宮永照がいる清澄はやはり反則的なまでの強さを見せていた。大将に回ることなく、照の独壇場で他家を飛ばしてしまうので、決勝までははっきり言って、余裕の一言に尽きた。
決勝戦がはじまる一時間前に控え室で最終確認として、他校について話し合う。
「やっぱり一番怖いのは天江衣ね。去年は最多獲得を記録しているし。でも、隙はあるわ。わざと0点にして反応を楽しんだりしてるから、その驕りを突けば何とかなるわね」
(天江衣。牌譜から見るに間違いなく牌に愛された子。となるとこの高火力は一面だ。他にも何かあるはず。和が大将だから、手を悪くする支配系は効かないからロンに気をつけてれば大丈夫。それか私が副将で決着をつけるか)
照には一つ気がかりがあった。
副将の龍門渕透華だ。インターハイにて突如打ち筋が変化し、点数を稼いでいる。そこでは他家が透華に恐れをなしたか、他家を飛ばして勝利しているが。
「副将と大将の二人は厄介そう。後はまあ気にしなくても大丈夫。鶴賀の牌譜が少ないのは気がかりだけど、まあ問題ないかな」
「そうですね。後はいつも通りに打つだけです」
「私も本気でいくじぇ!」
「わしはのらりくらりやるかのう」
「ふふふ。優勝して全国行くわよ」
通常なら負けはない。インターハイチャンピオンがいるチームで、更には全員の気持ちはこの上なくいいものだ。気持ちはプレッシャーに負けておらず、逆にプレッシャーがいいものとなっていた。
時間が来たので優希は対局室へ。
最終確認中に暇になり、お腹が食べ物を欲したので本能的にタコスを食べた。おかげで今はほどよい満腹感とタコスパワーに溢れている。
(よし、暴れてやるじぇ!)
川を見下ろす少女がいた。彼女のいる場所は他よりも突き出ており、人一人が座るスペースぐらいしかない。コンクリートで周りを固められた川は自然にあるものよりも何処か窮屈そうに見えた。
川を見下ろす少女を執事が迎えに来た。
「衣様、そろそろお戻りになられた方がよろしいかと」
「もう時間か?」
「はい。今先鋒戦が開始しました」
「して、今回の相手に面白そうなのはいるか?」
「副将には昨年インターハイチャンピオンになった宮永照がおりますが、大将は牌譜がなかったのでわかりませんでした」
「宮永……? 今そう言ったか?」
「はい。宮永照です。顔立ちや髪型が似ておられるので、咲様の親族、それも姉ではないかと」
「大したことはない。副将はエースが最も少ない。そこにいる時点で底が知れる。ハギヨシ、以後そいつを咲の姉と言うな。不愉快だ」
「申し訳ありません。以後気をつけます」
「では戻るとしようか。咲と淡が全国で待っていることだしな。早々に終わらせるとしよう」
全国屈指の魔物の一人、天江衣。初見では小学生と勘違い、いや初見でなくとも勘違いする容姿だが、麻雀に関して言えばそこらのプロなど一蹴するほどに強い。
「さてさて、少しは楽しめればよいのだが……まあ期待しないでおくか」
久のミスがあるとすれば、衣が一年前のインターハイの時のように対戦者を遊ぶと思っていたことだ。残念ながらそれは過去の話であり、今の天江衣は遊ぶことはしない。
「今宵は満月。衣が最も力を出せる日だ。全員飛ばすあるのみだ」
自信に満ちた笑みを浮かべた。
先が長いことに今更ながら気づきました。しかもまだ県大会という。いったい何話書くことになるのやら