FAIRY TAIL 波地空の竜   作:ソウソウ

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第f話 懐かしの匂い

「しかしこいつは思っていた以上に深刻な問題だぞ」

 

 グレイはそう言った。

 それを聞いているのはルーシィ、ナツ、ウェンディ、シャルル、レモンそれに先程の騒動を観戦していたもの達だ。

 その中にはソウの姿もあった。

 もう一度トレーニングを再開しようとしたソウだったが、ウェンディの不安そうな目線にやりにくくなり、結局グレイの話を聞くことになった。

 グレイが言っているのは天狼組の7年のブランクのことだ。

 あのマックスがナツを苦戦させるほどにまで強くなっている。こうなると他のギルドの奴等も実力は上がっていると見たようが良いだろう。

 ということは、今の自分達の実力でライバル達に勝てるのだろうか。

 そう考えたグレイはこうして呼び掛けているわけだ。

 ようやく気づいたかとソウは密かに思う。 まあ、けどそれもこいつらならどうにかなるだろうとも思ってしまう。

 今までもフェアリーテイルはそうだったし、これからも変わることはないはずだ。

 

「どういうこと?」

「元々化け物みたいなギルダーツやラクサスやソウはともかく、俺達の力はこの時代に付いていけてねえ」

「ひどいな………」

 

 密かに化け物扱いされて落ち込んでいるソウ。誰も気付かない。

 

「確かにナツでさえあのマックスでさえ、ナツが苦戦してたんだもんね」

「あのマックスさんに」

「さっきのはホントにお世辞だったのか………」

 

 ウェンディの先程の台詞はお世辞だったのかと傷つくマックス。

 少し心の中で同情しているソウ。

 ハッピーが頭を抱えてこう言った。

 

「なんか、一気に魔力を上げられる方法はないかな?う~ん…」

 

 そんなのあったら全員が試していると思う。

 

 

 

 

 ◇

 

 ソウの突っ込みも余所に一行は森の奥に建ってある一軒家へと来ていた。

 なんでも、ここにはマカロフの昔からの知り合いである“ポーリュシカ”という女性が住んでいるらしい。

 ソウは既に何回か会っている。

 ポーリュシカは珍しく人間嫌いであり、ややこしい人物でもある。

 と同時に治療薬を作っている人でもあり、昔からギルドの皆はお世話になっている。

 ソウはポーリュシカがどっちかというと苦手なタイプだったので、あまり行きたくはなかった。

 グレイ達が行こうとしたときには、ソウは再びトレーニングを再開しようとしていた。

 避けようとしているのは丸見えだ。

 因みにナツの咆哮を喰らった時には半分寝ていたらしい。

 それにただの火竜の咆哮だと思っていたが、実は雷炎竜の咆哮だと知ったときは自分でも信じられないのか、少し驚いていた。

 トレーニングを再開しようとしたら、ルーシィに見つかった。そしてウェンディにも見つかった。

 結果、無理矢理連れていかれた。

 なんでもポーリュシカと会ったことがあるのはソウだけらしく、もしもの時は盾にしようという魂胆だ。

 ソウの気はとても重かった。

 目の前にはポーリュシカが仁王立ちをしている。

 ナツ達はじーっ………と彼女を見つめる。ウェンディは後ろから背伸びをしている。ソウは距離を置いて眺めていた。

 エクシード達はナツ達の足元にいる。

 

「帰れ!」

 

 そんな一言と共に扉をバタン!と閉めて閉じ籠ってしまったポーリュシカ。

「ポーリュシカさん、なんかいい薬とかありませんか……?」

 ほとんど当てはないけど恐る恐る苦笑いを浮かべながらルーシィは口にした。

 

「一気に力が100倍になるのとかぁ?」

「さすがに都合が良すぎるか………」

 

 グレイは期待はしていなかったようで溜め息をついていた。

 ソウは呑気に欠伸をしていた。

 

「どうしたの、ウェンディ?」

 

 表情が暗くなって俯いているウェンディにシャルルが気がつき、声をかける。

 ソウもウェンディを見ていた。

 

「ううん」

 

 何でもないと首を横にふったウェンディ。何かを感じたのだが、そんなはずはあり得ないと思い言えなくなったのではないかとソウは考えた。

 考えられるのは、初めて会ったポーリュシカだろうか。

 すると、扉を開けてポーリュシカが出てきた。

 片手には箒が握られている。ソウには嫌な予感しかしなかった。

 と、ここでソウはある違和感に気付いた。普通の人間にはあるはずのものがなかったのだ。

 不思議に思うのも束の間、ポーリュシカのした行動に思考を中断せざるを得なかった。

 

「人間は嫌いなんだ!帰れ!帰れ!」

「なんだぁ~!掃除当番か?」

「失礼しましたぁー!」

「なんだよ、あのばっちゃん!」

「じいさんの昔の恋人ー!」

「違うわ、ボケ!」

 

 ポーリュシカは箒を振り回した。

 ナツ達は驚いて逃げる。

 ソウの横を通りすぎてあっという間に通りすぎて退散していった。

 グレイが余計なことを言っていたが。

 ウェンディが足を止めて振り返るが、すぐにナツ達の後を追いかけていった。

 

「皆、行っちゃったね」

「いつの間に頭の上にいたんだよ」

「さっき」

「………そですか」

 

 その際にレモンが自分の頭の上に逃避してきたことについてはあまり触れておかないことにしたソウ。

 

「ほら、あんたも行きな」

「はいはい………」

 

 ポーリュシカにそそのかされ、ソウは気楽に後を歩いて追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 少し離れた所に腰を置いて息を切らしていたルーシィ達を遠くから発見したソウ。

 どうやら先程のポーリュシカの印象を話しているらしい。

 ソウはウェンディの様子がはっきりとおかしいことに気付いた。

 

「ど、どうしたんだ、ウェンディ!?」

「ちょっとどうしたのよ!?」

 

 ウェンディが涙目になっていることに気付いたグレイとルーシィが慌てる。

 ソウからも遠目で確認できた。

「ソウ……またなんかした?」

「してない!」

 

 レモンが失礼なことを呟いてきた。

 ソウはルーシィ達の元へ向かう。

「あのばっちゃん、ウェンディを泣かしたな」

 

 ナツはてっきりそう考えるが、ウェンディは首を横にふった。

 

「違うんです………懐かしくて………」

「会ったことあるの?」

「ううん、さっき初めて会ったはずなのに……懐かしいの………あの人の……声が………においが………グランディーネに似てるんです」

 

 ナツ達は驚愕するしかなかった。

 離れて聞いていたソウはそれである確信にいたった。

 

「あのおばあさんがグランディーネ?」

「ウェンディの探しているドラゴンと同じ声?」

「それってどういうこと?」

「知らないわよ」

「ウェンディ、本当か?」

「分かりません。でも………あの声………あの匂い……私のお母さん天竜、グランディーネと同じなんです」

「こいつは確かめに戻る必要があるな」

「まてよ」

 

 ナツが戻ろうと歩みだしたが、グレイがそれを引き留める。

 

「もし本当にグランディーネが人間には化けていたとしても、少しおかしくねえか?」

 

 グレイが問題点を指摘する。

 

「そうだよ。ナツ、ウェンディ、ソウついでにガジルも。あんた達のドラゴンが姿を消したのは確か7年前。正確には14年前。777年。ソウが言ってた情報だとポーリュシカさんってそれよりずっと前からマスターと知り合いなのよ。つまりドラゴンのいた時代とポーリュシカさんのいた時代が被るじゃない。これじゃ辻褄が合わないじゃない」

 

 ルーシィがグレイに続き反論する。

 ルーシィの意見は間違ってはいない。事実だ。

 

「生まれ変わりとか、化けてるって線は薄そうだな」

「うん」

 

 一体何が起きているのか分からずナツは頭を悩ます。

 

「確かに落ち着いて考えてみればそうなんです。おかしいんです。声や匂いが似ていても性格や口調が全然違うんです」

「あんた、前に言ってたもんね。グランディーネは人間が好きって」

「どうしよ、猫が嫌いだったら?」

 

 シャルルの一言と、ハッピーのどうでもいい発言が飛び交った。

 ウェンディは立ち上がった。

 

「グランディーネは優しいドラゴンなんです!!」

「優しいドラゴンってのも想像できねぇなー」

「アクノロギアを見ちゃったからねぇ」

「イグニールも優しいぞー」

 

 イグニールにはナツの探しているドラゴンのことだ。

 すると、第3者の声が入る。

 

「アスペルトも優しいぞー」

「ソウ!───はっ!すっかり忘れていた」

「お前ら、いつになったら気付いてくれるんだ。ずっと待ってたのに」

「悪ぃ………逃げるのに必死で………」

「まあ、それはいいんだけど。おかげで分かった」

 

 ソウはウェンディの元へと近寄り、頭にてをのせた。

 撫でながらソウは話を続けた。

 

「ウェンディが言ったことは間違っていない」

「え………」

「ちょっと、それだとさっきも言ったけど時代の辻褄が合わないの。矛盾してるのよ」

「そうだ。ルーシィのも正論なんだ」

「はあ?どういうことなんだ?」

「だから、どっちも正しいってこと」

 

 ソウは一呼吸置いた。

 今にも頭が爆発しそうなナツの為にも始めから説明することにした。

 

「順に追って説明するわ。まず、第一にさっきポーリュシカさんを見たときに俺はある違和感を覚えた」

「違和感?普通だったと思うけど」

「人間嫌いを除けばね」

「皆には分からないが、ポーリュシカさんには一切の魔力がなかった」

「でも、それって魔導士じゃないから当たり前じゃないの?」

「そうだ、ハッピー。でも、魔導士じゃない人も微かに魔力は体内に秘めているものなんだ」

「へぇー、そうなんだ」

「じゃあ、なんでポーリュシカさんにはその魔力が一切ないの?」

「ちょっと待て、ルーシィ。その前に俺は既にポーリュシカさんとは数回会っていると言ったよな。なのになんでそれに今気付いたと思う?」

「一般人でも魔力を持っていることを知らなかったから?」

「正解だ、ウェンディ」

 ウェンディの頭を撫でてやる。ウェンディは嬉しそうに目を細める。

 

「つまりだ、その事実を知った上で俺は改めて気付いたことになるんだ」

「それとグランディーネはどう関係してくるんだ?」

「ポーリュシカさんは簡単に言うとグランディーネであって同一人物ではないんだ」

「だから、それがどういうことだよ?」

「魔力をまったく持っていない人物がいたじゃないか。俺達は既に会っている。なあ、シャルル?」

「………エドラスね」

「エドラス………あ、私、分かったかも!」

「ここまで来れば、後は分かるかな。同じ声に匂いだが、性格や口調が全然違う。これってエドラスでも見たんじゃないか。だとすれば…………」

「まさか………」

「あのばっちゃんが………全然優しくない」

「後は本人に聞こうか」

「優しくなくて悪かったね」

「ポーリュシカさん!?」

 

 ソウは気づいていたが他の皆は気付いていなかったみたいで驚いていた。

 ソウの考えが当たっていれば後は本人から直接言ってもらうしかない。

 

「隠しておくこともないしね………話しておくよ。私はあんたの探しているグランディーネじゃない。正真正銘人間だよ」

 

 ウェンディの表情が暗くなる。

 と、ナツがここで何かにに気付いたのか呟いた。

 

「でも人間嫌いって………」

「むぅー!人間が人間嫌いで何か文句があるのかい!」

「いえ。なにも」

「悪いけど、ドラゴンの居場所は知らない。私とドラゴンには直接的には何の関係もないんだ」

 

 つまり間接的には何かしらの関係があるということなのか。

 ナツの表情が真剣になる。

 

「じゃあ………あなたは一体………?」

「こことはもうひとつの別の世界、エドラスのことは知っているね。あんたらもエドラスの自分と会ったと聞いてるよ」

「エドラスって………やっぱり」

「まさか………!」

 

 普通の人なら知らない、ギルドの中でも限られた人しか知らないエドラスがポーリュシカの口から出た。

 つまり思った通りこの人は………。

 

「嘘!」

「アースランドの人間から見た言い方をすれば、私はエドラスのグランディーネということになる。何十年前に、こっちの世界に迷いこんだんだ」

 

 「どひゃーー!」と驚愕する一同。そりゃ誰しもが驚いてしまうだろう。

 既に分かっていたソウは頷く。

 

「エド、グランディーネ………」

「こっちの世界では人間なんだ!」

「私も初めて知ったよ!」

 

 エクシード達が各々の感想を述べる。

 ウェンディは目を見開いていた。

 

「きょんなことからマカロフに助けられてねぇ………私もアースランドがすっかり気に入っちゃったもんだから、エドラスに帰れる機会は何度かあったんだが………ここに残ることにしたのさ」

「もしかして、イグニールやメタルカリナやアスペルトは向こうでは人間なのか!?つーか、こっちにいるのか!?」

「知らないよ、会ったこともない」

「そりゃそうか………」

 

 ソウもナツと同じことを考えたが例え、エドラスのドラゴン達がこっちに来ていたとしてもポーリュシカが知るよしもない話だ。

 

「けど、天竜とは話したことがある」

 

 その言葉に一番反応したのは勿論、ウェンディだ。

 ポーリュシカは付け足すように続けた。

 

「会ったわけじゃない。魔法かなんかで心の中に語りかけてきたんだよ」

 

 すると彼女はこちらに向き直して告げた。

 

「あんたら強くなりたいって言ってたね。そのウェンディって子だけならなんとかなるかもしれないよ」

 

 彼女は紙束を取り出した。

 そこには魔法の使い方が記されていた。

 つまり、魔法書。ウェンディだけの。

 

「天竜に言われた通りに書き上げた魔法書だ。二つの天空魔法。“ミルキィーウェイ”、“照破天空穿(しょうはてんくうせん)”。あんたに教えそびれた滅竜奥義だそうだ」

「グランディーネが………私に……」

「会いに来たら渡して欲しいとさ。それと伝言が一つ。その子が慕っているドラゴンスレイヤーに伝えてほしいと言われた」

「それって………お兄ちゃん?」

「そうよね、ソウぐらいよね」

「俺?」

 

 グランディーネが一体ソウに何の伝言を残したのか。というよりもよく、そんな人物が存在していることが分かったなあと思う。

 

「“娘をよろしく頼んだ”……だそうだ」

「………分かりました」

 

 まるで両親から娘を託されたような気がするがどうも意味が違うような気がする。

 ウェンディも顔を赤くしている。

 

「その魔法はかなりの高難度だ。無理して体を壊すんじゃないよ」

 

 そう言うとポーリュシカはこちらに背を向けて歩き出した。

 ウェンディは一歩進み出て礼をした。そして嬉しそうな声で言った。

 

「ありがとうございます!ポーリュシカさん!───グランディーネ!」

 

 ソウからはポーリョシカが微笑んだように見えた。

 

「良かったな、ウェンディ」

「はい!私、この魔法を使いこなしてみせます!」

 

 ウェンディは魔法書をぎゅっと抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に出るんだ!出る!出る!出る!」

「出ねぇ!出ねぇ!出ねぇ!出ねぇ!」

 

 そのころのギルド内はマカオとロメオの二人で言い争っていた。

 周りから見ればただの家族喧嘩。

 内容は今年の大魔闘演武に出るか出ないかの話だった。

 ギルド内で二つに分裂しており、状況はより混乱を極めていた。

 

「絶対に認めねえ!あれにはもう2度と参加しねえ!」

 

 マカオはよっぽど、譲りたくないのか子供相手にまったく手を抜かない。

 と、ここでナツを筆頭に「ただいまー」と、ポーリョシカの所へ訪れたメンバーが帰ってきた。

 

「おう、帰ってきたのか。いい薬は貰えたのか?」

 

 扉近くにいたマックスが早速成果を訊ねた。

 ルーシィが苦笑いしながら答える。

 

「ウェンディだけね」

「父ちゃんにはもう決める権限はねえだろ。マスターじゃねぇんだから」

「俺はギルドの一員として言ってんの!」

 

 因みに四代目マスター、マカオは辞退しており本来は五代目マスターにギルダーツが務める予定だったが、当の本人は旅に出てしまっていた。

 ギルダーツの残した手紙に折角だから二つだけ仕事をしておくと書いてあり、内容はラクサスをフェアリーテイルの一員として認めること。そして六代目マスターはマカロフがすることと随分気ままにしていた。

 現在のマスターは誰にも譲らないと決意したマカロフが務めている。

 

「何の騒ぎだ?」

「親子喧嘩にしか見えないけど……服!」

 

 グレイは状況が掴めず、シャルルは見た正直の感想を呟く。ついでにグレイが服を脱いでいたことに突っ込む。

 

「出たくない人、はーい」

 

 マカオは手をあげて周りに意見を求めた。

 たちまち多数の人が同じ意見だったのか賛成の手を上げる。

 アルザックが理由を言った。

 

「あれだけはもう勘弁してくれ」

「生き恥を晒すようなものよ~」

「だけど、今回は天狼組がいる。ナツ兄やエルザ姉、それにソウ兄だっているんだ」

 

 話の流れから内容をある程度察したのかソウの表情が少し暗くなる。

 ウェンディは一瞬、後ろを振り返り気付いた様子だったが前を向いた。

 

「フェアリーテイルが負けるわけがない」

「でもなぁ、天狼組には7年のブランクがなぁ」

 

 ウォーレンの台詞にレビィは落ち込んだ。

 慌てて後ろにいるジェットとドロイが庇う。

 

「レビィはそのままでいいんだよ~う」

「さっきから出るとか出ないとか何の話だよ」

「もしかしてそれって最近出来たって言われる大会のことか?」

「さすが、ソウ兄。よく分かったね」

「この前に噂程度に聞いてきたからな」

 

 やはり、思った通り話題は大魔闘演武のことについてだった。

 ソウはあまり、この話は乗り気になれなかった。

 

「ナツ兄達がいない間にフィオーレ1のギルドを決める祭が出来たんだ」

「うぉーー!」

「それはおもしろそうだなぁ」

 

 ハッピーはその場を跳び跳ねる。ナツは期待に胸を膨らませていた。

 

「フィオーレ中のギルドが集まって魔力を競いあうんだ。その名も“大魔闘演武”!」

 

 ロメオは右手の人差し指を高々と上げて堂々と告げた。

 ナツはテンションが余計に上がっていく。

 

「大魔闘演武!」

「楽しそうですね!」

 

 ルーシィとウェンディも楽しみなのか、そわそわしている。

 

「まさに祭ってわけか!」

「なるほど………現在フィオーレ1と言われているギルドはセイバートゥース…だったな」

 

 グレイとエルザも意気揚々としていることが伺える。

 

「そう。セイバートゥースを倒して優勝すればフィオーレ1のギルドになれるんだ!」

 

 おおー!と歓声が上がる。

 

「しかっし………今のお前らの実力でそんなことが可能かの………」

 

 マカロフの心配事も分かる。

 今の他のギルドの強さが分からない以上なんともいえないのが現状と言ったところか。

 

「そうだよ。そうなんだよ」

「優勝したギルドには賞金3000万J入るんだぜ」

 

 次の瞬間、マカロフの目付きが変わった。

 ソウは嫌な予感がした。

 まさか、賞金目当てで出るつもりなんだろうか。

 

「出る!」

「マスター!」

「無理だよ、敵は天馬やラミア」

「セイバートゥースだけじゃないんだ」

「ちなみに過去の大会じゃあ、俺達ずっと最下位なんだぜ」

「威張んなよ」

 

 ドロイの台詞に珍しくエルフマンが突っ込んだ。

 ギルドの皆が止めるもマスターの決断は固かった。

 そんなにお金が欲しいのだろうか。

 

「んなもん!全部蹴散らせてくれるわい!」

「セイバートゥースか!燃えてきたぞ!」

 

 燃えるのはいいが、机に足を乗せて火を拳に纏うのは止めろと思ったソウ。

 ドロイにも「やかましい!」と言われていた。

 

「その大会、いつやるんだよ」

「3か月後だよ」

 

 それを聞いたナツは両手を勢いよく合わした。

 

「充分だ。それまでに鍛え直して、フェアリーテイルをもう一度フィオーレ1のギルドにしてやる!」

 

 もはや、皆の決意は一つにまとまったかのように思えた。

 こうなってしまうとは思ってはいたが、いざ本番では一体どうなることやら、ソウは考えたくなかった。

 

「いいね~」

「うん!皆の力を一つにすれば」

「できないことはない」

「グランディーネから貰った魔法。それまでに覚えないと!」

「祭だよ、シャルル~」

「このギルドは年中そうでしょ」

「漢ー!祭といえば、漢ー!」

「ギルダーツの依頼、案外すぐに達成出来そうじゃない?」

「マジかよー………」

「本気で出るのか………?」

「いいじゃん、出てみれば」

「や、やっぱ止めといた方が………」

「ナツの考えているようなバトル祭とはちょっと違うのよ」

「え!違うの!」

「地獄さ………」

 

 各々の考えはまったく異なっているが天狼組はもはや、目線が大魔闘演武の方にしか向けられていなかった。

 吹っ切れることにしたソウ。

 大魔闘演武でこいつらの驚く表情を見るのを楽しみにでもするかと心に決めた。

 

「出ると言ったからにはとやかく言っても仕方あるまい。目指せ、3000───ごふん、フィオーレ1!チーム、フェアリーテイル、大魔闘演武に参戦じゃあーー!」

 

 一同、一斉に叫び上がるギルド内。

 ソウはなんとも言えない感情に浸されていた。

 

「………お兄ちゃん?」

 

 そんな兄の後ろ姿をウェンディは不安そうに見つめていた。

 

 

続く──────────────────────────────

 

 




早く………開催したい………

オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)

  • あり
  • なし
  • ありよりのなし
  • なしよりのあり
  • どっちでも

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