ゼロの使い魔 その刃は何が為に。   作:刀龍

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タバサの魔法、思いっきりオリジナルです。
やっとここまできました!さー頑張るぞ!笑


お前には殺意が足りない。

「なぁ。こないのか?」

 

月が照らす中庭でサムとタバサは一触即発の空気の中睨み合っている。

と言っても緊張しているのはタバサだけでサムはタバサが仕掛けてこないので、最早棒立ちで剣を脇に構えているだけだ。

 

別にタバサは行かないのではない。行けないだけだ。ある程度実力が付いてくると相手の強さも何となく分かるようになる。良く無知な奴ほど強いと言うのは、別に強いわけでは無く相手の強さがわからないから突っ込めるだけで本当に強いわけではない。

そしてタバサはサムの実力が計り知れないほど上なのだと向き合って感じた。だらりと脱力しているにもかかわらず、一寸の隙もない。

もう少し距離を取ろうかと考えてると。

 

「なぁ〜。申し訳ないんだが。」

 

サムが本当に申し訳なさそうに頭をかきながら話しかけてきた。

 

「それで距離を取っているつもりなら、もっと離れたほうがいいぜ。俺の間合いにすでに入ってるぞ。」

 

タバサは驚愕の表情を隠しきれずにいた。戦いで自分の感情を相手に悟られるのははっきり言って致命的だ、タバサは感情を表に出すことはよっぽどな事がないと無い。しかしサムエルとの距離が15メートルは離れているいうのに彼は俺の間合いだと言ってくる。魔法では無く近接の武器であるにもかかわらずにだ。

 

「おーい。動かないのかい?んじゃ…俺が離れますかね。」

 

とサムは背中を向け距離を取るため歩き出した。

その瞬間タバサはサムに向け思いっきり風魔法『ウィンド・ブレイク』をぶちかました。

ウィンド・ブレイクとは簡単に言えば空気の塊をぶつける魔法で鎧などは軽くひしゃげて吹っ飛ぶ威力がある。人間が食らえばタダでは済まない。風魔法を得意とするタバサの技の一つだ。

ズドォン!!と激しい音と共に砂煙が舞い上がる。ルイズからは「なにしてんの!アンタ!!」と罵声が飛ぶがそんな事は一切気にせずタバサはその砂煙から目を離さなかった。こんな事で終わる相手じゃないって分かっているから。

 

砂煙が静まるとそこには不敵な笑みを浮かべたサムが怪我ひとつせずに立っていた。

 

「後ろからズドンか。戦いの心得はあるみたいだな。」

 

なぜサムが無傷かと言うと、ウィンド・ブレイクが当たる瞬間に後ろ蹴りをかましたからだ。マルガムの力で強化された脚の想像を絶する威力の蹴りはその風圧のみでウィンド・ブレイクを相殺した。その衝撃波で砂煙が起きたわけだ。

 

「流石に戦場に出たことだけはあるな。強敵にはどんな手を使っても勝つ。これ、基本なり。だが甘い。お前には殺意がたらん。まだまだ青二才のお嬢ちゃんだ。」

 

と挑発するようにヘラヘラと笑う。しかしタバサは表情を崩さずに後ろにワンステップを取り、控えていた風竜に飛び乗った。

 

「おぉ…空中戦か。面白い。」

 

サムは未だに大剣を担ぎこちらを見上げているだけだ。タバサは空中を旋回しながら彼の様子をみる。

 

「仕掛けてみるわ。シルフィード旋回しながら寄って行って。」

 

じわじわとしかし早い速度で旋回しながら高度を落としていく。

 

「お?何かやってくるかな?」

 

タバサは風竜の早い速度の旋回の中でもしっかりとサムに照準を合わせる。

そして射程距離に入った次の瞬間。

 

「ウィンド・ブレイク。」

 

とルーンを唱える。次のウィンド・ブレイクは一撃だけではない。何発も何発も旋回しながらサムに打ちこむ。

 

「へぇ。面白い!」

 

サムは一発目のウィンド・ブレイクを蹴上げで相殺。そして次々に来る攻撃を全て蹴りの乱打で起こる暴風で打ち消していく。

 

「やはり威力がたりない。なら。」

 

タバサは杖をサムにしっかりと向け力強く握りしめた。

 

「相棒。凄いのが来るぜ。」

 

カチャカチャと腰に差しているデルフが忠告してきた。

 

「ん?どちらから来る。」

 

「真正面だ。相棒。」

 

空中ではタバサが杖をこちらに向けて今振りかぶろうとしていた。

 

「エア!ハンマー!!」

 

凄まじい量の空気の塊がまるで金槌の様にサムを襲う。

サムは今まで小刻みな蹴りから踏み込みその空気の塊に向け渾身の後ろ蹴りを放つ。

 

「せいっっやっ!!」

 

ドゥガァァアン!!と凄まじい音とと先程とは比べものにならない砂煙をあげた。

 

「やったか?」

 

サムの姿は砂煙出未だに見ることが出来ない。先程のエア・ハンマーは中々渾身の一撃で手応えがあった。

だが。次の瞬間に砂煙の中からこちらに向けてサムが飛び出してきた。

上空30メートルはあろうかというのに一飛びで剣を上段に構え凄まじい勢いで向かってくる。

 

しかし流石と言うのか、今までの経験が彼女を救ったのかその類稀なる反射神経のおかげかは分からないが、とっさにサムに向けて後数メートルといったところでウィンド・ブレイクを放った。

 

「ぐっ!!」

 

「やった!」

 

結果は見事直撃。サムはそのままの勢いで宝物庫のある塔の方に吹っ飛ばされていった。

吹っ飛ばされながらもサムはニヤリと微笑を浮かべていた。

 

「あの子。なかなかやるな。」

 

「俺にしてみれば相棒の方が化け物だね。いくら空中で避けようがないから食らったけど。結局ウィンド・ブレイクの衝撃を全部流してやがる。全くどんな構造してるのか。俺ぁわからんよ。相棒。」

 

デルフが呆れたような声で言った。しかしまぁ、俺の実力はともかくあのタバサという子。中々悪くない。状況判断力、技のチョイス、反射速度。あの歳では中々だ。まぁ、俺にしてみれば遅いがな。

 

「先が楽しみだ。フフフ。」

 

そしてサムは宝物庫がある塔の壁に着地し思いっきり脚に力を込めタバサに向けてもう一度跳ぶ。

その瞬間にボゴン!と音を立てて壁が凹んだ。

「あっ!やっべ。」

 

「相棒…壁凹んだぜ?」

 

その光景をしたの茂みで見ていたフーケは驚きを隠せなかった。幾重にもスクウェアクラスの魔法使い達が魔法をかけちょっとやそっとじゃビクともしない壁をジャンプの踏ん張りだけで凹ました。フーケのゴーレムといえども凹ませるのには10発以上のそれも全力の攻撃が必要と見立てていたのに。

 

「なんて男なんだ…。」

 

と驚きを隠せないフーケはさて置き。サムにとっては学校の物を壊したということの方が重要だ。間違いなくルイズに怒られる事必須だ。

マルガムもとんでも無いプレゼントをしたものだ。と言ってもまだまだ全力の3分の1も出していないのだが…。

 

「あっちゃあ…。やっちまった。」

 

「相棒!!独り言言ってないで、前!前!」

 

デルフに言われ前を向くとタバサが巨大な氷の塊を作りこちらに向けて放つ所だった。

タバサには二つ名がある。雪風のタバサ。これが彼女の二つ名だ。それは風と水を合わせた魔法で氷魔法を使う。

まるで氷のような冷たい表情で敵を凍りつかせていく。そしてあたかも彼女の心を表しているかのようだった。

そんな彼女の必殺魔法の一つ『クリスタル・メテオ』。

圧倒的な重量で敵を押しつぶす。今まで沢山の敵を葬って来たタバサの技の一つだ。

 

「氷の塊か…?」

 

「いや、相棒!あれは魔法氷だ、ただの氷じゃなねぇ。恐ろしく硬くそして冷たいぜ。触ればこっちが凍っちまう。」

 

「ふふ。デルフ。あの子に力の差を見せてやるよ。」

 

そう言ってサムはニヤリと笑い、大剣を大上段に構え、真っ直ぐ鋭い目つきでその氷塊を見つめる。

 

「敵を氷塊の前に塵とかせ。クリスタル・メテオ!!」

 

タバサからクリスタル・メテオが解き放たれた、それは吸い込まれる様に真っ直ぐサムに向かってくる。

 

「せいっ…や!!!」

 

と裂帛の気合いとともにサムが氷塊に大剣を振り下ろす。まるで豆腐を斬るかのようにスパッと真っ二つに斬れた。

 

タバサは斬られた氷塊の先に微笑を浮かべたサムを見た。

 

「甘いな。まだまだ殺意が全然足りん。」

 

そう呟くと、サムは跳んだそのままの勢いでタバサを掴み落下していく。

 

「キャァァァァ!!」

 

タバサは全力の悲鳴をあげた、必死に風竜は追いつこうとするが全く追いつけない。この世界で最速の風竜が追いつけないとはどんな構造を、しているのだろうかと風竜は内心思った。

それは簡単だマルガムの力を持ったサムは空気を思いっきり蹴って落下しているからだ。早い話、空気の中を走っているのだ、サムの身体能力に烈脚斧覇竜マルガムの力が加わったら風竜なんぞじゃ追いつかないであろう。現代のジェット機で並ぶぐらいじゃないだろうか?

きっと音速を超えたらバラバラになって死ぬと思っている方もいるだろうが、そこは使用だ。ドラゴノイドともなれば何でもありなのだろう。

 

そしてタバサをお姫様抱っこして地面に着地。

 

「到着。と」

 

サムは無邪気に笑いタバサを見る。タバサとは言うと驚きを隠せず口をぽかんと開けている。

そしてサムは優しくタバサを背中かから地面に下ろし、こういった。

 

「はい。俺の勝ちだ。」

 

キラリと歯が光るのではないかというぐらい綺麗なスマイルで。

タバサはそれを見て我に帰る。

 

「そうね…私の負け…あなたは強い。私では歯も立たなかった。」

 

「いや。タバサもなかなかだったぜ。まぁ…負けたのはあれだ。お前に俺を殺そうって言う殺意がたりなかったからだな。」

 

「殺意?」

 

「ああ。もちろん本当に殺そうとかそんな話ではないが、お前の事だ実力差ぐらいなら分かっていたのだろ?それならば殺す気が無ければ俺には攻撃は一切あたらんさ。」

 

「殺意…か。」

 

「要するに本気で来いって話さ。」

 

「ねぇ。サムエル・ホドリゲス。」

 

タバサは正座をしその無機質な瞳に好奇の光を宿らせ上目遣いに聞いてきた。

 

「サムでいい。なんだタバサ?」

 

「じゃぁ。サム。私を強くして。私の師匠になって。」

 

「は?俺が?師匠?」

 

「おねがい。サム。」

 

と縋るような上目遣いでこちらを見てくる。あんな無表情だったのに急な変化だ。

それにギャップも相まってとてつもなく断りづらい。

 

「い、いやー。師匠というか…ちょいちょいこうして手を合わせるじゃダメか?俺は格闘戦だ魔法を使うお前に教えられる事はそう多くない。」

 

とやんわりと断ろうとするのだが。

 

「だめ。格闘だってやる。教えて。サムなら私を強くできる。おねがい。」

 

思いの外この嬢ちゃんの意思は固いようだ。別に師匠になるのは構わないんだが、このタバサが付いてこれるかも心配だ。

それにルイズが何ていうか…なんて唯の建前か。そうだな。誰かに必要とされるのも悪くはない。それにタバサは本気のようだその目が、私は本気だと物語っているだから。

 

「ついてこれるのか?」

 

「絶対付いていく。」

 

「俺は手厳しいしわりに、適当だからいつも付き合えるわけじゃないぜ?」

 

「大丈夫。だから…おねがい。ダメ?」

 

と小動物を思わせる目で見てくる。ルイズもそうだがこの手の技は卑怯だ、こっちが悪いことしている気になる。

 

「だぁぁぁ!!分かった!だからそんな目で俺を見るんじゃない。」

 

「本当!?」

 

と目をキラキラさせてこちらを見てくる。

 

「ああ。本当の本当だ。夜いつもこの広場で素振りをしているから、やりたい時に来い。手解きしてやる。」

 

「良かった…ありがとう。」

 

と、今までの表情は何だったのかと思わせる様な、可愛らしい優しく降る雪の様な柔らかな笑みを浮かべていた。

可愛い表情も出来んじゃねぇか、女は笑ってないとな。と思わずサムも笑ってしまう。

 

「さ、そこに座ってないで立ちな。」

 

と手を差し出した瞬間。

ドゴォォォォォン!!!!

 

「なんだなんだ!?」

 

と腰に差したデルフが慌てふためく。

 

「何よ…あれ…。」

 

ルイズが驚愕の表情でその方向を見ていた。

 

「キャァァァァ!!」

 

とキュルケは既に逃げたしていた。

 

「おいおい…またハプニングかよ。」

 

と音がする方を見ると…。

さっきサムが踏み抜き凹んだ塔を馬鹿でかいゴーレムが最後の一撃を加える所だった。

そして…。

ガラガラガッシャーン!!と盛大な音を立てて壁が壊れた。

 

「なぁ…相棒。あの塔。」

 

「デルフ…何も言うな。」

 

「サム!!何してるの!行くわよ!」

 

とルイズは駆け出す。俺のご主人は大層元気なようだ。

全く困った困ったとか口では言いつつ。あの塔を壊した原因が俺も加担していると同時に、あのゴーレムが最後の一撃を見舞ってくれて俺のが隠蔽出来たと少し安心しているサムなのであった。

 

「はぁ…ルイズ!!待てよ!!」

 

まだまだ夜は終わってくれないようだった。


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