ゼロの使い魔 その刃は何が為に。   作:刀龍

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始まりはいつもゼロ。

「ルイズ、迎えに来た…って。あれ?」

 

俺が教室に迎えに来ると、どうやら中でまだ授業中の様だった。

何やら面白そうだから、中に入ってみるとしますか、魔法の学校の授業なん見たことないからな。

サムはささっとばれない様に中に入り壁に背を傾け授業を眺めることにした。

 

「では…次はミスヴァリエールお願いします。錬金してみてください。」

 

 

「はい!!分かりましたわ。ミスシュヴルーズ」

 

 

おっ、ルイズが何かやるみたいだな?なんだ錬金とかあのシュヴルーズとか言うおばさんは言っていたが。と気興味半分で見ているとシュヴルーズが石を取り出して説明し始めた。

 

「では、この様に何の変哲ない石をですね。」

 

シュヴルーズが杖を一振りすると金色の石に変わった。

 

「この様に、自分の思い描いたものに変えて見てください。これは真鍮ですが、スクェアともなれば黄金を生み出せます。ではミスヴァリエールどうぞ、勇気を持ってやって見てください。」

 

おいおい、とことん魔法ってのはとんでもないんだな、石そのもの物質を変えちまうなんて、まぁ俺の腕が生えて来るぐらいだ。この際なんでもありなんだろうがな。

おっと。ルイズが錬金するみたいだ。

 

「ミセスシュヴルーズ!!ゼロのルイズにやらせるのは危険です!!」

 

「おい!ルイズ!やめろ!みんな机に伏せとけ!!」

 

なんだか周りが騒がしくなってきたな。ルイズがやると何かあるのか?

それにゼロのルイズ。二つ名見たいなものだろうが、どういった意味なんだ。

まぁ、これから起こることを見てればわかるか。

 

「分かりましたわ。」

 

とルイズは杖を取り出し石の前に構える。

 

「ルイズ!やめろー!!」

 

そしてルイズはルーンを唱え杖を一振りした。

いや、にしても本当に様になる。

一所懸命にやろうとしているルイズの姿はここの誰よりも色っぽいね。

俺が思うに相当な美人になるだろうさ、ほら今だって綺麗なもんなだから下から光が差し始めた。

ん?光が差し始めた?どんな状況だ?とサムが思った瞬間。

ドゥガーン!!!!!

と大爆発が起きた。窓ガラスは全て割れ、他の生徒の使い魔達は驚いた余りに窓から飛びだすもの、他の使い魔を襲うものなど、てんやわんやだ。ルイズを教えていた教師は気絶している。

ルイズとはと言うと自慢のピンク色の髪には煤がつき、スカートが破けパンツか見えてしまっている。

 

「だから言っただろ!ルイズ!やめろって!」

 

「いつも失敗するだろ!だからゼロのルイズなんだよ!!ふざけんな」

 

などと生徒達は罵声を浴びせて、授業も終わりなのでミセスシュヴルーズを連れて出て行ってしまった。

教室に残ったのは、サムとルイズだけだ。

 

 

「こりゃ、また派手にやったな。お嬢様。」

 

「なによ。少し失敗しただけよ。」

 

とサムが教室の上から笑いながら話しかけてきた。なんだか見下された気がして無性に腹がたつ。

どうせこいつも皆と一緒。私のことをバカにするんだわ。ゼロのルイズって。不甲斐ない主人だって。

 

「ご主人、片付け大変だなこりゃ。」

 

「こないでよ…。」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「こないでって言ってんのよ!!あんたもバカにしてんでしょ!!私の事!皆から魔法も使えない何もできないゼロのルイズだって!気がついたでしょ!私は…私はメイジで…あんたの主人なのに。なんにも出来ない。ゼロのルイズなのよ…」

 

すごく悔しかった。ゼロのルイズって言われるのが。やっと魔法が使えると思えたのに。私は使い魔のこいつにもゼロのルイズって呼ばれるんだわ…。そう思うとなんだか涙が出てきてしまう。

 

「なぁルイズ、パンツ見えてんぞ。こいつで隠せよ。」

 

そう言ってサムは上着を渡しに貸そうと近いてくる。

 

「こないでって言ってるじゃない。来ないでよ!」

 

もう嫌だ。恥ずかしい思いして。魔法も使えなくて。おまけに自分の使い魔にもバカにされるなんてゼロのルイズって。

 

「ルイズ。」

 

「なによ。」

 

サムがこっちに来て始めて真面目な顔をしている様な気がした。心から私を呼んでいる様な気がして思わず、バカにされるかもしれないのに、サムを見てしまう。

 

「ゼロのルイズだっていいじゃねぇか。」

 

 

そう言って、アイツは笑った。

私は思わず、キョトンとしてしまう。バカにされると思っていたから。

 

 

「ゼロのルイズでなにが悪いんだ?俺はこっちの世界の人間じゃないからよく分からんが、普通魔法が使えないと大爆発なんて起こるのか?なにも起こらないんじゃないか?ん?」

 

と何時ものヘラヘラした笑い顔でこちら見てくる。自身満々な顔してそうだろ?とでも言う様に。

 

「それによ。俺を呼び出したのが確かな証拠じゃないか。爆発だって俺からしてみれば魔法が発動してるみたいなもんだ。それは魔法が使えないんじゃなくて、失敗してるだけだろ。」

 

「あんたは。私を馬鹿にしないの?」

 

そう言って潤ませた瞳でこちらを見て来る。おいおい。そんな目で見るなって。

全く。女を泣かしたら男失格だな。ましてやご主人泣かしたら侍として失格か。

 

「馬鹿になんかするわけないだろ。俺はルイズに感謝してるのさ。」

 

「なんでよ。勝手にアンタのとこ呼びだして感謝なんかされる覚えがないわ。」

 

「あー。話していなかったなそう言えば。今だに信じられないが、この世界に召喚とやらされる前はな。俺は死んでいんたんだ。多分だが。」

 

「え?死んでいた?どー言うこと。」

 

「俺はルイズに召喚される寸前に剣で体を貫かれて死んでいた。目の前が真っ暗になった時に、光が見えた。俺は思わずてを伸ばして見たら。」

 

まぁその先はわかるだろ?とサムが何時もの笑みを浮かべる。

 

「そしたらこっちに来たってこと?」

 

「そう言うことだ。おまけに無かった右腕まで生えて来てな。」

 

びっくりしたね。とサムが笑う。一体こいつはどんな生活をしていたんだとルイズは思った。

 

「まぁ、俺としては命の恩人ってことだ。それになルイズ」

 

「物事、森羅万象全て零から始まるんだ。ルイズお前は始まるのが遅いだけじゃねぇか?」

 

なんとかなるさ、とサムが肩をすくめてニヤッと笑う。なんだか私はその顔を見て、いつものニヤニヤした顔なのに、少し心が軽くなった気がした。

 

「なんだかアンタの顔見てたら、悩むの馬鹿らしくなっちゃったわ。まぁ一応…ありがと。」

 

「へぇ。俺の顔にそんな効果があるなんてな。まぁ、顔だけは俺はいいからな。」

 

とケラケラ笑う。全く。自信過剰は良くないわ。

確かに少し大人っぽくて野生的で、よーくしっかりとかなり目を凝らしてみれば、ちょっぴりほんのちょっぴりはかっこいいかもしれないけれど。

 

「ん?どうした?そんな俺の顔見て?惚れたか?」

 

「なっ、なっ、なに言ってるのよ!そんなわけ、な、な、ないわ!」

 

「冗談さ、さ、昼飯だ。さっさと片付けして行こうぜ。お嬢様。」

 

やっぱりちょっともかっこ良くなんてない!と心の中でさっきの感情を全否定するルイズなのであった。

 

 

「あー腹減った。ルイズ昼飯も朝と一緒なのか?」

 

「少しはマシだとは思うけど、あまり変わらないわね」

 

おいおい、マジかよ。朝飯と一緒なのか。またシエスタの所でもいこうかな?とサムとルイズは片付けを終えて。食堂に向かっていた。

 

食堂に到着して、あーそっけねぇ飯食べるのか、なんて思っていると、なにか食堂の奥が騒がしくなっている。

 

「ギーシュ!やっぱり貴方一年生に手を出していたのね!もう知らない!」

 

と金髪の男がすごいロールの金髪女にぴっぱたかれているのが見えた。

 

「まってくれ!モンモラシー!これは誤解なんだ!このメイドが拾っただけなんだ!」

 

「なに言ってるのよ!その香水は私が作った物だわ!間違いないもの。それにそこで泣いている一年生の子が何よりの証拠じゃない!」

 

パチン!!

 

うおっ!もう一発いいのをもらったな、あれは。二股でもしたのか?若いってのは怖いね。

 

とモンモラシーと呼ばれた女はスタスタと食堂を出て行ってしまった。そして残っているのは叩かれたギーシュと言う男と…あそこのメイドはシエスタ?シエスタじゃないか?

 

すると、ギーシュとやらがシエスタを上から冷たく睨みつけ、こう言い放った。

 

「おいメイド君、君が拾わなければこうはならなかったんだよ!どうしてくれるんだね?君は僕の尊厳だけではなく二人のレディのハートすら傷つけたんだ。どうしてくれる?」

 

「すっ!すみません!貴族様!」

 

シエスタは顔を真っ青にして怯えていた、やはりこの世界の貴族とやらは絶対的な象徴かなにかなんだろう。

 

「ルイズ。先に飯食べていてくれ。用事ができた。」

 

「え?何よサム?ちょっ!どこいくのよ!」

 

震えているシエスタを放ってはおけねぇだろう。一宿一飯の恩義だここでなにもしなかったら、サムエル•ホドリゲスの名が泣くね。

 

「おいおい、伊達男そこまでにしといてやんな」

 

「え?サムさん?」

 

「誰かね、君は?私はこのメイドの不始末をどうしようか悩んでいる所なんだが?」

 

「なにを言ってる?二股したのはお前はだろ?、シエスタは落し物を拾っただけじゃないのか?」

 

するとギーシュの顔がキッとサムを睨みつけた。

 

「君は貴族への態度を知らないのかね?そう言えば君は…あのゼロのルイズの使い魔じゃないか!!そりゃ態度も無くて当然か!」

 

と周りの奴らに言い、笑う。心底ムカつくガキだことで。

 

「おい。ませガキ。二股して振られておいて、調子に乗らない方がいいんじゃないか?見てるこっちが悲しいぜ?」

 

「言ったな。貴族にそんな口聞いたらどうなるか分かって言ってるのかな?」

 

「なにか出来るなら、どーぞ。坊ちゃん。」

 

ギーシュの顔が不敵に微笑む。

 

「言ってくれたね。ならば…決闘だ!!ヴェストリの広場に来たまえ!逃げるなよ、平民。」

 

「決闘?いいさ。受けてやるよ。」

 

「よし。ならば待っているよ。せいぜい飼い主に別れの言葉でもつたえてくるんだね。」

 

と捨て台詞を言ってギーシュは立ち去って行った。その取り巻きも一緒に面白がりながら立ち去って行った。

 

「シエスタ。大丈夫だったか?」

 

「あ、貴方殺されちゃう。サムさん殺されちゃうよ!!」

 

「大丈夫さ。心配するなって。」

 

とサムさんは笑う。いつもの笑みだけど。そこには冷たいものがあった。

私は深い闇をその瞳に見てしまった気がした。

 

「さてと。んじゃいってくるかな。また、後でなシエスタ。」

 

とサムさんは行ってしまった。

 

「ちょっと!サムエル!」

 

と向こうからルイズがやってきた。全く今度はなにかね。ご主人様。

 

「貴方、決闘とか言ってたわね!ダメよ!メイジとなんか決闘したら怪我どころじゃ済まないわ!メイドなんかどうでもいいじゃない!あやまっちゃいなさいよ。」

 

「いやだね。シエスタには一宿一飯の恩義がある。」

 

「なんでよ!そんなに意地張らなくていいわ!貴方は私の使い魔言うこと聞いてよ!」

 

「ルイズ。」

 

「な、なによ…。」

 

サムが私をじっと真っ直ぐ見つめてきた。そ、そんな目出来るんだと思ったのと。サムエルの余りの真剣な顔に。少しだけほんの少しだけドキッとした。

 

「そのご主人様が、馬鹿にされた。これだけで決闘する理由になるだろ?俺は何だかよくわからんが、それが一番腹が立った。」

 

じゃ、いくわ。と言ってサムは言ってしまった。

 

「そ、そんな事言われたらダメって言えないじゃない。」

 

そんな小さな声は食堂の喧騒に消えて行ってしまった。

 

「よく逃げずにきたね平民。」

 

「逃げやしないさ。その鼻っ柱へしおってやらないといけないだろ?」

 

「今謝るなら許そうと、思ったが…。さぁ!皆決闘の時間だ!!」

 

と取り巻きと、観衆にもったいぶってバラを投げた。本当つまらんガキだ。

 

「僕は青銅のギーシュ。ゆえに僕のワルキューレがお相手する!」

 

と地面から、青銅で作られた甲冑が出てきて構えた。全く本当なんでもありで面白いねこの世界は。

ははは。楽しくなってきた。

 

「さぁ!始めよう!」

 

よし 、やるかと思ったら観衆から声がしてきた。

 

「サム!!」

 

「ん?ルイズじゃねぇか。どうした?」

 

「バカ!!その…応援しにきてあげたんじゃない!感謝しなさいよ!」

 

「ははは!そいつはありがたいね。」

 

「サム。怪我はしないで帰ってきて。これは命令よ。」

 

「はいはい。了解しましたよご主人様。」

 

さてと。ご主人の許可も下りた事だし。やりますかね。

サムは体を伸ばし屈伸をして、パーカーを脱いでルイズに投げた。少し怪訝な顔をしたがルイズは持ってくれるようだ。

その屈強で、彫刻のような美しさがある筋肉にルイズは少し目を奪われた。

そして、サムは笑う。その目にほんの少しの狂気を秘めて。

 

「さてと。んじゃ。かかってきな色男。」

 

「ふん。その笑みすぐさま奪ってくれる。」

 

スゥーとサムは構えた。ルイズはその構えに美しさを感じた。だかそれ以上に、戦いには素人のはずのルイズがこれは人を殺す構えなんじゃないかと、確信されるほど。殺意に満ちていた。

 

 

「んじゃ始めるか…」

 

 

 

「サムエル•ホドリゲス。参る!!」

 

 

 

 


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