ゼロの使い魔 その刃は何が為に。   作:刀龍

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すみません。かなり急展開で長いですけどお付き合いください。
ではではよろしくお願いします。


相棒を探しに後編

「いや…しかし旦那の言う貴族なんかくるのかね?」

 

武器屋の店主はサムの装備を取り揃える為に倉庫の中を漁っていた。彼の言葉自体は不満そうだが彼の表情は久々の強者に剣を売れて大変嬉しいようだ。この店主口は悪いが気に入った者には尽くすタイプの人間なようで必死になって先程からサムの装備を探していた。すると店の方から店主を呼ぶ声がした。

 

「へい!今行きやすぜ!」

 

店の方に行くと、真っ赤な燃えるような髪を持った野生的な美人が立っていた、マントを羽織っている所を見ると恐らくこの美人がサムが言っていた貴族だろう。

 

「店主?先程、貴族と男らしい殿方がこちらにいらしてなくて?」

 

色っぽく髪をかきあげて聞いてきた。サムの旦那の言うとうりだ。この女色気で俺から色々聞き出そうって魂胆だな?あっしには綺麗な嫁さんがいるからお嬢さんなんかに興味はこれっぽちもねぇんでさぁ。ここからが勝負だ、どうこの貴族様に剣を売ってやろうか。

 

「へぇ。先程貴族様とそのお連れ様がいらしてやした…たしか、サムエル•ホドリゲスとか言ったお連れ様と貴族様でした。へぇ。あっしには恐れ多くて貴族様にはお名前を聞くのはわすれていやして。お連れ様しかお名前を聞けなかったでさぁ。へぇ。」

 

「その二人はここで何を買って行ったのかしら?」

 

ここだ。ここで剣をお嬢さんに売りつける。

 

「へぇ。オンボロの剣を一振り。お連れ様は違う剣が欲しかったようでしたが、なにぶん持ち合わせがなかったようで。」

 

「うふふ。所詮ヴァリエール家もそんな物ね。店主、そのお連が欲しかった剣を見せて頂戴。」

 

「へぇ。少々お待ちを。」

 

店主は倉庫から一振りの大剣を持ってきた。厚く。重厚でなんでも斬るのではなく叩き斬る様にして使う洗練された無駄のない剣だ。

いや。実は先程までこの店主、どうでもいい剣を売ろうかと考えていたのだが、サムがどうせ手にするのなら使わなくとも、まあまあな出来の剣を上げたいと思い悪く無い剣を持ってきた。

まぁ、勿論値段は破格にするが。

 

「お連れ様はこちらを欲しがってやした。この剣は火竜鉱脈の粘り強い鉱石と鋼を混ぜて作ったなかなかの業物でさぁ。対人でも対怪物でも何でもござれの一振りでこざいまさぁ。」

 

「へぇ。なかなかいい剣ね。無駄がなくてシンプルな美しさだわ。所でおいくら?」

 

「へぇ。三千五百エキューでさぁ。」

 

キラリとキュルケの目が光る。

 

「お高くなくて?」

 

「この剣は間違いなく業物。このくらいの値段は当然でさぁ。」

 

足をカウンターに乗せ、太ももを見せつける様にして再度言い放つ。

 

「お高くなくて?ご主人?」

 

「へぇ。この値段以下には下げれないでさぁ。」

 

お次は胸もとのボタンを外し、谷間を強調して言ってきた。

 

「安くしてくれないかしら?お願いご主人」

 

甘える様に谷間を見せる様に言ってくる。確かにすごい色気だが、妻と出会ってこのかた、浮気など一度もしたこと無い店主にしてみれば、ただ目のやり場に困るだけである。

 

「貴族様。申し訳ありやせんが。あっしには色気でどうこうで値段はさげれやせん。こっちも生活がかかってやすんで。貴族様は今日おいくらぐらい持ってきてやすんで?」

 

(どうして最近会う男は私のアピールがつうようしないのよ!!もう!)

 

とはっきり言われてしまってはキュルケも諦めるしかないと言う物だ。もう大人しく言うことにした。

 

「三千しか持ってきてないわ。」

 

「三千でやんすか。まぁ…サムの旦那の知り合いと言うことでまけまさぁ。三千でこの剣売りまさぁ。」

 

「本当?じゃあ頂いて行くわ。」

 

とキュルケは小切手を書いて飛ぶ様に去って行ってしまった。

キュルケがいなくなった後、店主は一人で商談の大成功に大笑いしていた。

 

「はっはっは。上手く行った!!千の剣が三千で売れちまうなんて!!旦那には感謝様々だな。さてさて恩は返えさねぇと男が廃るってもんだ、旦那の装備探さないとな!久々の大成功だ、嫁さんにでも何か買って行ってやんねぇとな。」

 

また店主は倉庫の奥に消えて行った。

 

 

 

所変わってここは露店街。片手にデルフ、片手に荷物、背中には先程買ったリュクに大荷物を背負い歩くサムと露店の品々に顔は興味がなさそうに歩くが目をキラキラさせながら見て回るルイズ達がいた。

 

「おーい。ルイズ様。いつまで買い物すんだー。」

 

「そんなの私が飽きるまでに決まってるじゃない。」

スタスタ歩くルイズがとある露店の前で止まった。露店で売っている赤い色のイヤリングに釘付けになっている。シンプルだが可愛らしいデザインに一目惚れしたようだが。何やら様子がおかしい、金はあるはずなのに買おうとしない。チラチラ見はするものの立ち去ろうとしてまた戻ってみたり。

どうしたんだ?こいつは?

「次は服屋だろ?何とかの舞踏会に備えて服買うんじゃなかったのか?さっさと行こうぜ。そのイヤリング欲しいんだろ?買えばいいじゃないか。」

 

「なっなっなっ、何言ってるのよ!!貴族ともあろう私がこんな所で買い物するわけないじゃない!ほ、ほら、さっさと行くわよ!」

 

と。だーっと先に行ってしまった。

成る程ね、無駄に高い貴族のプライドが買い物の邪魔をしたってことか。

全く、別に欲しい物なんだから買えばいい物を。

 

「仕方ねぇな。」

 

と懐から金を取り出す。

 

「お姉さん、その赤いイヤリング欲しいんだけど。」

 

「こちらですか?えーとですね。20スゥになります。」

 

「あー。細かいの無いから1エキューでいいかな?釣りはいらないから」

 

「え!?でも…こんな多くもらっていいんですか?先程の貴族様のお連れのようですし…」

 

あー。成る程な。シエスタも言っていたが平民の人からしてみたらそれ程までに貴族とは恐ろしい存在なんだろう。怖がってしまうのも仕方ないことか。

けどまぁ。あれだ。ここは笑顔でサラッと行くのが男の甲斐性ってもんだろう。この子可愛いしな。

 

「良いのさ。取って置きな。君可愛いからその笑顔の代金だ。ってな。本当は急いでいるだけだ。気にせず持ってってくれ。」

 

と言って。サッサと俺はルイズの後を追った。はぁー。俺が女に気を利かせて買い物なんざ。そろそろ俺も焼きが回ったかな?などと思いつつもルイズが喜ぶ顔が見えて。少し、ほんの少しだけ嬉しいサムなのであった。

 

そのあと洋服屋に行きドレスを買い、小腹が空いたとルイズが言うので喫茶店に入ってお茶をしている所だ。先程からやたらと視線が感じる。と言うか帽子をかぶって変装しているつもりなのか分からんが、奥の席にキュルケともう一人少女がいた。

 

「ねぇ…タバサ?いつサムに会いに行けば良いのかしら。私。生まれて初めて緊張しているわ。どうすればいいの…」

 

タバサはそんな事、読書ばかりの私が知るはずがないと言わんばかりに本を読みふける。

 

「タバサ?聞いてる?」

 

珍しくキュルケが不安そうに聞いてきた。

 

「聞いてる。」

 

「どうしよう。剣、買ったはいいものの渡すタイミングが分からないわ。こう…彼を見ると恥ずかしくなって渡せないわ。私一体どうしちゃったの?」

 

あぁ。とキュルケは自分の世界に入ってしまった。タバサとしてみてはハッキリ言えばどうでもいいし、早く帰って本をじっくりと読みたい。確かにタバサもサムには興味があったもののただの買い物と分かっては、正直どうでもいい。もうタバサは帰りたいのでキュルケに言うことにした。

 

「キュルケ。私帰る。その剣は帰って渡せばいい。立って。行くわ。」

 

「えっ!タバサ!待って!あー!サム〜」

 

とタバサはキュルケを引きずって行ってしまった。

 

「今キュルケの声が聞こえなかった?」

 

「いや…気のせいだろ。」

 

「あらそう?まぁそうよね。こんな休日にまであの胸は見たく無いわ。」

 

たまたまルイズの背中側の席だったので見えなくて良かった。ここで会っていたらまた面倒な事になっていたに違いなからな。

 

「さてと。サム、そろそろお店出るわよ。貴方の装備を取りに行かないと学校に着くのが夜になっちゃうわ。」

 

「お。そうだな。店主も待ってるだろうし行きますか。」

 

こうして俺たちは店主が待つ武器屋へ向かう。

武器屋へ着くと店主が笑顔で俺たちを出迎えてくれた。

 

「旦那!貴族様!お待ちしておりやした。どうぞこちらへ。」

 

と入って早々にカウンターの奥の部屋に通される。

そこには椅子が二つ準備されていて、下半身だけのマネキンが三つ置いてありそのどれもが何かしらのズボンを履いていた。

 

「どうぞ、座ってくだせぇ。」

 

「ありがと。ほらサッサとサムも座って。」

 

「あぁ。」

 

と席に着くと店主が前に出てきてこのマネキンに履かせている装備の説明を始めた。

 

「この三つの装備は旦那の為だけに倉庫から引っ張り出して来たもので、どれもが一級の品でさぁ。どれか一つあっしが選んでも良かったんですが、やはり。履く旦那本人に選んでもらおうと思いここに用意しました。」

 

「そいつは悪いな。」

 

「貴族様もどうか旦那と一緒に選んでくだせぇ。」

 

「えぇ。そうさせてもらうわ。」

 

と。店主は前に行き右の鎖帷子で作ったようなズボンから説明を始めた。

 

「えー。まず。こちらからでさぁ。こちらの装備はサハギンと言う魚人の鱗と皮を使った装備でさぁ。魚人であるからして、程よい通気性と身軽さ、そして何より水に強いでさぁ。」

 

「水に?」とサムが聞く。

 

「えぇ。この装備は湖はもちろん泥沼だってスイスイ泳げまさぁ。要するにぬかるみに足が取られる事がないでさぁ。」

 

「でも弱点があるわ。」とルイズが言った。

 

「えぇ。貴族様の言う通り。この装備には弱点がありまさぁ。火にめっぽう弱い事と刺突に弱いでさぁ。斬られる事には鱗を重ねているんで強いが刺されるのはダメでさぁ。」

 

「へぇ。そうなのか。んじゃ…次頼む。」

 

あい。と店主は次のレースが付いた緑色のダンスをする様なズボンに移る。

 

「なんか…派手なズボンだな。」

この世界ではこれぐらいは普通なのだろうか?まぁ、ギーシュが何時もフリルの付いたシャツを来て周りの女子がキャーキャー言うぐらいだ。これぐらいはなんともないんだろう。俺は絶対に嫌だがね。

「お次の装備はエルフが作ったズボンでさぁ。」

 

「エルフ!?それ、本当なの!?」

 

ルイズが驚愕の声を上げる。

 

「エルフってなんかすごいのか?」

 

「あんた、エルフも知らないの?一人でメイジ十人分の強さを持つ最強の民族よ。」

 

「そうなのか。んで、そのエルフが作ったズボンがこれと。」

 

「えぇ。そうでさぁ。こいつは確かな筋から仕入れたエルフのズボンでさぁ。」

 

と自信げに店主が言う。

 

「それで?どんな効果があるの?」

 

とルイズが興味津々と言った様子で聞く。

 

「へぇ。こいつはまず防御面に対しては皆無でさぁ。ただのズボンなんでそれは仕方が無い。しかしこいつにはエルフの強力な風の魔法がかかってまさぁ。走れば馬より早く、飛べば鳥より高く、このズボンの名の通り、風脚を手に入れる事ができまさぁ。正直、五千エキューでも安いが旦那になら先程のお金でお譲りしまさぁ。」

 

「そいつは凄いな。だが…ちと悪趣味だ。俺には似合わん。」

 

「え!?いいの?サム!このズボン凄いわよ!もうアーティファクト級の品よ!」

 

「まぁまぁ。貴族様。旦那が言うんだ。決めるのは最後の品まで見てから決めてくだせぇ。」

 

と最後の迷彩柄の軍人が履く様なズボンに移る。個人的には一番ピンとくるデザインだ。

 

「ではでは。最後の品の説明をさせていただきます。」

 

「頼む。」

 

「このズボンはドラゴノイドの皮と筋繊維から作ったズボンでさぁ。」

 

「ドラゴノイド?なんじゃそりゃ?」

 

とルイズを見ると、ゴクリと喉を鳴らしてズボンに喰いいっている。

そしてこちらを見て少し興奮した面持ちで話し始めた。

 

「サム。ドラゴノイドって言うのはね。要するに竜人よ。人型の竜。一体で街を滅ぼせる力を持つと言われる最強の生物。群れでは行動せず強さのみを求める生物って言われているわ。人語も一応話せるらしいけど、発見例が少なくてよく分かってないのだけれど…。」

 

「最強ってどれぐらい強いんだ?」

 

「うーん。本ではエルフ十人の精鋭が集まって勝てるかどうからしいわ。」

 

「そいつは面白いな。と言うかルイズ。お前意外に博識だな。」

 

まぁね。とルイズは自信げな笑顔をこちらに向けた。確かに勉強はいつもしっかりしていたし努力はするタイプの人間だ、ルイズは。

 

「お二人様。説明の続きよろしいですかい?」

 

「あぁすまん。よろしく頼む。」

 

「へい。このズボンなんですが、まず履く人間を選びまさぁ。並みの筋力じゃ歩くことだってできやしない。このドラゴノイドの怨念かどうかはわかりやせんがね。だが、その代わり性能はピカイチでさぁ。魔法は効かねぇし、剣も槍も当たった方が刃こぼれしちまう。聞いた話によりゃあ選ばれた人間はドラゴノイドの力を手にするらしいですが…見たこたないのでわかりやせんがね。あっしは旦那にならイケると思い用意しやした。履けるかどうかは旦那しだいでさぁ。」

 

と店主に言われた。俺は正直この話を聞いた時からどれを選ぶかは決まっていたがね。

 

「こいつにする。店主これをくれ。」

 

するとパチンと膝を叩き嬉しそうに店主が笑う。

 

「流石旦那!!実はと言うとこいつを始めから選ぶと信じていやした!ささっ、どうぞ。履いてくだせぇ。」

 

と店主からドラゴノイドのズボンを受け取る。そのズボンは信じられないぐらいに重くまるで鉄の塊を持っているかの様だった。

 

「旦那。奥の試し斬り部屋で履いて来てくだせぇ。なにがあるかあっしにもわかりやせんで。」

 

「分かった。ルイズ。ちといってくる。」

 

「サム。怪我はしちゃだめよ。」

 

とルイズの声を受けて俺は部屋に入った。

 

「こいつがドラゴノイドのズボンねぇ。めちゃめちゃ重いが。ま、悩んでても仕方が無い。履いて見るか。」

 

右足、左足と通し腰まで上げてベルトを締めた。

 

すると。

 

「ワガ、タマシイノカケラニフレルニンゲンハ、ダレゾ。」

 

声が頭から響く。サムは驚きを隠せなかった。

 

「もしかしてドラゴノイドか?」

 

「ホウ。ワガ、コエガキコエルカ。タダノニンゲンデハナイナ。」

 

「まぁ…普通の人生通ってないね。」

 

「キサマ、コノセカイノコトワリカラ、ハズレシニンゲンダナ。ハハハ!!コノカラダクチハテタマシイノミニナリ、スゴシテキタガ、ワレノコエヲキキシニンゲンガコノセカイノ、モノデハナイトワナ!」

 

「おいおい。何がそんなに可笑しいんだ?」

 

「イヤイヤ、ワレハウレシイノダ。タダノツマラヌヒトノコデアレバ、ソノアシモギトッテヤロウトオモッタガ、キサマナラタメスカチガアル。ワガシレンヲウケヨニンゲン。」

 

「ほぅ。面白い。その試練とやら受けようじゃないか。」

 

「フフフ。ソノユウノココロニタタエワガナヲツタエヨウ。ワガナハ、マルガム。タタカイノモウシゴヨ。デハニンゲン。メヲトジヨ。」

 

「おい。マルガムとやら。俺は人間って名前じゃねえ。サム。サムエル•ホドリゲスだ。お前の所有者になる男さ。」

 

俺はそっと目を閉じた。全く本当、今だから言えるが二度とこんな休日やだね。

 

 

 


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