『ここは、どこだ?』
俺は不審に周りを見渡す。
周りには大勢の子供と数人の大人が俺を見ていた。
どうやら見た感じここは城のようだ屈強な城壁や塔が中世のヨーロッパを感じさせる。
そして俺を見る子供達や大人はみな同じようなマントを身に纏いまるでおとぎ話の魔法使いような格好をしていた。
はてさて、俺は一体どこに来ちまったんだ?
『あんた…だれ?平民?』
と目の前のとびっきり綺麗なお嬢さんが話しかけて来た、目は猫みたいにクリクリしてて綺麗なピンク色の髪をしている、平民?とか聞いて来たな?どこの中世だ?ファンタジー映画でも撮ってんのか?でもそれはあり得ないような気がするこの戦争やらなんやらでドンパチやってる時代にこんな呑気なセットが作れるとは思えないし、映画なんぞVRで作っちまえばそれでいいはずだ、周りの子供達や大人姿をみてもローブ来てたり杖持ってたり本気で魔法使いになりきってるようだし良く良く見てみれば色男や巨乳の赤髪の姉ちゃんやら、俺は映画を撮ってんだと結論づけた。
『あー、大変申し訳ねぇんだがこれは映画の撮影かなんかか?』
『エイガ?なにそれ?違うわよここは有名なトリステイン魔法学院よ!そしてあんたは私が召喚した使い魔ってわけ』
はぁ?使い魔?なんだそれは、訳が分からんとと肩を竦めて大袈裟に両手上げてアピールしてみる。
そこで、俺は気が付いた無かったはずの右腕が、いや正確にはあの衆議院のこん畜生に奪われた右腕が生身になっていることに気が付いた、そして自分自身の格好がサイボーグではなく普通のパーカーに中にタンクトップをきて下は黒のジャージになっている。
何より俺はあの荒野でアイツに殺されたはずだ、腹を貫かれて。
何故生きている?疑問が頭を駆け抜ける。
流石に少しとはいえサイボーグにした身体を元に戻すなど現代の技術でも幾ら何でも無理がある、無くした右腕なんぞピンピンしてやがる、全く、よぉ元気してたか俺の右腕とでも言いたいぐらいだ。
『これが私の使い魔なの…。』
どうやら私が召喚した使い魔は人だったようだ人なんて聞いたこともないのだけれど。
年は多分二十代後半ぐらいだと思う、癖っ毛のある髪を後ろで雑に纏めている、なんか傭兵みたいな感じがする、左目には真っ直ぐの切りキズが入っているし腕とかにもキズが見受けられる、それになんか平民のくせに貴族の前でも怯えずにヘラヘラとした笑みをくっつけている、なんか私としては気に食わない。
でも歴戦の戦士って感じもする腕はすごく綺麗な筋肉をしているし今は見慣れない服で隠れている身体もかなり鍛えられてる感じがする、でも…平民のそれもこんなヘラヘラしたやつなんか嫌だ。
『ミスタコルベール!お願いです私にもう一度サモンサーヴァントをやらせてください!人間なんて聞いたことないです!!』
『おいおい!ゼロのルイズ!お前魔法が使えないからって傭兵雇うなんてねぇーぞ!』
『うるさいわね!!わかってるわよ黙ってなさい!!』
どうやら目の前のとびっきり綺麗なお嬢さんの名前はルイズと言うらしい、綺麗な顔を怒りで歪めて周りを睨み付けている。つーか召喚?魔法?聞いたことない言葉が俺の前を飛び交っている。
ま、こーゆー時には、ほっとくに限るがな。
この意味不可解な状況だが生きてるってだけで良しとしよう、右腕も戻ってきたしなと楽観を決め込むことにした。
『皆さん!!静かにしなさい!!これはれっきとした歴史のある儀式ですそんな傭兵を雇ってここに出すなどという魔法はありません!!そしてミス、ヴァリエールこのサモンサーヴァントにおいて再召喚は認められません、もしそれはするのならばこの学校の歴史を穢すことになりますし、なによりも彼を殺さなければ再召喚はできません。それでもよろしいのですか?』
『それは…』
『無理、ですよねあなたの苦労はわかりますミスヴァリエール、しかし人を召喚するなど私と聞いたことがありません、もしかしたら歴史をかえるかもしれませんよ?』
『うぅ…わかりましたわミスタ』
するとトボトボとルイズがこちらに歩いてきた、なんだなんだなんかあんのか?
おいおい、本当見れば見るほど綺麗な顔してんな、そっちの気はねぇが将来美人になりそうだなんて呑気に考えていたのが、間違いだった。
いんや…正確に言うと始まりだったのかもな俺の新しい人生のな。
初めて誰かのために刀を振ったぜ、それがこんなにも最高なんてわかんなかったけどな、お前が教えてくれたのかもなルイズ。
今ならアイツの言っていた活人剣の意味もわかる気がするぜ。まぁ、斬ることは今だに好きだし変わる気もねぇけど。おれの裏太刀は殺人剣それは変わらねぇ、だけどお前を守る活人剣でもあるんだぜ、なーんてこの時はこれっぽっちも思ってなかったけどな。
っと思い出話に入っちまったな。そんじゃ続きにいくとするぜ。
そしたら目の前に嬢ちゃんが座り込んだ、なんか知らないが顔を真っ赤にしている。なんだなんだなんかまた起きんのかと、俺は内心身構えていた。
するとテンパった声で話し始めた。
『あっあたしの始めてをあんたにあげるんだからね!!しっかりとうけとんなさいよ!我が名はルイズ•フランソワーズ•ル•ブラン•ド•ラ•ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ』
『長い名前だな、ん?杖なんかするのか?』
なんて言ってるうちにキスをされた。
『お前、今なにを』
すると俺の左手に激痛が走った。ハンパじゃねぇ、まるで焼かれてるんじゃねぇかぐらいの痛みが襲った。
『ぐぅぁぁぁぁ』
ようやく痛みが治まった時に左手を見てみると読めない文字が記されていた。
『なんだこれは?』
『おぉ少し見せてもらってもよろしいですか?これは…珍しいルーンですねスケッチさせてください』
と頭が禿げている中年の男が近くに来た、ルイズはポカーンと、放心状態になっているので話が出来なさそうなのでこの男なら話ができそうなので聞いてみる。
『なぁ、ここはどこなんだ?アメリカか?イタリアか?なにをしてるんだ?』
『アメリカ?イタリア?いいえここはハルゲニアが誇るトリステイン魔法学校。聞いたことぐらいありませんか?』
そんな物は全くを持ってない。ハルゲニア?どこだそこはこれでも一般教養はあるつもりだが魔法使いの格好をしている学校がある国など聞いたことがない。そもそもこの手の模様はなんだ?光ってやがる。
よくよく見て見ても手品とかそんな類ではない。もはや刺青みたいなものだ。
『聞いたこともないな、そもそも魔法とはなんだ?よくおとぎばなしに出てくるあれか?杖の先から火でもでるのか?』
と俺は半ば本気で聞いて見た。
すると。
『えぇ。できますよ、当たり前じゃないですか』
と目の前の男は杖の先から火を出したそれもかなりの火力だ。
俺は驚くとかそんなことよりも、はっきり言って馬鹿な話だがこの男と殺りあってみたいと心の何処かで、ふと思った。
何故ならこの温和そうな男からは命のやり取りをしたことのあるものにしかない、独特な雰囲気があるからだ。心の中の野獣が舌舐めずりをする音がした。
と、それはあくまで思っただけであって、別に本気で殺りあおうとは思わない、刀も何もない素手の状態でこいつを倒せるかといったら、倒せないことはないだろうが。
まぁ…腕の一本は持って行かれるだろうな。
せっかくこの世界のお得意の魔法やらなんやらで生えた腕をそんな事でやろうとは思わない。
ともかく、俺はとんでもねぇ世界に来ちまったもんだと自分を納得させることにする。
『驚いた、これが魔法ってのか、世の中信じられねぇこともあるんだな』
この温和そうな男は何を言ってるんだと言った表情をしていた、しかし気を取り直したのか真剣な顔をしてこっちに向かって来た。
『すみません、その後様子だと見ず知らずの土地に来て驚かれている様子のようですが、ミスタに一つお願いがあるのです。』
『お願い?』
『はい、行きなり呼び出され、なにをと思われるかもしれないのですが、そこの彼女ミス•ヴァリエールの使い魔になってはいただけないでしょうか?』
『使い魔とは、なんなんだ?』
『簡単に言うと執事と主人のような関係だと思われてくれれば幸いかと思います、ミスタを見たところどうやら、その…傭兵のようですし、彼女ミス•ヴァリエールはかなりの貴族でありますしお金には困りませぬ、もうコントラクトサーヴァントをしてしまっているのでそのルーンはどうすることも出来ません。見ず知らずの男がなにを言うとお思いかもしれませんが、どこにも行かずどうか彼女を見守ってはくれませんでしょうか?』
俺はこの男がここまで言うかと、正直思う。
話を聞くと学校のようだから先生なのだろうが、そこまで尽くせるとは。
ま、どちらにせよこの世界ことはさっぱりわからんし、その使い魔になって見るのも悪くはないか。
新しい雇い主は綺麗で小さなお姫様と、なかなか笑えるじゃないか。
『わかった。その話引き受けよう』
『本当ですか!!ありがとうございます!!ほらミス•ヴァリエール貴方の使い魔に挨拶を』
するとルイズはふてぶてしい不満そうな顔でやって来た。
『なんで使い魔が平民なのよ、はぁ…仕方ないか』
『そんなため息つくなよ、お姫様』
『なによ、平民のくせして、私は貴方のご主人様なのよ、まぁ洗濯ぐらいは出来そうね。よろしく』
周りの生徒達は興味を無くしたのかみんな帰って行ってしまったようだ、ここにいるのは、俺とコルベールとルイズ。
これが…そう。これが本当の始まりだった。
『あぁ、よろしく』
『ほら、ミス•ヴァリエール自己紹介もしませんと!』
コルベールは自身の生徒がやっと納得したのが嬉しいのかニコニコしながら催促をする。
『ルイズ•フランソワーズ•ル•ブラン•ド•ラ•ヴァリエール。長いからルイズで良いわ。アンタ名前は?』
するとコルベールは暖かい目でルイズは鋭い威嚇する目でこちらを見てくる。
俺はある種の覚悟決めて。って言うのも親父の教えでな、武たる者変革の時は覚悟をきめよってな。
んだから、己の覚悟を示す意味合い込めて答えた。
『俺の名は、サム。サムエル•ホドリゲス。侍だ。』
ルイズは不審そうな顔をしたが、その可愛らしい顔をフッと笑みで緩めて天使みたいな笑顔でいった。
『よろしくね。サム』
おいおい、まったくお前に殺されたおかげでとんでもねぇ世界に来ちまったぞ?
まぁ、綺麗なお姫様が、雇い主ならそれも悪くはないがな。
ほんの少しばかり恨むぜ。雷電。
違う世界で世界を平和にするために斬りまくってる、友人に向けてサムは呟いた。
その顎髭をなでながら。