ゼロの使い魔 その刃は何が為に。   作:刀龍

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長くなってしまいました遅れてすみません!
ここからオリジナル展開がてんこ盛りです…はい。よろしければ見てください!!
よろしくお願いします!!


動き出す物語。

サムは屋根を弾き飛ばしたゴーレムと睨み合っていた。

 

「こいつは読み通りな展開でありがたいね。タバサ!!ルイズと一緒に小屋を出ろ!!」

 

タバサはコクリと頷きサムの後ろで硬直しているルイズを引っ張って出て行った。

出て行く、二人をゴーレムが手を伸ばして捕まえようとする。

が、トゴンと言う鈍い音と共に伸ばした右手が弾かれた。

 

「おいおい…デルフ。お前やっぱり錆びてるから斬れねぇじゃないか。」

 

「無茶言わねーでくれ相棒。おらぁ錆びてる斬れないのは当然じゃねーか。」

 

そうサムがデルフリンガーで思いっきりゴーレムの右手を振り抜いたからだ。

ゴーレムの重量を誇る腕を吹き飛ばしただけでも凄いのにサムは不満気な顔をしていた。

 

「そんな顔するなよ相棒。斬る瞬間に合わせて相手は土を金属に変換してやがる。そう簡単には斬れやしねぇさ。」

 

「そーかい。ま、注意がそれただけでも良しとしようか。」

 

そう言うとサムは壊れた屋根から一足でジャンプし外に出る。

外に出ると丁度広場の真ん中でゴーレムと向き合う形になった。

 

「さてと、土人形。かかってきな俺が手合わせしてやるよ。」

 

首をバキゴキならし、指をクイクイ曲げ相手を挑発する。

ゴーレムは雄叫びな様な声を上げて、さながら柔道の様な構えをとった。

ズシン、ズシンとこちらに向かってきて、サムに向けて右ストレートを放つ。

 

「ずいぶんと大ぶりな突きな事で。」

 

すっと半歩サムが下がると目の前にゴーレムの拳がめり込んだ。

その大きさと重量を誇るパンチは地面に直径3メートル程のクレーターを作る。

普通の人間なら腰を抜かして動けなくなるぐらい凄まじい威力だが、当のサムは涼しい顔をして避けていた。

 

「なんだ?デカイだけか?これならよっぽどメタルギアの方が強いな。」

 

と呟くとそのままめり込んだ拳に向けて思いっきり回し蹴りを見舞った。

のだが…。

ガキン!!と言うと激しい音と共に足が拳にめり込んだ。

ん?めり込んだ?

 

「相棒、これ。多分だけど、まずいんじゃねぇのか?」

 

デルフが世間話をするかの様に話しかけてくる。

それに対してサムは笑顔で答えた。

 

「ははは…。デルフ。多分じゃなくて普通にまずぃぃぃぃぃぃい!!!」

 

足がめり込んだまま、サムは拳ごと振り回されたのだ。

何故サムが足をめり込ませてしまったと言うと、このゴーレムサムの足が拳に届く瞬間に鉄に変わり固すぎず柔らか過ぎない絶妙なバランスにして足をわざとめり込ませたのだ。固すぎるとサムの蹴りの威力に負けて割れてしまうし、柔らか過ぎても木っ端微塵に吹っ飛ばされる。

流石は土のエキスパート。土くれのフーケと言ったところだろうか。

 

「相棒!!!どうするよ!!」

 

「外すに決まってんだろ!見てろ!!」

 

完璧に拳にめり込んだ足をはずのは至難の技だ、しかし普通に考えてみてほしいまず常人の足で蹴ったら鉄などビクともしない。しかし今のサムの足は、いや。前のサムの足でも勿論めり込むだろうが。

今のサムの足は烈脚斧覇竜マルガムそのものである、ゆえに力技で足を引き抜く事にした。

 

「だぁぁりぁ!!」

 

と、めり込んでない方の足で思いっきり踏ん張り、振り回されながらも何とか脱出に成功する。

 

「はぁはぁ。ダメだ打撃が効かん。」

 

とサムが苦虫を潰したような顔になる。

 

「相棒。まずったな。相手は砂だ何度やっても蘇っちまう。俺は錆びてて使えねぇし…どうしようね?」

 

「はぁ……確かに困ったな。」

 

 

と、これからどうしようかと思った矢先に。

 

ドガーン!!とゴーレムの背中から爆発が起きた。

 

「なんだ!?」

 

とゴーレムの後ろに目を凝らすと、そこにいたのは。

 

「ルイズ!?」

 

ルイズが杖を両手に構えて立っていた。

唇を噛み締めながらゴーレムを睨みつけている。

サムはルイズに向けて叫ぶ。

 

「ルイズ!!何やってんだ!!逃げろ!」

 

「いやよ!!ここでこいつを倒せばもう誰も、私をゼロのルイズって呼ばなくなるわ!!」

 

「何言ってんだ!?俺の攻撃も上手く通らないのにお前どうするつもりだ!!」

 

「そんなのやってみないと分からないじゃない!!ここで逃げたらいつまでたってもゼロのルイズだわ!!魔法を使える人間を貴族って呼ぶんじゃない!!」

 

ルイズは杖を力強く握りしめ、身体は恐怖で震えながらもハッキリと言った。

 

「貴族ってのはね!背中を見せず戦う者を貴族と呼ぶのよ!!」

 

ゴーレムがルイズに向き直る。ゴーレムは標的を手っ取り早く倒せるルイズにしたようだ。

 

「だから私は逃げない!!こいつとだって戦うわ!!」

 

腰はガクガク、足はガタガタで今にも崩れ落ちそうなルイズだったが。

その表情には確かな決意を。

その瞳には折れない誇りを。

その華奢で小さな体には大きな勇気を。

 

他の人間から見たらルイズはゴーレムに立ち向かう無謀で恐怖に怯えてるように見えるかもしれない。

だがサムの目にはルイズがとても気高く、美しく見えた。

 

容姿が美しいんじゃない、その誇り高い彼女の魂を美しいと感じた。

 

 

そしてルイズはしっかりと杖を握りしめてゴーレムに向かって魔法を解き放つ。

 

「ファイヤボール!!」

 

しかしボフンとゴーレムの胸が弾けただけだった。ゴーレムは完全にルイズを標的に決めたらしい、ズシンズシンと距離を詰め、その鋼でできた大きな拳を振り上げる。

 

「くっ…もう一度!!ファイヤボール!!」

 

今度は肩が少し弾けただけだ、ゴーレムはその大きな拳をルイズに向けて振り下ろした。

拳がルイズに迫ってくる。

「キヤァァァァ!!」

 

ルイズは自分が潰れることを覚悟した…がその瞬間はいつまでたってもこなかった。

「あれ…?」

 

恐る恐る目を開くとそこにはサムの笑い顔があった。

 

「だ、大丈夫かよ…ルイズ」

 

「あ、あんた…何して…」

 

「何してってなぁ…あれだよ。使い魔の役目の一つご主人様を守るって言うのを忠実にこなしてるのさ。」

 

サムはゴーレムの拳をその身で受け止めていた。鋼鉄の拳をだ、いくらサムだって怪我じゃ済まないだろうに彼は顔色一つ変えずニヤッと笑ってルイズを見る。

 

「バッ、バカじゃないの!!あなた!!あんな馬鹿でかい拳を受けたら死んじゃうじゃない!!」

 

サムはゴーレムの拳を受け止めながら言った。

 

「お、おいおい…この通り…俺は生きてるぜ?」

 

苦悶の色がサムの顔に出はじめた。

 

「何してるのよ!サム!私なんかほっておいて戦えばよかったのに!分かってるわよ!私が無力なことぐらい、さっきのファイヤボールみたでしょ!!」

 

すると、サムがいきなりゴーレムの拳に後ろ蹴りをかましてゴーレムを吹っ飛ばす。

その光景にルイズは唖然としていると、いきなり頬をサムに叩かれた。

 

「なっ、何するのよ!!」

 

とサムを睨みつけるが、サムから帰ってきたのは謝罪の言葉じゃなく怒声だった。

 

「何が私なんかほっておいてだ!!ふざけるな!」

 

「えっ。」

 

「お前のことを無力だなんて俺は思ってない!!すごいじゃないか!!あんなゴーレムに立ち向かう勇気がある奴をあの学園で俺はルイズ以外に知らん!」

 

ルイズは生まれて初めて家族以外の人間に本気で怒られて唖然とした。

すると、そっとサムが頭に手を置いてきた。

 

「だからほっておいてなんて言うな。お前は俺の自慢のご主人様なんだから。な?」

 

なんだかそう言われた事が嬉しくて、助かった事に安心して、涙が出てきた。

 

「うぐっ。ひっぐ。わた、私悔しくて…」

 

「あーあ。泣くんじゃねーよルイズ。」

 

「う、うん。」

 

「ゴーレムは俺がやる。下がってなルイズ。」

 

「わ、分かったわサム。」

 

と、ルイズが後ろに下がるとシルフィードに乗ったタバサが降りてきてルイズを拾う。

飛び上がる直前にルイズから声がした。

 

「サム!!怪我するんじゃないわよ!!」

 

サムは無言で親指を立てる。それを確認するとシルフィードは空へ飛んで行った。

そしてゴーレムをギラリと睨む。

 

「さて…おい土くれ人形。よくもご主人様を泣かしてくれたじゃねぇか。」

 

サムのその表情には彼には珍しく激しい怒りの色が見て取れた。

サムの感情の高ぶりに応じてか左手のガンダールヴのルーンがギラギラと輝く。

 

「おぉ…すげぇや。すげぇ感情の高ぶりだ!!相棒!!」

 

デルフリンガーが興奮した様子で喋る。

 

「あっ!!そーいや思い出した!!今の相棒なら俺のサビを剥がせる!!相棒!!感情の高ぶるまま俺様を抜け!!」

 

 

かちゃりと左手をデルフの鞘に伸ばす、親指を鍔にあて、キン!と甲高い音ともに刃を少しだけ出した。

そして右手で柄をしっかりと握りしめゆっくりと抜刀した。

 

「おぉ!!ぉお!相棒!!来た来た来たぁ!!」

 

抜刀に合わせデルフが激しく発光する。

そして発光が終わるとそこには。

 

 

漆黒の刀身を持つ一振りの名刀があった。

まるで稲妻のようにキザギザの攻撃的な刃紋。

不気味に黒独特の光沢を放つ刀身。

その刃には一切の曇りは無かった。

 

 

「見たか!!相棒!これが俺様の本当の姿?…だったけな?あり?なんかまだ忘れてるような気が…」

 

サムは唖然としていた、いきなりサビが剥げたことにもビックリしたが、それよりも驚いたのは。

 

「何でだろうな…デルフ。今のお前を握ってると何故だかムラサマを思い出した。」

 

「あ?ムラサマ?あれか?相棒の前の(相棒)かい?」

 

 

「あぁ。そうだ。ふふ、何故だろうな今なら何でも…」

 

その場でヒュンヒュンと二振りする。

 

 

 

「斬れそうな気がする。」

 

 

「当たり前だろ?相棒!俺様はデルフリンガー様だぜ?さぁ!!相棒!!ゴーレムなんか千切りにしちまえ!!」

 

「フッ。ルイズも見てるしな。少し…本気を出しますかね。」

 

 

サムはデルフを真っ直ぐ自分の正面に構える。

ゴーレムもサムに向けて構えをとった。

 

サムは刀を脇に置き地面にするように走り出す。ホドリゲス新陰流の技が一つ「疾風怒濤」(疾風キリアゲ)だ。

ゴーレムも向かってくるサムに向けて拳を放つ。

 

しかしサムにはその拳がやけにゆっくりと見えた。

比喩表現でも何でもない、本当にゆっくりとスローモーションに見えた。

 

「なんだこれは?」

 

左手のルーンはギラギラと光り、心地よい充実感が心を満たしていく。

 

「感情の赴くままに刀を振るのは好きじゃないんだがな。」

 

こんなにここが踊るのは何故だろう。こんなに心が踊るのは雷電とやりあった時ぐらいだ。

何かを斬るのは嫌いじゃない、が何時も斬る前に「あぁ、こいつもこんなものか」と言う虚無感が俺を襲う。

だけど今回はそれがない…この感情は一体なんなのだろうな…とても懐くかしくてとても暖かい。

 

「らしくない事を考えるな俺も…だがまぁ。悪くない!!」

 

刀にグッと力を込める。サムが刀に込めた力と地面が刀を押し返そうとする反発力が刀と地面が密接する部分に力が凝縮する。

拳が目の前に来た瞬間。その力を爆発させた。

 

スパァン!!と音を立てて拳から肩まで一刀の元に斬り裂いた。

 

目に見えぬ速さで近づき荒ぶる力で相手を斬り裂く。正しく、疾風怒濤。その名に恥じぬ威力だった。

 

「すげぇや!!相棒!!鋼化している拳を肩まで一刀両断たぁ!!すげぇや!!相棒!このまま微塵切りだぁ!」

 

デルフは興奮鳴り止まぬ様子で喋るので何を言っているか分からない。たが相手を斬り倒せと言っていることだけはわかった。全く人騒がせな刀な事で。

 

「任せろ。」

 

斬り上げた刀をそのまま右斜めに振り抜き右足を断つ。

ズシンと半分になった右腕で地面に手をつく。

振り抜いた勢いのままに今度は体を移動させながら左足を斬り裂く。

ズシンとゴーレムは尻餅をついた。

 

「フィナーレだ。」

 

サムはゴーレムの真正面に立つ。

刀を真っ直ぐ構え、斬る。

ただひたすらに、刀が暴れるがまま斬りまくった。

そしてゴーレムに背を向けてチン!と音を立てて鞘に刀を収めると同時に。

 

ドドウ!と音を立ててゴーレムは細切れになりただの土の山に戻った。

 

「ま、こんなものだろ?」

 

フッとサムは口角を釣りあげた。

 

「す、すげぇ…。こんな刀の使い手見たことねぇ。相棒はバケモンだ…」

 

とデルフはボソッと独り言ちた。

 

 

すると上からシルフィードと共にルイズ達が降りてきた!

 

「すごいわ!!サムエル!!私貴方の剣技にびっくりしちゃった!!」

 

とキュルケはピョンピョン飛び跳ねながら降りてきた。

 

タバサは「流石。」と一言。

 

 

そしてルイズは破壊の杖を持って降りてきた。

 

 

「サム…。」

 

 

「ご主人様?どーだい?俺に任せて正解だったろう?」

 

するとルイズはプクッと可愛らしく頬を膨らませた。

 

「何言ってるのよ!怪我はないの?大丈夫なの?サム。」

 

「あぁ、こんなものなら余裕だね。」

 

「そう…よかった。」

 

と女神の様な笑みを浮かべた、サムは一瞬それに魅入ってしまう。

内心、「ま、これが見れたなら頑張って正解だったかな。」と感想を抱いた。

だがこんな時間は長くは続かなかった。

キュルケの悲鳴で唐突に終わりを告げた。

 

「キャーー!!ゴーレムが!!」

 

との声に振り向くと土の山になっていたゴーレムが上半身だけになって岩を持ってこっちに投げようとしていた。

 

「あっ!?あの土人形まだ生きてやがんのか!!」

 

「ど、どーするのよ!!サム!」

 

ここから奴を斬り倒すには距離があり過ぎる、どーする!!どーする!俺!。

と考えていたらルイズが持っていた、破壊の杖が目についた。

 

「これだ!!ルイズ、それをよこせ!」

 

「それ?それって破壊の杖の事?」

 

「そーだよ!早く!」

 

サムはルイズから破壊の杖を受け取ると、まずロックを解除、そして電子充電率を確認。

充電率には問題無いようだ、しっかりと銃身を肩につけ銃口の狙いを定める。

スコープを覗きゴーレムに照準を合わせる。そしてトリガーを引く。

 

「サム!?何してるのよ!!ゴーレムが岩を投げちゃうわ!!」

 

慌てるなと心の中でルイズに言う。

電子充電率10%。

 

ググッとゴーレムが力を込める。

 

電子充電率40%

 

 

ゴーレムが狙いを定める。

 

 

電子充電率75%

 

 

「サム!!!!」

 

ルイズが絶叫の叫び声をあげる。

 

電子充電率89%

 

 

そしてゴーレムから岩が投げられた。

 

電子充電率99%

 

 

「もうだめだわ!!」とルイズ達全員が頭を伏せた。

 

電子充電率100%

 

ニヤリとサムの口角が上がる。

 

 

「ファイヤ!!!」

 

もうそこまでに岩が迫っている時にその破壊の杖を…いやその超電磁砲(レールガン)のフルバーストをぶっ放した。

 

レールガンの中で電子の力で、音速よりもはるかに加速した弾は飛んでくる岩を文字通り灰にし、ゴーレムの胸に吸い込まれるように着弾。

 

ゴーレムは木っ端微塵に砕け散り、跡形も無くなった。

 

「ふぅ。流石の威力だな。」

 

とサムはスコープから目を離す。

 

 

ルイズ一同は目を丸くして跡形も無くなったゴーレムを見ていたが、サムだけはその先の森の奥深くを見据えていた。

 

 

 

レールガンの威力をものがたる弾道の跡だけが森に虚しく続いていた。


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