因みにこの話では、ソウが密かに痛い目に遭っています。
───では、出発!!
第k話 花咲く都
「「「「「「「な………!」」」」」」」
その事実は大魔闘演武の出場メンバーが発表された時よりも衝撃的だった。
さすがのエルザもこれには驚かずにはいられなかった。
「じっちゃん!どういうことだよ!ソウが抜けるって!」
「それって破門か!」
「なんで、お兄ちゃんが!」
「落ち着くのじゃ。わしもしたくはなかったのじゃが………」
「なら、なんでだよじっちゃん!」
「待て、ナツ。今、マスターは一時と言った。つまり、これはソウが自分から言い出したことなのでは?」
「その通りだ、エルザ。これはソウの方から切り出してきた話じゃ」
意味が分からなかった。
つまり、ソウはフェアリーテイルを自分から抜け出したということになるのだ。
「そのソウから手紙を預かっておる」
マスターは二つある手紙を取り出して、一つを広げた。
そして、もう一つはウェンディの方へとミラに持っていってもらった。
「さてと………なんて書かれておるかのう」
マスターは手紙を読み始めた。
内容はこうだった。
『今、この手紙が読まれているということは俺がフェアリーテイルを抜けたってことをマスターから知らされたことを知った後になるのかな。まあ、そんなことは良いとして本題に入ろうか』
「そんなことって………」
「ふふ……ソウらしいわね」
ギルドを抜けたことをたったの一言で切り捨てたことにルーシィは呆れてミラは納得していた。
話はまだ続く。
『今、お前達は俺がなんでこんなことをしているんだろうかって思っているだろうな。特にナツとかはマスターに詰め寄ってるんじゃないのか?』
「合ってる………」
「そんなに驚くところじゃないでしょ」
ハッピーは驚いていた。でも、ナツの性格からして次の行動を読むのはシャルルでもやろうと思えば出来ることだった。
『普段ならこうして書くこともないんだけど、今回はあれだ。心配性の妹のこともあるから書いたんだけどやっぱりこういうのは馴れないな』
「私、心配性じゃないです!」
ウェンディが顔を赤らめながら言った。
『まず、いつものことだが俺自身の目的に沿って行動しているんだけど、今回はどうしてもギルドの魔導士だと都合が悪くなるからマスターには無理を言って聞いたもらったんだ』
「先に言えよ!」
「もう私は驚かないわよ」
グレイは先に言わないことに突っ込み、ルーシィは謎の決意を示していた。
『その目的が何なのか知りたいようだけど、こちらも素直に教えるわけにはいかない。なので、俺はある提案をすることにした』
「提案?」
「なんでもかかってこいやぁ!」
「なんで喧嘩腰なんですか………?」
『それは俺に何でも良いから勝つことが出来たら教えてあげるという提案だ。勝負の内容は何でも良い。一回でも良いからお前らが俺に勝つことが出来たら教えてやってもいいぞ』
「一回でも勝てばいいの………!」
「でも………あのソウだよ………何の勝負をしたら勝てる見込みがあるのか分からないよ………」
「それにだ、今ソウが何処にいるのかも分からん。勝負の仕様がない」
ルーシィは少し希望が湧いてくるがハッピーの現実味のある指摘に何も言えなかった。
ソウが負けている所は見たことがない。
それにエルザのいう通りだった。
本人が居なければ、勝負することすら出来ないのだ。
だが、それは手紙の続きによってひっくり返されることになる。
『お前らと対戦することになる日はすぐ近くになるだろうから心配する必要はないと思うぞ。俺の分まで大魔闘演武のことは頑張ってくれよ』
最後にそう締め括られて手紙の内容は全て読み終えた。
残っているのはウェンディの手にある手紙だった。
ルーシィが横から覗きこむ。
「ウェンディ、それ読むの?」
「お兄ちゃんからの手紙ですので、読んでみます」
ウェンディはゆっくりと手紙から紙を取り出して広げる。
内容はウェンディに向けた謝罪文だった。
『先に一言だけ、ごめん。どうしてもウェンディを連れていくわけにはいかないんだ。帰った時には好きにしてくれて構わないから、兄のわがままを聞いて欲しい。俺も大魔闘演武の方は見に行くと思うからウェンディがそこに出ることになったら、俺も応援に行く。だからフェアリーテイルの皆と頑張ってな』
短い文章だったが、それだけでもソウの言いたいことはある程度伝わってきた。
「ソウにウェンディは強くなったって見せつけてやる機会じゃない、ウェンディ!」
ルーシィはそう言った。
大魔闘演武で自分の成長した姿を見てもらえれば兄に見直して貰えるかもしれない。一緒に仕事に連れていってもらえるかもしれない。
これはある意味、チャンスだった。
「はい!私が強くなったって証明してみせます!」
ウェンディは決意した。
各々が様々な思考に巡らせている中、エルザは難しい顔をしていた。心の中で先程の手紙のことを考えていたのだ。
近い日の内にと書いてあったが、何故ソウにはそれが分かったのだろうかという密かな疑問だった。ソウだからと言えば、そうなのだが今回は妙に引っ掛かる。
だが、エルザには幾ら考えても思い付かなかった。
「敵わないな………」
エルザは誰にも聞こえない声で呟いた。
◇
その頃、ジュン達は草原でのんびりしていた。
「まだ~?」
先程からすることがないサンディーは色々と暇をもて余していたみたいだが、それも底がついたみたいだった。
今は岩に座り、足をぶらぶらとしている。
「もう少しで来るんじゃないかな?」
答えたのはアール。サンディーの隣に座り、両手を岩に支えて空を眺めている。
「なあ、ソウも強くなってると思うか?」
ジュンはアールに問いかけた。
アールは空を見上げたまま答えた。
「強くなってると思うよ。僕達と同じくらいにね」
「私もようやく滅竜奥義を修得出来たし、ルーズも覚えたもんね」
岩にもたれ掛かっているルーズは閉じていた両目の内、片目を開けてサンディーを見た。
そして、また目を閉じた。
「そうね………」
「それに俺だって、新たな魔法覚えたんだぜ」
だいぶ、時間がかかってしまったがようやく自在に扱うレベルまで達することが出来た魔法。
使うのはまだ、先だが強力な魔法になることは間違いなかった。
「ソウが来たわよ」
ルーズはそう言うと、ある方向を指差した。斜め上。空。
皆がそちらに視線を向けると一人の青年とその上に猫がいた。
ソウとレモンだ。
近くに着陸すると、二人はこちらへと歩み寄ってくる。
「待たせたか?」
「いや、全然」
アールは笑顔で答えたが………サンディーの不機嫌さから見るに相当、待っていたのだろうと思われる。
「それじゃ、行くぞ」
「ちょっと待って。ソウはまだ紋章押してないよ」
「そうだったな」
いきなり行動に移るジュンを止めたサンディー。
「紋章まで作ったのか?」
「なんでも、ギルドを作るのにいるらしくてね」
「へえー、すごいね」
レモンが言い終わると同時に師匠が唐突に出現した。相変わらず気配をまったく感じない。
「ソウ、これが紋章じゃ」
師匠はスタンプをどこからか取り出してソウの右手に押した。
魔法によって別空間から引き寄せたのだろう。
次にレモンの背中に押した。
トライデントドラゴンのギルドの紋章はシンプルにも三首の竜が描かれていたものだった。
このほうが分かりやすくて良いだろう。
「気を取り直していくぞー!」
ジュンのその一言により、トライのメンバーは動き出した。
目指すは花咲く都“クロカッス”だ。
◇
都“クロカッス”。
「「うわぁーー!」」
目的地に着くなり、レモンとサンディーは感嘆の声を上げた。
見たことのない大きな都市部は大魔闘演武が開始間近なこともあり、賑わっていた。
「ねぇねぇ、ジュン。あそこ行こー!」
「おいおい、ちょっと待てよ」
すっかり興奮状態に陥っているサンディーをジュンは必死に押さえていた。
「こんなに大きな所は僕も初めてだよ」
「俺も想像以上だ」
辺りを見回しているソウとアール。
ルーズは大人しく歩いているだけだが、何かが気になるのか先程から何度も視線をキョロキョロさしている。
「どうする、ソウ?ルーズも限界みたいだし」
「な!………何が限界なのよ!」
思わぬことを指摘されて顔を真っ赤にしながら否定するルーズ。
けれど、街中を回ってみたいとにぎやかな音が聞こえるたびに体の方が反応している。
「とりあえず登録してからだな」
「その必要はもう不要じゃ」
また、いきなり現れた師匠。
来る途中にいきなり消えたと思ったら今度は現れた。
「登録済ませておいたからのう、ほいこれ」
そう言い師匠の手から渡されたのは辞書並みの分厚さを誇る巨大な本だった。
試しに幾らか捲ってみるとどうやら、大魔闘演武の説明書らしい。が、分厚すぎると思う。
「これ、読むの………」
サンディーが嫌そうな顔をする。誰だってこんなものを読む気にはなれない。
「仕方ない、俺が読むよ」
渋々、リーダーでもあるソウが引き受けることになった。
ソウは早速ページを開き、大事そうなところだけを探してみる。
「えーーと……ギルドマスターが出れないのは知っている………種目は毎年不明で、一貫性もなさそうだ。あ、これはいる」
そんなことよりもサンディーは先程から花屋に目をつけていた。
ルーズもそわそわしている。
「12時まで───夜のことだろか、取り合えず12時までにそれぞれ指定された宿にいることだってよ」
「なあ、ソウ。俺行ってきていいか?サンディーがうるさいし」
「あぁ。12時までには戻ってこいよ」
ソウの忠告に「分かった」と言うとジュンはサンディーに引っ張られながらもどこかに走っていった。
仲のいいものだ。
「宿は確か、
「アールも行ってこいよ」
「ありがとう、そうしてもらうよ。ルーズ行くよ」
「私は別に行きたくなんかないわよ」
「じゃあ、僕に付き合うってことで」
「………仕方ないわね」
素直になれない子を見るのは大変そうだとソウは思った。
というより完全にルーズはアールに操られているのではないかと思ったほどあっさり二人もクロカッスを観光していった。
「妾もちょっくら用事を済ましてくるわい」
師匠は一瞬で消えてしまった。取り残されたのはソウだけ。
「一人だね」
「さびしいな………」
そういえば、頭上にレモンがいることを忘れていた。
ウェンディを連れて来たら今頃はあいつらみたいに楽しんでいるのだろうかと思ったソウ。
あの時、連れてこなかったことがここで後悔するとは思いもしなかった。
◇
一方、ソウが一人で勝手に後悔している時ジュンはサンディーに引っ張られてクロカッスの街並みを回っていた。
こういうところは滅多に行かず、またサンディーは女の子ということもあるのでテンションがもう既に最高潮というところまで迫っていた。
一方のジュンはただ、サンディーの後をついていくだけだった。
その姿はまるではしゃいでいる娘を微笑ましく眺めている父親のようだった。
勿論、ジュンにそんな自覚はない。
「あ!ジュン、あの人って」
通路を歩いているとサンディーが誰かを見つけたようで指差した。
そこには黒髪の青年が、青髪の毛をした女性と白髪の青年の三人で話していた。
黒髪の青年にはジュンは見覚えがあった。
「あいつは確か…氷の魔導士だったな」
どうにも記憶が曖昧でよく分からないが、離れたところにまである程度会話が聞こえてくる。
「グレイだよ、ジュン。んで、あの女性がフェアリーテイルのジュビアで、もう一人がラミアスケイルのリオンだったかな。いつかの週刊誌に載ってたよ」
相変わらずこういうことはよく覚えているサンディー。
グレイは氷の造形魔導士だとソウから紹介を受けた覚えがあった。
ジュビアという女性は知らない。
向こうは覚えているかどうかは分からないが今は会うわけにはいかなかった。
というより、向こうの会話がここまで聞こえてくる。
「大魔闘演武に出るんだってな、グレイ。まあ、優勝するのは俺達ラミアスケイルだがな」
「万年、二位だったんだろ」
すると、グレイとリオンが頭をぶつけ合った。仲は悪いみたいだ。
「お前らは万年最下位。うちらは去年まで俺やジュラさんが参加してなかったのに関わらず二位。この意味分かるよなぁ?」
「こっちにもエルザっていう化け物がいるのを忘れてんじゃねぇだろうな!」
「一つ賭けをしよう。ラミアスケイルが優勝した暁には………ジュビアは俺達のギルドが貰う!」
「なんじゃそりゃあ!」
思わず突っ込むグレイ。隣のジュビアも狼狽えていた。
はぁ………とグレイはため息をついた。
第三者のジュンとサンディーにとってはどうでも良い話になってきた。けれど、サンディーは面白そうなのか固唾を飲んで見守っている。
「俺達が勝ったら………」
「ジュビアをお前たちに返そう」
「元々、俺達のギルドだよ!」
「男と男の約束だ。忘れるなよ、グレイ」
「賭けになってねぇだろうが!ふざけんなぁ!」
まあ、グレイの言う通りだと思う。フェアリーテイルが勝利しても何も得がないのだから。
そんなのは関係ないのか、サンディーの目は何故かより輝く。そして、頬を少し赤らめた。
「負けるのが怖いのか?」
「なんだと………!」
リオンの挑発的な態度にグレイも負けじと応戦する。
二人の間に火花が散っている。
その間に入ったのはジュビアだった。
「グ、グレイ様!ジュビアを取るか、リオン様を取るかハッキリしてください!」
「お前………全然、話見えてねぇだろ……」
ジュビアが的はずれなことを言った。
ジュンはこれ以上、ここにいると気づかれる恐れがあると判断し、サンディーに声をかける。
「行くぞ、サンディー」
「挨拶しないの?」
「オレ達がここに来ていることはバレてはいけないんだ。特にフェアリーテイルには」
もし、見つかった場合はソウが何処にいるのか問い詰められるかもしれないからだ。
納得してくれたのか頷いたサンディーは進行方向を変えた。
「後でソウにも言っておくか」
フェアリーテイルの奴等もしっかり大魔闘演武に参加しに来ていると伝えることにしたジュンだった。
◇
しばらくしてソウはトライの指定された宿、
レモンは途中、アールを捜してくるとか言ってエーラで飛んでいった。
部屋のなかは広いが、ベッドが合計で六個も引かれているので狭く感じる。雰囲気はなかなかよい。
となると、ここで皆一緒に寝ろと言うことなのだろうか。そうなると男子はいいのだが、女子のサンディーとルーズがどんな反応をするのか、気になるところだった。
サンディーはあまり、そういうのは気にしなさそうだがルーズは思いっきり拒絶しそうで少し危ない気もする。その時はアールがどうにかしてくれるだろう。
ここで、ソウは魔法を軽く発動してみた。罠とか調べられているのかどうかを確かめているのだ。
結果、特に異変は見られず一安心したソウ。
次にしたのは師匠から貰った大魔闘演武のルールブックを読むことだった。
「風詠みの眼鏡が欲しい………」
この時に風詠みの眼鏡があれば、もっと素早く読めたのだが無いものはしょうがないと諦めることにした。
詠み進めていく内に気になるルールを発見したソウ。
「へぇ~………同じギルドから二つのチームが出れるのか。二つ以上のチームが決勝に残った場合には新ルールも出てくるようだな」
このルールは本に記されている限りでは、今回から採用されたようだった。
フェアリーテイルもこれを隅なくとことん使ってくるだろうと思われる。
ナツ達のチームとは極秘に別のチームを結成して大魔闘演武に参加してそうだ。マカロフの事だ。可能性は充分にあった。
トライもしたかったが、なんせ五人しかいない。リザーブ枠も今はひとまずレモンで登録しているという何とも過疎なギルドなのだ。
その代わり、メンバー全員が滅竜魔導士という有り得ない構成なのだが。
「暇だ………」
遊びに行って誰かに見つかるわけにもいかないし、宿にはすることは何もない。
ソウはただ一人で暇をもて余しているのだった。
◇
アールは現在、ルーズを連れて歩いていた。
街中は花咲く都と言われるほど、大量の花が飾り付けられていた。
「ねぇねぇ、アール。この花、綺麗じゃない?」
ルーズは花屋で黄土色の綺麗な花を指差した。
「そうだね、綺麗だね」
繰り返すように返事したアール。それに違和感を感じたルーズは聞いた。
彼は別の方向を向いていた。
「どうしたの?」
「ちょっと、あっちの方が騒がしくてね」
アールの視線の先には、人だかりが出来ていた。中央に誰かが居るみたいだが人が邪魔でよく見えない。
だが、彼は何が原因なのか分かっている様子だ。
「あの騒ぎの原因は多分、滅竜魔導士みたいだね」
「なんで、分かるの?」
「匂いでね」
アールは嗅覚が人一倍優れているのもあり、分かっているみたいだが、ルーズには全く分からなかった。
取り敢えずそっちに行ってみようとアールが行ってしまったのでルーズもその後を追いかける。人混みを掻き分けて、騒ぎの中心を覗く。
そこにいたのは、二人の青年。一人は黒髪の暗い青年。もう一人はピアスが特徴な白髪の青年。
周りにはうつ伏せに倒れている人達がいた。どうやら、あの二人が倒したみたいだ。
すると、そこに一人の赤髪の少年が倒れるようにして乱入した。その人はアールにも見覚えがあった。
「あれはナツ君だね」
「あぁ………騒がしい人のことね」
ルーズの印象は合っているが、何とも言えない。アールは近くに二匹の猫がいることに気付いた。レモンと同じ種類のようだ。 カエルの着ぐるみをきた猫と赤色の偉そうな態度の猫。
「あんたは……」
「ナツ・ドラグニル!」
はっきりとは聞き取れなかったが、あの二人はナツのことを知っているようだった。
滅竜魔導士同士対面すると、勿論猫の方も顔を会わせるわけで。
「猫ぉ!」
「な!……なんですか!?この間抜けな顔をした猫は!」
「間抜け」
「しゃべったぁぁぁーーー!」
後から来たルーシィがこれに突っ込むべきかどうか悩んでいた。
「アホじゃない………あの猫達」
「まあまあ、それ言ったら終わりだよ」
ルーズの強烈な指摘にアールは微妙な感情に陥っていた。
「何なんだよ、お前ら」
「おいおい、セイバートゥースの“双竜”スティングとローグを知らねぇのか?」
「フィオーレ最強ギルドの一角だぜぇ」
野次馬の二人が答えた。
ナツはおろそか、アールとルーズにも聞き覚えがなかった。
「そんなの居たかな?」
「七年の間に出てきたんじゃない?」
まあ、ルーズの意見が妥当といった所か。
「じゃあ、この人達が………」
「………セイバートゥースか?」
ナツとルーシィは呟いた。
セイバートゥースは師匠からその存在だけは言われていた。七年の間にトップに昇ったギルドだったはずだ。どれほどの実力かは知らないが相当の物らしい。
「強いのかな?」
「アールに勝てるとは思わないわ」
アールの実力は最早、師匠の次に強いとさえされている。トライの中ではソウとアールの実力は均衡。ジュンも殆ど僅差といっていいほどの実力者。ルーズにはアールが負ける所は想像出来なかった。
「大魔闘演武に出るって噂、本当だったんだのか」
「俺のこと、知ってるのか?」
「アクノロギア。ドラゴンを倒せなかったドラゴンスレイヤーでしょう。それってドラゴンスレイヤーの意味あんの?」
まるで挑発しているかのような口調で話すスティング。これにはナツも少し怒り気味だ。
「これでも昔はあんたに憧れていたんだぜ。因みにこいつはガジルさん」
「同じドラゴンスレイヤーとして気になっていただけだ」
「ドラゴンスレイヤー!?お前ら、二人とも!?」
やはり、彼らはアールの予想通り滅竜魔導士だった。
アールは別のことを考えていた。
「僕にもファンとかいるのかな?」
「いないわよ」
ルーズに即答されて、少し落ち込んだアール。
ルーズは隣のアールにも聞こえない微弱な声で呟く。
「となると私は第一号一人なのよね………」
「ん?何か言った?」
「え………何もないわ………うん」
危うく聞かれそうになり、ルーズは顔を真っ赤にして横に振った。アールは不審に思ったのか首を傾げたが、また前を向いた。
「真のドラゴンスレイヤーって言ってくんねぇかなぁ。俺達ならアクノロギアを倒せるよ」
「あんた達!アクノロギアの見てないからそんな事が言えるのよ!」
曰く、アクノロギアと遭遇しているソウも感想が「あいつを倒すとなると三人でもキツイなぁ………」と言っていた。
彼がそれを口にするのは、相当ヤバイということになる。
「そうだ!そうだ!」
「頭の悪そうな猫ですねぇ」
「レクターは頭、良いよねぇ~」
こっちはこっちで猫同士の言葉の争いが始まっている。
「見たかどうかは関係ない」
「要はドラゴンスレイヤーとしての資質の差!」
ローグの確信めいた一言に疑問が浮かぶアール。一体、どういうことなのだろうか。
二人は騒動をこのまま静観することに決めた。
続く───────────────────────────
区切りが悪いですが、ひとまずここまでということで。
ソウは一人です。孤独ですね。
オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)
-
あり
-
なし
-
ありよりのなし
-
なしよりのあり
-
どっちでも