<時刻:夕方 くそったれな世界の楽園モータル>
>陽菜に導かれ入った街、正式名が<くそったれな世界の楽園モータル>らしいが、長いのでモータルと呼ぶことにする。
>鉄筋の建物が立ち並び、武器屋、防具屋、アイテムショップの様な戦いの必需品から、飲食店、家具屋、カジノ等の娯楽施設まで幅広く存在している。
>工業が発達しているのか、常に機械の音や金属を叩く音が辺りに響いていて、人で賑わっている様だ……人?
「すごい……これだけの人たちがこのUROにログインしてるんですか!?」
>あたりを見回しながらそう言った都、確かにデスゲームたるUROの中にも関わらず随分と人がいる。
「そうだよ、あんたらはどうせ祭壇までしか来てなかった初心者だから、この世界に対して明らかに否定的なんだろうけど……人が今も増え続けてるのが実情なのさ」
「どうなってんだ……皆あんな風になるのが怖くないのか……!?」
>先をスタスタと歩きながら、さも当然なように言う陽菜の言葉に動揺を隠せない丈児、高いリスクを払ってでもこの世界にいるのが信じられない様子だった。
「貴女は、知ってるんですか?シャドウに殺された者の末路を」
「もちろん、あたしは少なくとも去年あたりに始めたんだからね……いまさらな話さ」
>自らをジッと見据える雪花の質問に、飄々と視線を受け流し答える陽菜……UROのプレイヤーにとっては常識なレベルなんだろう。
>その時私はふと周囲のプレイヤー達の装備を見て気づいた、皆持っているのだ……<召喚器>を。
「さっすがめざといねぇ……そっ、皆大概この街の何処かで適合した召喚器を見つけてペルソナを手に入れるんだよ……そうすりゃ<簡単には>死ななくなるってわけ」
「じゃ、じゃあ思ったより人が多いのはそう言う?」
>彼女の言葉に都は希望を持つが、陽菜はため息を吐いて首を横に振る。
「殆どのプレイヤーはここから出たりしないからよ、大概モータルで商売したり、趣味に走ったり、ギャンブルしたり……まあ、自由ね」
「えぇ?で、でもそんなのリアルでも、他のVRMMOでも出来るじゃないですか……どうして?」
「その通りだ、何でわざわざこんな世界に足を踏み入れたりするんだ!?」
「私達の様に明確な目的があって来ているなら分かります……しかし、そんな不明瞭な理由で来る意味が分かりません」
>私以外全員が納得出来ていない様で、その疑問を陽菜にぶつける。
>しかし、陽菜はあからさまに嫌そう……と言うよりも面倒くさいと言った表情を浮かべている、私は……。
>選択肢:
頭を下げる
皆を諌める
→自分なりの考えを話す(要:知識4以上、伝達力3以上)
『あくまでも……これは私の私見だけれども、皆この世界に対して嫌悪感を上回る何かがあるんだと思う』
「織さん?それってどういうことですか?」
「待ってくれ織ちゃん、それはありえないよ!僕はこの世界に対してかなり憤ってるんだ、この世界に来たがる理由なんて……ッ!」
「いえ、待ってください……稲生さん、詳しくお願いします」
「うんうん、私も興味が湧いた!是非聞かせてよ!」
>雪花と陽菜の好感度が上がった……さらに伝達力が上がった……・。
>丈児は不満そうだけれども、都は疑問を抱き、二人に催促されたため私は語りだす。
『まずこの<アンダーロード・オンライン>、通称UROと言うゲームがただのゲームなどではなく、限りなくリアルに近い特異なものである点……傷ついても痛みは無いが、血が生々しく出たり、殺された人間がリアルで再起不能になったり、さらに敵からの殺気も間違いなくリアルに感じる』
「は、はい……小さいシャドウも、獣のシャドウも、植物のシャドウも……皆そうでしたし……」
>実際にこの場にいる一部のプレイヤーはそういう<命の取り合い>みたいな物を求めていると私は考えているが、それを言うと話がごった返しそうなので言わない。
『次に私は前に洋達三人が、このゲームに対してまたやろうと話しているのを聞いた……洋以外の二人は先ほど言った様なゲームのリアルなスリルに対して好感を示していた……だけど洋は明らかな嫌悪感を抱いていたみたいだった……』
「ああ、洋は死ぬのだけは嫌な奴だったから……それがどうしたんだい?」
>丈児は彼らを思い出し、悲しげな表情を浮かべる……私は続ける。
『だけど、そんな洋が二回目のログインで死にかけたにも関わらず、友達のためとは言え大きな躊躇いなくまたログイン出来るだろうかと私は疑問に思った……しかも、ついさっき彼は……私を庇って死んだ、その時私は本当に驚いたんだ……<どうして洋が?>と、彼は借りを返したと言っていたけど……どうもそれだけじゃない気がする』
「……確かにとは思います……単純な心境の変化と片付けるの良くなさそうな案件でしょうね」
>雪花が頷き私に同意をくれる、私はまだ続ける。
『そして、今……私たちにも恐らくだけど洋のような事が起こっている……特に丈児や雪花は顕著に思う……比較的温和でムードメイカーな感じの丈児だったけど、突然大きな怒りを表に顕にするように……クールでポーカーフェイス、滅多に表情に出ない雪花だけど、UROに関わってから表情が豊かになったように思う、笑ったり、嫌そうにしたり』
「……聞いてると、あたしも結構思い当たることあった気がするな……」
>むむむ……と腕を組み、思い返している様子の陽菜、最後に私は結論を言う。
『私はこのゲーム、<アンダーロード・オンライン>は……良くも悪くも<内側にある物>を開放させてくる場所なんだと考える、それがきっとこの世界にとって必要な事で……これを私達に寄越してきた何者かの思惑』
「----ッ!?そうです!今まで送ってきた人の事を全く考えませんでした!」
「そ、そういえば……どうして今までそちらに対して怒りが沸かなかったんだ!?僕は!?」
『ここの人たちも多分、それを意識していない……いつの間にかここに来るのが当然になってきた、そうじゃない?陽菜』
「……やべぇ、寒気してきた」
>皆私の考えが飲み込めてきたのか、顔が青かった……それは古参の陽菜も、クールな雪花も同様だ。
「認めたくはありませんが……この<ゲームと呼んで良いのかわからない>世界には、私達にそうさせる様々な強制力があると?」
『そう、だね……そして、私の推測が当たったのなら……』
>私が雪花の言葉に頷き、付け足そうといた時、突然丈児に手を握られた。
「……違うよ、織ちゃん……そんな事は無いはずだ!シャドウを倒せば戻るって言ってたじゃないか!!」
「じ、丈児君!落ち着いて!」
>宥めようとする都だけども、丈児は落ち着くようすはなく、必死に私に縋る……だけども私はこう言うしかなかった。
『<ドウセツ>は、<ヤツ>と言っただけ……その<ヤツ>があのシャドウな保証が無かったのに私達がそう決めつけただけ……だったとしたら?』
「あ……あぁ……そんな、だったら二人は完全に……完全に<無駄死に>じゃないか!!」
>丈児は私に対して怒りを顕にする、それは最早何に対して怒れば良いのか分からない故に、致し方なく目の前にいる、間接的な原因になってしまった私へのそれになってしまったのだ。
「現実に戻ったら二人も倒れてる状況で!当初の目的も達せられてない!どうするんだよ、織ちゃん!」」
「丈児君、ダメ!それ以上は!!」
「君はリーダーだろ!!力もあるんだろ!!何とかしてくれよ!!!」
>私の肩を掴み、力任せに揺らす丈児……目から涙を流し、唇を噛みすぎて血が溢れ出ている……痛みがないゆえに感情のリミッターも働かず止めどなく口に出てしまう。
「ふざけるな!!畜生!!畜生ォォォ!!!」
「おい」
>そんな中、横から声が聞こえたかと思うと、唐突に丈児が殴り飛ばされる……殴ったのは陽菜だった。
「それ以上男が情けねぇ姿晒すんじゃねぇよ、めんどくさい!!黙って聞いてりゃ、完璧に八つ当たりだろうが!!とっとと失せな!!」
「ぼ、僕はこんな……こんなつもりじゃ……無かったのに……う、ウワァァァァァァ!!!」
>何処へともなく駆け出していく丈児、私は追いかけようとしたが三人に止められる。
「……そっとしておこう?ねっ、織さん……丈児君きっと疲れすぎてわけわかんなくなっちゃったんだよ……」
「彼の怒りは、稲生さんが受け止めなければならないわけではありません……」
「ああは言ったが、気持ちが全く分からないわけでもない……あたしもダチを殺された時は、若干自棄だった記憶あるしな……ああ、めんどくさい時はほっとけばいつか治ると思う」
>少し心配だったが、丈児についてはおいおいと言う事にして話を進める。
「今後、どうしましょう……」
「とにかく、稲生さんの推測が正しいかは調べなくてはいけません……その上でどうするべきか、ですね」
>確かに、とりあえずリアルに戻っての確認は、早急に必要だと私も思った。
「多分あんたらは戻ってくると、あたしは思うがね……あたしも同じだったからさ」
「概ね同意しますが、貴女のような人間と一緒にはされたくないです、陽菜・K・西原」
「ああ?どういう意味だそれは?」
>唐突に睨み合う陽菜と雪花、この二人はどうも性質が相容れないのか仲が悪い……これは治せる様なものではないと思う、きっと、おそらく、メイビー。
「フンッ、まあいっか!それよりもさ!えぇと、織だっけ?さっきのお助け代いただくけど、いくら持ってる?」
「こんな時まで金銭要求とは、卑しいですね……」
「ま、まあまあ!」
>そういえばそう言う取引だったか、致し方ないので調べると、獣型シャドウの討伐のおかげか、それなりに持っていた。
「おお、ならこんくらいでいいや、大した事はしてないし」
>そう言って私の所持金の三分の一を持って行った陽菜、私からすれば大金だが命には変えられまい。
「ん、オッケー!しかしさ、あんたらログイン時に制服は身元バレるから止めたほうがいいわよ?」
「そ、そう言えばそうですよね!今度はちゃんと私服に……」
「……また来る気満々ですね」
「あっ……ちが、そうではなく!」
「(……まぁ、私はお二人がどうしようと戻るつもりですが……)」
>都の天然ぶりを冷ややかな目で見た雪花だったが、あの時のことを考えると、もしかしたら普通に戻ってくる腹づもりかもしれない……少なくとも私はそう思った。
「それでは、陽菜さんもしまたUROに戻ってきたら会いましょう!」
「はいは〜い、まあめんどいけどあんたはペルソナ持ってるし相手してあげる……そっちはノーサンキュー」
「こちらから願い下げですね」
>こうして私達は別れて、ログアウトした……別れ際、ニヤリとした陽菜の顔が気にはなったが。
<四月四日 時刻:朝→放課後 アパートの自分の部屋→教室>
>あの後……リンクが切れて戻ってくると、そこには丈児の姿がなく、倒れながら虚空を見つめる洋と北斗の姿がしかなかった。
>両親や病院、警察や星雲学院への連絡、事情説明……全て終えた時には深夜になっていた。
>泣き崩れる二人のご両親を見ながら、私はやはり罪悪感を覚えてしまう……。
『大丈夫、織さんのせいじゃない……織さんが悪いわけじゃないよ!』
>都にそう言われたけれど、あの姿は今後も私の心にずっと残り続けるだろう……。
>……そして、そんな事があっても授業が無くなるわけじゃない、私は都と合流して星雲学院へと向かった……もしかしたらあれらは全て夢だったなんて、希望を僅かだが抱いて。
「……やっぱり丈児君……」
「仕方ありませんよ、あの様な事があったんですから……」
>しかし現実は非情だった……洋も、北斗も、<拓海>も帰っては来ない……さらに丈児は体調不良を理由に休んでしまった。
「……織さん、これからどうします?」
「ここで逃げても、誰も貴女を責めはしないでしょう……」
>私は……。
>選択肢:
立ち上がる
頭を伏せる
→自分の顔を叩く(要:勇気5以上)
「し、織さん……男らしいです……女の子なのに」
「……それでこそ、ですね」
>都と雪花の好感度が上がった……さらに根気が上がった……。
>もう少しで都と更に仲良くなれそうな気がする……。
「織さんが行くならもちろん私も行きます……私達、運命共同体ですから!」
「貴女の力は間違いなく本物……信用してますよ」
>二人もどうやらUROに行く気らしい……まだまだバラバラだけど三人で力を合わせて行かなくては……。
>私は二人に頷き、痛みで真っ赤になった頬を擦りながら校舎の外に出ると校門前に、何処かで見たような金髪のポニーテールが現れた。
「ま、まさか!」
「……何故貴女がここにいるんです?」
>その正体はもちろん、昨日UROで遭遇した少女、陽菜・K・西原その人である……その制服の校章には<阿立高校>と書かれている。
「やっぱり出てきた……来るんでしょ?UROに」
>頷くと嬉しそうに私の腕をとる陽菜、背後で都がムムッと声を上げる。
「あいつらだけじゃ不安だしね、あたしが協力してやるよ……織はめんどくさくないしね♪」
「は、離れてください!織さん独占は反対です!」
「……頭が痛くなってきました」
>私は心で雪花に同意した。
ステータス(段々更新されます)
名前:稲生織
性別:女
年齢:16才
【所持ペルソナ】
ドウセツ
アルカナ:?
スキル:ジオ
串刺し
パトラ
イエティ
アルカナ:暴食
スキル:ブフ
突撃
スクカジャ
勇気:5
知識:4
根気:2→3
寛容さ:5
伝達力:3→4
※最大値は10
武器:苦無
体防具:Tシャツ
アクセサリー:シルバーリング
所持アイテム:自室のカードキー
アドレス:壷井遼太郎
春日都
本作の主人公にしてメインヒロイン。
絶望的な状況でも、気合いを入れて立ち上がる男気(?)を見せる……新たな仲間陽菜・K・西原を得た彼女は再びUROへと立ち向かう。
なお顔を改めて見た陽菜に爆笑されて、涙目になったもよう……合掌。
名前:春日都
性別:女
年齢:16歳
【所持ペルソナ】
オイチ
アルカナ:暴食
スキル:ガル
ディア
デクンダ
武器:ブロンズソード
体防具:カーディガン
アクセサリー:御守りの石
本作のヒロインの一人にして仲間。
織の最初の友達、純粋で優しげな女の子らしい女の子。
普段は穏和だが、織に関連する事になると興奮したり、怒ったり、嫉妬したりと大忙し。
陽菜・K・西原もまたスキンシップが多いため、今回の参入は気が気で無かったりする。
新たな戦力(+ヒロイン)加入、初期パーティーはこれで出揃いました。
代わりに丈児の迷走が続く……彼の今後にもご期待ください(真顔)