駄文で皆さんに伝われば幸いです。
───では、どうぞ!
「私……怖かった…また一人になるって……」
ローバウルがいなくなり、実質一人になるという感覚に襲われた少女。その奥底は計り知れないものだ。
ジェラールと呼ばれるウェンディをケットシーに連れていった少年。
ソウと呼ばれるある日出会った優しい少年。
二人ともとても優しいかった。けれど、だからこそ、どちらも自分を置いていって消えてしまった。
ジェラールに至ってはケットシーが消える前に再会したが、ウェンディのことはまったく覚えていなかった。その時の衝撃は計り知れない。
ウェンディが感じているのは心地よい感覚。兄と親しんでいる大切なひとのにおい。
「私を……置いてかないで……」
今のウェンディの唯一と言ってもいい願い。もうこれ以上知らない間に消えてほしくなかった。
ソウをより一層強く抱き締める。
───もうこれ以上離れまいと。
───大切なものが消えていくのはもう見たくないと。
「…!」
自分の頭に何かを乗せた感触を感じる。とても気持ちよくて、優しくて────
「大丈夫、ウェンディはもう独りじゃない。俺がいるし、皆がいる」
「お兄ちゃん……」
今、一番聞きたかった。言って欲しかった言葉。
ウェンディの胸は喜びと感動でいっぱいだった。
◇
「ソウ、一ついいか」
ウェンディはソウに抱きついたまま、動こうとはしない。それは皆が承知していたことだから温かい目で見守っていた。
ウェンディの頭を撫でながらのソウに声を発したのはグレイだ。
「ウェンディに黙って消えたのはどうしてだ?」
「それは誰から聞いたんだ」
「私とウェンディよ」
「シャルル、あれは話してないのか?」
「ええ、あんたから言いなさい」
「そうか。前に帰った時に俺はやるべき事があるって言ったよな」
「ああ……内容は知らないが」
むかしからフェアリーテイルにいるメンバーはソウは何かしらの目的の為に旅に出ていることは知っている。というか、そのせいで滅多に帰ってこないことが殆どだ。
「それと関係があるのか?」
エルザの疑問にソウは頷く。
「ここまで来たんならしょうがいな。言うよ。俺の生涯の目的」
ソウは一呼吸する。皆は固唾を飲んでソウの口が開くのを待っている。
「ある人達を探してるんだ」
そう言うとウェンディが顔を上げて話を聞こうとソウの顔を見つめる。
「具体的にはその人達に手伝ってもらいたいことがあるんだ」
「それは何なの?もしかして………」
先程、シャルルが言っていたドラゴンスレイヤーが関係しているのかもしれないと直感的にルーシィは感じた。
「約束ごと。今はそれだけしか言えない」
約束ごととは一体何のことなのだろうか。
自分には分かるわけがないことだ。
ルーシィはそう思った。
ただ、この答えに不服だったのがナツ。それにウェンディだった。
「お兄ちゃん…教えてくれないの……」
「教えてくれても良いじゃねぇか!」
ウェンディは涙目に、ナツは怒り声で反論する。
「ごめん、どうしても言えない」
「では、ソウが探している人物とは誰なのだ?」
ソウの口が堅いことは今まで一緒にいて既にそういう性格だということから分かっているエルザは敢えて別の質問をする。
そこから内容を掘り起こそうとしているのだ。
「俺が言えるのは名前だけ」
やはり、エルザの考え通りには進ませてくれない。
むかしからそうだったと思い出したエルザ。
「誰なんだ、そいつ?」
「ジュンとアール」
「ジュン?」
「アール?聞いたことない名前ね」
ギルド全員が心当たりがないのか首を傾げている。
それもそうだとソウは思う。
実を言うとあともう一人いるがその人はある意味有名なので言わない。
「ソウ!」
「何かな、ナツ?」
「俺達にどうしても言えないことなのか」
「ああ、仲間同士だからこそだ」
「ソウ!俺と勝負しろぉ!」
「ナツっ!急にどうしたの!」
いきなりの喧嘩発言にハッピーが慌てて止めにいくがナツの目は完全にやる気である。
ソウは、はぁ~とため息をついた。
この目をしたナツは頑固であることは既に知っている。故に承知するしかなかった。
「分かった。受けてたつよ」
「お兄ちゃん!」
ウェンディが心配そうにしている。
ソウは大丈夫だとウェンディの頭を撫でてやって伝える。
「俺が勝ったら洗いざらいはいてもらうぞ、ソウ!」
どっかの悪党の台詞だなとソウは心の隅で突っ込む。
「んで、いつも通り波動壁はなしで……か。こっちに利点はないが仕方ないか」
いきなりの展開についていけない周りの人はポカーンとその光景を眺めているのだった。
◇
場所はギルドの裏のとある広場みたいな広さを誇る庭。
そこに二人のドラゴンスレイヤーが対峙していた。
───波動を司るソウ。
───炎を司るナツ。
その二人を大きく囲むようにして見守っているギルドのメンバー。
「ナツも賭けに出たもんだな」
「やっぱり、ソウは強いの?」
人垣の中にルーシィ達の姿ももちろんある。
グレイはナツの行動に心底驚いていた。正直ナツがソウに勝てるとは思えないのだ。実際にソウに勝てるどころか、攻撃を与えたこともナツはないはずだ。
「強いも何も、ソウが負けてるところをおいらは見たことがないよ!」
「そうなの、いい人そうなのに……」
「あい!ソウはいい人です!」
ハッピーが興奮ぎみで答えた。
「それよりも、さっきナツを飛ばしたのは波動壁って言う魔法だったのね」
ルーシィは考える。今回の勝負ではその波動壁というのを使用しないというのは本人が言っていたので確かだろう。
けど、ソウにとっては不利になるしかない条件だ。ましてや、そんな条件で勝負するということは本気ではないのだろうか。ナツは疎かギルドの皆は気づいているのだろうか。
「お兄ちゃんとナツさん、大丈夫ですかね……」
「あの二人なら大丈夫でしょ」
ウェンディとシャルルも同じように二人を見守っていた。
ウェンディは胸に両手を組んで祈るようにしていた。
「それでは、始め!」
マカロフの合図と同時に勝負が始まった。皆は息を飲む。
静寂が辺りを包むなか、先に仕掛けたのはナツだ。
「火竜の鉄拳!」
ナツはソウに向かって突進するように突き進む。
先程はソウの魔法によって無意味に終わってしまったが今回は違う。
ナツは炎を纏わした右拳をソウの体の中心へと伸ばした。
だが、動いていたのはソウも同じだ。
ナツが動いた刹那、ソウも対抗するかのように右拳に青いオーラを纏わせた。
───『波動式一番』波動拳。
心の中でそう言うとソウは鉄拳を放った。
二つの異なる鉄拳がぶつかり合った。すると、辺り一体に余波が巻き起こる。
お互いに一歩も引かずにぐぐぐっと拳に力を込めて押そうとしている二人。
「なっ………」
意外にも押し負けたのはソウだった。いや、引いたという方が正しいのか。あっという間に距離を取るため後ろに退避した。
その為にナツの鉄拳は空を切るという結果に終わった。
次に仕掛けたのはソウだった。
ナツの目の前に来るなり、拳をナツの腹部へと放つ。
ナツは体勢が悪い中でも腕を組んで防御した。
が、完全に吸収仕切ることが出来ずにナツは体が後ろへと飛んでいく。どうにか地面へと両手両足を使って着地するがそのまま後ろへと後退。地面にその後が残ってしまった。
ソウはその間、その場で両手を丸めて目の前の宙で何かを作り出していた。
それは誰が見ても波動のエネルギーの塊。
───『波動式二番』波動弾。
それがソウの作り出していたものだ。
反撃与える隙を与えるわけにはいかないとソウは波動弾をナツへと飛ばした。
「こんなのかわしてやらぁ!」
避ける体勢に入ろうとしたナツだが、ソウがニヤリと笑みを浮かべたのが視界に入る。
「ぐっ!……」
その瞬間、体に衝撃が伝わってきた。
───『波動式七番』はっけい。
一見、普通のパンチにしか見えないが時間差で後から衝撃が体に走るという技だ。
さっきソウがしたのはそれだ。
内心の中で舌打ちをしたナツ。むかしに一度エルザとの勝負で使っていたのを見ていたじゃないか。エルザもその衝撃で体勢を崩し、ソウの追撃を喰らっていた。
だったら、耐えてやる。
前方からの衝撃に思わず倒れそうになるナツだがどうにかこらえようと体勢を立て直したナツだったがソウの計画通りだった。
ナツの目の前には直前まで迫っている波動弾が見えた。存在をすっかり忘れていた。
引っ掛かった……。
波動弾がナツへと直撃。再び、衝撃が体中に走り後ろへと吹き飛ばされた。
ドゴーーンと派手に吹き飛ばされたナツは背後まで相当の距離があった崖に打ち付けられた。
◇
「すごい…ナツが一方的にやられている…」
ルーシィは改めてソウの強さに感心していた。
ソウの強さを疑っていたわけではないが、心のどこかで疑いをしていた自分がいた。もしかしたら、ナツなら本気でいけば勝てるではないかと。
だが、それはあっという間に崩された。
最初にお互いが竜の鉄拳をぶつかり合わせた。そのせいでこちらにも被害が及んだが。
そのまま力比べが始まった。勝ったのはナツだった。いや、勝ったとは言えないだろう。
即座に拳を引っ込めてバックステップを行ったソウ。そのタイミングも見計らっていたかのように。
現にナツは拳に力を最大限込めた瞬間にソウが拳を引っ込めったおかげで思いっきり空振りをするはめになった。
空振りをして隙を与えてしまったナツ。そこを逃してくれるわけがない。急接近したソウはナツの腹へと鉄拳を放った。
接近したスピードが相当早いものだが魔法で身体能力を強化していたのだろうか。鉄拳と言っても一発目のとは違う他所から見たら普通のパンチ。
けれど、見た目とは裏腹にナツは吹き飛んだ。ナツはどうにか体勢を保ったまま着地して耐えていた様子だが、魔法で強化しているとは言えただのパンチがあるほどの威力だろうか。
ソウは既に次の魔法へと準備を完了していた。
手っ取り早いとルーシィは思った。
ソウの手のひらの上には一言で言えば青い塊。だが、直感的にルーシィはあれを喰らってはいけないと感じた。
ルーシィの思考はナツも同じみたいだったようで避ける体勢に入ろうとしていた。
次の瞬間、あり得ない光景がルーシィの目に入る。
前屈みになって立ち上がったナツが一瞬でバランスを崩して後ろに倒れそうになっていたのだ。
ナツが自ら自分を追い込めるようなことはしないとルーシィは知っている。というより普通はあんな状態にはならない。では、一体ナツの身に何があったのか。
もしかしての可能性がルーシィの頭に浮かんだ。だとすればとんでもないことになる。
それは先程のただのパンチは時間差で衝撃を与えるものではないかということ。
どうにか体勢を立て直すナツだが、完全に波動弾の存在を忘れているように思えた。
ナツは目を開き、なすすべなく波動弾に吹き飛ばされた。
もし、あのまま衝撃に身を任せてバタンとその場に倒れていたらあの波動弾はかわせていた。
けれど、ソウはそんなことはしないと初めから分かっていたかように一発しか放っていない。
予備に二発用意しておけば、確実にダメージを与えることはできた筈だ。だが、ソウはそれをしなかった。
そこから導き出されるのは一つ。
すべてはソウの思惑通りだということ。
初めからナツがどうするかも性格等から考慮して最小限の魔力で攻撃した。ナツはまんまと操られてソウにまったくダメージを負わせずに一方的にやられるという事態に陥っている。
ルーシィは驚くしかなかった。
一瞬でそれを考えるのも凄いが何よりも、ナツのことを完全に手に取るように把握しているのだ。
「凄い……」
ルーシィの口から漏れた一言。
他のギルドの皆もルーシィと同意見を思っていたのか頷いた。
「今のは一体……」
「あれは確か、『波動式七番』はっけいと言ったな」
ウェンディの疑問にエルザは答える。一度味わっているからこそ、分かる。あれは油断してるとあっという間に尻尾を掴まれてしまうのだ。
「ソウが自分で考えた技だよ。他にもまだまだたくさんあるよ」
自慢げにソウのことを言うレモン。それほど、ソウに信頼を置いているのだろう。
「うおぉぉぉーー!!」
吹き飛ばされたナツがその場を怒鳴り声と共に瓦礫をのけて立ち上がる。
ソウは分かりきっていたのか、特に驚きもしないで見ていた。
第二ラウンドの幕開けだ──────
◇
「はっけいの感想はいかに?」
「ああ……もう喰らいたくないねぇ」
はっけいを使っての隙を作り、そこに追撃を仕掛けるという方法は一度見せてある。
その時の相手は確か、エルザだったとソウはむかしの記憶を探る。ただ、エルザの場合ははっけいに油断して完全に体勢を崩した。
ナツはそれを耐えて見せた。けれど、そうすることもソウは想定済みだった。あえて波動弾を一発しか放っていないのもその為だ。命中するのは分かっていた。
敵の思いのままに操られたナツの気分はどうなんだろう。
ナツが息をゆっくり吸い込んだ。咆哮(ブレス)でも放つつもりだろうとソウは予想すると、こちらも新たな魔法の準備へと取りかかる。
「まだまだ序の口だ、ナツ」
ソウはかかってこいと挑発する。それを黙って見ているナツではない。
「火竜の咆哮ォォーーー」
炎のブレスが周りを巻き込みながらソウに一直線に向かっていく。
「展開!『波動式十番』
ソウの目の前に六角形の厚みのあるシールドを思わせるものが宙に出現し、浮かび上がる。
それはソウが波のエネルギーで造った防御魔法の一つだ。
火竜のブレスがシールドに命中。
ブレスは横四方に拡散していき、シールドはまったくと言ってもいいほどびくともしていなかった。
ブレスを防いでいるシールドの中心が青く光輝いていく。光が最高潮に達したその瞬間、レーザーらしきものがナツに向かって放たれた。
咆哮に逆らって進んでいくレーザーは相当の速度でナツに襲いかかる。
「───うぉっ」
カウンターにも等しい波動咆を紙一重でかわしたナツ。ブレスを途中で止めたのは賢明な判断だとソウは呑気に考える。
「火竜の翼撃ィィ!」
正面突破ではあのシールドを壊せないと判断したナツは炎を操り側面から仕掛ける。
────『波動式十番』絶対波盾、展開
炎が襲ってくると同時にさらにソウは自分の側面にもそれぞれ左右展開し、防御に徹する。
翼撃はシールドに阻まれ、霧散に散った。
ナツはソウの背後へと回った。開いているのはここしかない。
「火竜の咆哮ォォーーー」
シールドの内側で派手に爆発が起きて煙が上へと上っていく。
やったかとナツはブレスを吐きながらそう願う。だが、相手はS級魔導士。こんなことで勝てるとは微塵も思っていない。
故に次に気を付けるのはカウンターだ。
やがてブレスでの攻撃が終わり、ひとまず様子を見るナツ。砂ぼこりのせいでよく見えないが油断できない。
「────甘い」
背後からの声に背筋が震えたのを感じた。
「『波動式───────」
───やばい。
ナツは本能的にその場を動こうとしたがソウはもう既に攻撃の体勢に入っている。
「──ぐはっ」
背中から襲ってくる衝撃波。しかも三連発。息が止まりそうなほどの威力だ。どうにか耐えようと必死に抗うがぶっ飛ぶのは目に見えていた。
「────三番』衝撃連波」
ソウが行ったのは波を三段階に分けての攻撃。あえて三段階にすることでよりダメージを多く与えることが出来るのだ。
ナツが吹き飛ばされた先にはソウの展開したシールドがあった。
シールドに激突。
地面へとずるずるナツは滑るように落ちていく。だが容赦なくソウはさらなる追撃をする。
ソウが発動したのは十番絶対波盾。シールドをさらに追加した。
一枚はソウの背後となった場所。もう一枚はソウが脱出の時に使った頭上に。
五枚のシールドがナツを囲むようにして配置された。
結果、ナツは檻に閉じ込められたと言っても等しい状況に陥った。
「こんなものぉ!壊してやるー!」
ナツが脱出しようと蹴ったり殴ったりブレスを吐いたりしているがすべて弾かれてしまう。ソウは魔力をシールドに集中さした。
五枚のシールドの中心が一斉にエネルギーの充填を開始。ナツはより一層暴れるが無駄に体力を消費するはめとなる。
「『波動式十一番』
エネルギー充填の合図となる青白い光が輝きを放つと確認したソウはそう呟いた。
だが───絶対檻咆は放たれなかった。
「やめーーいぃー!!」
審判役のマカロフによる中断が入ったからだ。
「勝者はソウじゃ」
ソウはシールドを解除した。自由の身となったナツだが、拳を悔しそうに地面に叩き付ける。
二人の滅竜魔導士対決はソウの勝利で幕を閉じた。
続く──────────────────────────────
やっぱり、戦闘描写は難しいですね………
オリジナルの敵キャラってあり?(無しの場合だと、原作に出てきた敵キャラのいずれかを主人公が奪い倒す形となる予定)
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あり
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なし
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ありよりのなし
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なしよりのあり
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どっちでも