───特訓、開始!!
大魔闘演武まで後、3ヶ月。
ソウはフェアリーテイルのいつものメンバーと海合宿に行っている。
一方、その頃、ジュンやアール達は何をしているのかと言うと新たなギルド“トライデントギルド”を評議院に認定してもらうために動いていた。
師匠のコネがあるので、そう苦労することはないが、代わりに時間がかかるという。なので、それには師匠とアールの二人が行くことにした。何故二人かと言うと空間魔法を使っての移動が可能で時間短縮になるからだ。
とある町に残されたジュン、ルーズ、サンディーは人気がしない草原でちょっとした試合形式の練習をしていた。
対峙しているのは女子二人。
実力は互角と言ったところか。ソウの所のウェンディと言う少女も実力は二人とあまり変わらないと言っていた。
ジュンは、ある魔法を自在に操れるように一人で特訓していた。
ソウなら“波動”、アールなら“空間”と各々の特徴のある魔法を使っているが、ジュンは岩や砂を操って纏ったりする魔法が主だ。
ある日いまいち、自分の魔法は劣っているのではないかとジュンは考えた。
何故かと言うとこういう魔法は他の魔導士も会得しているからだ。
そう悩んでいたのがソウが帰還する数ヶ月前の話。
その時に話しかけたのが、師匠だった。
まるで何もかも見透かしているようにジュンにある魔法書を渡したのだ。
そこに書かれていた魔法にジュンは歓喜した。
ここに書かれていた魔法は難易度がとても高いものだったが、これを使いこなせれば───より強くなれる。
そしてそれが今、完成間近だった。
◇
合宿二日目の朝。
砂浜に集合したソウ達は各自で準備運動などを色々始めた。
それはそうと、昨日のあれのせいで男子達が少し怯えぎみだった。その反面、要因となっている女子達はどうも昨日の一件を覚えておらず、どうしてかと疑問符を浮かべる程度だった。
唯一、ソウはなんともなかったが。
ウェンディは昨日、兄に膝枕されていたことに気づいた時は顔を真っ赤にして何処かに走っていった。
ソウはその時、寝ていたのだが。
ウェンディが顔を真っ赤にしていたことなど露知らずソウはしばらくして目を覚ますと誰も居なくなっていた。
皆は温泉にでも行ったのだろうとソウもその時は向かったのだった。
「充実してるなぁ」
「俺達が本気で鍛えりゃ」
「二日間といえど、かなりの魔力が上がりましたね」
ウェンディの言うことはあってるかもしれないが、ソウは本気で鍛えてないのであまり変わっていない。
ジュビアは木の影に隠れながらグレイと同じポーズを取っていた。グレイと同じポーズを取れて心が震えるとか思っているのだろうとソウは思った。
「この調子で3ヶ月鍛えれば、この時代に追い付くのも夢ではないようだ」
「うん」とエルザの言葉に頷くレビィ。 そして再び特訓を開始した。
「見てろよ、他のギルドのやつらぁ!妖精の3ヶ月!炎のトレーニングの成果をなぁ!」
「最初は、“たったの3ヶ月なの!?”って思っていてたけど効率よく修行していけば“まだ3ヶ月あるの”って感じよね」
「あい!」
砂浜に座ってハッピーに話しかけるルーシィ。
するとルーシィの真下からいきなり穴が開いて誰かが出てきた。
「姫!大変です!」
現れたのはルーシィの精霊、バルゴだった。
ルーシィを頭の上に乗せている。
「うわぁ!どこから出てきてんのよ!」
「お仕置きですね」
いつもと変わらずの口癖を放つバルゴ。どうやら本調子みたいである。
「バルゴ!」
「メイドの精霊」
シャルルがありがたく説明してくれた。
「そういやぁ、ルーシィが7年間フェアリースフィアの中にいたってことは契約している精霊もずっと精霊界とやらにいたってことになるのか」
グレイが気づいたようで告げた。
確かにルーシィが7年間ずっと精霊を呼んでいなかったので、精霊達も暇だったのだろう。
「もう!星空の鍵の一件でなり気なく呼んでたけどそういえば、その前に7年も経っていたんだ!」
「可哀想………ルーシィのせいで………ルーシィのせいで………」
「気付いてなかったのかよ………」
ルーシィのどんくささに呆れたソウ。
昔と比べればだいぶルーシィもだんだんフェアリーテイルの皆に似てきたではないかと思う。
で、なんでジュビアがルーシィと同じように涙を流しているんだと疑問に思った。
「いえ、それは対した問題ではないのです」
バルゴの素っ気ない返しにそれもそうだとあることを思い出したソウ。
確か、精霊界では時の流れやらが変わっていると聞いたことがあった。
それよりもソウが気になったのはバルゴの今の台詞がとても重い空気を漂わせていたことにあった。
レビィもそれに気付いて不安げに言う。
「どうしたの?」
バルゴは少し間を置いた。
そして、突然直角に腰を曲げて頭を下げたのだ。
いきなりの行動に皆が驚く。
「精霊界が滅亡の危機なんです。どうか、皆さん、助けてください」
精霊界の滅亡の危機とは、一大事だとは思うがソウはバルゴが嘘をついているように思えた。
それに何処か棒読み気味だったし。
そういえばバルゴは大体棒読み気味に言うのだったと次に思い出す。
「何だと?」
「そりゃあ、一体………」
ソウの思考を余所に話を進めようとするエルザとグレイ。
「精霊界にて王がお待ちになっています。
皆さんを連れてきて欲しいと」
「よぉし、任せとけぇ!友達の頼みとあっちゃ!」
ここでようやく、頭を上げたバルゴ。
視線の先にはソウがいた。
バルゴは口元に人差し指を当てた。黙っていて欲しいという合図だった。意図を汲んだソウは黙って頷いた。
「待って!精霊界に人間って入れないはずじゃ?」
「精霊の服を着て頂ければ精霊界にて活動出来ます」
そう言うと、バルゴは一歩後ろに下がり、両手を軽く広げた。
「行きます!」
「ちょ、ちょっとまだ心の準備が………」
ルーシィのことはお構い無しにソウの足元にも魔方陣が出現。
皆の叫び声と共に光の柱が皆を包んだのだった。
やがて、光が収まる頃にはそこに誰も居なくなっていた。
───ドロイとジェット以外。
「なんで俺達だけ………」
「置いてけぼり………!」
◇
………唖然とした。
ソウ達を迎えたのは広大な光景だった。
まるで宇宙の神秘のような精霊界はただただ口をポカーンと開けて眺めているしかなかった。
精霊界というのは初めて来たけどこんなに綺麗な所だとは想像以上だった。
「ここが精霊界………?」
「はぁー………綺麗………」
ルーシィとウェンディも見たことがない絶景に感嘆の声を上げていた。
いつの間にか服装も変わっており、ソウとウェンディは着物を来ていた。
「よーく…来たな…古き友よ……」
目の前に巨大な影が出現したかと思うと、何ともゆっくりな口調で話始めた。
見た目は巨大な髭のお爺ちゃんと言ったところか。
「でかっ!」
「髭ぇ!」
「誰ぇ!」
ナツ、ハッピー、レモンによる三連答。
ルーシィはそんなのお構い無しに一歩前に進みだした。
「精霊王!」
次にエルザが前に進みだした。
ウェンディとレビィは嫌な予感がした。
「お前がここの王か?」
エルザは言ってしまった。お前………と。
お前って言った!と密かに思う二人。
「いかにも………」
「精霊界の滅亡の危機って!?」
ルーシィの質問に「むぅ………」と唸る精霊王。
するとソウが前に出た。
「それよりもさぁ、俺達をここに呼んだ理由を教えてくれないか?」
「お兄ちゃん!それよりもって!」
「そうだ!精霊界の危機なんだぞ!」
「だから………違うって………」
ソウの質問の意図が掴めない皆。
そして、皆の視線が精霊王に注目する。
やがて精霊王はニカッ、と笑みを浮かべた。
「え………」
「ルーシィとそのお供の時の呪縛からの帰還を祝して………宴じゃーー!!」
精霊王の言ったことが理解出来なかったのか皆はポカーンとしていた。
ソウは納得したのか、ただ笑っていた。
様々な精霊達が自分達を歓迎してくれているみたいだった。
ルーシィの契約している精霊は勿論、まだ見たこともない精霊達も歓迎してくれているようだ。
「滅亡の危機って!?」
「…………てへっ♪」
バルゴはわざとらしく舌を出した。
嘘をつかれたことにようやく気付いたルーシィは叫んだ。
「何ぃぃぃいいい!?」
「なははは、モゥ~騙してすまねぇっす。騙されてポカーンとしてるルーシィさん、しかも精霊界のコス、最高っす!」
「驚かせようと思ってエビ。今からでも宴ようにカットが必要とあらば、まかせるエビ」
「ルーシィ様たちの帰還を祝してメェー達に考えていたのです」
どうやら精霊達が独自にサプライズとして企画したようだった。
タウロス、キャンサー達もノリノリみたいだ。
「みーんなでお祝いしたかったけど、いっぺんに人間界に顕現することは出来ないでしょ」
「だから、皆さんの方を精霊界に呼んだんです、すみません~」
「今回だけだからな、ウィー」
「そうよ、特別よ」
「ピリ、ピリ」
ようやく状況を理解できたナツ達は楽しむことにした。
「なんだぁ、そういうことか」
「そうなんでありますからして~モシモシ~」
「びっくりさせるなよ~」
「さあ、僕の胸に飛び込んでおいで、ルーシィ」
「もぅ………」
「さぁ!今宵は大いに飲め!歌え!騒げ~や騒げ、古き友の宴じゃー!」
こうして、始まった精霊界での宴。
大きなテーブルにはたくさんの舌を誘う料理が並べれていた。
「元気だったか」
「試験は残念だったね」
グレイとロキは久しぶりの再開を拳をぶつけて楽しむ。
そこにソウも入る。
「まあ、グレイもあと少しと言ったところか」
「そうか。よし、頑張るぜ」
そう言うとグレイは別のところに走っていった。
それを見届けたソウは少しばかり気になることをロキにぶつける。
「相変わらずだね、ソウは」
「自覚はないんだけどな。それよりもロキ、確か精霊界って────」
「────確かにそうだけど、よく知ってるね。ソウだからかな」
やはり、ソウの予感は当たっていた。
これを知ったらあいつらは驚愕すると思うが今、言っても変な気分にさせることになるので後回しにしておくことにした。
というより知らぬが仏というやつだった。
ウェンディはホロロギウムのところに行き、この前のお礼を述べる。
「ホロロギウムさん!」
「おや、おや、これは………」
「あの時はどうも、ありがとうこざいました」
あの時とはハデス戦の時に助けてもらったことを言っているのだ。
「いえいえ、礼には及びません」
「でも…あの…服が脱げたのは恥ずかしかったです………お兄ちゃんなら大丈夫だけど…」
顔を赤らめ両手を顔に当てたウェンディ。
「いや……その……あれは……」
返事に戸惑うホロロギウム。
その背後からルーシィがふざけて返事を返した。
「失礼しました!、と申しております」
◇
───その頃───
ジュビアはアクエリアスと二人で話をしていた。
その内容が男についてだ。
「その調子だとルーシィみたいになっちゃうわよ」
「どういうことよ!」
離れた所からルーシィは突っ込んだ。
一体何がルーシィみたいなのかは分からないが、悪いことだけは間違いがなかった。
◇
レビィは精霊界の本棚を眺めていた。
隣には時計の精霊がおり、一冊あげると言ったらレビィの眼が輝いた。
が、時計の精霊がいきなり寝てしまった。
ルーシィによると考え中らしい。
ハッピー、シャルル、レモンはプルーと戯れていた。
そういえば、こいつもニコラという精霊だったと思い出したシャルル。
すると、ニコラが大量に出現してエクシードを多い尽くした。
「うわぁたくさーんいるー」
「私このプルーがいい!」
レモンはどうしてか自分のお気に入りを見つけていた。
◇
また、エルザは服が似合っているのかどうか、何度もすそを持ち上げて確認をしていた。
「エルザさーん!モゥー相変わらずのナイスバディで」
「そうか?」
「ちょっと跳び跳ねてくれませんか?」
「なぜだ?」
タウロスはエルザを変な目で見つめる。
目がハートになっている。
そしていやらしいことを考えている。
「あの精霊………嫌」
「私もです………」
一部始終を見ていたウェンディとレビィが引いていた。あの二人はエルザと違い特有の膨らみがないことから来ているのだろう。
◇
ナツとソウは精霊界の料理を堪能していた。
周りには積み重なった皿があった。
「うんめぇ!なんの料理だ?」
「ホント!止まらないぞ!」
「蟹のペスカとエビ、星屑バター添えだエビ」
「そっちはハマルソースの子羊ステーキです」
答えたのはキャンサーとアイリス。
ソウとナツの手が止まった。
今、なんといった。
ソウには蟹のペスカと子羊ステーキと聞こえた。
つまり、これは同じ蟹座と子羊座の二人にとってはあれなわけで。
「「ごめんなさいーー!」」
二人同時に速答で謝った。
◇
「それにしても不思議なところだよな…」
グレイが呟く。その周りには大量のニコラが集まっていた。
「私も精霊界がこんな風になってたなんて知らなかった───私のプルーどれだろう?」
もうどれがどれやらニコラが多すぎて自分のプルーが分からなくなってしまったルーシィ。
「それは当然古き友と言えど、ここに招いたのは…はじめて」
精霊王の言葉に笑顔が溢れたルーシィ。
「それだけ認められてるってことだよな」
グレイはルーシィの頭を撫でた。
それを恨ましそうに見ているジュビア。
「ちょっと!なにしてんのぉ!」
やがて、会場には優しい音楽が包み、皆の心を癒す一時となる。
ルーシィは色んなことを思い返した。
辛いこと。楽しいこと。悲しいこと。
それらは皆がいてくれたからこそ、成り立ったものでありかけがえのないもの。
ルーシィは涙を流してこう言った。
「ありがと………みんな、大好き……」
精霊王はただニカッ!と笑顔を浮かべた。
◇
楽しい時はあっという間に過ぎていく。
もうソウ達が人間界に帰る時間が近づいていた。
「存分に楽しんでしまった」
「こんなうめぇもん、食ったことねぇよ」
「食ったのか!食ったのか!おめえ!」
グレイはあれを食ってしまったのかとナツは思った。
無情すぎる。
「この本、もらっていいの?」
レビィは精霊の本を一冊頂いていた。
「私この服欲しいです!」
「その服似合ってると思うぞ」
「ホント!」
嬉しいのかその場で一回転するウェンディ。
「変なプルーが離れないんだけど~………」
「私も~…」
「あそこは妙に気があっちゃって」
ハッピーとレモンは変なニコラにくっつかれていた。
シャルルの視線の先にはがっちり手を握り交わしたジュビアとアクエリアス。
「苦労してんだね、あんた」
「アクエリアスさんこそ!」
もはや、聞きたくない内容だった。
「古き友よ………そなたには我々がついている」
「うん!」
「これからもよろしく頼むぜ」
「いつでもメェー達を呼んでください」
「またギルドに顔を出すよ」
「みなさん、ルーシィさんをこれからもよろしくお願いします」
本当にルーシィは精霊に愛されていると改めて実感した。
「では、古き友に星の導きの加護があらんことを」
そう言うと精霊王を筆頭に精霊達が姿を消していった。
残ったのはソウ達と送ってくれるバルゴとホロロギウムだけだ。
「本当にお前は精霊に愛されているな」
「みんな、最高の仲間よ」
「さぁて、だいぶ遊んじまったし、帰ったらたっぷり修行しねぇとなぁ」
ナツの言葉を聞いてソウに嫌な予感がした。
まさか、本当にあの事実を知らないのではないかと。というより自分が知っているのに言わなかったら絶対に責められる。
自分の口からではなく、バルゴにいってもらうことにしたソウ。
「そうだ、3ヶ月で他のギルドのやつらに追い付かねぇと」
「打倒セイバートゥースだよ!」
グレイの発言で完全にある確信に至ったソウ。
「バルゴ、何か忘れてない?」
「あ、そういえば一ついい忘れていたことが。精霊界は人間界とは時間の流れが違うのです」
───ついに来た。
直感的に感じたソウ。
「まさか、それって………こっちの一年が人間界では一日、ってみてぇな?」
「夢のような修行ゾーンなのか!?」
興奮してしまっているナツとグレイ。
それをソウは何とも言えない表情で見ていた。
あの二人のいう通りだったら良かったのだけれど現実はそうも簡単にいかないものである。
「………いいえ。逆です」
◇
そして、ソウ達は人間界へと帰還した。
目の前には砂浜と海が広がっていた。
ただ、誰も居なかった。それもそのはず、海シーズンはとうに過ぎていたからだ。
思い出すのはバルゴの最後の言葉。
『精霊界で一日過ごすと人間界では………
頭が真っ白状態で海を見つめるナツ達。
これから修行に励もうとしていた矢先に起きた最悪の事態が起きてしまった。
頭をよぎるのは絶望。
「みんなー、待ちくたびれたぜー」
「大魔闘演武まで後、5日だぜ。すげぇ修行してきたんだろうなぁ?」
そこに駆けつけたのは置いていかれたジェットとドロイだった。
少し日焼けをしている。
ただ、何も答えずじっとその場に立ち尽くすナツ達。
「「「終わった………」」」
そして、力尽きたようにナツ、グレイ、エルザが前倒しに倒れた。
ウェンディはその場にしゃがみこんで、泣き出す始末。
ソウが慰めるように頭を撫でた。
「うえぇぇぇーー!」
「泣くなって、ウェンディ」
そういうソウも、どこか後悔していたげな表情だった。
ルーシィは思いっきり叫んだ。
「髭ぇぇーー!!時間返せぇぇーー!!」
大魔闘演武まで後5日である。
続く──────────────────────────────
大魔闘演武まで後、少し………だ!!
オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)
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あり
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なし
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ありよりのなし
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なしよりのあり
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どっちでも