咲と照のセリフと高校が逆だったら   作:緋色の

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点数矛盾に早くも怯えております


第3話

 前半戦で50000点ものプラスをした咲は後半になると攻撃的な一面から一転して守りへと切り換えた。

 

 前半戦でも振り込まず、更には高い手を流すことをしてきた彼女の守りは固く、差を縮めさせることはしないで次へとバトンを渡した。

 

 これで和や優希と同い年と言うのだから驚きだ。世界が違う。そう言ってしまうほどに格が違った。差がありすぎるせいで初心者とプロぐらいの差に見えた。

 

「これが宮永さんですか」

 

 和は短い期間ではあったが、一度だけ咲と同じ麻雀部にいたことがあり、しかし会話は一言二言だけだった。はじめから誰とも関わろうともせず、さっさとインターミドルチャンピオンの座をとって、転校していった。

 

 同じ部には宮永照がいたので、そちらと仲のよかった和と関わりたくなかったのか、転校するから話すことはしなかったのか。どちらもあり得るだけに確信は得られない。

 

 和と優希は宮永照との麻雀から大会への出場よりも地力を上げることを優先したので参加はしていない。

 

 直接打ったわけではないので、映像だけでは完全に実力を見抜けないが、手も足も出ないというのだけはわかった。

 

「あれかの。この妹さんは後半は守りに回るタイプで、攻撃には出ないじゃろか?」

 

 まこの疑問に和と優希はそれで合ってると考え、だが部長の久が愉快そうに否定した。

 

「んなわけないじゃない」

 

「しかし、実際に守備に徹してますよ。これだけで断言はできませんが、染谷先輩の意見は正しいかと」

 

「フェイク」

 

「そっ。照の言うようにフェイクよ。宮永咲は後半は守備に回ると印象付けたいのよ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください! それでは宮永さん……咲さんはまだ」

 

「そうよ。本気出してないわよ。中学の時の妹さんは前半戦の打ち方をしてきてるのよ。白糸台に入学してからはあの打ち方にしてるけど。多分監督にそうするように言われたんじゃないかしら」

 

「なるほどのう。つまり、白糸台は三連覇のために妹さんの打ち方が変わったことを世間に広め、インターハイでそれがまやかしじゃったと土壇場で暴露することで選手の動揺を誘い、優勝を掴む腹積もりか」

 

「そっ。前半戦での打ち方にミスがない咲が変える必要はない。あれは間違いなくミスリード」

 

「それでも他校を圧倒してるじぇ」

 

(小さい時は咲の能力は点数調整に見えたけど、正確にはあれは打点調整。嶺上開花もカンもその副産物。単純、それ故に強力な能力)

 

 照の打点上昇に近いところもあり、やはり照と咲は姉妹なのだと思わせる。幼い時は仲良しだったこともひょっとしたら能力に影響したかもしれない。

 

 違う点は打点上昇とは異なり、打点調整には弱点となる制限がない。とはいえ、あくまで制限だけを見たらの話だ。ある条件が発動すると、咲は一時的だがカンができなくなる。

 

(でも地力が高いから)

 

 隙と言うには少々頼りないものだ。

 

 その僅かな隙となる部分を突ける照も、組合せ次第では戦うことはなくなるので、運任せと言えた。

 

 表情を変えずに映像を見る照の隣に来た久は小声で話しかけた。

 

「いけそうね」

 

「同い年に咲みたいに強いのがいると知ったら、みんなやる気出したね」

 

「作戦通り」

 

 悪い顔で笑う久に照は内心で笑みを浮かべ、DVDプレイヤーの電源を落とし、練習を再開させた。




咲の能力については個人的見解です。照のギギギが知りたいですが、謎ですし。国士という予想もありますが、不明なのでギギギは出しません。すみません。

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