えー、リアルが忙しく……こら、そこ! FGOイベお疲れさんとか言わない。
えー……仕事で執筆時間取れなく……こら、だからハロウィンイベや復刻クリスマスイベお疲れとか言わないの!
えっと……FGOたーのしー!(逃走)
身長、体重などの情報を理亜に口頭で伝えるよりは、メモに書いて渡した方が早いだろう。その方が盗聴とかの心配も少ないし。そう思って、ベッドから離れたんだが……理亜よ、何で顔を赤くしてるのかな?
「はふぅ……」って溜息までついてるし。
「どうしたんだい? 遊び疲れたのかな?」
「……兄さん、わざとやってませんか?」
はて? 何か理亜を疲れさせるようなことしたかな?
「もう、兄さんったら……」
俺の態度が何故かお気に入りに召さらなかった理亜さんはご立腹な様子だ。
女の子の気持ちを理解するのは難しいね。
「まあ、兄さんの言う通り、緊張もしていましたからそれもありますけど。その……」
「ああ、他の男もいたからなぁ」
「はい……」
理亜は潔癖症なところがあって、人に触れられたりすることだけではなく、じろじろ見られたりするのも抵抗を感じるようだ。ましてや、肌の露出が多い水着姿を男に見せるのは抵抗感があるんだろう。
理亜をじろじろ見る奴なんてそんな奴……いたな。
「アランか!」
他にもキンゾーがいるが、あいつはサラ博士以外の女に興味なさそうだし第一あのアホ弟に銃を向けたら、兄弟仲良く実弾キャッチボールやることになる。よし、キンゾーは見逃してやろう。弾もったいないし。
それにしても俺の理亜をじろじろ見るなんてアランにはお仕置きが必要だな。
「本当は理亜の水着を見ていいのは兄である俺だけにしたいんだけどね」
かなめが昔言ってた『妹は兄の所有物』発言。あの時は、何言ってるんだコイツは……的な目でかなめを見ていたが、今となってはほんの少しだけそうしたい気持ちがわかる。
何というか、守ってやりたくなるんだよ、理亜は。
「それはそれで問題発言だと思いますけど」
うん、まあ、そうかもしれないな。
クスっ、と笑って頬をやや染めながら理亜は言う。
「それだと兄さん、男性一人で孤立してしまいますし」
あー……確かに自分から積極的に女性に近づきたくはないからね。普段の俺は。
ヒステリアモード時の今ならともかく、素の状態で女性しかいない中で過ごすのは拷問に等しい。
「私も、せめて一人か二人かは男性がいらっしゃった方が、兄さんも楽しめるのではないかな、と思っていましたので、大丈夫ですよ」
「まあ、女の子だらけってのは嬉しいには嬉しいが……」
「……兄さんのことだから、気を使い過ぎて疲れちゃったりしないかな、と思ってました」
そんな心配もしてくれるのか。よく出来た妹だな、本当。かなめにも見習せたいくらいだ。
気苦労をしたままじゃ、誰だって心から楽しめない。俺が楽しめなければ理亜も楽しめない。理亜が楽しめなければ、他の人も楽しめない。そうなったら、この旅行は大失敗だ。
「既に相方っぽい
アラン? 奴は死んだ。
「ああ、氷澄さんにはラインさんがいますからね。キンゾーさんはお付き合いしてる人がいたりするんですか?」
「キンゾーはあれだよ。芸術が恋人なんだ、きっと」
サラ博士の事は言えないし、詳しくは聞いてないから答えようがない。
キンゾーが関わった実験中に死んだって事くらいしかわからんし。
「なるほど。詳しくは聞かない方がよさそうですね」
「そうしてもらえると助かる」
「氷澄さんはラインと一緒に……?」
「ああ、今も二人で出かけているんだろう。多分、今頃砂浜や海上を猛スピードで走ってるんじゃないか」
「ふふ、仲良しなんですね」
あの二人の関係を仲良しの一言で表してもいいものか正直わからんが、まあ、仲良くなければきっと今頃ラインに轢殺とかされてるはずだからきっと仲良しなんだろうな。
「ちなみにアランの馬鹿はカードを買いに行くとか言ってどこかに言った」
カードを買いに行くって行ったきり、戻ってこないが何をやってるんだろうなあいつは。
「……アランさん? すみません兄さん……アランさんってどんな人でしたっけ?」
……理亜にまで存在を忘れられるとは、不憫な奴だなアランよ。
「おいおい、アランはアランだろ?」
「すみません、兄さん。私はアランさんっていう人、
「は?」
何を言ってるんだ、理亜よ。
お前は何度も会っているはずだぞ?
俺のクラスメイトの残念なイケメンアランに。
「おいおい、変な冗談はよせ。アランは……アランは……あれ?」
アランって……
というか、うちのクラスにそんな奴いたっけ?
「兄さん、大丈夫ですか? 」
「ああ、大丈夫……だ」
奇妙な違和感を感じつつ、俺は先ほどまで話していた氷澄やライン、キンゾーの話題をした。
「それにしても『
理亜は何かを考えるように視線を横に向けると、何かを決心したかのように頷いた。
「『ターボババア』のラインさんや『首なしライダー』のキンゾーさんも含めて、いざとなったら問題ありません」
「いざとなったら何が問題ないんだ?」
「『
さらりと告げるが、おいおい。
氷澄とラインならともかく、小国なら一人で滅ぼせるとか言われてるRランク武偵のキンゾー相手にどうにかなるって本気で思ってるのか。無茶だ。無謀だ。そんなことは不可能だ!
一瞬そんな風に思ったが、理亜の視線、その眼差しを見た瞬間、俺はなんで理亜がこんなことを言い出したのかを理解してしまった。
あ、あの目は本気の時の目だ。
理亜がああいう強い意志を持った目で俺を見る時は、大抵俺の為に決心し、苦悩し、行動しようと振るい立つ時にする目だ。
それがわかってしまった。
わかってしまったが止められない。止まらない。俺には彼女を止められない。なぜならかつて彼女と約束したから。
『俺が死ぬって運命なら、俺の横で、俺と一瞬に戦って死んでくれ! 一瞬に死のう、理亜!!!』
『死ぬ気で護る』
そう誓ったから。
理亜は強い。対ロアに対してはまさに最強の能力を持っているのは確かだ。
だが、いくら理亜でも一人で三人を同時に相手するのは無茶だ。
理亜は確かに最強の主人公と言われてはいるが、理亜自身はどこにでもいるただの普通の可愛い女の子となんら変わりない。どんな都市伝説も消滅できる都市伝説『対抗神話』として、『
それに、心優しい理亜がそんなことをするとは思えなかった。
そんな俺の心境に気づいたのか理亜は。
「はふぅ。兄さんは人を、そしてロアを信用し過ぎです」
ため息を吐くと、淡々と説教を始めた。
「いや、だってなぁ。あいつら、俺のトレーニングに付き合ってくれたりしたんだぞ?」
「確かにそうやって、兄さんを手助けする事もあるとは思います。ですが……」
「ですが……なんだ?」
「あちらが操られる可能性だってあるんですよ?」
「うぐっ」
「ロアの力には、本当に様々なものがあります。もしかしたら、ロアを使役するロアだっているかもしれません。そんなロアに操られていたら、兄さんの身が危ないです」
「そ、それはそうだが」
「そうでなかったとしても人質を取られたりすれば敵対することだってあるんです。兄さんはそういう点が甘いんだと思います」
「うっ」
それを言われると何も言い返せない。確かに俺は女性に甘い。とくに
理亜はずいっ、と顔を寄せてくる。そのあまりの迫力に一歩引く俺。
ち、近い。近いし、風呂上がりだからか、理亜の身体からは甘い、香りが漂ってきている。
「いや、だがな、理亜よ」
「だがな、じゃありません。第一兄さんは……」
さらに顔を寄せて来る理亜はすっかりヒステリアお説教モード(俺命名)になっていた。
ヒステリアモード中の俺と同じで〜モードとか好きだな、さすがは理亜だ。
などとアホな事を考えていたせいか、理亜の格好に気づくのが少し遅れた。
ま、マズイ。血流がより強くなってしまったではないか。
理亜はお説教モード中で全く気付いてないが、やや前のめりになっているからか、胸元がチラチラっと見えてしまっているぞ。ブラジャーが丸見えだ。
角度的に柔らかそうなたわみが、肌と下着のスキマにいい感じに見え始めついつい、俺の視線が上に向きそうになって……。
って、馬鹿! 一体俺は何をしようとしてるんだ!
落ち着け俺よ。ヒステリアモード中から賢者のヒステリアモードへと強制移行していくような感覚でなんとか自制心を保った俺は……。
「理亜、ごめんよ。ちょっとストップだ」
俺は理亜に自分が羽織って上着をかけてやる。
「え? ……あっ‼︎」
上着をかけられた事で自分がどんな姿でいるのかようやく理解した理亜は物凄く恥ずかしそうに身をよじって、胸元を隠すような仕草をする。俺は両目を瞑って理亜に背を向けると衣摺れの音が聞こえてくる。
ちょっとだけ。ほんの少しだけ惜しい事をしたような気がした。
ってか、惜しい。
……いやいやいや、何を考えてるんだ俺は!
「……見えちゃいましたか?」
「いや、えーとな。理亜は女性として大変魅力的だよ。魅力的だからこそ、見てはいけないと思ってだな。自制したというかなんというか……」
「そ、そうですか……はふぅ」
え? こんな説明でホッとするの?
ってきり
それか
前世じゃ、ちょっとTO Loveるった日には
「……見たくなかったんですか?」
理亜が超特大の爆弾を落としやがった。
なんてこと言いやがるんだ、この妹は!
「見たくない……こともないが、やっぱり見れないだろ!」
見たくない、と言った辺りで理亜が涙目をしたから、否定もできん。
ヒスった以上、女性を傷付けたくはない。
「あ、その……すみません。兄さんは私くらいの体ではやっぱり……」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」
安心しろ理亜。アリアより全然女性らしい体つきしてるぞ。
そして、俺はそのアリアでヒスった男だ。
「わっ、十四回もっ⁉︎」
「正直に言えば、それはもちろん見たいよ。理亜みたいな可愛い女の子のそういった姿を見て何も感じない男なんてほとんどいないからね。だから本当はすっごく見たいよ!」
「は、はい……」
「だけど、そんな不意打ちみたいな事をして、大事な体を見られた理亜が、悲しんだり困ったりするのはもっと嫌なんだよ。一時の感情だけで、俺の理亜を俺が自分で傷付けたりはしたくないんだっ!」
あっ、馬鹿。何を言ってるんだヒス俺よ。
俺の理亜とか言うな。その言葉を聞いた理亜は顔を真っ赤にして「ふにゅう〜」ってしちまってんぞ。
____ちょっとというか、かなり正直に言い過ぎた気がする。
ど、どうしよう?
「……み、見たかった、の、ですね……えっと……」
ぎゅうううう、と自分の体を力強く、特に胸の辺りを抱き締めながら理亜は呟く。
その顔はもう、耳まで真っ赤にしていた。
「あ、ありがとう、ございます……」
「うぐっ……」
そこで感謝するのもどうかと思うのだが。
それにしても、何というか。意識してしまうな、やはり。
チラッ、チラッ、と理亜は何かを言いたげにしている視線を寄越してくるし。
ここで「兄さん、見たいんですか?」とか言われたらいろいろ詰むぞ。
見たくない……わけでもないが、見たら完璧にヒステリア地獄なので、見れん。
見たいが見れん、目の前に可愛い女の子がいるのに見たくないわけあるかー⁉︎ だが、見たらヒステリアモード強まって、取り返しのつかないことしでかしたら理亜と駆け落ち一直線コースなので見れん。従姉妹だから結婚できちゃうけど。
見れるかー⁉︎ と内心一人ツッコミしながら、何とか打開策を打つ為、話題逸らしをすることにする。
「あー、話し戻そうな、理亜。えっと……とりあえず枕でも抱っこしててくれ」
「は、はい」
ベッドにあった枕を渡したが、あっ、これはマズイ。ミスった。
か、可愛い。赤い顔をしたまま枕をぎゅうううう、と抱っこした姿はまさに天界から地上に降りた天使みたいで……いや女神様みたいな可憐さもある分、かなり可愛く思ってしまう。
できることならこのまま、純粋無垢な清楚系妹キャラでいてくれ。
あ、でもそれはそれで兄さん心配だな。
って、そうではなく。
ごほんと息を整えてから。
「つまり、あんまりロアを信用し過ぎるのは危険ってことか?」
真面目な方向に話しを戻す。
「あ……はい。とは言っても兄さんはそもそも誰かを疑うというのが苦手だと思います。特に女の子なら、疑うことなんてできない……というよりは、騙されてもいいと考えているでしょう?」
「うぐっ」
確かに俺は仲間が、例えば一之江やキリカが何かを企んでいて、そのせいで俺が酷い目に遭ったとしても仕方ないと考えてしまう。今まで何度も助けてくれたからというのもあるが、あいつらが俺を騙してまでやり遂げたいことがある場合、それを止めたくないとも思ってしまう。特に
それに武偵憲章1条に、『仲間を信じ、仲間を助けよ』ってあるし。
「いけませんからね! そうやって、すぐ……誰か別の人のやりたいことを優先するの。私は、兄さんがやりたいことを優先しないと嫌なんですからね」
「うっ、すまん」
「本当に、すまないことなんですからね。兄さんが兄さんのやりたいことをしないなら……その……なんで私が兄さんの物語になったのか解らないじゃないですかー」
むー、とジト目で睨み付けてくる理亜。怒られといてなんだが、怒る姿も可愛いなぁ。
とはいえ、確かにその通りだから反省しよう。
反省してもそれを守れるかはわからないが。
しかし、俺のやりたいこと……か。
俺自身が何をやりたいのか、やればいいのかとかは全く思い付いていない現状だが。
そう言ってくれる、心強い味方が出来たことに今は感謝しないとな。
「ありがとうな、理亜。やっぱり理亜と一緒になれてよかったよ」
「いっ、いっしょに……⁉︎」
なんか知らんが理亜の顔がさっきよりも真っ赤になってしまった。そして、視線をうろうろとあっちこっちに彷徨わせた後、やたらと潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
「ああ、理亜と一つになれてよかった」
理亜を俺の物語として、『百物語』の中にある『千夜一夜物語』として、一つの物語として共に歩む道を選択して本当によかった。
「ひっ、ひちょちゅに……はふぅ」
って、おいおい、なんか顔全体赤くないか?
呼吸も乱れてるし、大丈夫か?
「お、おい理亜?」
「だ、だいひょうぶ……です」
いや、あんまり大丈夫なようには見えないのだが……。
「兄さん……あの」
深呼吸をして息を整えた理亜は、か細い声で、伺うように俺を見る。
「もう少し、そちらに寄っても……いいですか?」
「お、おう」
本当はあまりよくはなかったが、ヒステリアモード時の俺は女性のお願いや頼み事は基本的に断れない。
とくに、今いるのは妹として普段接している理亜相手だ。
妹が近くに寄るというだけだ。何もおかしいことなんてない。
だと言うのに、俺の心臓はもうバックンバックンに激しく脈だっていた。
理亜は俺の側に近寄ると、俺の顔を……じーっと見つめてきた。
頬も耳まで赤くしながら、俺から視線を逸らそうとはしない。
そんな真っ赤な顔で見られたら、ドキドキは止まらない。
ああ、クソ、止まらない。止められない。ヒステリア性の血流が止められない。
「私は……兄さんが、大好き、ですからね」
それは前にも聞いた台詞だった。
ああ、そうだ。あの時、理亜達と戦った後にもしてくれた告白。
そう、それは兄妹としてではない、男女としての気持ち。
「兄さんになら……触られてもいいと思ってますし。……その……見られても、いいと思っているんですからね……?」
理亜から向けられる熱い視線。
熱い吐息が部屋の中を流れる風に乗って俺の頬に当たったようなそんな感じがした。
そう、気づけば理亜の顔は吐息が当たるほど近くにあり……。
「だから……兄さん」
そのまま、枕を離して俺の方に顔を寄せてくる。
理亜の、柔らかそうなピンク色の唇が迫って来て……。
気づいた時には、俺の唇に理亜の唇が押し当てられていた。
理亜の激しいほどに熱い体温が唇から伝わってきて……これは……。
(キス……)
されてる、のか。
それが後からわかった。
それがわかったタイミングで。
ドガン‼︎
「っ⁉︎」
「きゃあ⁉︎」
とてつもなく大きな衝撃が、ホテル中に走ったのだった。