババは闘技場に降り立つと、羽織っていたマントを脱ぎ捨てて、水着姿を露に───
「うっふぅ~~~ん♡」
………一気に興が冷めた。
見てはいけない世の恐ろしいものを見てしまった一同はそそくさと戦場から引き上げていった。
そして戦場に取り残されたのは本来の主役であるミラとジェニーの二人。
『予定を大幅にオーバーしてしまったので、次が最後の1回とします!!』
ジェニーの瞳が怪しく光る。
自信ありありな様子でジェニーはミラにある提案を申し込む。今までの試合の流れから自分達も賭けをしないかと。
内容は負けた方は週刊ソーサラーでヌード掲載という男にとっては電撃が落ちたかのようなものだった。
さらにミラはそれを二つ返事で了承してしまったのだ。会場は一気に盛り上がりを吹き返す。
ジェニーには勝算があった。あくまで審査によって勝敗を決めるこの試合。鍵となるのはあの審査員席にいる席にいる3人。運のよいことに彼らの好みを偶然聞いていたジェニーは勝利を確信していた。
3人とも若い子が好みなのだ。さらに記者のジェイソンは週刊ソーサラーにミラを載せようとしたいはずだ。つまり、彼らは歳を取っていないミラを選ぶ。
『最後のお題は戦闘形態です!!』
が、ジェニーの思惑とは別の方向へ話が進もうとしていた。
“
“魔人ミラジェーン・シュトル”と呼ばれる最強のサタンソウルを身に纏ったミラは目を丸くしているジェニーに一言。
「私は賭けを承諾した。今度はあなたが“力”を承諾してほしいかな」
「え………?」
次の瞬間、ジェニーに容赦ないミラの一撃が襲い、呆気ない幕切れとなった。
───ミラの勝利。
「ごめんね、生まれたままの姿のジェニー、楽しみにしてるわね」
「い~~~やぁ~~~!」
彼女の叫び声が空にこだました。
───三首の竜、選手待機席───
「こ、こわい………っ!」
「ミラは怒らせたら駄目なんだ」
「な………納得だぜぇ」
ミラの悪魔姿にサンディーはブルブルと震えており、ジュンもビクビクとなっていた。
ソウは思った。
───グラビア関係ないじゃん。
───妖精の尻尾A、選手待機席───
ミラ対ジェニーの試合も終わり、会場は次の対戦の組み合わせに期待を寄せていた。
そして遂に発表される。
「え!?嘘ぉ!?」
「ついに来たか………」
「これは見逃せねぇな」
「燃えてきた~ー!!」
「………お兄ちゃん」
───第5試合。
『本日の第5試合はなんと!!
“剣咬の虎”ユキノ・アグリア
vs
“三首の竜”ソウ・エンペルタントだぁぁぁぁぁ!!』
続く───────────────────────────
裏設定:二日目バトルパート
因みに気づいてはいると思うが………一応、今回最後まで呼ばれなかったのは“人魚の踵”。
そして、ついにようやくのソウの出陣でもある。
オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)
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あり
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なし
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ありよりのなし
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なしよりのあり
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どっちでも