問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん

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決着、“アンダーウッド”

 

吸血鬼の古城の最短の崖に立った三人は巨龍を倒す為に手早く作戦を確認していた。“アンダーウッド”へ急降下しようとしている巨龍を見て猶予は無いであろう。

巨龍を一瞥した蘭丸は二人に視線を移す。

 

「俺が巨龍を抑えに行く。心臓を撃ち抜くのはお前らに任せるぞ、十六夜、耀」

 

「ヤハハハ!任せとけ」

 

「うん。………あ、でも少し待って」

 

耀は思い出したかのように“生命の目録”を取り出しその形状を変幻させていく。変幻した“生命の目録”は光となって、耀の両足を包み、革のロングブーツは白銀の装甲に包まれ、先端には白い翼が生えていた。

 

「出来た……」

 

“生命の目録”はペガサスのブーツへと変幻していたのだ。それを見た十六夜と蘭丸は唖然とそれを見ていた。

 

「凄いな……“生命の目録”」

 

「ああ、超イカしてるぜ」

 

ビッ!と親指を立てる十六夜と拍手しながら笑みを浮かべる蘭丸。耀も十六夜に合わせビッ!と親指を立てる。笑みを浮かべていた蘭丸は一変し、戦闘時の顔になった。それと同時に空気もしまった。

 

「さぁ、そろそろだ。巨龍をぶっ倒すぞ!」

 

蘭丸の一括で十六夜を抱えて上空へと身を投げる耀。それを確認した蘭丸は“アンダーウッド”にと瞬間移動した。

 

 

 

 

**

 

蘭丸が“アンダーウッド”へ到着すると巨龍は大樹へと突進を仕掛けていた。その前線では飛鳥と大樹と同等にまで巨大化したディーンが立っていた。

 

「よう、無事だったか飛鳥」

 

「蘭丸君こそ、…………………でもあんな巨大な龍を抑えられるかしら」

 

飛鳥の顔には不安が映っていた。それもそうだろう。相手は最強種の一角、龍の純血種である。ディーンは巨大化しているが飛鳥のギフト“威光”は強大な力を授けるギフトだが、それは局地的かつ、瞬間的な霊格の肥大であるため、神珍鉄の類いのギフトとは相性が悪いのだ。

 

「違うぞ飛鳥」

 

「え?」

 

しかし蘭丸は依然と笑みを浮かべて大樹へと突進する巨龍を見る。

 

「“出来る”か、“出来ない”かじゃない。………俺たちは“やる”しかないはずだぜ?」

 

な?と蘭丸の笑みに飛鳥の表情も明るくなっていく。

 

「そうね。あんなの軽く蹴散らしましょう」

 

「止めろ、二人ともッ!正気か⁉︎」

 

サラが炎の翼で飛翔し、二人の横に並び立つ。

 

「正気も何も、俺らが逃げたら“アンダーウッド”が終わりじゃんか」

 

「分かってる!それを承知で連れ戻しに来たんだ」

 

「私達も承知の上よ!」

 

「何が承知だ。自殺の他ならん‼︎」

 

「それでも……それでもやらなきゃいけないのよ‼︎」

 

飛鳥は凛とした目を浮かべる。彼女たちの後ろには“アンダーウッド”がある。ここで退いては全てが終わりである。だから逃げるわけにはいかない。

飛鳥の覚悟を見た蘭丸は満足そうな笑みを浮かべ、サラは嘆息を漏らした。

 

「退けないのか?」

 

「退けないわ」

 

「当然だろ?」

 

「死んでもか?」

 

「死ぬくらいなら」

 

断固たる飛鳥の覚悟を目の当たりにしたサラも覚悟を決めた。

 

「分かった……私も、それだけの決意を示そう」

 

剣を取り出し己の龍角を切断するサラ。その断面からは血が流れ、髪が血の色に染まった。

 

「なっ…………」

 

何をとは続けられなかった。それが彼女の誇りを汚すことになるからだ。サラは激痛を堪え、龍角を飛鳥に渡す。

 

「……龍角は純度の高い霊格だ。神珍鉄とも溶け合うだろう」

 

「でも、なんで⁉︎」

 

「お前達ならきっと止められる。どうか、“アンダーウッド”を守ってくれ……」

 

それを最後にサラは意識を失った。蘭丸は無言で髪留めを外し、腰まで髪が落ちる。飛鳥は全身を戦慄かせ龍角をディーンに捧げる。龍角は神珍鉄と溶け合い伽藍洞の体から紅い風を吹く。

サラが二百年をかけて鍛えた龍角。その思いは無駄にしたくなかった。

 

「巨龍を迎え撃ちなさい、ディーン‼︎」

 

「DEEEEEEeeeEEEEEEEN!!!」

 

伽藍洞の体から紅い風を吹かせ突撃するディーンは巨龍の顎を剛腕で掴み、大地が捲れ上がるかの如く踏み込み。ぶつかり合う。

 

「止まれええええええぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

「GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

「っらあぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

巨龍の下顎の位置に移動した蘭丸は白いオーラの篭った拳を巨龍へと叩き込む。その拳は空間諸共砕く威力であったが、疲労のせいか、威力が芳しくない。

 

「チッ!変態との戦いで大分やられたか………なら……」

 

蘭丸は深呼吸をすると巨龍の目の前に移動する。その行動に飛鳥も驚いた。

 

「蘭丸君⁉︎」

 

「俺が巨龍の動きを止める。その隙にディーンで殴り飛ばす」

 

そう言うと蘭丸は両手を挙げ、空間を掴むように手を握る。

 

「はあぁぁぁぁぁ…………」

 

蘭丸の手に掴まれている空間が歪み始める。

 

 

「セイヤァァァァァ‼︎」

 

そしてそのまま腕を振りぬく。すると地面が、空が、空間が歪み始めた。

 

「な、なんなの、これ……」

 

数十メートル離れたところで一撃を打つ為待機していた飛鳥も驚いています。

そしてその一撃は巨龍の動きを止めた。

その瞬間に飛鳥も指示を出す。

 

「今よ!ディーン‼︎」

 

「DEEEEEEeeeEEEEEEEN!!!」

 

ディーンは巨龍に突進を仕掛けてその顎を殴り上げる。巨龍もただではやられなくディーンの半身を食い千切って上空へと駆け上がる。すると大天幕の解放で太陽の光を浴び、巨龍の心臓が浮かび上がる。

 

「今だ!やれ十六夜‼︎」

 

その一瞬を待っていたかのように十六夜の抱えた白銀の流星が追走した。

 

「見つけたぞ…………十三番目の太陽ーーー‼︎」

 

十六夜は両手に抑えた光の柱を束ね巨龍の心臓を撃ち抜く。巨龍の断末魔は無く、光の中に消えていった。

巨龍の心臓から零れ落ちた、もう一つの太陽ーーレティシアを日光から庇うように蘭丸が抱きとめて、四人は高らかに拳を上げた。

 

 





次回、四章最終話です。

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