問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん

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今回は蘭丸君があいつと相見えます。

あいつとは蘭丸君を狙っている変態です。


最悪の再開

 

 

“アンダーウッド”平原では少数ながらも幻獣たちが巨人族の襲撃に備えていた。その部隊には、蘭丸の姿があった。

黒ウサギたちは蘭丸に城部隊に加わらないのかと問われたが、状況がひと段落してからと地上に残った。

蘭丸は隣で緊張感丸出しのジンに声を掛ける。

 

「そんなに緊張するなよ。お前の指揮力はかなりのもんだ。だから十六夜もお前に託したんだろ」

 

「で、ですがやっぱりこういうのは蘭丸さんの方が適任ではないのですか」

 

「まあ俺もやることやったら城にひとっ飛びだよ。それに俺に頼ってたらお前らも成長できんだろ?」

 

それは正論である。蘭丸は武力、知力、その他において“ノーネーム”でも群を抜く実力者で、単独でも魔王を圧倒出来るであろう。それは蘭丸も自覚している。

しかしそれ故に組織として強くなるために蘭丸は基本的にはジンや十六夜たちに一任しているのである。

 

「それに………っとそろそろか」

 

えっ?とジンの声を掻き消すように、巨人族が襲撃してきた。

 

「ウオオオオォォォォォォォォ!!!」

 

人の倍はあるであろう大剣を振り回し大河を走り抜け堤防をなぎ払う。幻獣たちは慌て指揮系統は機能しないだろう。ジンもこの奇襲には予測できなかったらしい。

ただ、蘭丸だけは笑みを崩さなかった。

 

「全部予測どうりだ!馬鹿め‼︎」

 

蘭丸の一喝と共に巨人族の足下からは大爆発が巻き起こした。その爆撃で三十程の巨人族が消し飛んだ。

 

「ジン‼︎」

 

「はい!後は任せてください。ーーーーペスト!」

 

笛吹き道化の指輪から黒い風と共に現れるペスト。ペストは蘭丸の姿を確認すると、笑みをこぼした。

 

「あら、こんなところで再開するなんてね。世も捨てたものじゃないわね、蘭丸」

 

「ははっ、そんなことで世の中回ってたらどんだけ楽か」

 

蘭丸は三尺もある太刀を構えながら苦笑いする。ペストは少々頬を膨らませながらも黒い風で巨人族を黒死病に感染させていく。

 

「んで?リーダーはここからどうするつもりだ?」

 

「はい。まず巨人族はペストがいれば問題はありません。問題は敵に奪われた“バロールの死眼”をどう攻略するか……」

 

ジンの言葉にペストは眉を顰めて驚く。

 

「まって。ということは敵は“バロールの死眼”をもってるの?」

 

「そうだ。アレを放置したら危険だ。俺も全力を出さないと対抗出来ないかもな」

 

「……あの時貴方は黒死病にかかってて助かったわ。やっぱり貴方はバケモノだわ」

 

「それですが、僕に考えがあります。ここは『バロール退治』の伝承をなぞろうかと」

 

ジンが黒ウサギに目配せする。黒ウサギも閃いたようにウサ耳もピクンと動く。

 

「もしかして、黒ウサギの出番でございますか?」

 

「うん。黒ウサギの、所持する“マハーバーラタの紙片”ーーー帝釈天の神槍なら“バロールの死眼”を討ちぬけるはずだ。伝承が確かならケルト主神が放った槍も必勝の加護を受けた物だった筈だから」

 

ムッと眉をひそめるペスト。彼女もあの神槍には痛い目を見ている分思い出したくないのだろう。

 

「魔王バロールを倒す方法は、開眼した死眼を“神槍・極光の御腕(ブリユーナグ)”で貫くというもの。その代行を帝釈天の神槍でやろうと思う。………出来るかな、黒ウサギ」

 

「Yes!任されたのですよ」

 

シャキンとウサ耳を立たせ張り切る黒ウサギ。

 

「それじゃあ作戦はまずはペストと飛鳥さんと蘭丸さんの三人で巨人族を。そして敵が“バロールの死眼”を開眼させたら黒ウサギの帝釈天の神槍でトドメを刺す。………どうかな?」

 

ペストは一瞬だけ意外そうな顔を見せたが、すぐに悠然とした笑みで飛鳥と黒ウサギ、蘭丸を見た。

 

「そう。蘭丸のせいですっかり忘れていたわ。貴方たちにはこの化け物ウサギがいるのだったわね」

 

「ば………⁉︎」

 

「それじゃあ赤い人。蘭丸。行きましょう」

 

「飛鳥よ。ちゃんと名前で呼びなさい」

 

「そっ。気が向いたらね」

 

そう言うとペストは黒ウサギたちとは別れ巨人族を迎え撃つために黒ウサギたちと分かれる。

蘭丸も太刀を構え巨人族へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

とその時、背後から強烈な殺気を感じ取った。

 

「はっはぁ‼︎ようやく見つけたぜ!」

 

「⁉︎」

 

その男の蹴りを蘭丸は裏拳で防ぐ。その衝突で地面にはクレーターが出来ていた。男の蹴りを払い、一度距離をとる。

 

「……チッ!生きてたのかよ。黒瀬!親父のやつ、何仕留め損ねてんだよ」

 

「ああ、俺も悪運が良かったよ。あの時は死んだかと思ったぜ」

 

その男、黒瀬は笑いながら話を続ける。

 

「だがある連中のおかげでなんとか命を取り留めてな。俺はお前を足止めするように頼まれたのでな。お前の力を貰うついでにさせてもらうぜ!」

 

「お断りだ変態‼︎」

 

蘭丸は第三宇宙速度で黒瀬の下へ駆ける。そして黒瀬の腹部に拳を入れる。その拳は空間を砕く程の威力である。黒瀬は吐血しながらも笑みを浮かべていた。

 

「へへ、いいぜこの力だ!俺が望む力はよぉ‼︎」

 

その言葉と同時に黒瀬は蘭丸の背後に回っていた。蘭丸は回し蹴りの要領で黒瀬の蹴る。だが黒瀬はそれをすり抜け、蘭丸を殴りつける。蘭丸はそれを食らい、地面を転がる。

 

「……チッ‼︎一部とはいえ俺の能力奪ってればそんなことは朝飯前だよな」

 

「こんなんじゃあ足りねえよ。お前の全てが欲しいんだよ!だから、お前の力をよこせぇ‼︎」

 

言うや否や黒瀬は、黒い光線を放ち、蘭丸も同じものを放つ。性質が同じとはいえ、馬力は蘭丸の方が上である。

 

黒瀬はそのまま後退する。黒瀬が顔を上げると蘭丸の太刀が喉元に突きつけられていた。

 

「最後に言い残すことはないか?黒瀬」

 

蘭丸が冷酷な目で死刑宣告を告げる。黒瀬はニヤリと笑うと

 

「ククク……ひゃひゃひゃひゃひゃ‼︎」

 

狂ったように笑った。蘭丸の顔から笑みは消えた。

 

「何がおかしい‼︎」

 

「いやーその台詞そっくりだぜ。そう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の母親にな‼︎」

 

その非常な言葉に蘭丸の手はわなわなと震えていた。

 

「あんなに馬鹿なやつは初めて見たぜ。あの時はマジで笑えたわ」

 

「だ………れ…」

 

そして

 

「?」

 

蘭丸の表情は

 

 

「黙れこれカス野郎‼︎」

 

今まで見たことのないほど怒っていた。





蘭丸君が途轍もなく怒りました。

次回は過去編をお送りします。

では誤字、感想お待ちしております。

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