ペルソナ 本能の牙-alive-   作:新世界のおっさん

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いざリベンジ オブ ポヴァティー!

新たな仲間<東条雪花>を加え、織はより深くUROの闇に沈んでいく……<試練>はまだまだこれから!


the battle of poverty ~Rematch~

>……あれ?気がついたら何故だかベルベットルームに?まあ、ここ……嫌いじゃないけど。

 

「……え?どうして……あの人まだ留守……」

 

>いるのはメイドのシャルロットだけ、イゴール今はいないんだ……じゃあどうして……私何してれば良いの?

 

「……これでも……見る?」

 

>ん?

 

>シャルロットから<ペルソナ大全・罪>を渡された。

 

「それは……貴女が出会ったり……手に入れたペルソナが刻まれる物……今は<ドウセツ>しかいないけど……」

 

>……自分のペルソナを知るのも、必要な事かもしれない……読んでみよう……。

 

>私はページを捲った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ペルソナ大全・罪】

 

<ドウセツ>

 

《アルカナ》???

 

真名は立花道雪。

<鬼道雪><雷神>の二つ名を持つ、戦国時代から安土桃山時代にかけて存在した武将。

文部両道で義に厚い武人だったが、35歳のおりに木陰で休んでいた時、自らに落ちてきた雷を愛刀である千鳥で切り払った際に、下半身不随となってしまった……また、その日から千鳥は別名<雷切>と呼ばれるようになった……と言う逸話がある。

 

 

 

 

 

 

 

>……ふむふむ……勉強になった気がする……。

 

「……また……見たくなったら来てね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<四月三日 時刻:放課後 アパートの自分の部屋>

 

>病院から出た後、全員でUROに入る事は決めた……しかし、その場合どこでログインするかも重要になってくる……いざと言うときバラバラでは何も出来ない……。

 

「こ、ここが織さんの部屋……せ、整頓されてて綺麗だなぁ」

 

「あのさ……お前ら女の子の部屋入った事あるか?俺ないんだけど……めっちゃ良い匂いすんのな……」

 

「いや、俺も無いけどさ……ま、まあ良い匂いかな?一般論でね?」

 

「ちょ!やめてよ、まるで僕ら全員DT丸出しみたいじゃないか!」

 

「私はどう見てもあなた方はそれ以外ないと思ってましたけど?」

 

「「「ーーーーーー」」」

 

>結果……寮じゃないかつ一人暮らしである、私か都の部屋に集まって始めようとなり……多数決で私の部屋に……と言うか私以外皆私の部屋に投票って……どういう事なの……。

 

「し、織さん……」

 

>どうしたのか、都がこそこそと私に聞いてきた。

 

「でぃ、DTって何ですか?私知らなくて……」

 

>……デビルトリガーの略だね、男は引くと悪魔になるスイッチがあるんだよ……たぶん。

 

「な、なるほど……男性って怖いですね……」

 

>……この子は私が守らなきゃ(使命感)

 

>と雑談も程ほどに、そろそろログインする旨を皆に伝えた。

 

「……またあの世界に行くのか……」

 

「それとまたアイツに会わなきゃいけない……しかも今度は倒さなきゃ意味ないんだからな」

 

>洋の言うとおり、今回の目標は<大型シャドウの撃破>なのだ……単純に生き残るよりも大変だろうと私は感じている……強いて言えば、今回はVRMMOについて強い雪花が仲間にいるわけで……そこは以前にない利点である。

 

「話の通りならオーソドックスに武器で殴るだけ……ある意味単純ですが、ペルソナを手に入れてからが本番なのでしょうね」

 

>表情はクールに見えるけれど、どこかうずうずしている……そんな様子の雪花を横目に全員声を合わせる。

 

『ダイレクトリンクッ!』

 

>前同様ボイスコマンドにより、現実の五感をキャンセルし仮想空間に入る、しかし今回はメンバーが沢山だ。

 

「これが……僕の……本気さぁー!!」

 

>丈児はカッコいいのをとにかく選ぶためか、特撮もののヒーローのような特殊スーツとフルフェイスであった……今は必死にポーズをとろうとしている。

 

「突き抜けてんなぁ」

 

「流石にあそこまでは無理かな……うん」

 

>北斗はどこぞのストリートファイトしてそうな、白い胴着とハチマキ……洋は本当にデビルトリガー引けそうな、スタイリッシュなロングコートを着込んでいる、色はグリーンだったが。

 

「狐と鷹ですか……どちらもイメージとしてはピッタリかもしれませんね」

 

「えへへ……それなりに頑張って選んだんだよ?雪花さんは重装備だね!カッコいい!」

 

>雪花はメタリックパープルの重金属鎧でガチガチに固め、耳が尖ったエルフ耳になっている……その手のゲームや薄い本とかに出てそう(直球)

 

「それで……この<アンダーロード・オンライン>を起動すれば良いんですよね?」

 

>さっさとログインしたかったのか、UROをパッパと起動してしまう雪花……あっ、そう言えば落ちるって事言い忘れてた。

 

「えっ?ってきゃあ!!」

 

>気がついた時には彼女は落ちてしまっていた、致し方ないと他メンバーに先んじて私はUROを起動……暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<時刻:放課後 祭壇>

 

>どうやら今回は意識を失う事なく、闇を抜け、祭壇が見えた辺りで落ちる速度がゆっくりになり、安全に降りられた。

 

>前を見ると、ジト目で私を睨み付ける雪花がいた。

 

「……情報開示をもっとしっかりしてほしかったです……」

 

>そこは私も謝ったが、まさかあんなに素早く起動するとは思ってなかった事もまた事実だったので、それを彼女に伝えた。

 

「そうですね……足並みを乱した私も責任がありました……すみません……」

 

>分かってくれた様なので、ホッとし、とりあえず他のメンバーが落ちてくるまで武器選びを推奨した……種類がかなり豊富故に迷うと思ったからだ。

 

「了解しました、ではあそこの行商人で良いんですね?」

 

>私は頷き、彼女に付いていく……世界観の説明だけは今日の朝に説明したので、老婆の横を二人でとおり過ぎようとして……突然彼女が私を見てこう呟いた。

 

『ペルソナは貴女自身だ……努々お忘れなさるな……』

 

>……彼女の言葉はとりあえず胸にとめておき、そのまま行商人の元へ行った。

 

「……ここ、武器と最低限の消費アイテムしかないですね……まあこれが基本の鬼畜ゲーの可能性がありますし、武器はともかくアイテム購入は慎重にしときましょう」

 

>そう言って雪花が真っ先に購入し、装備したのは両手鎌……単発の攻撃力が優れている武器だ……反面両手斧よりはマシだが、重たいので基本振るのが遅い。

 

「私はこれが一番しっくりくるので……」

 

>雪花は嬉しそうに鎌の刃を指でなぞっている……ちょっと怖いと思った……。

 

「着きましたね」

 

「気を引き締めないと……」

 

>と、皆がぞろぞろと来たので合流してから全員の装備を確認することに。

 

「私は片手直剣です、一番扱いやすそうだったので」

 

「僕は拳銃、援護はお任せってね!」

 

「俺は両手棍だ、打撃に弱い奴は任せとけ」

 

「短剣だ……小回りが利くし、割りと万能だ」

 

「そして私が両手鎌、稲生さんが短刀……遠距離武器が少ないですね……前後衛が揃ってますのでそこまで悪くはありませんが」

 

>さて、状況を確認した所で、とりあえずこの中でリーダーをするべき人物は……。

 

『あんただろ』

 

「まあ、それが安牌だと思います……力がある人間ですものね」

 

>……そりゃペルソナを持っている時点で生存率高い私がリーダーでも問題はないのだけれども……少しは迷って欲しかった気も……いや、こう言う展開も嫌いじゃないけども。

 

>まあ、任された以上仕方ないと私が先頭をきり祭壇から出発……とりあえずあることを信じて、道なりに次の町を目指しつつ、大型シャドウは見つけ次第撃破と目標を定めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<時刻:夕方 平原>

 

>最早祭壇の姿が見えなくなるまでの距離を移動してきた……カラスらしき鳴き声や、歪な形の植物など、周囲一帯の雰囲気がより陰湿になってきた……。

 

「二人はこの辺りまで来たことあるのかい?」

 

「いやいや、俺達もここまでは初めてだわ」

 

「俺達も昨日で二日目だしな……」

 

>どうやら北斗と洋、そして拓海の三人は祭壇近くからあまり動いた事はなかった模様……となるとマップが無い中、直感で動くしかない。

「稲生さん、少し調べたんですがよろしいですか?」

 

>先頭を歩く私の隣に、雪花はやって来てなにやら話があるらしい……VRMMO経験者の彼女の意見は役に立つはずと、私は彼女が話す事を了承した。

 

「どうやらこの世界……UROのシステム内には<レベル>と言う概念が存在していません……それどころか能力値やスキルに振り分ける<ポイント>などもです……」

 

「つまり……RPGとかで良くある、レベルを上げたり、ポイントを使ったりして自分を強化したり出来ないって事?」

 

「本当だ……良くメニューのステータス画面見てみりゃ<空欄ばっかりだ>……」

 

>周りがやった様に私も試しにステータス画面を開いてみる、すると能力が表記されている……と言うことは。

 

「やはりそうでしたか……そもそも<ペルソナ>を所持していないとゲームとしてはほぼ成り立たない……<等身大の自分が、この場に放り出された様なものですね>……」

 

「ははっ……完全に殺しに来てるじゃないか、糞ゲーも良い所だよ!これ!」

 

「それでもこの世界は消えないし……拓海も戻ってこない……チッ、マジくそったれだな」

 

>彼女の言葉に、苦笑いになりつつも明るく振る舞おうとする丈児と、忌々しげに舌打ちと苦言をもらす洋……その気持ちは良く分かる。

 

「<ペルソナ>を持ち、それが育てば所持者も強くなる……恐らくこのゲームは、<ペルソナ>を持っている事が大前提なよう作られている……そう推測出来ます」

 

>もし、雪花の推測が正しいのならば……このゲームの運営は<ペルソナ使い>を求めているのではないか?私がリアルで<ドウセツ>を呼び出せた事を考えると、それはより信憑性を帯びる……まさか、UROとはゲームの皮を被った……。

 

「ッ!シャドウだ!」

 

「だが<小型>だ、こいつらなら武器だけでも、立ち回りをしっかりすれば無傷でやれる!」

 

>私の思考を打ち切るように、アメーバやスライムのような<小型シャドウ>が6体突然涌き出てきた、全員武器を構えて応戦する。

 

「私が前に出ます!」

 

>そう言って先陣切ったのは雪花、シャドウの前で特殊な構えをとる……が何も起こらない。

 

「……やはり、<ソードスキル>による<システムアシスト>の様なものも存在しない……仕方ありませんね!」

 

>雪花は最初の特殊な構えから、そのまま腰だめに移行し、遠心力をかけながら回転して横に思いっきり凪ぎ払う……シャドウは全個体が巻き込まれていた。

 

「Oh……」

 

「まさか纏めてとは恐れ入ったわ」

 

>6体中4体が霧散し、2体は瀕死で楽に倒せるだろう……雪花に礼を言おうと彼女の方を見ると、彼女も瀕死(?)だった。

 

「……ふぅ……本当にリアルと変わらない……キツイですね」

 

「だ、大丈夫?」

 

>この様子だとリアルでの身体能力も、UROでは要求される模様だ……父さんのDNAのおかげか、私は身体動く方でよかった……。

 

「後は任せてくれよ、ぶち抜けぇ!」

 

「死ねこら!」

 

「おうこら!」

 

>死にかけのシャドウに群がる男子勢は、何かすごい一体感を感じる……今までにない何か熱い一体感を……風……なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、彼らのほうに。

 

「これじゃあ、どっちが悪者なのか分からないよ、織さん」

 

>良いんだよ、皆生きるのに必死なんだ……私はそうとしか彼らを表すすべがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<時刻:夕方 ???>

 

>たびたび遭遇するシャドウの波を抜けた私達は、ようやく街に入るための巨大な門らしきものを見つけた……。

 

「ようやく一息つけそうだね、長かったよ~」

 

「……今日は良い時間だし……街でログアウトしたら切り上げかな?」

 

「本当は今日中に何とかしたかったが……皆疲れてるしな、仕方ない……」

 

「何でも良い、歩くのはうんざりだ……」

 

>全員戦闘と長い距離の徒歩でかなり精神を削っている……早急に街で休む必要があるみたいだ、どうするかはその後でも良いだろう。

 

>私は門前に立つ、巨大な門は微動だにせず私達には反応を示さない……何かアクションが必要なのかと門を叩くと、赤いシステムメッセージが表示される。

 

「<イベントが発生しました、圏内侵入をキャンセルします>……?」

 

「……ッ!これは、嫌な予感がします!」

 

>雪花はそう言って、武器を抜き出す……そして私もそれに同意見だ、何故なら先程から音が鳴り止まないからだ。

 

>それに伴い戦闘体勢に入った……とその時、猛スピードでこちらに迫る巨大な影があった……間違いない、<あのシャドウ>だ。

 

「来やがったな!化け物!」

 

「あれが……確かにこの感覚は……ッ!」

 

>影は私達の前に制止し、その姿があらわになる……四足歩行の獣の頭に人間の腕が生えている、まさしく前に遭遇したのと同一の個体だ。

 

「……あれ?」

 

「どうかした?都ちゃん……?」

 

「あのシャドウ……織をずっと見てる……?」

 

>都の言葉は正しい……あいつは私しか見ていない、以前撃退された事を根にもっているのか、怒りの咆哮をあげる。

 

>すると、シャドウに異変が起こる……頭がボコボコとを音をたてて歪み、少しずつ形が変わる。

 

「……お、おい……」

 

「これは……」

 

「ひ、人が生えたぁ!?」

 

>なんと腕をそのままに、人間の身体と頭が生えてきたのだ……ゲームやアニメチックに言うなら第二形態と言った所か……さらに周囲からは<小型シャドウ>も集まってくる。

 

「ッ!仕方ありません、ここは分散して各個撃破しましょう!……本当にすみませんが、あれは貴女にお任せしてもよろしいですか?恐らくですが、生身の私達は寧ろ邪魔になるかもしれませんし……!」

 

>私は雪花に頷き、自らは前を見据え大型シャドウと対峙する……この戦いでケリをつけるッ!

 

>覚悟と共に苦無は小太刀に変わる、鞘と柄を持ち正面に構え、叫ぶ。

 

『ペルソナッ!!』

 

>パキィンッと言う音が鳴り、背後にドウセツが現れる……さぁ、リベンジマッチだシャドウ……ヤツもまた待ちわびた様に咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドウセツッ!』

 

>先に仕掛けたのは私だ、少なくとも前回は力で勝っていた、今回はどうかは分からないがドウセツは大太刀で斬りかかる。

 

>しかし、読んでいたとばかりに大太刀は人型の腕に防がれ、獣型から攻撃が飛んできて、私はまともにくらってしまう。

 

『クゥアッ!』

 

>私は急いで体勢を立て直すが、シャドウはここぞとばかりに畳み掛けてくる……人型はその腕から冷気のスキル<ブフ>を放ってきた。

 

『ッ!ジオッ!』

 

>まさかスキルを放つとは思わなかったが、ギリギリ雷のスキル<ジオ>の発動が間に合った……二つのスキルがぶつかり合い、周囲に分散してしまう。

 

「キャアッ!」

 

「稲生さん!危ないです!」

 

>すまない皆、周りへの配慮が足りなかった……とは言えどそれで負けたら洒落にならないから多少は許してほしい。

 

>さて、私は次どうするべきか……恐らくただ斬りかかれば、先程の二の舞……スキルを使えば周りに被害が出てしまう……となれば!

 

『行けっペルソナッ!』

 

>私はドウセツに指示を出して串刺しの体勢にはいる、すると当然人型は防御の体勢に入る……そこが付け入る隙だ!

 

>ドウセツが動くよりも僅かに早く、小太刀を抜き走り出す……そのすぐ後にドウセツが行く、人型はドウセツの技の方が威力が高いためそちらを優先して守る……結果獣型のガードが空くため、そこを私が斬りかかる。

 

>当然そこは簡単に行くはずはなく私に獣型の爪牙が迫る……しかし、私はドウセツのおかげかかなりの敏捷性<AGI>がある……なんなく懐に滑り込み、頭部に刃を突き立てる。

 

>黒い液体を頭部から吹き出し、悲鳴をあげるシャドウ、その時人型の体勢が揺らいだッ!……私は直ぐ様頭を蹴って離れ、そこにタイミング良くドウセツの串刺しが入った。

 

>グラリと倒れもがくシャドウを見て、これは好機と全員に指示を出す。

 

『皆!行くよ!』

 

「ッ!はい!」

 

「よぉしッ!」

 

「トドメといきましょうか!」

 

「一気に叩く!」

 

「<拓海>の……仇だ!」

 

>カッ!(総勢六人のカットイン)

 

『エイトウッ!エイトウッ!』

 

>完全なる袋叩き、因果応報とは良く言ったもので、今まさに皆の怒りが爆発しシャドウをボコスカ殴り斬り撃つ。

 

「これで本当にトドメッ!」

 

>最初は怯えていただけの都は、皆の怒りに触発されて今は率先して斬りかかり、最後は綺麗にトドメを刺した。

 

>彼女が直剣を引き抜くと、シャドウは断末魔の叫びをあげ、動かなくなる……肉体が泥々になり、中から光が飛び出し私の中に吸い込まれた。

 

「今、織ちゃんの中に……?」

 

「何ともないのか!?」

 

>丈児と北斗が心配してくれるけれど、私は問題ない……寧ろ何か満たされるような……そんな感覚がする。

 

『オデヲツカマエラレッカ?ア、オメハオデカ、ナハ!』

 

>光の正体が私に話しかけてきた、その姿は白い毛に覆われた獣人と言った感じだ……これが私の新しい<ペルソナ>。

 

>新たなペルソナ、韋駄天雪男<イエティ>を手に入れた……。

 

「大丈夫なら良いのですが……それと気になるのはこれですね」

 

>雪花は躊躇いなく泥の中から、白と金の装飾の美しい鞘を取り出す……見た所片手剣用の鞘だろう。

 

「もしかして、誰かの持ち物とかじゃ……」

 

「あり得るね、あいつだし」

 

>しかし、何故鞘だけ残っているのだろうか……少なくとも鞘が残っているなら剣自体や、他のプレイヤーの鞘なども残っていたりしてもおかしくはないはず。

 

「まあ、私が持っていても仕方ありません……片手剣系ですし、最後の一撃は春日さんでしたから、これは貴女の物と言う事で」

 

「え……本当ですか!じ、じゃあ貰っちゃいますね!」

 

>若干嬉しそうに鞘を受けとる都、すると突然鞘が光を放ち、雪花の手を弾く。

 

「なッ!?」

 

「こ、これ……!まさか……ッ!」

 

>光は都を覆い、背後に身体が着物の様にヒラヒラとし、頭に桜の花が二房髪飾りの様にくっついている、白い長髪の女性型の何かが現れる……。

 

『我は汝、汝は我……わたくしは貴女様の心の海より出でし者……魔王が妹<オイチ>にございます』

 

>それはまさしく都のペルソナであった……そしてあの鞘は<召喚器>であったわけだ……最初に触れた雪花ではなく、都の物になったのには何か理由があるのだろうか……。

 

「凄いね都ちゃん!君まちがいなく今<ペルソナ使い>になったんだよ!」

 

「おうおう、やべぇな!あんな風になるのな!」

 

「おめでとう、とりあえず祝福しとくぜ」

 

>みんな口々に都に賛辞を贈る、彼女は目尻に涙をためながら本当に嬉しそうに笑った。

 

「私……私……頑張ります!これで、やっと織さんと本当の意味で肩を並べられますから!」

 

>私は……

 

>選択肢:

一緒にがんばろうね!

 これからは頼りにさせて貰うね(ニッコリ

→無言で抱きしめる(要:勇気5以上)

 

「あっ……織さん……嬉しい……」

 

「オーマイガァッ!」

 

「ひゅー!ひゅー!」

 

「だ、大胆だな」

 

>都の好感度がググンッと上がった……都は私の胸のなかで、モジモジとしている。

 

「あの……織さん……私、貴女の為ならどんなピンチが来ても逃げたりしません……ずっと、側にいます……」

 

>どこからか声が聞こえる。

 

『我は汝……汝は我……汝、新たなる絆を見出したり……絆は即ち、まことを知る一歩なり……』

 

『汝、<暴食>のペルソナを生み出せし時、我ら、更なる力の祝福を与えん……』

 

>コミュニティ<暴食>を手に入れた……都は微笑みながら私を見ている……。

 

「…………」

 

>一方で、雪花は黙って都を見ていた……しかしその視線はあまり良い印象の物ではなかった……。

 

「さて、当初の目的は果たしたし、早くあんなか入ろうぜ?もう俺疲れちまったよ……」

 

>っと、そう言えば北斗の言う通りだ……私は都を腕から解放し、門に向き直る……その時だった、ドスッと言う妙な音が聞こえたのは。

 

「えっ……」

 

「は?」

 

「なっ」

 

「ほ、ほっ……」

 

>私はその音がした方に目を向ける、それは信じられない光景だった……だってそれはあの北斗が<巨大で鋭利な何かに貫かれているからだ>……。

 

「ガハアァッ!?」

 

「北斗おぉぉぉぉ!!」

 

>シュルシュルと音をたてて、北斗は上に吊り上げられ、思いっきり地面に叩きつけられる……彼の身体はひしゃげ、頭はおかしい方向に曲がっていた。

 

「あ……ああ……そんな……」

 

「何でこんな……」

 

「ウゥッ……」

 

「どうなってんだ……チクショウッ!」

 

>北斗を殺したのは、地面から生えた<植物>であった……それは地面を揺らし外にその全容を現す。

 

>中央に女性の人型シャドウが生えており、周囲から鋭利な槍の様になっている蔓があり、うねうねと蠢いている。

 

「また……大型……!」

 

>はっきりと分かることは、このシャドウはさっき倒した獣型よりも強い事だ……対峙しているからこそ、はっきり分かった……そして……私は急な事で完全に対応が遅れていた。

 

「ッ!危ないッ!!」

 

>迫ってくる蔓……私が動けない中、私を守るために洋が……私を突き飛ばした。

 

「洋君!」

 

「グゥッ!」

 

>蔓は彼を貫かず、巻き付き、上に持ち上げた。

 

「そ、そんな……」

 

「やめろ……やめてくれよぉ!これ以上は!」

 

>絶望的だった、なのに洋はそんな状況なのにも関わらず笑ってみせた……。

 

「稲生さんよ……これで……借りは返した、ぜ……だからさ……頼む……こいつを……倒してくれ……倒して俺たちを……救ってくれよな……」

 

>次の瞬間……洋はバラバラにされた……無慈悲に、残酷に……シャドウは血を浴びて笑い声を上げる……心底楽しそうに。

 

「何が……何がおかしいんだよてめぇは!!!」

 

>私は驚いた、シャドウの行動が余りにも度を超えていたとは言え……あの丈児が怒り、大声を張り上げ、拳にぎりしめ血を流している。

 

「あいつらはなぁ!!やっと仲間が救えたって!!嬉しそうに微笑んでたんだ!!やっとこれから普通の生活に戻れるってなぁ!!」

 

「丈児君……」

 

「…………」

 

「それを……大した罪もねぇ人間を次から次へと殺しやがって……!!ふざけんなよてめぇ!!」

 

>丈児の言葉に込められた熱が……北斗と洋の無念が……私達の身体を突き動かした。

 

「織さん……やりましょう!倒しましょう!」

 

「……いくらなんでも、力があるからとそれを自己の欲望の為だけに振るう者はヘドが出ますね……ッ」

 

>武器を構え、全員でシャドウに対峙する……勝てるかは分からない……寧ろ負ける可能性の方が高いだろう……だからと言って逃げ場もないのだ……せめて一太刀でもと考えていた……その時だった。

 

「何熱くなってんのさ……そんな状態で勝てるわけないじゃん……めんどくさい奴ら!」

 

>突然声が聞こえ、私達はハッとしてその声が聞こえた方を見ると、呆れた様子で突撃銃<アサルトライフル>を担いだ少女が私達を見ていた。

 

「無駄に命張ろうとするやつは面倒だからあたしは嫌い……特にペルソナ持ってない奴は論外じゃん」

 

「な、何なんだよあんた!」

 

「……その通りです、いきなり横から口を挟まないで下さい……」

 

「あ、あの……そんな言い方は……」

 

>彼女の発言に、丈児と雪花は猛反発、都もあまり快く思ってない様子……私は……。

 

>選択肢:

正直関わりたくない

→良かったら手を貸して欲しい(要:寛容さ4以上)

 

「織ちゃん!?」

 

「ッ!何故……」

 

「織さん……」

 

「……へぇ……」

 

>??の好感度が上がった……さらに寛容さが上がった……。

 

「話の分かる奴はあたし好きよ?んじゃ手は貸すから、後で代金の請求させて貰うわね♪」

 

>そう言って笑った彼女は、メインメニューを操作してパーツの様な物を実体化させ、サプレッサーの様にアサルトライフルの銃口に連結させる。

 

>その後、アサルトライフルを構えると彼女の周囲にオーラが湧き出る。

 

「やっちまいな!<ダッキ>!」

 

>彼女が引き金を引くと、パキィンと音が鳴り、黒を基調としたかなり際どく見える身体に、赤い髪の上にウサギの耳の様な物が付いていて、手には彼女同様アサルトライフルを持ったペルソナが出現した。

 

「<プリンパ>!」

 

>そう言って再び彼女が引き金を引くと、ペルソナ<ダッキ>もまた、大型シャドウに向かい引き金を引いた……放たれた弾丸がシャドウに着弾すると、突然様子がおかしくなり、頭を抱えて奴は逃げ出していった。

 

「ほら、こんなもんよ」

 

「ちょっ!逃がしてどうするんだ!」

 

「……貴女まさか最初から協力するつもりないのでは?」

 

>丈児と雪花は彼女の対処にかなり不満なようで、怒りのご様子だ……都は寧ろあっさりと大型シャドウを撤退させた彼女の手際に呆然としていた。

 

「は?いつあたしがあんたらの復讐に付き合うなんて言ったよ?あたしはあくまで現状あんたらが打破出来ないアイツを何とかするのを手伝っただけだし」

 

「なっ……」

 

「それは詭弁です」

 

「何とでも言いな、第一あたしが取引したのはめんどくさいあんたらじゃなくて……そこの茶髪の娘だしね!」

 

>二人をさらっとあしらって、彼女は私の元へやってくる……その容姿は金髪をポニーテールにした碧眼で、目付きがキッとしており、身体はケブラースーツで身を固めている……彼女は笑って自己紹介した。

 

「あたしは陽菜・K・西原!貴女は?」

 

>ここは素直に自己紹介するべきだろう、名乗られたら名乗り返すのが礼儀である。

 

「えっ……<稲生>……マジ?」

 

「……?」

 

>突然私の名字に反応を見せる陽菜……そこまで反応するほど珍しくもない気がするんだけれども。

 

「なぁるほどね……やっぱ縁と言うか、因果と言うか……まあいっか、それならより協力する理由が出来ただけだし……ま、よろしくね♪」

 

>そのまま陽菜が門に近づき、叩くと扉が開かれる。

 

「さて、初心者しかいないだろうからさ……めんどくさいけど教えてやるよ……ようこそ、<くそったれな世界の楽園モータル>へ!」

 

>ここへ来て改めて……自分たちは無知な存在だと知る事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステータス(段々更新されます)

名前:稲生織

性別:女

年齢:16才

 

【所持ペルソナ】

ドウセツ

アルカナ:?

スキル:ジオ

    串刺し

    パトラ

 

イエティ

アルカナ:暴食

スキル:ブフ

突撃

スクカジャ

 

勇気:5

知識:4

根気:2

寛容さ:4→5

伝達力:3

※最大値は10

 

武器:苦無

体防具:Tシャツ

アクセサリー:シルバーリング

 

所持アイテム:自室のカードキー

 

アドレス:壷井遼太郎

     春日都

 

本作の主人公にしてメインヒロイン。

何とかボヴァティーを仲間とともに攻略するも、直後の新たなシャドウに冷静な対処が出来ず、木下北斗と牧原洋の二人を失ったショックは大きかった。

新たなペルソナ使いになった春日都の事は素直によろこびたいが、先述の二人の死による南場丈児の変化と、都と陽菜・K・西原に対する東条雪花の暗い感情に頭を悩ませている。

<西原>と<稲生>の関係もやはり知らない……今後どうなっていくのかは、やはり織次第であろう。

 

 

 

 

名前:春日都

性別:女

年齢:16歳

 

【所持ペルソナ】

オイチ

アルカナ:暴食

スキル:ガル

ディア

デクンダ

 

武器:ブロンズソード

体防具:カーディガン

アクセサリー:御守りの石

 

本作のヒロインの一人にして仲間。

織の最初の友達、純粋で優しげな女の子らしい女の子。

仲良くなってからは、積極的に関わってくる……しかし、俗世に疎く騙されやすい一面もある、要注意。

料理は下手ではないのだが、かなりの甘党なため、せっかく美味しく出来た料理に砂糖を足しすぎる悪癖がある、激注意。

ペルソナを得て喜ぶものの、悪化する状況に不安を感じ、唯一織を純粋に案じている。




ムダ知識☆アメーバ状の小型シャドウの名前はサティエイション、英語で飽食と言う設定です。

そして新キャラにして、再び稲生に縁のある<西原>の血統の登場……死亡してしまった二人!さらに新たな大型シャドウの出現……一話で色々起こりますね(笑)

織の新たなペルソナと、都のペルソナの活躍にもご期待くださいませ(´ω`)

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