『101番目の哿物語』   作:トナカイさん

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かなり間が空いてしまいました。
こんなはずでは……。
もっと更新速度速めるようにします!
来月から。

うん、来月から頑張るから。

だから、今はイスカのアニメや旭日の艦隊観まくるんじゃーーー!!!


……あ、すみません。冗談です。
殴らないで。


第1章 2000年問題のロア
第一話。告げる言葉


「もっと右よ」

 

「うん、左だね音央ちゃん」

 

「んー、キリちゃんもっと左だよ〜」

 

「詩穂先輩、この辺でいいのかなー? 」

 

「うん、そこそこ。鳴央ちゃん、その辺でいいよね〜?」

 

「は、はい。え、えっと。……出来るだけ優しめにお願いします」

 

「あはは。優しいなー鳴央ちゃんは」

 

「前に二歩。そうそこです。さあ、今です。そこの虫野郎を叩き潰すのです!」

 

「容赦ないねー、瑞江ちゃんは」

 

「ば、バカ違う。もっと右だ。ち、違う。そこじゃない! ば、バカ……や、やめっ」

 

「ん〜ここら辺かなー? えいっ♪」

 

パゴーン、と木の棒で割られたことにより、赤い液体が飛び散る。

グチャーと、中身が飛び散る様を隣で見せられた俺は恐怖で震えていた。今の俺の状況を一言で言えば砂浜に埋められて身動き取れない。以上。俺の横には木の棒で砕けたスイカの残骸があった。

 

「あはは、モンジ君。どうびっくりした?」

先輩が楽しそうに笑う。

 

「ドキドキしぱなっしで死ぬかと思った」

 

見ての通りだが、スイカ割りに参加させられていた。

スイカの隣に埋められて。割られたのがスイカで本当よかった。

さすがの俺も頭潰されたら死ぬ……と思う。多分。

 

「つーん。自業自得です。鼻の下伸ばす兄さんが悪いんです」

理亜はそっぽを向く。

 

「俺は何もしてねえだろ!」

 

「普段の行いが悪いからです」

 

うぐっ、そう言われたら反論できん。

普段の俺はともかく、あっちの俺は高確率でやらかすからな。

はぁー、と溜息を吐いていると。

 

「不思議だよね。私達みたいな子達がこんな風に皆んなでワイワイ楽しめるなんて」

 

キリカが俺の横に立って小声で囁く。

 

「ああ、そう言われれば楽しそうだよなぁ……皆んな」

 

ロアとハーフロア、そして……人間。全く気にならないほど自然に溶け込むように集まってるが言われてみれば凄く濃い面子だよな。

 

「これもキンジ君が持つ力だよね」

 

「俺の?」

 

「うん。人と私達みたいなロアを惹きつける力。一種のカリスマ性っていうのかな? 君は持っているんだよ。人やロア、ハーフロアとかの人外。そういった存在を惹きつける力を。本人の意思とか関係なく。強いカリスマ性を持つ人は私達みたいな存在を引き寄せるから。ううん……違うなぁ。君だからかな? 君が君だから、皆んなこうして集まるんだよ、きっと」

 

「俺にそんな力はねえよ」

 

「ふふ、まさに美少女ホイホイだよねー」

 

なんだそれは……。

そんな力はいらん。

普通に、平和に暮らしたいんだよ! 俺は。

 

「さてと。これ以上いたらモンジ君にホイホイされちゃいそうだから先にホテル戻るねー」

 

「あ、オイ、待てキリカ⁉︎ 俺を置いて行くな! ここから出せ!」

 

「あはは! じゃ、頑張ってねー、瑞江ちゃんと鳴央ちゃん達後はよろしく〜」

 

「おい、キリカ⁉︎」

 

俺の言葉をスルーしてキリカはホテルに向かっていく。

 

「モンジ」

 

「モンジさん」

 

「うん?」

 

一之江と鳴央ちゃんが側に寄ってきた。

ち、近い。二人共水着姿の為か、肌の露出が多いせいか、汗の匂いが普段よりも強く感じられることもあり……いかん、ヒスる⁉︎

 

「これをどうぞ」

 

一之江はしゃがみこんで、俺の頭に何かを乗せる。

 

「って、いて。いてててっ、なんだこれ⁉︎」

 

「さて、何でしょうね。ヒント・やばい」

 

「やばい⁉︎」

 

何だ? 何を乗せやがった⁉︎

なんか俺の頭の上でもぞもぞ動いているぞ! 何か刺さってきた! チクチク痛い!

が。

頭の上よりももっとやばいもんが目の前にあった。

ちょっ、一之江さん⁉︎ ち、近い。

つうか、み、見えてる。

しゃがみこんでいる一之江の水着姿……というか、股間部分が俺の前に全開してるんですがー⁉︎

い、いかん。ヒスるー⁉︎

だが、俺が見えてることを一之江が気づいたら……こ、殺されるかもしれん。どうしましょう……!

____ここで俺が、閃く。新技ッ__

視線逸らし(スラッシュV)!)

見たくないもんは、見ないに限る! と、単に横に向いたところで。

今度はしゃがみこんだ鳴央ちゃんの胸元が視界に入る。

(視線逸らし失敗した、だと⁉︎)

キリカよりも大きいたわわ胸に気を捉われていると。

鳴央ちゃんが微笑む。

うっ、き、気づいていないのか? 目の前ですんごく揺れてるんだが。

 

「ふふっ、さっきそこを歩いていたカニを一之江さんが捕まえたんです」

 

「カニすら引き寄せてしまう私の美貌ですから」

 

「ま、まあ一之江が可愛いのは確かだが、カニに好かれるってのはどうなんだ」

 

よ、よし。二人共、まだこの状況に気づいてないようだな。

だったら、ここは最後まで気づかなかった、見てなかった、ことにして乗り切ってやる!

 

「それもそうですね」

 

一之江は俺の頭からカニを取ると、そのまま砂浜に逃がしてやっていた。

こういう動物と戯れる可愛いとこもあるんだなぁ、なんて思っていると。

 

「よいしょ」

 

一之江の手には、いつの間にか鋭利な刃物が握られていた。

 

「ちょ、ちょっと、一之江さん⁉︎」

 

美少女がカニと戯れていると思っていたら、いつの間にかその手に刃物持ってました。

 

「いやいやいやいやいや!」

 

おかしい。何だこの状況。

 

「どうかしましたか?」

 

細い腕、白い手に持った武骨なナイフ。そのナイフの刃は婉曲的に広がっており、かなり殺生力が高そうだ。どう考えても人を殺す為の武器そのもの。

それを、砂浜で当たり前のように手に持って一之江は俺に突きつけてきた。

 

「股間見物料はその首です」

 

「高い見物料だな、おい」

 

「何か?」

 

「いえ、良心的な価格設定かと思います?」

 

うおい。刃先を近づけるんじゃない!

さすがの俺もこんな至近距離から刺されたら死ぬ! 死んでしまう!

 

「まあ、チラ見くらいなら仕方なく許して差し上げますので、凝視はしないで下さいね」

 

「ぎょ、御意」

 

一年後輩の某赤貧忍者みたいな返事をしつつ、一之江のことを考えてしまう。

流石に一之江も今の状況は恥ずかしかったみたいだな。恥ずかしかったから、刺す! みたいな考えはどうかと思うが……ま、まあ。(タマァ)取られなかっただけマシだな。

あんま見ないようにしよう。見たら死ぬ。ガチで!

 

「ドキドキしましたか?」

 

「ああ、いろんな意味でな」

 

「なるほど……脈ありですね」

 

「ふふっ、一之江さんとモンジさんって、本当にいいコンビですよね」

 

鳴央ちゃんがクスクス笑いながらそう告げる。慎ましい『ザ・癒し系』の鳴央ちゃんと、『ザ・殺伐娘』の代名詞である一之江の組み合わせは珍しい……というか、かなり予想外な組み合わせだ。

 

「で、なんかあったのか鳴央ちゃん?」

 

鳴央ちゃんの方に視線を向けたが……うっ!

こ、このアングルはまずい。水着姿の彼女はスタイル抜群なんだが、当然あそこも視線にバッチリ入ってしまうわけで。い、いかん。あんまりジロジロ見てたらヒスってしまう。

一之江の方に視線を向けたが……おい⁉︎ な、何でまた俺の前で座ってんだよ!

股間見えるだろうが!!!

い、いかん。血流が。

くる。来た。やつが 来る ゾ!

 

「音央ちゃん達は休憩しに、一度ホテルに戻りました、って連絡をしに来ました」

 

「……俺を置いていく辺り、流石だな」

 

理亜も『つーん』とした態度でいなくなってしまったしな。砂浜には顔だけ出したまま、埋められた俺と、俺の横に置かれた潰れたスイカしかないからな。

 

「まあ、鳴央ちゃんや一之江がいてくれるだけで今の俺は嬉しいよ」

 

「うわぁ、他の人がいなくなったと知った途端、口説き始めましたよ、このハゲ」

 

「ハゲてねえよ⁉︎」

 

「私が水着姿だからって、本当いやらしいですね」

 

「一之江の水着姿が楽しみだったのは本当だけど、前にも見たことあるよな?」

 

キリカの正体を知った後、一之江や先輩、キリカと一緒にプールに行って堪能させてもらったからな。

 

「綺麗なものは何度も見たいでしょう?」

 

「まあ、それは確かに……」

 

一之江の水着姿はかなり似合っているというか、一之江は何着ても可愛いのは知ってるからそこは同意した。

ただ、惜しむらくは、水着姿になったとしてもその胸の大きさは……。

 

チクリ。

 

「すみませんでした。大変素晴らしい体付きをされてると思っています。俺は胸の大きさで女性を選んだりしないからそこは安心してくれ。小さくても胸は胸だ。君はとても可愛らしいよ、一之江」

 

「よろしい」

 

首筋に痛みを感じた瞬間、俺の口は動いていた。俺の返答に一之江は満足してくれたようで、構えていたナイフをようやくスッと何処かに仕舞ってくれた。

いつも思うのだが、何処から出してるんだ、あのナイフ。

まるで手品を見ている気分だったが、一之江なら出来ても不思議じゃないな、と思ったから俺は考えるのを止めた。現実逃避って便利だよな。

 

「しかし、私は人がごみごみしているビーチとかは嫌悪しますので、このほのぼのプライベートビーチ状態には満足しています」

 

「あ。私も、他に誰かいたら水着なんて着れなかったなー、と思います」

 

「二人が満足しているなら俺も嬉しいよ。俺も二人の水着姿は他の奴には見せたくないしね。

俺は前から一之江には休んだり、遊んだりして欲しかったし」

 

「そういう気を使われていたのも知ってます。なので、今な容赦なく遊び倒すつもりです。ここにいる鳴央さんとも親睦を深めたりイチャイチャしたりぽいんぽいんしたりします」

 

「ぽいんぽいん⁉︎」

 

ヒス的には大変困った光景だが、二人には仲良くなってほしいし。うーむ。

 

「え? え?」

 

「後で感想を頼む」

 

オロオロする鳴央ちゃんを見ながら俺は一之江に返答した。

 

「いいでしょう」

 

「え、そ、その、あの、こ、困ります……っ!」

 

困った顔を鳴央ちゃんがする。ああ、やっぱ可愛いなぁ。

うん、一之江よ。いろいろと仲良くしてやってくれ。

 

「ま、最近は都市伝説的な事件もなかったし、親睦を深めるのには丁度いいタイミングだよな」

 

「こういうリゾート地には大抵、都市伝説が付きものですけどね。例えばあの崖とか、如何にも色々ありそうです」

 

一之江の視線の先にある崖。

そこはサスペンスドラマとかでありそうな、犯人役と刑事役が対面してそうなそんな断崖絶壁だった。

 

「誰の胸が断崖絶壁ですか」

 

「言ってねぇしー!!!」

 

背中に、背中になんか刺さってるー⁉︎

止めろ一之江! グリグリするな!

 

「さて、モンジ弄りはこのくらいにして「弄りって何だ⁉︎」刺されるの好きでしょう? 「俺にそんな趣向はない」さて、話しを戻しますと。ああいう崖下からは、手が出て来たりしそうでしょう「スルーされた⁉︎」……うるさいですよ、虫野郎」

 

「……」

 

「ああ、ありますね、そういう噂」

 

鳴央ちゃん、君もスルーですか。そうっすか。

 

「ん? 手がいっぱい?」

 

手に纏わる都市伝説というと、スナオちゃんみたいな感じか?

 

「あの崖をカメラか何かで写していたら、海からぶわーっと大量の手が手招きしている、という感じのホラー系な噂ですよ」

 

「うわぁ、何だそれ。スナオちゃん系の人を浚う能力を持つロアか?」

 

「あのような、自殺者が多そうな崖にはそういった噂が立ち易いみたいなんですよ。不謹慎なカメラマンが崖の上に自殺しそうな人がいるのを見つけて。これはスクープになる! と思って写真を撮ってみたところ、その人に向かってたくさんの手が崖の下、海の中から何本も現れて手招きしていた____って感じの」

 

「うわぁ……嫌な噂だな」

 

自殺者が次の犠牲者を求めて招いている、そんな感じの話しか。

ロアになったら、手強そうだな。

 

「ちなみにロアになると、その場所限定で現れるロアになります。崖の下の海から手招きするロアなのに、山にいたらおかしいでしょう?」

 

「地域限定になる分、その力は強いとも言われていますね」

 

「ああ、前に言ってた『ご当地ロア』って奴かぁ」

 

「ええ、あのトンネルで出た『死ねばよかったのに……』のように、トンネルや山、崖などの出没場所が限定されるロアがそれに当たります。そういった意味では鳴央さんも実はその『場所限定』に近いものではありましたね」

 

鳴央ちゃんがいたのは『富士蔵村』の『和室』だったな。

 

「はい。なので私の場合、あの『和室』や『妖精庭園(フェアリーガーデン)』に招いてしまえば、とても強い力を発揮出来ます」

 

「そういうものなんだな」

 

「この島の崖にはそういった噂はないみたいですね」

 

一之江は先輩から事前に聞いていたみたいだった。こういう情報収集力も一之江の強さなんだろうな。

 

「まあ、そういうロアの話しはさておくとしまして……モンジ」

 

「うん? 何かな?」

 

「何かありましたか?」

 

「ま、いろいろ、とな」

 

____つい、先日。俺は愛の告白に近いものをした。

告白……だったのかははっきり断言できないが、自分の想いを相手に示すという意味ではあれは告白になる……と思う。

本来なら、俺ではなく。一文字が伝えなければいけなかった想い。

だが、一文字は俺と同化しているとはいえ、主人格は『俺』だから、俺の口から伝えなければいけなかったんだ。一文字の想いと覚悟を。

俺の口からちゃんと。

俺を好きでいてくれる理亜の為にも。

 

「なるほど。なるほど。で、フラれたんですね」

 

エスパー一之江には内心の想いは筒抜けだろうけど。

 

「フラれてねえよ⁉︎」

 

まだ、な……。

 

「あ……そ、そうなんですね?」

 

鳴央ちゃんがモジモジと口元に手を当てて確認してきた。

あー、そうか。結果報告とかはしてないからな。保留されたし。

 

「随分と当たり前のように過ごしていますね。もしかして、そんなまさか、とは思いますが何気にOKを貰ったりしたのですか?」

 

うん? なんだ? 一之江は俺の告白結果に興味あったのか。というか、一之江なら俺の考え読めるだろう。

 

「読めませんよ。例え読めてしまったとしても、私は貴方の口から聞きたいです」

 

「OKは貰えなかったんだ」

 

あの告白の後、先輩は本当にビックリした顔をしていた。

俺が。一文字疾風が先輩のことを好き……なんて、とっくにバレていると思っていたのに。

 

『わっ。びっくりしちゃった、えへへ。わたしもモンジくん好きだよ♪』

 

この返事までは予想通りだったのだが。

 

『でも、お返事は待ってくれたら嬉しいかもかも。それよりモンジくん、テスト明けに遊びに行かないかにゃ?』

 

という流れで今に至る。

 

「ふむ、保留されたのですね。まあ、一瞬で撃沈しない分だけ……あの先輩が悩むくらいには、貴方に脈があったことに驚きました」

 

「ですね……あ、いえ。モンジさんに魅力がないというわけではなくて、あの七里先輩が返事を待たせるっていうことに驚きました」

 

「ああ、俺もだ」

 

先輩が返事を先延ばしするなんて思ってもいなかった。

撃沈するもんだとばかり思っていたからな。

 

「で、どんな口説き文句だったんです?」

 

ん? なんだ。やっぱり一之江はこういう告白話しに興味あるのか。

保留されてる身としては、失敗談として語るわけにもいかず、だからと言って成功だと語るわけにもいかないので、微妙な話題なんだけどな。

 

「あー、いや。普通に好きです、って言ってだな……」

 

「ベタですね。それから?」

 

やっぱり一之江も女子なんだな。こういう恋愛話しとか好きなんだな。

それとも俺を揶揄うネタを探しているだけか?

鳴央ちゃんも顔を赤くして、興味深々に俺の話しに聞き入っているし。

 

「その後に何かキモい言葉を付けてしまったのですね。おっぱい見せてください、先輩のパンツおくれ、とか」

 

「言わねえよ⁉︎ どんな変態だよそれ⁉︎ 俺は神龍にパンツ願った豚じゃねえ⁉︎」

 

「いきなり三連ツッコミとは。貴方もこの2カ月でツッコミが上手くなりましたね」

 

「よくボケる奴がパートナーだからな」

 

「感謝してもいいのですよ?」

 

あくまで上から目線で一之江は言ってくるが。

なんだ? 何か変だな。いつもよりぎこちないっていうか、無理して笑ってるような。

 

「なあ、一之江」

 

「パンツならあげませんよ?」

 

「そんなこと言わねえよ⁉︎」

 

気のせいか。いつも通りの一之江だな。

 

「で、何ですか?」

 

「いや、気のせいだな。なんかいつものお前じゃなかった気がして……」

 

「いつものわたしってなんですか?」

 

「ん? そりゃ、ボケて、突っまれて、俺を刺すのがお前っぽいが、それよりもいつもなら埋れてる俺なんか放置するのがお前だろ?」

 

いや、もっとエゲツないことをやるのが一之江のはずだ。

それなのに、今は単なる恋バナを聞きに来ているだけなんて。こいつらしくない。

 

「気まぐれ……と言いたいところですが、まあ……そうですね」

 

「ん?」

 

「気になってしまったので。貴方のことが。こっぴどくフラれたのなら、その首でも落として迷いから解放して上げようかと」

 

「まだフラれてなくてよかった……!」

 

前半だけ聞けば一之江は俺に気があるみたいだなぁ。前半だけ聞けば。

 

「その告白結果は私や音央ちゃんも気にしていましたからね。音央ちゃんなんて『会長に会ったらどんな顔すればいいか悩むわー』って言ってました」

 

なんで音央がそんなことで悩むんだ?

うーむ。分からん。

まあ、周りの奴らをやきもきさせていたのは確かなようだな。

 

「そっか。ごめんよ。気にさせてしまって……謝るよ」

 

「あ……いえ」

 

「で、なんて言ったんですか?」

 

一之江ははっきり言わせたいらしい。俺が先輩になんて告げたのかを。

 

「俺の中で、大事な人に告げる言葉ってのが、今はあってだな」

 

「……はい」

 

鳴央ちゃんが神妙そうに頷く。

 

「俺の物語になってくれませんか、って」

 

その瞬間、一之江の目が大きく見開かれた。




完結まで残り____100話。

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