すみません。
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馬に揺られて三時間やっとこ町についたみたいだ。
整頓された綺麗な石畳の上にこれでもかと店が立ち並び、人で溢れかえっている、横道を見ればちらほらとチンピラや危なそうな連中が見え汚れている為あまり治安が良いとはいえなさそうだ。良くも悪くも生活感溢れる町並みだ。
しかし興味を引く町でもある。秘薬屋とか錬金屋、杖屋など正しくファンタスティックな店もかなり見受けられる。本当に俺は魔法の世界に来たのだと改めて感じた。
「いや〜。やはり町ってのはどこの世界でも人が多いもんなのかね。」
サムは形の良い顎をさすりながら感慨深く呟く。
「そんな事言ってないで、ちゃんと付いてきてよね。この辺りは治安が悪いから預けたお金大丈夫でしょうね?」
疑い深くサムを見るルイズだがサムはいつものニヒルな笑みを浮かべ。
「ん?こいつの事かい?」
と袋を一つだす…ん?二つ、三つ四つも出てくる。私こんなに預けてないわ。
「サム?それどうしたの?」
「これか?んー。そうだな。わざわざおれの近くまで寄ってきて盗もうとしてくる奴が多くてな。手数料として頂いた。」
ルイズは今日エキュー金貨を百しか持ってきていなかった、その袋よりも大きい袋が三つもある。
「サム、ちょっと中身見せて。」
覗いて見ると全部で六百もあった。
「あんた!これどーするのよ!」
「いやぁ。盗もうとした奴のを貰っただけだからなぁ。俺だったら自分の分に使うがね。ま、ルイズに任せる」
とサムは笑う。いや正直私の一ヶ月のおこずかいの二倍だ。サムも言ってる事だしブリミル様も許してくれるはず。
「あ、半分は俺に自由に使わしてくれ。俺が貰ったんだいいだろ?」
「まぁ…半分なら、あんたが取った物だし構わないけど。無駄遣いしちゃダメよ。」
「りょーかい。んじゃあ。ルイズ早く剣を買いに行こうか。」
サムは良い年して早く剣が欲しいのかウズウズしている。
全く仕方が無い使い魔だこと。
「分かったわ。子供じゃないんだからそんなウズウズしないで。こっちよ早く行きましょ。」
「ラジャー。」
ルイズの後を追うサムの足取りはかなり嬉しそうに弾んでいた。
まぁ。自分で言うのもあれなんだが、ちとキモいね。
そんで、しばらく歩くと剣と盾のマークが入った看板の店の前に止まった。
以下にもRPGで見る様な武器屋って感じの店だ。
「ここね。サム中に入るわ。」
中に入ると壮観だった、斧やら槍やら鎚やら盾やら何でもござれ。
もちろん剣もあるが鎧なんてのも飾ってあって。いや。この歳であれだがかなり興奮したな。
ま、少年の心を忘れずに。が俺のモットーだからいいんだが。
「へい!らっしゃい!!…あれ?貴族様で?どんなご用事でしょうか?」
と奥からここの店主で有ろう親父が出てきた。貴族と言うのと少女のルイズを見て驚いている。
「従者の剣を買いに来たのよ。何か良いのを見繕ってくださる?」
「ほぉ。貴族様が剣を!?最近は物騒ですからね、剣の一つでも持たせておくのが正解でしょう。土くれのフーケとか言う盗賊もいますしね。少々お待ちを。」
と奥に消えて行った。店主は思う、「しめしめ、ガキの貴族が、やって来た。精々高く売りつけてやるとしよう。」と、まずは細く端麗な剣を一本持ってきた。
「こいつはレイピアと言う武器でさぁ。見栄えも良く貴族様に好まれますぜ?」
「へぇ。綺麗な剣ね。サム!こんなのはどう?」
と武器屋を見て回っていたサムをルイズが呼ぶ。
店主はどんな従者が出てくるのか、興味があった。まぁ精々対したことも無い剣士で有ろうとタカはくぐってはいたが。
「ん?ルイズ。こいつはレイピアだな。んー。俺には合わん。」
目の前のサムと言う男は呟いた。中々わかる奴だなと店主は思う。
とふとサムと目があった。店主は思う。こいつは只者じゃねぇと。
「貴族様!少々あちらに綺麗な剣があるので見て来て貰っても宜しいでしょうか?」
「え?まぁ。分かったわ。サム。貴方も剣を見て回ってちょうだいね。」
とルイズは言ってしまった。んじゃあ、仕方が無いから俺もまた見て回るかなと思っていたら、店主に呼び止めららた。
「待ちな。あんた。只者じゃないな。その目。その傷。雰囲気。俺は数々の傭兵を見て来たがあんたみたいのは初めてだ。」
「ほぉ。何故ルイズを遠ざけたと思ったら。話をする為かい?」
「まぁ。そんな事でさぁ。俺は見る目はある方なんでね。どうでも良い奴には適当な剣を売るが。あんた見たいのは別だ。もしかしたらあんたなら使えるかも知れねぇ剣がある。見て見るか?」
と挑戦的な目で店主が此方を見て来た。
「もちろんだ。見せてくれ。」
「ほい来た!待っててくんな。」
暫くすると一振りの剣を持ってきた。
否。それは剣では無く慣れしたんだ刀の形をしていた。
まだ鞘から抜けないので刀身は見えないが。
「旦那驚かないでくんな。俺の見たてではかなりの名剣なんだが、こいつはまだ誰も抜いたこと無い剣だ。抜いた事の無い剣と言うか抜かせてくれないんだがな。まぁ本人から直接きいてくれや。」
と店主が言った。本人?と訝しんでいると。
「んったく。いきなり倉庫から出されたと思ったら。なんだなんだ?また意味もねぇ弱っちい剣士に握らせんのか?」
と剣から声が聞こえてきた。
「驚いた。店主この剣はしゃべるのか?」
「あぁ。インテリジェンスソードと言われていてな。かなり珍しい剣なんだが何分口が悪いし剣を抜かせてくれないしで買い手が付かなくてな。あんたなら使えるかもと思って持って来たんだが。とりあえず握って見てくれ。」
と店主は剣を置いて、「ま。断られた様にまた剣を探してくるから待っててくれ。」と行ってしまう。
とりあえず持ち上げ握ってみた。
「おいおい。俺様を使えんのか?頼むから壊さないでくれ…って」
さっきまで喋くりまくってた剣が黙った。
「おいおいこいつはおでれーた。お前さん。使い手だな。しかも…とんでもねぇ使い手だ。俺を握ってここまで手が馴染むなんざ初めてだ。それに…おめさん人を斬ったことがあるだろ。」
「へぇ。分かるか。凄いな。」
「あぁ。わかるさ、それも一人や二人なんて数じゃねぇ。かなりの数を斬ってかなりの修羅場をくぐってやがる。そして、人を斬ることに魅せられてない強い心を持ってるなおめさん。いやぁ俺は嬉しい!!こんな使い手に会えたなんざ、何千年ぶりだ?おめさん俺を買え!絶対かえ!」
な!な!とこの剣が言ってきた。
「待て待て。お前名前はなんて言うんだ?」
「俺様か?名はデルフリンガーだ!」
俺は今一度デルフリンガーをよく見る。見れば見るほど日本刀だ。
鞘の柄に近い部分には紋様が彫られており、握り締めるとカシュッと音を立てて凹む仕組みになっている。これは何の意味が有るのか、まだ分からんが、刀の形をしているだけで十分買う理由になる。
「俺はサムだ。」
「そーか!サム!早く俺を抜いてくれ」
俺は力を込めて抜いた。
だが。刀身は錆だらけだった。形は正しく日本刀なのだが、錆が一面こびりついている。
しかし、この錆び方はかなりおかしい。何故なら一面に錆びたら普通は中折れするから刃こぼれが有るはず。だが全くもって刃こぼれがなく、ただ錆びをくっ付けているだけにしか見えない錆び方をしていた。
「ありゃゃ。悪いなサム。錆びてる」
数回その場で振ってみる。うん。良い重さ。良い重心だ。重さが偏らず真ん中にしっかりとありてに馴染む。錆びてはいるが…こいつは正しく名刀だ。
「ふ。まぁいいさ。お前に決めたぜ。デルフリンガー。」
「本当か!!宜しくな!!相棒!!」
と、店主が奥から出てきた。
「おぉ!!やはり抜いたか!ってデルフ。お前さん錆びてたのか。」
「うるせぇ!久々に抜かれたからな、しかたねぇ。」
「まぁ。店主こいつは俺が買った。確かに錆びてはいるが…良い刀だ。」
「カタナ?なんですかい?そいつは?」
「馬鹿野郎!刀だよ刀!流石相棒!刀を知ってるたぁもっと気に入ったぜ。」
「デルフ。この世界に刀の概念は無いみたいだ。分からなくて当然さ。それはともかく店主。こいつは幾らだ?」
「旦那。そいつはタダでいいでさぁ。貰ってくだせぇ。名剣だがあっしにしてみりゃ厄介払いみたいなもんさ。どうかお気になさらずに。」
「そうか、悪いな店主。ご好意に甘えありがたく頂くよ。」
「良かったなぁデルフ。お前さんを使ってくれる旦那ができて。俺は清々するよ」
「うるせぇ!!親父!俺もこんなとこから行けて清々だ!!」
「旦那。口悪いですが、こいつは良い剣でさぁ。デルフの事たのんます。おい!デルフ!しっかりと旦那の役に立ってくるんだぞ。旦那、何かありやしたらまたよってくだせぇ。デルフぐらいならちょちょいのちょいで治せますんで。」
「言われなくても分かってらぁ!!クソジジイ。店潰すんじゃねぇぞ!俺の整備してもらうんだからな!」
「はいはい。じゃあなデルフ。しっかりな。」
「おう。達者でなクソジジイ。」
と言ったっきりデルフリンガーは黙ってしまった。よく分からんが仲のいい二人?だ。
そうこうしてるうちに奥からルイズが帰ってきた。
「サム、剣は決まったの?」
「あぁ。こいつにした。」
と鞘からデルフリンガーをだす。
「え?サビサビじゃない?こんな剣でいいの?」
「うるせぇ!!小娘!黙ってやがれ!」
「剣が喋った!これインテリジェンスソードね!?初めて見たわ。サムって本当に面白いもの見つけるのね」
「まぁな。確かに錆びてはいるが俺には丁度良い剣さ。それにタダでくれるっていうんだ。もらうしかあるまい。」
「あら、ありがとう店主。」
「いえいえ。滅相もございゃせん。」
「だが…何も買っていかないというのはアレだな…。ルイズ?俺になんか買ってくれるんだっけか?」
とルイズを見る。ルイズはこくりとその小動物を思わせるような可愛さで頷く。
「えぇ。もちろんよ。私は一度言ったら裏切らないわ。」
「じゃあ…俺の装備を揃えてくれないか?服とかナイフとかだな。流石にいつまでもこの服じゃあ…ルイズも困るだろ?色々と。」
と言うとルイズは怪訝な顔をする。
「色々ってなによ!色々って!でもまぁ貴方の服装は上はともかく履いてる靴とかズボンとかちょっと特殊よね。良いわ買ってあげる。ただし。百五十エキューまでよ。」
とサムに金貨のはいった袋を渡す。サムはそれを受け取り店主に渡した。
「店主。こいつで俺の装備見繕ってくれるか?」
「へぇ。そりゃ旦那の為なら。しかしちと時間がかかりやすぜ、よろしいので?」
「ルイズ。俺にこの町を案内してくれないか?」
「まぁ…休みだから別にいいけど。」
「だ、そうだ。俺のご主人がそう言ってるんで時間を潰してまたくる。店主。よろしくたのんだ」
「あい。わかりやした。」
ふと、サムがいたずらを思いついたような顔をして店主に近ずく。耳を貸せと手招きをした。
「店主。もう少ししたら、恐らくだが赤髪の胸のデカイ貴族がくる。そいつに一番高い剣を俺が欲しがってたって言って売ってみな。恐らく、買うぜ。」
「そりゃ、本当で?」
「あぁ。間違いない。サムエル•ホドリゲスが欲しがってたっていいな。」
「そいつはありがてぇ。感謝しますぜ、旦那。」
ニシシと商人の笑みを浮かべる店主を背に、サムとルイズは武器屋を後にした。
「ルイズ?この後どうする?」
「んー?露店街にでも行ってみようかしら?ぐるっと町でもまわってみるわ。」
「ではではご主人様。よろしくお願いします。」
その言葉に満足したのか、ルイズは天使の笑みを浮かべてこう言った。
「うん!それじゃ私の荷物持ち今日一日頑張ってね!」
「ははは…やはりそう来たか…」
サムは心に刻む。女の外出、お供はするな、お前の腕が惜しいなら。
「ま…デルフが手に入っただけ良しとしますかね…。」
異世界始めての休日はまだまだ終わらない。