咲と照のセリフと高校が逆だったら   作:緋色の

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インターミドルでの出来事が入ります。


第18話

「うわ、意外とやばいですよー」

 

「ごめんね。いっぱい点とられて」

 

 二位と三位との差が小さいことに、初美は危機感のない声でやばいと言った。それに巴は申し訳なさそうにするが、初美はやはり危機感のない声で返事をした。

 

「だいじょうぶですよー。副将になれば私が稼ぎまくりますので」

 

「頼もしいわね。でも、先鋒は予想外だったわ。てっきり互角以上かと思ってたんだけれど」

 

 霞は落ち着いた様子で話す。予定としては小蒔と咲は他二人を狙い撃ちし、息も切れ切れの二校を落とす予定であった。流石の咲も小蒔には一苦労すると思っていたが、彼女の力は想像を絶するもので、最強状態の小蒔をいとも簡単にいなした。

 

 点数は先鋒終了時で永水は十七万点オーバーのはずが、ずっと低いものに終わった。更にそこへ白糸台のシャープシューターによる狙い撃ちもあって、ほぼ原点まで戻された。

 

「姫様なら余裕だとおもってたんですが、やはり牌に愛された子は恐るべしでしたねー」

 

「姫松は次エース。危険」

 

「そうねえ。あの子は強いものね。しかも最下位だからあがれるところはきっちりあがるでしょうし。流すのが無理なら防御でいいわよ」

 

「うん」

 

「はあーう……そんなにたくさんは無理です」

 

「姫様は相変わらず寝てますね。やはり最強の神の負担は大きかったんでしょうか?」

 

「でも、いつも寝てますからねー。天然かも」

 

「いいじゃない。小蒔ちゃんの寝顔は可愛いんだから」

 

「か、霞ちゃん、駄目です。初美ちゃんは…………ああ……」

 

「私に何が!?」

 

「霞さんに何をされたのか気になりますね」

 

「うーん。夢からして食べ物だろうし、食べさせすぎたのかしら?」

 

「御愁傷様」

 

「酷い! 私は生きてますよー!」

 

「じゃ、行ってくる」

 

 滝見春はポリポリと黒糖を食べながら、現在の永水の点数に特に思うところがなさそうな様子で控え室から出る。扉を閉める前に、

 

「はるる、飛ばしてくださいよー!」

 

「頑張ってね」

 

 初美と巴の応援が耳に入った。一番年下である自分にも優しい人らに囲まれていることが嬉しい。もっと厳しい態度をとってもいいのに、彼女たちはそうしてこない。小蒔には至っては厳しくするどころか甘えてくる始末だ。が、やはりそれさえも嬉しく思っている。

 

(でも、私には火力がないから、点数を維持するだけ)

 

 彼女は咲と同じように相手が手を張ったら流すということをしてきた。火力は乏しくとも、大きな手が出にくい場とするので、江口セーラのような大きな手ばかりを狙う選手には嫌な相手と言える。

 

 

 

 

 

 

 姫松から出るのは主将の愛宕洋榎が出る。非常に安定したプレイヤーで、防御を得意としている。そして、多くの大会でプラス収支を記録するなど、他の部員と格が違うのがよく分かる人物である。

 

(宮永……直接やりあえんのは残念やけど、まあええ。この中堅で二位にしたる)

 

 一位を目指したいところだが、先ほど述べたように洋榎は防御を得意としているので、神代小蒔、天江衣、宮永咲、宮永照、大星淡といった超攻撃プレイヤーのように大量獲得は厳しく、十万点も差がある現在では逆転は現実的ではない。

 

(インターミドルの借りは個人戦で返したる)

 

 インターミドル最後の試合にて愛宕洋榎は宮永咲と出会う。

 

 決勝卓にいたセーラと会話をして待っていた。

 

「去年はやられたけど、今年はオレが優勝するからな」

 

「アホいえ。今年もうちがやったるわ」

 

 このインターミドル個人戦決勝は愛宕洋榎と江口セーラの最後の試合とあって、どこも騒いでいた。ついに二人の因縁に決着! セーラと洋榎のインターミドル最終試合! などと言われ、二人はそれを悪くは思わず、むしろもっと騒がんかいと思っていたぐらいだ。

 

 二人に遅れて来たのは同い年の名前も知らない生徒と、中学一年生の宮永咲だ。

 

 肩より下ぐらいの長さの栗色の髪の毛。表情には緊張の色はなく、しかし柔らかさのない固い表情だ。真剣な面持ちと言えばいいか。引き締まった顔つきには年の差を感じさせないものがあれど、

 

(オレらの対決に水を差さなええけど)

 

(なんやガキか。いっちょ揉んだろか)

 

(勝って白糸台に行くんだ。あんな家になんかいたくない)

 

 この時の宮永咲はまだ今ほどの強さはないといえど、自分を育ててくれた師匠的存在の人のためにも負けられない戦いであった。家族を嫌い、離れるために東京に行きたいと願い、しかしその願いには自分の目的もあって。

 

(大丈夫。この人たちはあの人たちほど強くない。勝てる)

 

 いざ試合がはじまると、咲はその身に宿した強大な力を発揮した。まだ完璧には扱えず、振り回され気味ではあったが、勝つには問題なかっただろう。

 

「リーチ」

 

(オリとこか)

 

(親リーやし、オリ)

 

 咲の手牌。

 

 一一一⑦⑧⑨⑨⑨78999

 

 観客席にいた大人たちはそれぞれの感想を口にする。

 

「手を変えるから待ってたと思ったら変えずにリーチかよ」

 

「高め自分で使ってんのにリーチって」

 

「やっぱ中一はこんなものかしら?」

 

 一方の咲は鳴きが入らなかった状況によし、と心の中で呟き、次の牌をツモり、手元に持ってくる途中で指で感触を確かめ、やっぱりと喜ぶ。

 

 念のために目で確認してから宣言した。

 

「ツモ。リーチ一発ツモ純チャン。6000オールです」

 

「あいたたた」

 

「やっぱ大きいのかい。嫌なスタートやわ」

 

 一本場に入って、咲は同じような手をテンパイした。今度は迷わず即リーチをかけた。

 

(まさか、な)

 

(鳴けん)

 

「ツモ。6100オール」

 

「また一発、か」

 

「怖い怖い」

 

 嫌に冷たい汗が二人の背中を流れた。この連続の一発和了は本当に偶然か。ここで洋榎は前のゲームを思い出し、奇妙な点に気づく。

 

(前のゲームでこいつツモ切り二回してからリーチかけよったな。まさか、自分のあがり牌の場所把握してたんか? んなアホなと言いたいけど)

 

 洋榎はこれは偶然ではなく、目の前の少女の理を越えた打ち方とし、次の本場では速攻手で咲の親を流す。

 

(洋榎、まさかこいつの連続一発は偶然やないんか?)

 

 洋榎の行動を見て、セーラも気づく。

 

 親を流されても特に反応せず、配牌をとる姿はとても中一には見えなかった。咲の連続和了で持ち点は大きく削られた。対する彼女は二度の跳満で多くの点数を稼いだ。このまま防御に入られたらキツい。

 

「ポン」

 

「!」

 

「カン。ツモ……嶺上開花ドラ1。700・1300」

 

『ここで珍しい役が飛び出してきたー!』

 

「カン。ツモ……700・1300」

 

「二連続やと……?」

 

「あり得へんわー……」

 

(あかん。点差は大きいのに安い速攻手出しても駄目や。かといって大きな手やと時間かかるし、こいつと競うことになる)

 

 彼女の親を流すだけで終わりではない。洋榎は気づいてしまった。咲にスピードで勝つには打点を高くせず、鳴きも交えてやるしかない。もちろん配牌で絶好手ならそのまま狙いにもいけるだろうが、そんなのは滅多に来ない。結局安定してスピードで勝つには安手で鳴きを絡める必要がある。

 

(アホいえ。それだけじゃ勝てないやん)

 

 既に咲は跳満を二回和了している。その上700・1300を二回。点差が大きい。

 

「ツモ……700・1300や」

 

 それでも洋榎は点数を稼がせないためと、逆転のために少しでも点数を獲得するためにタンピンをツモ和了した。これがやっとな自分の無力さが腹立たしい。去年はインターミドルで優勝し、大いに持て囃された。今年も優勝候補に選ばれ、ここまで苦労なく勝利してきた。それなのに中一にこうもいいようにやられているのは何とも言えないものがある。

 

(洋榎があがっても、オレらの点は横並びに変わりない……)

 

(親跳直撃でトブ……)

 

(洋榎はここか?)

 

(ちゃう。つか、全然やん)

 

 セーラがサポートするが、残念ながら鳴ける牌ではなかった。それに文句を言いたいが、試合中なので口は開かず。咲の親を何とか流したい二人であったが、全く噛み合わないこともあって、

 

「リーチ」

 

 咲の先制を許してしまう。

 

「ポンや」

 

 洋榎が強引に、手が進まないのを承知の上で鳴く。無駄な鳴き。一発消しでしかない。こうするしか止める術がない。この中一の女の子は理の外にいて、とても敵う相手ではない。

 

 鳴きが入ったことに咲は残念そうにした。

 

(鳴かれちゃった。来れば、いや引かないと駄目なんだ。もっと強くなるためにも……。鳴きなんかで揺るがない……強い力を見せる)

 

 牌をツモり、指で確かめる。あがり牌ではない。しかし、無駄な牌でもない。普通の人には価値を見出だせないが、咲には価値がある。彼女にはその牌に価値を持たせる特別な力が備わっていた。

 

 そうすることができる自分を見つけると、彼女は嬉しさで胸が一杯になる。この決勝戦で他の人たちを圧倒するよりも強いものだ。新しい発見、それはつまり新たな可能性を見つけたことであり、自分の成長に役立つ。

 

(そっか。こうすることができるようになれば私はもっと強くなれる。今回はまぐれだけど、まぐれじゃないようにできたら、強くなった証明になる)

 

「カン!」

 

「まさか!?」

 

「あり得へん」

 

「ツモ! リーチ純チャン嶺上開花、裏も乗って……8000オール」

 

(あかん。これはあかん。……こいつが次にツモで2300オール、うち以外にロンで2900決めたらトビ終了や。かといって点差ありすぎて役満ぶち当てても逆転でけへん)

 

(何やねん。オレも洋榎も同世代には負けない自信あんのに、何で年下にここまでやられるんや)

 

(強運だけで説明でけへんことも起きとるし)

 

 一本場。洋榎は自分の配牌の手を見て、顔をしかめる。

 

(最悪やな。運にまで見放されたみたいな手や。でもやったる。こいつがカンを、嶺上開花を自在にできるいうなら逆手にとったるわ)

 

 駄目に駄目を重ねたような配牌で普通に手作りをしてもどうしようもない。 ここまで悪いとタンピンなどといった手を作るのは絶望的で、咲には勝てない。

 

(次ツモられたら終わるかもしれんのやったら、無謀でもやるしかないやん)

 

『こんな展開を誰が予想したでしょうか! 真夏のインターミドルに突如現れたビッグモンスター! その圧倒的な強さで相手を蹂躙しております! しかし、浮かれた様子は見せず、油断したところを見せていない!』

 

(役満直撃でも一位は変わらない。でも、確実に勝つためにもトバス)

 

「リーチ」

 

 攻める。貪欲に点棒を奪う。相手がトビ終了する時が来るまで咲は止まらない。

 

(ははっ。何や、できたやん。よっしゃ)

 

 十一巡目に洋榎は完成させた。咲が予想しないだろう手を完成させる。捨て牌に么九牌もある。少なすぎておかしい、と感じさせず、よくある感じのものに仕上がった。

 

(上手く牌が巡ってよかったわ。多分もう二度とないやろな)

 

 奇跡に等しい牌の巡りに、洋榎は麻雀に感謝の念を捧げた。彼女にとってこれは麻雀の神からの贈り物に思えた。もしかしたらこれをきっかけに逆転までの道が完成するかも、と喜びで踊りそうな自分を必死に押さえて試合に集中する。

 

 もしも、麻雀の神がいたのだとしたら、きっと神は咲を深く愛していたのだろう。その愛ゆえに厳しくしただけだ。咲を愛するから、強くなってほしいから洋榎に奇跡を与えた。でも、そんなのは誰にも分からない。

 

「カン」

 

 咲は中を暗槓する。暗槓ならば搶槓の危険性はほとんど皆無だ。警戒心もなく、暗槓をした咲を見て、洋榎は我慢できずに笑った。

 

「くふふふ、はははは……」

 

「!? 何ですか、急に笑って。頭のネジが飛びましたか?」

 

「ああ。飛んだわ、誰でも飛ぶわ。ロンや」

 

 その言葉を咲は理解できないのか、それとも遅れたのか。表情が固まり、卓の隅に中を寄せようとした姿勢のままになった。

 

 暗槓あがり。通常ならあり得ない。起こるはずがない。何よりそれが許された役は一つだけであり、出現率の高い役満ではあるが、タンヤオや平和みたいにぽんぽんと出るものではなく、たまに出る程度のものだ。それを暗槓あがりとなれば、ますます出現率は下がり、天和より厳しい。

 

「暗槓あがりが許された役は一つだけ。国士無双! 32000!!」

 

「うおおおおおおおお!」

 

『こ、これは凄い! 国士無双の暗槓あがりが出てきた! これで愛宕選手にも優勝の芽が出てきました!』

 

「はい……」

 

 震える手で点棒を渡す。こんなのは予想していなかっただけにダメージは大きい。が、

 

(リーチをしてたからカンをしてなくても振り込んでた……。駄目だ。私は勝たないと)

 

 精神的ダメージに負けることはなかった。それは執念とも言えたろう。勝利。それしか咲の頭にはなかった。もしも負けたら、あの大嫌いな家から出られない。

 

(私の邪魔はさせない)

 

 手の震えが止まる。そして、『あの日』のように血が沸騰したかのように熱くなり、全身を氾濫した川のように激しく駆け抜ける。

 

 自然と口から吐息が洩れる。熱く、触れたらぼっと燃え出しそうな熱い吐息だ。

 

「あなたが役満を和了しようと関係ありません。私は勝ちます」

 

 鋭く、どんなものも貫きそうな眼光に、洋榎は何がこの子を駆り立てるのか気になり、ついつい聞いてしまった。

 

「別に一年なんやから来年優勝してもええやん。何でそんなに必死なん?」

 

「あなたには関係ありません」

 

 返ってきたのはそっけない答えであった。よく知らない人だから、というよりは殻にこもって馴れ合いを拒絶しているような節がある。何かあるんやろなと思った洋榎は話題を別の方向へと向けた。

 

「ま、まあ、一年で優勝したら親とか兄弟はみんな褒めてくれるやろ」

 

「っ。そんなのどうでもいいです」

 

 怒り。それは濃密で、激しく燃え盛る炎のようになかなか消火できないものだ。触れるもの全てを燃やさんばかりに盛んで、不用意に近づくのは自殺行為でしかない。

 

 露骨に感情を見せようとしない咲であったが、やはり怒りの強さは尋常ではなく、無意識にそれを雰囲気として纏っていた。静かな怒りとも言えたし、押さえつけられた怒りとも言える。

 

「ロン。3900」

 

 どちらにせよ咲は同じ卓にいた名前も知らない人をトバして勝利をもぎとった。それからのことを洋榎はあまり覚えていなかった。友人や家族から慰められたのは記憶にあるが、それだけだ。

 

 今でもあの日に抱いた疑問は消えていない。

 

 ――何でそこまで家族に怒れるん?

 

 何も分からないまま時は流れていき、いつしかあの日見た咲が幻であったかのように、面影すらなくなっていた。怒りを感じさせず、活躍している。

 

(分からんものはしゃあないか。今は目の前のことに集中せな)

 

 対局室に来た人を確認する。阿知賀からは憧。永水からは春。白糸台からは尭深。

 

(尭深やったっけ。オーラスに役満を和了しやすいって恭子が言うてたな)

 

 法則が掴めなかったので、オーラスに気をつけるしかない。そのオーラスも早あがりをすれば役満を防ぐことは可能と、咲に比べたらぬるい相手だ。

 

 準決勝。現在の点数。順位。全てが重いものであるはずなのに、洋榎は普通なら感じるはずのプレッシャーをないも同然に振る舞い、自分の打ち方を貫く

 

「ポン」

 

(阿知賀の)

 

「チー」

 

(鳴きが上手い奴やったか)

 

「チー」

 

 洋榎はまだ聴牌していないので素直にオリる。

 

「ツモ。2000・3900」

 

(悪うないな。せやけど、まだまだやな)

 

 永水の親被りで阿知賀が二位となる。これに洋榎はせいぜい短い二位を楽しんでやと特に慌てた様子は見せずにいた。それだけではなく、現在二位の阿知賀を食い潰すつもりだ。

 

 野生の獣のように獰猛な目で阿知賀を見た。

 

(よし。これで二位。このまま稼ぐ!)

 

 憧は幸先のいい和了に満足し、このまま二位を維持し、かつ三位と差をつける気でいる。この卓にいる洋榎は自身より強いと判断しているが、真に恐ろしいのは白糸台の渋谷尭深だとし、若干軽視していた。

 

 尭深のような能力者でない洋榎なら、麻雀が持つ運の要素にやられることもある。それも含めれば、そう酷いことにはならないと判断した。

 

 東二局。親尭深。

 

「ポン」

 

 普段通りに鳴いて、いらない牌を捨てる。

 

「ロンや。12000」

 

「なっ!?」

 

「何や。あんたの欲しい牌を抱えてんのがそないおかしいか?」

 

(つ、潰されてる!!)

 

 次に鳴く時に必要となる三萬を四枚全て使われていた。更に洋榎の恐ろしいところはそれを上手く使い、一盃口の形にし、タンピン三色一盃口赤1で跳満にしてみせた。

 

(それだけじゃない溢れる牌を見抜かれてた!)

 

「あんたらに格の違いを教えたるわ」

 

 その言葉は満更嘘でもない。今の和了はこの卓に限定すれば、洋榎にしかできないものであり、高校生全体で見ても数は少ない。鳴きたいところと溢れる牌を見抜き、手を進める。

 

 憧は一つ勘違いしていた。

 

 洋榎はこの卓にいる人の中で一番強い。その局(連荘による本場含む)の最初の捨て牌がオーラスに戻ってくるという能力を持つ尭深だが、それを抜きにして考えたら洋榎ほどの腕はない。またオーラスで尭深より先に和了してしまえば、能力が発動してようが関係ない。

 

「鳴きたいなら鳴けや。でも二位はうちがもらう」

 

「っ」

 

 蛇に睨まれた蛙のように小さくなる憧を洋榎は冷たく睨む。

 

 洋榎から見たら、憧は確かに鳴きは上手で、軽快な和了を決めるいい打ち手ではあるが、そこ止まりだ。憧程度の相手は何度も相手にし、その都度負かしてきた。

 

 ましてや宮永咲のいる白糸台が相手とあって、洋榎の英気はこれ以上ないというほどに高まっていた。

 

 そして、ミスのない完璧な打ち方に加え、相手の手の進行に合わせて柔軟に打てる。はっきり言うと、今の洋榎は過去最強だ。火力が高くないのが唯一の救いであるが、それを補うほどのものが今の彼女にはあった。

 

(つまらん。中一の宮永のが手強かったわ)

 

 あの手のつけようがないほどに大暴れした咲を相手にするような苦労はない。今の自分が思う最高の打ち方をすれば、二位にはなれる。確実に。絶対に。

 

「さて、やるとするか」

 

 サイコロがからからと回った。

 

 

 

 

 

 中堅、前半戦終了。

 

 白糸台146300

 永水94800

 阿知賀87600

 姫松71300

 

『やはり強い! 姫松の主将の愛宕洋榎が一人だけプラスで終わりました! もう二位も夢ではない。後半戦も同じ活躍を見せたら間違いなく二位!!』

 

『やはり愛宕選手は強いですね。阿知賀への跳満直撃も見事でした。あれで少しは鳴きを押さえたと言えるでしょう』

 

『ですね。後半戦も楽しみに待っていましょう!』




最近忙しくなりつつあるので、更新が遅れるかもしれません。そして、中堅で二話になるという大波乱です。あとページが進むと一ページあたりの文字数が増えてまして、もう決勝先鋒とか四話じゃないの?という感じになってます。

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