普通のデュエリスト   作:白い人

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2 VS青山遊里

 バリアンの刺客であるギラグは非常に悩んでいた。

 九十九遊馬を倒し、ナンバーズであるカードを奪取する。その任務の為に人間界にやってきて随分と経つが未だに戦果は上がっていないのが現状だ。

 バリアン世界ではないこの世界ではギラグの力を最大限に発揮できない為、強そうな人間を洗脳し手駒としてきたが悉く撃退されてしまっている。

 花添愛華は勝ちをもぎとったものの、それは九十九遊馬でも神代凌牙でも天城カイトでもない相手だった。

 しかもその後に乱入してきた、また関係のない奴によって倒されてしまった。

 そろそろバリアン世界にいるドルベに何を言われるか分かったものではない。

 先日、増援としてやってきた親友であるアリトの事を考えるとそろそろ現界なのかもしれない。

 更にこの間、実行した作戦も失敗してしまった。

 ではどうするべきか……。

 だからこそそれを見た時、それを行おうと思ったのだ。

 

「行け!《隻眼のスキル・ゲイナー》!攻撃だ!」

 

 人間界のデュエル大会。

 そこで憎き九十九遊馬とバリアンの刺客を倒した男、青山遊里がタッグを組んでデュエル大会に出ていたのだ。

 九十九遊馬の実力は知っていた。

 所々、疑問に思う所はあったが確かに高い実力を持っていた。

 しかしギラグがより注目したのは青山遊里の方であった。

 今回の大会では遊馬が主体になっているのか、サポートを中心に行っているがここ一番での展開力は見事なものであった。

 だから一縷の望みを託して、青山遊里を洗脳する事にした。

 バリアンの刺客を倒した、その力をもって九十九遊馬を倒せ、と。

 

「……全てはバリアン世界の為に」

 

 虚ろで力のない目で遊里はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 その日、遊馬は非常に機嫌が良かった。

 先日、行われたタッグ大会。休日、特に意味もなく出歩いていただけなのだが偶然、青山遊里と出会いそのまま意気投合。2人でタッグを組んで大会に出る事となった。

 遊里とのタッグは非常にやりやすくあっさりと言っていいぐらいにあっさりと優勝してしまった。

 優勝賞品として手に入れた新たなモンスター・エクシーズ。

 それだけではない。同じく優勝賞品を手に入れた遊里からもモンスター・エクシーズを渡されていた。

 最初は断っていたのだが、何枚も持っているという事で他にも数枚のカードと共に手に入れたのだ。

 そのカード達を手に入れた事により、デッキも強化された。

 これでバリアンとの戦いも楽になる筈だ。

 そして浮かれた様子で学校に登校してきて普通に授業を受け1日を過ごした。

 それに気づいたのは放課後だ。

 小鳥や真月達と一緒に帰ろうかと思っていた頃だ。

 Dゲイザーに一つの連絡が入ったのだ。

 相手は遊里。

 一体何事かと思ったが、場所だけ教えられてプツンと連絡が途絶えてしまう。

 はっきりと言おう。怪しかった。

 何かあったのかもしれない。

 遊馬は慌てた様子で指定された場所へと走り出した。

 それを見た小鳥達もそれについていく。

 指定された場所はハートランドシティ郊外。人があまり来ないような場所だ。

 そこに辿り着くと、目的の人物は既に待っていた。

 青山遊里。

 それが虚ろな目でこちらを見ていた。

 

『遊馬』

「ああ、分かるぜアストラル」

『彼はバリアンに洗脳されている』

 

 一目見て分かった。

 間違いなくバリアンに洗脳されてしまっている。

 となればやる事は一つしかない。

 

「……九十九遊馬、デュエル……だ」

 

 遊里はそれだけ言うと遊里はデュエルディスクを構える。

 それと同時に洗脳されてきた人々に共通して現れたバリアンのマークが額に浮かび上がった。

 しかしここで遊馬は一つの違和感を抱いていた。

 

「なぁ、なんかおかしくないか?」

『何がだ遊馬?』

「今までバリアンに洗脳されてた人達は攻撃的になったりしてたけど、あんな感じにはなってなかったぜ」

『……確かにな』

 

 遊馬の指摘通り、洗脳されたと思われる遊里の様子はどこかおかしかった。

 洗脳されたのだから、と言われればそれまでだが今まで洗脳された人々は虚ろな目をしてどこか無気力な状態になっていた訳ではなかった。

 だと言うのに遊里の目からは光が消えてその四肢にも力が入ってないように見える。

 だが今はその理由を考えている暇はない。

 

『だが今は彼に勝利し、洗脳を解くのが先だ!』

「おう!行くぜ、デュエルディスクセット!Dゲイザー、セット!」

 

 遊馬と遊里。

 互いにデュエルディスクとDゲイザーを装備する。

 

「デュエルターゲット、ロックオン!」

 

 それと同時にARリンクが完全に完了する。

 遊馬についてきた小鳥や凌牙達も同じようにDゲイザーをセットしてリンクさせる。

 さぁ、デュエルの始まりだ。

 

『デュエル!!』

「先行は俺が貰った!ドロー!」

 

 先行を取ったのは遊馬。力強くカードをドローする。

 

「まず俺は永続魔法、強欲なカケラを発動!こいつは毎ターンのスタンバイフェイズに強欲カウンターを一つ置く」

「……2つ以上、乗っている……時、墓地に送ると……2枚ドローできる……」

「ああ!そして俺はモンスターをセットし、カードを1枚セットしてターンエンド!」

「……俺のターン」

 

 次は遊里のターン。遊馬とは違い、力のない動作でカードをドローする。

 やはり遊馬達が知っている遊里の動きとは思えない。

 

「俺は……永続魔法、《炎舞-「天キ」》を発動。このカードを発動した時、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを1体手札に加える事ができる。俺が加えるのは《武神-ヤマト》」

「えっ、武神?」

「確か儀式デッキの使い手では?」

 

 遊馬や凌牙から話を聞いていた小鳥と璃緒は疑問の声を上げる。

 少なくとも今、手札に加えたカードは儀式カードとは思えない。

 だがそれを否定したのは遊馬と凌牙であった。

 

「いや、遊里は」

「あいつは色々なデッキを使う。儀式デッキもその一つにすぎない」

 

 凌牙は何度も戦った時、遊里の使う様々なデッキと戦ってきた。

 遊馬は先日のタッグ大会でその事を聞いていた為、知っていたのだ。

 

「そして俺はこのままヤマトを召喚。そして天キはフィールド上に存在する限り自分フィールド上の獣戦士族は攻撃力を100アップさせる」

 

 その効果は微々たるものだが、100も上がれば倒せるモンスターも増えていく。

 100だからと言って侮る訳にはいかない。

 

「バトルフェイズ、セットモンスターを攻撃する」

「俺のセットは《ゴゴゴゴーレム》!このカードは表側守備の時、1度だけ破壊されない!」

 

 セットされた状態から表になった為、その力が発動する事になったのだ。

 武神の1人、ヤマトの攻撃はこの鉄壁の守りでその攻撃から身を守ったのだ。

 

「……エンドフェイズに移行。ヤマトの効果を発動する」

『このタイミングで効果!?』

「デッキから武神と名のつくモンスターを1枚手札に加える事ができる。俺はデッキから《武神器-ハバキリ》を手札に加える」

「手札を増強しやがった……」

 

 ヤマトから放たれる光がデッキから鳥のモンスターが飛び立つと、遊里の手札へと収まっていく。

 これだけ見れば手札が1枚増えるという破格の能力だ。

 しかし……。

 

「この効果で手札を加えた時、俺は手札1枚を墓地に送る。俺が墓地に送るのは《武神器-サグサ》。そしてターンエンドだ」

 

 ウサギのような姿のモンスターが代わりに墓地へと飛び込んで行く。

 

「手札交換か」

『必要なカードを手札に加え、必要ないカードを墓地に送る力。強力な効果だ』

「だがモンスターなら次のターンにならないと使えねぇ。相手にカードもセットされていないし、今の内にヤマトを倒さないと」

(本当にそうだろうか……?)

 

 確かに遊馬の言う通り、通常ならばモンスターは召喚・特殊召喚しなければその力を発揮する事はない。

 しかしアストラルは覚えている。

 遊里が戦った時に見た、手札から発動するモンスター達を。

 だが今はそれを考えている時ではない。

 まずはあのヤマトを倒さなければならない。

 

「俺のターン、ドロー!この時、《強欲なカケラ》に強欲カウンターが一つ乗る」

 

 砕けた壺のカケラに光が1つ点る。

 後1つ。

 

「俺は《ズババナイト》を召喚!」

 

 遊馬のフィールド上にギザギザになった剣を2振り持ったモンスターが現れる。

 だが攻撃力は1600。遊里のヤマトの1900には届かない。

 

「そして《破天荒な風》を発動!これで《ズババナイト》の攻撃力と守備力を1000ポイントアップする!」

 

 強烈な風が《ズババナイト》の周囲に纏うように宿る。

 その力により攻撃力は2600。ヤマトの攻撃力を上回った。

 

「よし、《ゴゴゴゴーレム》も攻撃表示にして一気に」

『待て、遊馬』

「どうしたんだアストラル?」

 

 一気に攻めようとする遊馬にストップをかけたのはアストラルであった。

 

『1つ確認したい事がある。《ゴゴゴゴーレム》は守備表示のままで、《ズババナイト》だけで攻撃したい』

「分かった。行くぜ!《ズババナイト》でヤマトに攻撃!ズババソード!」

 

 嵐のような風を纏った剣を構えた《ズババナイト》がヤマトに斬りかかる。

 攻撃力は2600と1900。ヤマトが確実に破壊される数字だ。

 しかしそれを前にしても遊里の視線が揺れる事はない。

 

「……ダメージ計算時。手札から《武神器-ハバキリ》の効果を発動」

「手札からモンスターの効果!?」

『やはり、ただのモンスターではなかったか』

 

 遊里の手札から先程、手札に加えた鳥のモンスターが光を放ちながら飛び放たれる。

 飛び立ったハバキリはそのままヤマトの元へと辿り着くと、その身を剣に姿を変えていた。

 

「ハバキリの効果により武神と名のつく獣戦士族はこのバトルの間だけ元々の攻撃力は2倍になる」

「えっ、それってつまり……」

「ヤマトの元々の攻撃力は1800。つまり3600か!」

 

 これにより風の力で強化された《ズババナイト》の攻撃力を1000も上回った。

 そしてこの状況で攻撃を止める事はできない。

 風を纏った剣で斬りかかるも、武神器の力で強化されたヤマトは一瞬にして攻撃を避けると手に持つ剣で《ズババナイト》を真っ二つに切り裂いた。

 

「くっ……」

 

 遊馬のライフが4000から3000に減る。

 

『あのハバキリは手札にあって意味がある効果のようだな。この分だと墓地に送られたカードにも何かある可能性が高い』

「ああ。《ゴゴゴゴーレム》を攻撃表示にしておかなくて良かったぜ……」

 

 《ゴゴゴゴーレム》の攻撃力は1800。

 強化されたヤマトの攻撃力に100届かない。もし攻撃表示にしていたら、その防御力の力を生かす事なく破壊されていただろう。

 

「俺はこのままターンエンド」

「俺の……ターン。俺は《武神器-ムラクモ》を召喚」

 

 頭部に剣を携えた馬のようなモンスターがフィールド上に召喚される。

 そしてフィールド上にレベル4のモンスターが2体。

 これはつまり……。

 

「俺はレベル4のヤマトとムラクモでオーバーレイ。オーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚」

 

 ヤマトとムラクモが光になって渦へと消えて行く。

 そして巨大な閃光が放たれる時、そこに新たなモンスターが立っていた。

 

「現れろ、《武神帝-スサノヲ》」

 

 風と炎。その力を宿した存在。

 鎧も手に持つ剣もヤマトをより強化したような姿のモンスターだ。

 

「そしてスサノヲの効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除く事で効果発動。デッキから武神と名のつくモンスターを手札に加えるか墓地に送る事が出来る」

 

 スサノヲの剣が地面に突き刺さると、突き刺した地面から光溢れるとそこから1枚のカードが現れる。

 現れた新たなカードはそのまま遊里の手札へと光の波に乗り運ばれていく。

 

「俺は手札に加える効果を選択。《武神-ヤマト》を手札に加える」

「くそっ、再びヤマトが手札に」

「そして墓地に送った《武神器-ムラクモ》の効果を発動する。自分フィールド上に武神と名のついた獣戦士族が表側表示で存在する時、ムラクモを墓地から除外する事で相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊する」

『なんだと!?』

「俺はこの効果で《ゴゴゴゴーレム》を選択する」

 

 墓地から颯爽と現れたムラクモが駆け抜けて行くと、防御体勢を取っていた《ゴゴゴゴーレム》を、その頭部の刃で一閃する。

 確かに戦闘に対しては強い力を持っていた《ゴゴゴゴーレム》ではあったが、効果破壊からは身を守る事は出来ない。

 ムラクモに一閃されて一瞬で破壊されてしまった。

 同時にムラクモは墓地ではなく次元の彼方に消えてさっていった。

 

「不味い、遊馬からモンスターがいなくなっちまった!」

「遊馬!」

 

 鉄男が遊馬のフィールドを見て慌てた声を上げる。傍で見ている小鳥も悲鳴を上げる。

 だが遊馬達は冷静であった。

 

「バトル、スサノヲで遊馬にダイレクトアタック!」

「させるかよ!罠カード発動!《攻撃の無敵化》!このバトルフェイズ中、俺への戦闘ダメージは0になる!」

 

 スサノヲがその両手の剣で遊馬を切り刻まんと振るうが遊馬の前に現れた光の盾がその攻撃を無効化にする。

 

「危ない所だったぜ……」

『なるほど。あのデッキは手札や墓地からモンスター効果を発動させていくのか』

「つまりあのヤマトは……」

『ああ。デッキから手札で発動するカードをサーチし、墓地で発動するカードを墓地に送る効果を兼ね備えたモンスター。あれこそがあのデッキの核なるモンスターに違いない』

 

 手札から発動したハバキリ。墓地から発動したムラクモ。

 なるほど。サーチと墓地肥やしが同時にできるヤマトの強さにようやく気づく事が出来た。

 そして2体目のヤマトが遊里の手札に眠っている。

 それに前のターンに送られたサグサの事もある。何が飛んでくるか分かったものではない。

 

「……遊里ならちゃんと教えてくれるんだけどな」

 

 遊馬がポツリと呟いた一言。

 それこそが遊馬が抱いている違和感であった。

 前にタッグデュエルをした時に分かった事だが、遊里はしっかり自分のカードの効果を説明してくれるのだ。

 パートナーの自分だけではない。その質問者が相手でも教えてくれるのだ。

 普通なら油断とか舐めているとしか思われない行動だが、遊里はその上で勝利をもぎ取って来るのだからその実力は間違いない。

 しかし今はそれがない。

 それが違和感の正体であった。

 同時に凌牙もまた同じ思いを抱いていた。

 そして原因はたった1つしか思いつかない。

 あのバリアンの洗脳だ。

 

「……俺はターンエンド」

「俺のターン!ドロー!!再び《強欲なカケラ》に強欲カウンターが一つ乗る!」

 

 カケラに2つ目の光が宿る。

 

「そして俺は《強欲なカケラ》の効果を発動!こいつを墓地に送ってカードを2枚ドローする!」

 

 光が宿るカケラが盛大に爆発を起こすと、遊馬の手元に新たなカードが2枚送られてくる。

 それを見ると遊馬の目に力が宿る。

 

「よし俺は《ガガガガール》を召喚!」

 

 マジシャンの格好をし、携帯電話を弄っている少女型のモンスターが現れる。

 しかしフィールド上に存在するスサノヲを見てビクリとする。迫力も勿論だが攻撃力が違いすぎるのだ。

 だが遊馬はしっかりと理解した上で召喚したのだ。

 

「そして俺は魔法カード!《ガガガ学園の緊急連絡網》を発動!こいつはガガガ学園の生徒がピンチの時に発動できる!デッキからガガガ学園の生徒を特殊召喚できる!こい《ガガガマジシャン》!」

 

 電のような閃光を放ちながらデッキから飛び出したヤンキー、と言った雰囲気を持ったモンスターであった。

 その姿を見て、ポッと《ガガガガール》が頬を赤く染める。

 

「そして俺は《ガガガマジシャン》の効果を発動!こいつは自分のレベル1から8まで任意のレベルに変更できる!俺はレベル5を選択!」

 

 《ガガガマジシャン》から魔力が放たれ、その身に宿る星の数を己の意思のままに変更していく。元の数字であった4が5に変わっていく。

 そしてそれにより《ガガガガール》の効果も発動する。

 

「《ガガガガール》の効果発動!自分のレベルをフィールド上の《ガガガマジシャン》と同じレベルに変更する!」

 

 これでマジシャンとガール、それぞれのレベルが5に変化する。

 同じレベルのモンスターが2体。そうとなれば。

 

「俺はレベル5になった《ガガガマジシャン》と《ガガガガール》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!!現れろ《No.61 ヴォルカザウルス》!!」

 

 エクシーズ召喚されたのは炎、否、マグマを纏った恐竜であった。

 ナンバーズと呼ばれる特殊なモンスターである。その身に宿る力はバリアンなどに負けていない。

 

「いくぜ!ヴォルカザウルスの効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手モンスターを1体破壊する!そして破壊した時、その攻撃力分ダメージを与える!いけ、マグマックス!」

 

 ヴォルカザウルスの胸の部分から銃口のようなものが開かれる。

 するとそこから巨大なマグマのような光線がスサノヲに向かって放たれた。

 スサノヲは必死に回避しようとするがもう遅い。

 そしてスサノヲが破壊されればそのダメージは2400ポイント。大ダメージを与えられる。

 

「俺は墓地にある《武神器-サグサ》の効果を発動。こいつを除外する事で自分フィールド上の武神と名のつく獣戦士族を1度だけ破壊から守る」

『やはり最初に送ったカードにも効果が!』

 

 墓地から飛び出してきたのはウサギのようなモンスター。

 それが身を挺して、放たれたマグマの光がからスサノヲを守りきった。

 だがその効果は1度だけ。力を使い果たしたサグサは次元の狭間へと身を落としていった。

 

「ならもう1度だ!ヴォルカザウルスの効果を発動!スサノヲを破壊する!」

「っ!」

 

 再びオーバーレイユニットの力を使ったヴォルカザウルスが2度目の効果を発動させる。

 先程はサグサの効果で身を守ったスサノヲではあるが、もうサグサの力は使えない。

 防御するもその圧倒的な力の前にスサノヲはその身をマグマの底に消えていった。

 そして破壊に成功した瞬間、そのマグマの本流はスサノヲの力の分、遊里に襲い掛かる。

 

「この、瞬間……手札の《武神-ミカヅチ》の効果を発動……」

「なにっ!?」

 

 マグマに焼かれながら、遊里の手札から迅雷の如くフィールド上に現れる。

 青い鶏冠のような髪を持った2体目の武神だ。

 

「こいつはフィールド上の武神と名のつく獣戦士族が戦闘や効果で破壊された時に発動できる。こいつを自分フィールド上に特殊召喚する」

「これで遊馬は攻めにくくなった」

「えっ、どうして?」

「そうか。ヴォルカザウルスの効果はもう使えないし、手札にさっきのハバキリがあるかもしれない」

「ああ。ナンバーズはナンバーズでしか倒せないがダメージは別だからな」

 

 攻撃表示で召喚されたミカヅチ。

 このまま単純に攻撃すれば再びハバキリの効果で返り討ちにされる可能性は高い。

 もしミカヅチがいなければ、このままダイレクトアタックで勝利できたのだが……。

 

『遊馬、ここは攻撃せずに』

「いや、駄目だ」

『なにっ!?』

 

 守りに徹するようにいうアストラルとは違い、遊馬の目には力強い攻撃の意志が宿っている。

 

「ここで守ったら負ける!攻めるしかない!行け、ヴォルカザウルス!ミカヅチを攻撃だ!」

『遊馬!?』

 

 攻撃宣言をする遊馬にアストラルや小鳥達が驚きの声を上げる。

 誰もがここは攻撃宣言をしないでエンドすると思っていたからだ。

 だが遊馬は臆する事なく攻撃する。

 そしてここは遊馬が正解であった。

 ヴォルカザウルスから放たれた炎がミカヅチを焼き滅ぼしたのだ。

 

「……」

「よっしゃぁ!」

『遊馬……君という奴は……』

 

 遊里のライフがあっという間に1100にと減少する。

 一気に追い詰めたのだ。

 

「これで俺はターンエンドだ!」

「俺の……ターン」

「……?」

 

 カードをドローする遊里が何かぶれたように見える。

 まるで何か抗うような苦しむような表示に遊馬は見えた。

 もしかすると。

 遊馬がそんな事を思った瞬間、遊里が動いた。

 

「俺は魔法カード《武神光臨》を発動。これは自分フィールド上にモンスターがおらず、相手フィールド上にモンスターがいる時に発動可能。墓地と除外ゾーンから1体ずつ、武神と名のつくモンスターを特殊召喚する」

「除外したモンスターもだって!?」

 

 墓地と除外ゾーン。

 そこからそれぞれ1つずつ光が飛び出すと、遊里のフィールド上に降り立つ。

 墓地より《武神-ミカヅチ》、次元の彼方から《武神器-サグサ》。

 それが再び現れたのだ。

 

「そしてこの効果で特殊召喚したモンスターをエクシーズ素材にする場合、獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターのエクシーズ召喚にしか使用できない。しかし関係ない。俺はミカヅチとサグサでオーバーレイ、エクシーズ召喚」

 

 新たにエクシーズ召喚されたのは月。

 夜に輝く白銀の力を宿したモンスターであった。

 

「こい《武神帝-ツクヨミ》。更にヤマトを召喚する」

 

 再び現れたヤマト。

 だがツクヨミもヤマトも攻撃力は1900しかない。ヴォルカザウルスに勝つ事は出来ないが……。

 

「これで終わり……ではない。墓地にあるヤマトを除外して手札から《武神-ヒルメ》を特殊召喚する」

 

 日の女神を表す存在が墓地にある武神の力を借りて、場に現れたのだ。

 これで再びレベル4のモンスターが2体。

 

「そしてヤマトとヒルメでエクシーズ召喚。こい、《武神帝-カグツチ》」

 

 炎。

 マグマすら温いとばかりに強大で強烈な炎を纏った存在が現れる。

 その力はヴォルカザウルスと同等のものだ。

 攻撃力は天キの力もあって2600。

 救いと言えばヴォルカザウルスはナンバーズ。戦闘で破壊される事はない。

 だがその考えが甘い事をあっという間に示される事になる。

 

「カグツチがエクシーズ召喚された時、効果発動。デッキの上からカードを5枚送る。そしてそこに武神と名のつくモンスターがあればその枚数だけ攻撃力を100ポイントアップする」

「攻撃力アップの効果!?」

『くっ、墓地に武神を送ると同時に攻撃力を上げるのか!?』

 

 そしてデッキから5枚、カードが墓地に送られる。

 送られたのは、《武神-ヤマト》、《武神-ヒルメ》、《武神器-ヤサカニ》、《禁じられた聖槍》、《強制脱出装置》。送られた武神の数は3枚。よって攻撃力は300アップする。

 

「攻撃力2900!」

「俺はカードを1枚セットしてツクヨミの効果を発動。オーバーレイユニットを1つ取り除き、俺は手札を全て捨ててデッキから新たにカードをドローする」

 

 月の光により遊里の手札が墓地に送られる代わりに新たにデッキから2枚のカードが送られる。

 先程までの遊里の手札は1枚。効果により1枚手札が増えた事になる。

 

「バトルフェイズ、行けカグツチ。ヴォルカザウルスを攻撃!」

「だがヴォルカザウルスはナンバーズ!ナンバーズはナンバーズでしか破壊できない!」

「……ダメージステップ。俺は《禁じられた聖杯》をヴォルカザウルスに発動する」

「何っ!?」

 

 カグツチの攻撃を迎撃しようとしていたヴォルカザウルスの頭上に聖杯が現れる。

 聖杯はその中身をヴォルカザウルスに降り注いで行く。するとヴォルカザウルスに宿る力が消えて行くではないか。

 

「なっ、ヴォルカザウルス!?」

「聖杯の効果でヴォルカザウルスの効果は無効化された」

『まずい、これでヴォルカザウルスは破壊されてしまう』

「だが同時に無効化にしたモンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる」

 

 その効果は失ったものの、力そのものはむしろパワーアップしていた。

 カグツチもヴォルカザウルスも攻撃力は2900。お前も道連れだと言わんばかりにカグツチに襲い掛かる。

 

「くっ、相打ちか……っ!?」

 

 しかし遊馬が目にしたのは倒されたヴォルカザウルスと無傷のカグツチの姿であった。

 

「ど、どうして!?」

「カグツチの効果を発動。自分フィールド上の武神と名のつく獣戦士族モンスターが戦闘または効果で破壊される時、その破壊されるモンスター1体の代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる」

「そんな……!」

「そしてツクヨミでダイレクトアタック!」

「う、うわあぁぁぁぁ!?」

 

 月の力を宿した剣が遊馬に襲い掛かる。

 その一撃で3000あったライフが1100へと減少する。数値だけ見れば遊馬と遊里が並んだ。

 だが。

 

「ライフは同じでもフィールド上の差が大きい。しかも遊里の野郎の墓地には武神が多く揃っている」

「あれを突破するのは簡単じゃない筈だ……」

 

 だが遊馬は諦めてなどいない。

 倒れた体に力を入れる。

 そうだ。こんな所で負ける訳にはいかない。

 

「ターンエンド」

「なぁ、遊里。こんなデュエルで満足なのかよ?」

「遊馬?」

「言ってくれたような正々堂々と熱いデュエルがしたいって。これがそんなデュエルなのかよ!」

「……っ!」

「負けるな遊里!バリアンの力になんか負けるんじゃない!」

 

 熱く叫び声を上げる遊馬。

 それを見ていたギラグは冷徹な目で遊馬を見下ろしていた。

 無駄だ、と。

 バリアンの洗脳は簡単にやぶられるものではない。

 だが。

 

『見ろ、遊馬!』

「えっ?」

「……っ!」

 

 遊馬の声の影響か、今度こそ誰にでも分かる程、遊里の様子がおかしかった。

 何かに苦しんでいるような状態だ。

 

「そうか。戦ってるんだよな!なら俺が今すぐ戻してやるから待っててくれ!俺のターン、ドロー!」

 

 希望を宿して遊馬がドローする。

 しかしその手札に現状を打開出来るカードはない。

 ならば。

 

「俺は魔法カード《手札抹殺》を発動。これでお互いの手札を墓地に送って、その分だけ新たにカードをドローする!」

 

 本来ならば武神相手に使うのはあまりよろしくはない。

 相手に墓地肥やしをさせてしまうからだ。

 だがこのままでは攻撃どころが守る事すらできない。

 だからこそ遊馬は思い切ってそれを発動したのだ。

 遊馬は3枚、遊里は2枚カードを入れ替える。

 しかしそれでも現状を打破できるカードはない。

 

「俺はモンスターをセット。更にカードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 これで遊馬の手札は0。

 今、遊馬ができる最大の展開だ。

 

「俺の……ターン、ド……ロー……!」

 

 やはり様子がおかしい。

 だがそれ以上に1つ気づいた事がある。

 遊里が今、ドローしたカード。そこから溢れる気配に見覚えがあった。

 

『あれはまさか……』

「間違いないあのカードだ!」

 

 《RUM-バリアンズ・フォース》。

 エクシーズモンスターをカオス化させ、新たな姿に変えるバリアンの力。

 今まで洗脳された人達はそれを持っていた事から確かに遊里も持っていてもおかしくはなかった。

 だがこのタイミングで引くとは。

 遊馬達はそのカードに戦慄し、ギラグはそれを見て勝利を確信した。

 既に遊馬のライフもフィールドも虫の息状態だ。ここでカオス化させれば一気に倒せる筈。

 しかしみんなの反応とは別に遊里は動かない。

 その手に勝利をもぎ取れるカードがありながら動かないのだ。

 

「どうしてだ!なぜそれを使わない!」

 

 思わずギラグが声を荒げてしまう。

 逆に遊馬達は1つの確信をしていた。戦っている。戦っているのだ。

 遊馬の言う通り、遊里はバリアンの力と戦っているのだ。

 

「負けるな、遊里!」

「そうです負けないでください先輩!」

「そんな力に頼るんじゃねぇ!」

 

 遊馬が小鳥が凌牙が皆が。

 遊里に声援を送る。

 バリアンに負けるな、と。

 そして遊里が出した答えは……。

 

「俺は……俺は……!《召喚僧サモンプリースト》を召喚!」

「何っ!?」

「っ!」

 

 遊里が出したのはバリアンズフォースではなく、僧侶の姿をした老人。

 攻撃表示から守備表示になると、呪文を唱え始める。

 

「そしてサモンプリーストの効果を発動!手札の魔法カードを1枚捨てて俺はデッキからレベル4のモンスターを特殊召喚する。俺が捨てるのは《RUM-バリアンズ・フォース》!来い!《武神器-ハチ》!」

「な、なんだとぉ!?」

「遊里!」

 

 まさかのバリアンズフォースを捨てる行為に驚きの声を上げる。

 そんな中で遊馬が嬉しそうな声を上げる。

 

「そして墓地のヤサカニを除外して現れろ《武神-ヒルメ》!」

 

 再び現れるヒルメ。

 そしてこれで場に3体のレベル4モンスターが揃った。

 ならば。

 

「俺はレベル4の《召喚僧サモンプリースト》、《武神器-ハチ》、《武神-ヒルメ》でオーバーレイ!来い太陽の化身!今ここに世界を照らせ!エクシーズ召喚!!《武神姫-アマテラス》!」

 

 光臨するのは太陽の化身。

 先程の日の光などではない、マグマのような灼熱でもない、全てを焼き滅ぼす焔ではない。

 全てを癒すような優しく、そして力強い太陽の輝き。

 天の剣を携えた太陽姫。アマテラスが光臨した。

 

「凄い……!」

「綺麗……」

 

 その輝きに目を奪われる。

 だが遊馬の視線はアマテラスではなく遊里にひたすら向いていた。

 

「……よう遊馬。なんでまたこんな場所で俺達はデュエルなんかしてるんだ?」

「遊里!洗脳が解けたのか!?」

 

 いつものように声をかけてくる遊里に驚きの声を上げる。

 まさか洗脳が解けたのか!

 しかしその額にバリアンの紋章がついたままだ。

 

「洗脳……か。いや今でもお前を倒せって頭の中が五月蝿くて仕方がなくてな。状況はさっぱり分からないがとりあえずお前を倒す」

「へっ!いつもの遊里ならともかく、洗脳された奴に俺は負けない!」

「そうか。なら勝ってどうにかしてくれよ」

「おう!任せておけ!」

 

 遊里の願いに任せろ!と力強く頷く遊馬。

 だがその力強さとは別にフィールド上はあまりにもよろしくない。

 

「なら行くぞ!俺はアマテラスの効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、除外されているレベル4以下の俺のモンスターを俺のフィールド上に特殊召喚する!こい、ヤマト!」

 

 アマテラスの光が次元の穴を開けると、そこから現れたのはあのヤマトであった。

 これで遊里の場にはモンスターが4体。

 だがここで終わる遊里ではない。

 

「更に墓地にある《武神器-ハチ》の効果を発動する!」

『今のアマテラスの効果で墓地に送ったのか』

「俺はこいつを除外して相手フィールド上の魔法・罠を1枚破壊する!」

 

 墓地からハチが飛び出して、遊馬の魔法・罠を食らい尽くさんと襲い掛かってくる。

 だがそれは外れだ。

 

「ハチの対象になったカードを発動する!罠カード、《バースト・リバース》!ライフを半分払って、自分の墓地のモンスターを裏側守備表示で特殊召喚する!俺は《ゴゴゴゴーレム》を選択!」

 

 食らわれる寸前にその力が発動し、墓地に眠りし巨人を蘇らせる。

 これで壁となるモンスターが増える事になる。

 だがその代償に遊馬の残りライフは550しか残っていない。

 

「ならばバトルだ!ヤマトとツクヨミで《ゴゴゴゴーレム》を破壊しろ!」

 

 1度だけしか身を守る事ができない《ゴゴゴゴーレム》では2体連続攻撃を凌ぐ事はできない。

 だがその力で2体のモンスターから遊馬を守る事ができたのだ。

 しかし遊里の攻撃はまだ終わらない。

 

「続けてそのセットモンスターにカグツチで攻撃!」

「セットモンスターは《ゴゴゴギガース》だ!」

 

 純粋に高い防御力を誇る巨人ではあるが、強大になったカグツチの攻撃をどうにかする事はできない。

 母すら焼き殺す焔によって一瞬で消滅してしまうギガース。

 

「行けアマテラス!遊馬にダイレクトアタック!アマノツルギ!」

「負けるかぁ!罠発動!《ピンポイント・ガード》!墓地からモンスターを守備表示で特殊召喚する!頼む《ゴゴゴギガース》!」

 

 遊馬に襲い掛からんと放たれた天の剣がその寸前で蘇ったギガースが受け止める。

 しかしやはりその守備力を上回る一撃により貫かれて消滅してしまった。

 

「凌いだか……エンドフェイズ、ヤマトの効果で《武神器-ヘツカ》を手札に加えそのまま墓地に送ってターンエンドだ」

 

 遊里の手札はこれで0。

 しかしフィールド上には太陽と月、火の神と皇子がいる。更に攻撃力をアップする天キとセットカードも1枚存在する。

 逆に遊馬は手札にもフィールドもカードがない。

 まさに絶体絶命だ。

 しかし遊馬の目は死んではいない。

 それどころか、ここからでも勝つという強い意志が宿っている。

 

「見せてやる!かっとビングだ、俺!ドロー!」

 

 勇気を抱く遊馬の魔法の言葉と共にカードをドローする。

 ドローしたカードは……。

 

「俺がドローしたのは《ガガガドロー》!墓地にあるガガガと名のつくモンスターを3体除外してカードを2枚ドローする!」

 

 除外したのは《ガガガガール》、《ガガガクラーク》、《ガガガガードナー》。

 しかし先程までのデュエルでクラークとガードナーの姿はなかった筈、いつのまに墓地に?

 

「《手札抹殺》の時か」

「ああ!そして更に俺は《エクシーズ・トレジャー》を発動!」

「マジかよ」

「フィールド上に存在するエクシーズモンスターの数だけカードをドローする!フィールド上に3体のエクシーズモンスターがいるから俺は3枚カードをドローする!」

 

 一瞬にして遊馬の手札が4枚に増える。

 先程まで0だったというのにも関わらずだ。

 

『遊馬!勝利の方程式は揃った!』

「ああ、行くぜ!俺は《ガガガシスター》を召喚!」

「そいつは……!」

「遊里が俺にくれたカードだ!シスターの効果を発動!デッキからガガガと名のつく魔法・罠を1枚手札に加える事ができる!俺が加えるのは《ガガガリベンジ》!」

 

 一瞬にして遊里は遊馬のやる事が分かった。

 何せかつて現■世界でも散々、自分がやってきた事なのだから。

 

「俺は手札に加えた《ガガガリベンジ》を発動!墓地のガガガモンスターを1体、復活させて装備させる!蘇れ《ガガガマジシャン》!!」

 

 逆襲とばかりに唯一墓地に残しておいた《ガガガマジシャン》が蘇る。

 だがシスターはレベル2でマジシャンはレベル4。このままではエクシーズ召喚はできない、が。

 マジシャンの効果である。

 

「俺は《ガガガマジシャン》の効果発動!自身のレベルを変更し、レベル2にする!」

「レベル2のモンスター・エクシーズ?」

「いいや、《ガガガシスター》の更なる効果を発動!自分フィールド上に存在するこのカード以外のガガガと名のつくモンスターを選択し、そのレベルの数の合計をシスターとモンスターのレベルにする!」

「つまりレベル4って事か」

 

 レベル4のモンスターが2体。

 となれば、ここで出してくるのはあれしかない。

 

「俺はレベル4になった《ガガガマジシャン》と《ガガガシスター》でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

「来るか!」

「現れろ、No.39!未来へ繋がる希望の光!希望皇ホープ!!」

 

 白を基調した戦士。

 遊馬の希望にして、遊馬にとって始まりのナンバーズ。遊馬のエースモンスターが光臨したのだ。

 だがここからどうする?

 

「そして俺はホープをエクシーズ素材としてカオスエクシーズチェンジ!」

 

 ホープが塔のような姿に形を変えると雄たけびを上げて、上空に駆け上がっていく。

 そしてそこから新たなホープが誕生する

 

「現れよ、CNo.39!混沌を光に変える使者!希望皇ホープレイ!」

 

 先程までの白い姿とは違い、グレーを基調とした姿に変わっている。

 背中のパーツも増えており、強化された姿というのがよく分かる。

 

「行くぜ!ホープレイの効果を発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、ホープレイの攻撃力を500アップさせ相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げる!オーバーレイ・チャージ!」

「くっ、その効果は対象を取らないからなヘツカの効果が使えない……!だが……!」

 

 遊馬のホープレイの攻撃力はこれで4000。

 そしてホープレイの効果で攻撃力が下がったのはアマテラス。その攻撃力は0に変貌していた。

 アマテラスを攻撃すれば遊馬の勝利である。

 

『行くぞ遊馬!』

「行くぜ!俺はホープレイでアマテラスを攻撃!」

 

 混沌の光が太陽姫を斬りさかんと遅いかかる。

 しかしこの状況で遊里は思わず舌打ちしていた。

 どうしてアマテラスを選んだのか、だ。

 もしここでヤマトを選んでいたのならば話は違っただろう。だがアマテラスならば勝利は遊里が手に入れるだろう。

 遊里の場にセットしてあるカードは《剣現する武神》。

 このカードは墓地にある武神と名のつくモンスターカードを1枚手札に加えるか、除外されている武神と名のつくモンスターカードを1枚墓地に戻す効果である。

 これで墓地に眠るハバキリを回収すれば、その効果で元々の攻撃力の2倍になりアマテラスの攻撃力は5000となる。

 ホープレイの攻撃力は4000。これが通れば遊里の勝ちである。

 だから遊里はそのセットを発動しようとした瞬間、驚いた表情を見せた。

 

「この瞬間、墓地の《タスケルトン》の効果発動!こいつを除外してその攻撃を無効化にする!」

「えっ、ホープレイの攻撃を!?」

「……まさか!?」

 

 小鳥が驚きの声をあげる。

 攻撃が通れば勝てるというのにどうして無効化にしてしまうのか?

 だが遊里はその一瞬で遊馬が何をしたいのか理解できてしまった。

 

「攻撃が無効化された事により、俺は速攻魔法を発動!」

「!」

「《ダブル・アップ・チャンス》!攻撃が無効化された時、そのモンスターの攻撃力を2倍にしてもう1度攻撃する事ができる!」

『これで攻撃力は8000!これならば!』

 

 攻撃を無効化した事により更に力を強化したホープレイ。

 勢いにのったホープレイが再びアマテラスへと襲い掛かる。

 

「なるほど。これはどうにもならないか」

 

 セットしてあった《剣現する武神》を発動させずその時を待つ。

 アマテラスは必死に足掻いているがもう遅いのだ。

 

「ホープ剣・ダブルカオス!スラッシュ!!」

 

 全ての力を集約した攻撃がアマテラスを破壊。

 一瞬にして遊里のライフポイントを0にした。

 

 

 

 

 

「あー、迷惑かけたみたいだな」

「気にするなって!」

 

 デュエルが終わった後、遊里は遊馬達に頭を下げていた。

 洗脳されていたとは言え迷惑をかけたのには違いないのだから。

 だが遊馬は気にするな、と言ってくれる。本当にいい奴である。

 

「でも遊里さんははっきり何があったか覚えてるんですよね?」

「つってもデュエルの事ぐらいで、誰に洗脳されたとかはさっぱりだぜ」

 

 ほぼ自力で洗脳を解きかけていた遊里は他とは違い記憶の損失は少なかったが、やはりと言うべきか洗脳してきた下手人の事は覚えていなかった。

 だが今まで洗脳されてきた人々は殆ど記憶がなくなっているのだ。

 デュエル中に意識を復活させ、記憶を失っていない遊里は非常に珍しいケースといえた。

 

「俺にやれる事は少ないが何かあったら呼べよ。力になる」

「おう!」

「後、もう1つ。こんなデュエルになって悪かったな」

「いいって。でも、改めて約束して欲しい事があるんだ」

「なんだ?」

「今度こそちゃんとしたデュエルをしようって」

「……ああ、そうだな。今度はちゃんと本気でやろう」

 

 洗脳された状態なんかではなく。

 九十九遊馬と青山遊里としてデュエルをしよう。

 そう約束して、帰路へとついていった。




所謂オリ主ものだと大体、オリ主には精霊とか傍にいてナンバーズをもっても大丈夫とか色々あります。
が、ナンバーズを持ったら闇が増幅しますしバリアンに洗脳されるし、オリ主視点が全然ないのがこの作品。
次の幕間はオリ主視点にしたい。

おまけ

・《ガガガ学園の緊急連絡網》
漫画版より。OCGでは相手フィールド上にモンスターがいて自分フィールド上にモンスターがいない時、限定だが漫画ではガガガモンスターがいる時に発動できる効果を持つ。
このカードが発動した時、エクシーズ召喚しかできない制約があるのだがどっちにしても結果は変わらない為、漫画版での効果で登場。

・《No.61 ヴォルカザウルス》
アニメでは効果発動の回数制限もなければセットモンスターも対象に選べて、効果を使った後でもダイレクトアタックが出来た。
弱体化したOCG版でも十分に強いランク5である。

・《バースト・リバース》
OCGでは2000ライフ払って発動だが、アニメではライフ半分払っての発動。
アニメでは4000スタートなのでライフ半分の方が強いのでアニメ的に言えばOCG版は弱体化している。

・《ピンポイント・ガード》
アニメではレベル4以下のモンスターを蘇生する効果を持っているが、特殊召喚したモンスターの効果は無効化された上に破壊耐性ももちあわせていない。
OCG版で強化されたカードの一枚。架空デュエルでの採用率は高め。

・《エクシーズ・トレジャー》
アニメカード。敵味方問わずフィールド上に存在するエクシーズモンスターの数だけドローできる。
手札消費が激しいアニメの頼もしいお供。凶悪な効果な為、確実にOCG化する事はないと思われる。
遊馬だけではなくアリトやナッシュも使ってるのでZEAXLだとメジャーなカードだと思われる。

20140918 誤字など修正。後書きにおまけを追加。
20140927 おまけ追加。

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