ゼロの使い魔 その刃は何が為に。   作:刀龍

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カッコ良いじゃねえか。お姫様。

ルイズの後を追いかけると、ゴーレムは塔の中に腕を突っ込み何かをしているようだった。

ルイズはと言うとそんなゴーレムに向けて呪文を唱えようと杖を構えていた。

 

「ルイズ!!離れろ!危ないぞー!」

 

俺はそうルイズに叫ぶが聞く耳をもっていないようだ。

ルイズはキッとゴーレムを睨み、力強くその杖を振るった。

 

「おねがい。発動して!!ファイヤボール!!!」

 

だが結果はゴーレムの肩がすこし爆発しただけだった。

塔の中で宝を漁っていたフーケは外の爆発音で自分のゴーレムが攻撃されている事に気がついた。

 

「やはり気がつかれたか。ちっ!早くお宝を探さないとまずいさね。」

 

と宝物庫の奥に進んでいくと台座にかけられた鉄のプレートに『破壊の杖』『心届けし円盤』と刻まれていた。

そしてその台座の上に奇妙な金属で出来た筒とコインほどの小ささでかなりの文様が出てている円盤が置いてあった。

 

「これが…お宝だね。良し。見つけた事だし盗んでさっさとおさらばするよ。」

 

するとまた外から爆発音がした。

 

 

「ちっ!しつこいメイジだね。ゴーレム。やってしまいな。」

 

 

と外にいるゴーレムに命令をした。その隙に台座から品を奪う。

 

外にいるルイズは必死にゴーレムを止めようと何度も何度も魔法を放つ。

しかしその全てが爆発するだけでゴーレムを軽く削ることしか出来ない。

 

「なんでよ!!だったら…出来るまでやってやるわ!!ファイヤボール!!」

 

渾身の魔法は先ほどよりも少し大きな爆発で終わってしまった。

その爆発で今までじっとしていたゴーレムがギラリとこちらを向いた。

ゴーレムにこちらに向かれた瞬間。私は固まってしまった。こんな大きな物に私は勝てるのか?魔法もろくに使えない私が?

そのゴーレムはまるで私に現実を思い知れとでも言うかのように拳を振り上げた。

その拳は鉄に変わり私にかちりと狙いを定めた。逃げなきゃ!頭ではそう思っているのに体が動かない。

そして残酷にもその拳は私に振り下ろされた。やけにその光景がゆっくりに見えて、その時私はこのまま馬鹿にされ続ける人生ならここで…。

ここで終わった方がいいのかな。なんて思ってしまった。

 

「ルイズーー!!!!!」

 

誰かの声で我に帰った。その声の持ち主は。

 

「頭を!!下げろ!!」

 

私だって少しは魔法を使える、そう証明してくれた。

私の使い魔だった。

私はサムに言われてとっさに頭を下げた。

 

「うぉら!!」

 

サムはゴーレムの鉄の拳に合わせるように大剣をフルスイングする。

ガキィィィィィン!!!と金属と金属が激しくぶつかり合う音がし、ゴーレムの腕が吹っ飛ぶ。

 

「ちっ!剣が。」

 

だが大剣も無事では無かった。振り抜いた時にバキリと音を立てて根元から大剣が折れてしまった。

いくら上質な大剣と言えどもサムの全身全霊のフルスイングとゴーレムの拳との衝突の衝撃には耐えれなかったようだ。

 

「あーあ。相棒。剣、折れちまったな。」

 

「キュルケに悪いな。」

 

とチラリと頭を伏せたルイズを見た。

サムと私は目が合う。彼はフッと鼻で笑いこちらに手を伸ばしてきて言った。

 

「だがまぁ。俺のご主人様の命には変えられんさ。」

 

一瞬死んだ方が良いのかなって思った私にはその言葉は優し過ぎて。

泣きそうになってしまう。

でもそんな顔を使い魔に見せるわけには行かないから、顔を伏せながら手を伸ばす。

ガシッとサムは手を掴んで私を引き上げてくれた。

 

「あ、ありがと。」

 

「全く。一人で突っ込むな。怪我はないな?」

 

「うん。」

 

ふてるように伏せる私に「そーか」とだけ言ってサムはゴーレムに振り返った。

 

「さてと…デルフお前の出番か?」

 

「待ちくたびれたぜ!!相棒!」

 

サムはデルフの柄にそっと左手を掛けた。

そのころ中のフーケはと言うと。

 

「あっ!!私のゴーレムの右手が吹っ飛ばされた!」

 

一体そんな事しでかす奴は誰だ?と思いチラリと外を見る、そこにはルイズの使い魔がジッと私のゴーレムを見ていた。

あのルイズの使い魔なら納得できる。ジャンプの時の踏ん張りだけでこの塔を凹ましたぐらいだ。お宝に気を取られた状態で相手をしていたらきっと粉砕されるに違いがない。それに奴は伝説のガンダールヴと言うではないかそんな奴相手に戦うのはバカのすることだ。

それに…個人的にも相手にしたくない。何故なら…あの人にそっくりだから。

 

「早く逃げないとまずいさね。」

 

と真剣な面持ちでフーケは言うと台座の壁に「破壊の杖と心届けし円盤は頂いた。土くれのフーケ。」と杖で手早く書き込む。

そして風のようにゴーレムの背に軽やかに飛び乗る。

 

「相棒。ご本命登場だぜ。ゴーレム肩の上に乗っていやがる。」

 

デルフに言われ柄に手をかけたままゴーレムの肩の上を見やる。

 

「フードを被ってるから男か女かわからんな。」

 

「相棒、恐らくだけどよ。あのでっけえゴーレム使い。巷で有名な大泥棒土くれのフーケだぜ。」

 

「土くれのフーケ?」

 

「ああ。俺の聞いた話のとうりなら北にお宝あると来きゃあ、そこに誰にも気付かれずに忍び見込みお宝をかっさらっていき。南に隠し金庫があると聞いたらあの馬鹿でかいゴーレムで殴り込み強引に奪っていく、大胆な面もある。そんでもって盗んだお宝を貧困市民たちに配ってるって話だ。そのせいで街の連中には人気が高いときた。」

 

「義賊って事か。かっこいいじゃないか。俺は好きだぜそう言うの。」

 

サムはゴーレムの肩にのるフーケに「おーい」と声をかける。

 

「フーケとやら!この学校に何の用だい?その塔にお宝でもあるのかね?」

 

フーケはそのフードに隠した顔を出さず、不気味な沈黙を守っている。

 

「だんまりかい…。まぁいいさ。聞くと義賊らしいじゃないか!かっこいいね。俺は好きだぜ!お前さん!」

 

サムの目がスッと細まる。

 

「けどな。」

 

刀の鍔に親指を掛け、キンと刃をだす。

 

「俺のご主人様に殴りかかったのはいただけない。」

 

鞘からサムによって刀身が抜き放たれる。綺麗な曲線を抱きこの世界にない形の剣にフーケは見とれた、まぁ、刀身が錆びているので、始めは舐めているのかと思ったが。しかし、もうフーケはやる事はやったので大人しく逃げることにした。

パチン!!と指を鳴らす。

するとゴーレムは一瞬でただの土に戻り、凄まじい砂煙がサムを襲った。

 

「ゴホッ!ゴホッ!マジかよ。」

 

口を塞いで砂煙を耐える。砂煙が晴れた頃にはフーケの姿は無く、ただの土山がその場に残っているだけだった。

 

「あーあ。結局俺の出番なしかよ。」

 

カチカチと鍔を鳴らして不満気にデルフは言う。

 

「そう落ち込むなよ。デルフ。その内嫌でも出番はあるさ。」

 

かく言うサムは、ま、こんなもんだろ。とでも言いたげな表情で土山を見ていた。

 

 

 

次の朝、ルイズ達は学園長室に集められていた。昨日の事を話す為だ。

学園は塔に大きな穴が開いており中を確認すると宝物庫から『破壊の杖』と『心届けし円盤』が盗まれており、その台座の上には『破壊の杖と心届けし円盤はいただいた。土くれのフーケ。』と大胆にも壁に書かれておりそれを見て教師たちは驚愕し、同時に昨日の宿直は誰なんだ!と責任問題にまで発展した。

教師たちは皆、こんな街から離れた学園に、それもメイジだらけの場所に誰も来ないだろうと誰もがたかをくくっていたからだ。

もちろん門番等の平民の衛兵はいるが、そんなものメイジの前では歯が立たない。よっていつも門の詰め所に学院の教員1人が待機しているはずなのである。

 

「昨日の当直は誰なのですか!!たしかミセス・シュヴルーズ!!あなたでは無かったか!?」

 

すでにシュヴルーズは顔面蒼白で、カタカタと震えていた。昨日は確かに彼女が宿直だったのだが、彼女は宿直をすっぽかし家で寝ていた。確かに家で寝ていた彼女も悪いが、ほとんどの教員がそうだ。たまたま運が悪かったのだろう。しかし、大人とは厄介なもので、責任と言うものを取らないといけない、宝物庫から盗まれた宝を賠償する金額を払うなど、家を購入したばかりで、ましてや一介の教師に過ぎない彼女にはそんなお金も余裕もない。

そんな彼女を他の教員達は責任なすりつけるかのように責め立てていた。

 

「す、すみません…」

 

「謝ってすむとお思いか!?あなたは宝物庫の宝を賠償出来るのですかな!?」

 

とギトーと呼ばれる教員がシュヴルーズをさらに責める。

が、ガチャ。と扉が開きオールドオスマンが入ってきた。

 

「これこれ。ミスタ・ギトー。そんなにミセス・シュヴルーズを責めるでない。責めても宝は帰ってこん。」

 

「しかし!!オールドオスマン!!」

 

「ギトー。仮に彼女で無くても昨日は同じ結果であったであろう。そんな事をワシが知らぬとでも思っておるのかね?」

 

「ぐっ!!」

 

とギトーは言葉につまり、シュヴルーズはオールドオスマンに頭を下げ続けていた。

 

「しかし、オールドオスマン。盗まれた宝はどうなさるおつもりで?やはり国に報告し隊を編成してもらった方が良いのでは?」

 

とコルベールが提案をした。

するとカッ!とオールドオスマンが目を見開き力強く言った。

 

「バカ者!!自分達の不始末を自分達で始末を付けんで何が貴族、何がメイジよ!それに国に報告してしまってはこの事が明るみに出て学院の名誉が汚れるではないか。」

 

「では、どうなさるのですか?」

 

オスマンは神妙な面持ちになり、答える。

 

「うむ。ワシたちで捜索隊を編成しフーケから宝物を奪還するのじゃ。」

 

教師たちは皆お互いの顔を横目でチラチラと見ながら顔を伏せる。

 

「誰か、我こそはと思う者は杖を掲げよ。」

 

教師たちは誰も杖を上げようとしない。無理もないだろう、仮に失敗してしまったら責任を取らなければならないだろうし、なにより相手は土くれのフーケ。スクウェアに匹敵するメイジだ、敵うかどうかも分からない。みな自分の身が可愛いのだから。

 

「誰もおらんのか!?皆!メイジとしての誇りはどうしたのだ!!」

 

オスマンが怒号を飛ばす。だが誰も顔を上げようとはしなかった。

サムは、まぁ人間なんてこんなもんだな。とフードに隠した表情に笑みを浮かべる。もちろんその卑怯さに呆れてだ。

さて、お宝は帰ってこないなこりゃ。と思っていた時。誰かがスッと杖を掲げた。

誰かと思って見てみたら。ま…想像の通り、俺のご主人様だった。

ルイズは力強く宣言した。

 

「私が行きます!!」

 

場がどよめいた。無理だと言う者が多かったが、オスマンだけはルイズを真正面からしっかりと見つめていた。

ルイズは一切表情を崩さなかった。その凛々しく絶対の意思を感じる横顔に、本気だとオスマンも感じたのだろう。

 

「ならば、ルイズ。お主に捜索隊を頼もう。他におらぬのか!?勇ある志あるものは。」

 

するとキュルケとタバサも杖を掲げる。

 

「元から私はそのつもりでしたし、ヴァリエールが行くのにキュルケが行かないわけには行きませんわ。」

 

と自信気に微笑むキュルケ。

 

「私も付いてく。」

 

といつもと変わらず、無表情で杖を掲げるタバサ、チラッとこちらを見たのは気のせいだろうか?とサムは首を少し傾げた。

 

「オールドオスマン!!この子達にはきけんですわ!!場所も分かってないのにどうなさるおつもりですか!?」

 

とシュヴルーズが叫ぶ。

 

「ならミセス・シュヴルーズ。あなたが行くとそう申されるのかな?」

 

うっ。と押し黙るシュヴルーズ。

「それにですな、ミス・タバサはこの歳にしてしてシュヴァリエの称号もつ騎士であるし、ミス・ツェルプストーは優秀な火のメイジの生まれという。その火の実力も申し分ない。そしてミス・ヴァリエールは…」

 

タバサは周りの教師達の感嘆の声を受けても顔色一つ変えず、キュルケはそのたわわに実った大きな胸を誇らしげにそらした。

ルイズもまぁ…なんだ、きっと将来有望な胸を反らして自分の賞賛の言葉を待った。

 

「そう!!彼女の使い魔はあのグラモン元帥の息子、ギーシュを決闘で打ち破ったのですからな!彼がいれば心配はあるまい。」

 

と周りの教員が期待と疑惑の眼差しを彼に向けるが、サムはフードを被っているのでその表情を伺い知ることはできない。

すると興奮気味にコルベールが言った。

 

「そうですぞ!!皆さん!彼は何せあの伝説のガンダー…」

 

と言いそうになったところでオスマンが杖をクッと振るい彼の口を塞いだ。

そしてわざとらしくゴホンと咳き込み、また皆の注目を集める。

 

「しかし、確かに場所がわからんなぁ。」

 

とオスマンが考えるように顎に手を当てた瞬間。

バーン!!と扉があいて、ミス・ロングビルが息を切らして飛び込んできた。

 

「はぁはぁ、その事については大丈夫ですわ。先ほど森の方に黒いフードを被った人影があると情報がありましてよ。」

 

「それよ!!黒いフード!フーケに間違いありませんわ!」

 

するとオールドオスマンはやたら神妙に頷く。

 

「では、三人に命ずる。頼む、フーケより杖を奪還してきてくれ。」

 

「この杖にかけて!!」

 

三人声を揃え力強く宣言した。

 

ルイズ。なかなかカッコ良いじゃないか。にしてもお前が行くってことは俺も行くのか…。

まぁ…ご主人様が行くなら…仕方ないか。

いつの間にやらルイズを中心に考えている。

サムは、俺はいつの間にルイズを中心に考えるようになったんだろうか、こんな性格だったか?と頭に疑問符が浮かんだ。

 

だが…ルイズのやる気の表情を見ていたらそんな考えは無くなった。

仕方ない、俺のお姫様の為だ。付いて行こう。

 

サムは自然とフフフ、と微笑んでいた。

 

 


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