StrangeVampire's Journey (擦過傷)
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2 Scarlett fell in a beautiful moonlit night

小年は弾幕を避けながら玩具の拳銃から弾丸をばら撒いた。
「包帯さん、なんで玩具から弾が出るの?」
目の前の少女は不思議そうに聞いてきた。隠す理由も無いので小年は少女の弾幕を避わしながら答える。
「弾丸は蝙蝠なんだ、自分の体から分離させて作った蝙蝠を高速回転させて銃弾として打ち込む。だから弾切れも装填の心配もない」
「なら、貴方を殺せば弾は出なくなるということね」
唐突に少年の真上から声が聞こえた。見上げると真上で槍のような何かを振りかぶってる女の子がいた。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
「うおっと」
真上から来た攻撃にすぐに避けようとしたがギリギリの所でまた別の攻撃がきた。
「幻幽『ジャック・ザ・ルビドレ』」
突然、大量の弾幕とナイフが現れた。更にナイフはこちらに向かって飛んできている。
そして二人の攻撃によって巻き起こった土煙によって少年は見えなくなった。


「お姉さま、今始まったばかりなのになんで止めるの」
フランドール・スカーレットは不満そうに言った。他の人と遊んでいる時にお姉さまが来ると遊びはそこで終ってしまうから、だからフランは不満を漏らした。ただ、今回は違った。
「違うわ、フラン。私も混ざりにきたの。今日ばかりは本気で遊んでいいわよ」
予想外の言葉にフランは目を輝かせる。本気で遊べるのは久しぶりなのだろう。
「ほんとに、ほんとにおもいっきり遊んで遊んでいいの?」
その質問に答えたのは姉ではなくメイド長の十六夜咲夜だった。
「ええ、フランお嬢様。おもいっきり遊んで構いません。」
咲夜は淡々と答えた。今のフランと咲夜、レミリアの温度差は大きく違ったがフランは気付かない。別に気付いても何も起こらないのだが。
そして煙が晴れるとそこには左腕を失ったミイラが立っていた。そんなミイラに向けて紅魔館の主は言う。
「貴方、さっきの攻撃を左腕だけで済ませるなんて驚いたわ。さあ、続けましょう、この遊びを。この紅魔館と私の大切な友に手を出した事、後悔させてあげるわ!!」
その言葉にミイラは少し考えるそぶりを見せながら言う。
「この館が紅魔館というのは、なんとなく理解できたがお前の友達に手を出した覚えは無いけどな。まあいいか、そちらは二人追加ね。さっきのを見るに、こりゃあ出し惜しみしてると俺が死ぬな。遊びは止めるしかないか」
そう言うと、唐突に、唐突にミイラの体は霧散した。
「『二代目領主』のレリックさんと『幸せの黄色い弾丸』のブリジストンさんときたから、ここは出し惜しみせず『藍影』の石橋さんで行くか」
何処からともなく聞こえたミイラの声にレミリアは言葉をかける。
「一体何を言ってるの、それに体を霧散させて、まさか逃げるつもり?」
「いや、一番のポジションに陣取るだけだ」
その言葉と共に霧となっていたミイラの体は月をバックに宙に集まっていき、左肩の再生したミイラが現れた。どうやったのか包帯まで元通りの状態である。
「咲夜、フラン、一斉に攻撃して引き摺り下ろすわよ。あのミイラ、何を考えてるか分からないけどあまり良い予感はしないわ」
「分かりましたお嬢様、引き摺り下ろせば良いのですね」
「分かった、あの包帯さんにフランのとっておきを見せてあげる」
そして三人同時にスペルカードを放つ。

「幻世『ザ・ワールド』」
「『紅色の幻想郷』」
「QED『495年の波紋』」

「なっ?!」

驚きの声が上がった。まさか攻撃されるとは思っていなかった。そういう声が聞こえた。
「なんで……なんで私達を攻撃したの咲夜!!」
昨夜は、その言葉に答えることなくミイラを庇うように前に立ちスペルカードを放っていた。


あの時、三人はスペルカードをミイラに向けて放っていた。そこまでは普通だった。そして次の瞬間には時間を止めた咲夜がミイラを庇うようにこちらに対面し時が動き出すと同時にスペルカードをレミリアとフランに放っていた。
スカーレット姉妹は突然の出来事ながら避けようとしたが動けなかった。
それは気がついたらミイラの影が実体を伴い、更にその影から別の手の影が実体を伴い生まれて姉妹の両手両足を拘束していたからだ。また、影に重さは無いので二人は動くまでまったく気付かなかった。
つまりミイラが月をバックにした理由は、影を最も大きくして自分の影の中にスカーレット姉妹入れる事により気付かれない内に拘束をするためであった。もしも、スカーレット姉妹を影の中に入れないで今の技をやろうとすると確実に気付かれたであろう。
よって、ミイラの一番のポジションに陣取るという意味はこの事であり、ミイラが月をバックにした時点でミイラの勝ちは決まっていた。

レミリアとフランは、碌に回避も防御もできないまま咲夜のスペルカードを喰らった。そのせいで体の至るところにナイフが刺さって、フランは気を失いレミリアも満身創痍だが、それでもレミリアは咲夜に向けて叫んだ、叫ばずにはいられなかった。だが、その声は届かない。
ミイラを庇うように宙に浮かんでいた咲夜は二人分のスペルカードを受けたが、その表情は苦痛ではなく何者かに操られたように無表情だった。
「ただ俺が操っただけだ。霧化した時に俺の体の一部、まあ霧の一部をメイドに吸い込ませた。だからそいつはお前達を裏切ってない、安心しろ」
レミリアの叫びをミイラが代わりに答えた。その言葉を聞いてレミリアはミイラを先ほどまでの殺意に加え憎悪の表情で睨んでこう言った。
「絶対に、絶対に貴方をゆるさない!!。」
ブチンとレミリアは満身創痍の中、影の手を全て引き千切り最後の力を振り絞って宙にいるミイラ目掛けて突っ込んでいく。右手に全ての力を注ぎこみ実力の差を知りながら一矢報いようと突き進む。
だが、それはできなかった。レミリアは腹部を襲う衝撃で突き進めなくなった。
なにせ、ミイラの体から放たれた高速回転した蝙蝠が、レミリアの腹部を撃ち抜いたのだ。その単純な出来事でレミリア・スカーレットは止まってしまった。
自分の腹部から滴り落ちる血を見てレミリアの意識は朦朧としてきた。
そして、意識が途絶える前にこんな言葉が聞こえた。
「だから言ったろ、弾切れも装填の心配も無いと。それにしても、今夜は本当に良い満月だ」
その言葉でレミリアは空を見上げ、そのまま後ろへ倒れこむように落下していく。

本当に今夜は、良い満月ね。

レミリアは意識が途絶える最後の瞬間、涙が流れてることに気付かずに月を見続ける。そしてそのまま、宙から落ちていった。
最後まで涙に気付かず、そして意識はプツリと途切れた。

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