問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん
「♪〜♪〜」
“円卓の騎士”から帰省した蘭丸はキッチンで調理をしていた。
「あーあ、あの槍どうせならそのまま白夜叉から貰えばよかったな」
蘭丸の使用していた“ロンギヌスの槍のレプリカ”は白夜叉から借りた武器であり。白夜叉から貰うかと聞かれたがそれを断ったが今となってそれを後悔していた。
「なんだ。とても良い香りがするるなリリ……蘭丸⁈何故お前が⁈」
リリがいると思っていたレティシアは蘭丸と突然鉢合わせたため慌てていた。
「いや、ただアップルパイ作ってただけだぞ?おやつがてらにな。ちょうど完成したところだし少し味見するか?」
と一口サイズに切ったアップルパイをフォークに刺しレティシアに差し出す。
(こ、これは………「アーン」のシチュエーションか?///)
レティシアが慌てる表情を見て蘭丸は首を傾げる。
「どうした?アップルパイ嫌いだったか?」
「い、いや。頂くよ」
レティシアはフォークに刺さったアップルパイを口に運んだ。蘭丸はどうだ?と言わんばかりの表情でレティシアを見る。
「おお!これは美味だな!パイ生地のサクッとした食感と林檎の甘い香りが広がってくるな」
「そうか。そいつは良かった。………帰ってきたんなら覗き見はやめろよなお前ら」
その言葉にレティシアはビクッとキッチンの入り口を見るとそこから十六夜、飛鳥、耀の三人がニヤニヤとした表情と涎を垂らしてアップルパイを凝視していた。
「ヤハハハ!お楽しみは覗くから面白いんだろ?」
「その通りよ蘭丸君」
「……アップルパイ…」
「仲良いなお前ら……」
十六夜と飛鳥がニヤニヤと耀が涎を垂らしている。蘭丸は溜息を吐いて、大量のアップルパイをバスケットに入れ、キッチンを出る。
「…///」
レティシアは熱くなった顔を水で洗った。
**
昼食とアップルパイを食べ終え、リリは後かたずけに向かい、四人とレティシア、ジンの六人は大広間に集まっていた。
「あれ?そう言えば黒ウサギは?」
「先ほど“サウザンドアイズ”の店に向かったところだ」
「審査基準は聞いていますので僕とレティシアさんだけで十分です。あとは十六夜さんの報告だけですから」
コホン、とジンは少し気取った咳払いをして進行を始める。
「細かい戦果は後に回して、まず大きな戦果から、飛鳥さんは牧畜を飼育するための土地の整備と、山羊十頭を手に入れたそうです。飼育小屋と土地の準備が整い次第、“ノーネーム”に連れてくるそうです」
「ふふ、子供達も『山羊が来る!』『乳がいっぱい来た!』『これでチーズが作れる』と喜んでいた。派手な戦果や功績ではないが、コミュニティとしては大きな進展だと思うぞ」
ふふんと髪をかきあげる飛鳥。華やかな戦果とは言えないが組織としてはかなりの戦果である。
「次に耀の戦果だが……ふふ、これはちょっと凄いぞ。火龍誕生祭にも参加していた“ウィル・オ・ウィスプ”が、わざわざ耀と再戦するために招待状をお送りつけてきたのだ」
「するともしかして、例の三枚の招待状の一つは……」
蘭丸の疑問に、ジンがコクリと頷いた。
「その通りです。“ウィル・オ・ウィスプ”主催のゲームに勝利した耀さんは、ジャック・オー・ランタンが制作する炎を蓄積できる巨大なキャンドルホルダーを無償発注したそうです」
「なのでこれを機に、竈かまど・燭台しょくだい・ランプといった生活必需品を“ウィル・オ・ウィスプ”に発注することになりました。コッチは中々に値が張りましたが……先行投資と思えば悪くありませんし、蘭丸さんのおかげでお金にも少し余裕が出来ましたので、本拠内は恒久的に炎と熱を使うことができます」
「へえ、金銭のゲームが多い下層のゲームでなかなかの戦果じゃねえか」
「ああ、素直に凄いと思うぞ」
「そういう二人の戦果は?」
「ああ、俺らの戦果は“サウザンドアイズ”にある。黒ウサギもいるし、ちょうどいいだろ?」
こうして蘭丸達は大広間を後にし、“サウザンドアイズ”の支店へと移動した。
**
“サウザンドアイズ”の支店の店先に女性店員が竹箒で散乱していた花弁を掃いていた。彼女は彼らの顔を見ると嫌そうな顔をした。
「……また貴方達ですか」
「そういうお前はまた店先の掃除か。よく飽きないな」
「ふん、仕事に飽きを感じるなど贅沢者の言葉ですね。それに私は新参ですが、二一○五三八○外門支店を預かる立場に在ります。押し入り客を拒み、資格のあるお客様だけを……」
「「「お邪魔します」」」
「帰れ‼︎」
スルーした三人に八重歯を見せながら、竹箒を振り回すがその切っ先を十六夜が掴んだ。
そこに少し遅れて蘭丸がやって来た。
「おいおいなにやってるんだよ。店員さんに迷惑かけんな」
蘭丸は溜息交じりで十六夜の手を掴む。
「ヤハハハ!ついな」
「おお、すまんすまん。小僧達が来ることを伝えておらなんだな。ちょいと重要な案件がある故急ぎで通してやってくれ」
暖簾の奥から聞こえるオーナーの声には逆らえない女性店員は道をあけた。
「……………いらっしゃいませ。どうぞお入りください」
十六夜達は暖簾をくぐり店内に入る。
「すまんな。あいつら悪気しかなくてな」
蘭丸は申し訳なさそうに謝る。レティシアとジンも続けて頭を下げる。
「…いいえ。蘭丸さん達もどうぞお入りください」
「ああ…ん?糸くずついてるぞ?」
「「あ!///」」
蘭丸は何食わぬ顔で肩に着いた糸くずをとった。そのいきなりの行為に女性店員は顔を赤らめた。
「じゃあお邪魔…」
「「黙れこの駄神‼︎」」
蘭丸の声を遮り、叫び声と轟音が彼らの耳を支配した。
「え?」
「なんだ?白夜叉が何かやらかしたのか?」
蘭丸とジンは走って音の方へと向かった。女性店員とレティシアは呆然としていた。
**
蘭丸達が駆けつけた時、その光景を見て蘭丸は言葉を失った。
「黒ウサギ………?と誰?」
「ひゃん!蘭丸さん⁉︎///」
大胆に胸元が開いたミニスカの着物にガーターソックスという統一感の無い姿を蘭丸に見られた黒ウサギは本気の涙を浮かべた。
「おお、来たか蘭丸。どうだ?このエロい黒ウサギは?」
バキィ‼︎
蘭丸は白夜叉を蹴りで中庭に放り込んで黒ウサギとその女性にタオルをかけた。
「取り敢えず、着替えな。特に黒ウサギ。そんな全身濡れてたら」
「何⁈黒ウサギが濡れ濡れだと⁉︎」
ズドオォォォォン‼︎と豪雷が白夜叉を貫いた。
**蘭丸side
黒ウサギともう一人の女性、“トリニスの滝”の主、白雪姫は元の服に着替えた。あの衣装はこの外門に作る新たな施設のためらしい。……どんな施設かはあえて考えないとして……
それの為に潤沢な水源の確保の為に白雪の下に十六夜を行かせたらしい。
「さて白夜叉。ゲームクリアの報酬を渡してもらおうか」
「ふふ、分かっておる。“ノーネーム”に託すのは前代未聞だがこれほどの功績を立てたのだ。他のコミュニティも文句は有るまい」
白夜叉がパンパンと小さな柏手を打つと一枚の羊皮紙が現れ、白夜叉がそれにサインを書きジンに渡した。
ジンはそれを見て絶句していた。
「こ、これは……まさか……⁉︎」
「どうしましたかジン坊ちゃん?」
黒ウサギもジンの後ろに回り込みそれを見ると黒ウサギも絶句していた。
あ!そう言えばなにか言ってたような………
「ちょい見して!」
俺はつい取り上げそれを読んだ。
【二一○五三八○外門 利権証
*階層支配者は本書類が外門利権証であることを保証します
*外門利権証の発行に伴い、外門の外装をコミュニティの広報に使用する事を許可します
*外門利権証の所有コミュニティに右記の“境界門”の使用料の八○%を納めます
*外門利権証の所有コミュニティに右記の“境界門”を無償で使用する事を許可します
*外門利権証は以後、“ ”のコミュニティか地域支配者(レギオンマスター)”で有ることを認めます
“サウザンドアイズ”印】
…外門利権証……こいつは一番の手柄だな。これには勝てんわ。二人もこれには負けたらしい。流石は十六夜だな。
「……黒ウサギ?」
黒ウサギはジン言葉に反応しないで俯いて震えていた。そしてゆっくりと立ち上がり、十六夜は燻しげな顔をしてるな。
そしてガバッと黒ウサギは十六夜の胸に飛び込んだ……飛び込んだ⁈
「凄いのです!凄いのです!凄すぎるのですよ十六夜さん!たった二ヶ月で利権証まで取り戻して頂けるなんて……!本当に、本当にありがとうございます!」
黒ウサギ……本当に嬉しそうだな。なんか少しモヤッとしたが……寝不足か?
**蘭丸sideout
**十六夜side
(おお、こりゃ役得だが)
これは蘭丸の仕事の筈だぜ?なのにあの野郎ニコニコしやがって。あいつのことだから黒ウサギか嬉しそうだとか思ってんだろうが……ん?いや面白いことになりそうだな
「そういや蘭丸の戦果はまだだったな。教えてくれよ」
「そう言えばそうだったな。白夜叉」
「おお、そうだったな。ホレ、こいつと約束通りのこれだ」
白夜叉は何か気を感じる杯と小さな袋が二つか………袋はともかくあの杯は何か凄い物そうだな。
「じゃあ俺も戦果の発表だな。まずこの袋は商業コミュニティへの受講と取り引きで稼いだ銅貨二千枚とこれは……“円卓の騎士”のギフトゲームで手に入れた聖杯と……土地の利権証」
………こいつサラッとすげえ戦果上げてるじゃねえか。見ろよお嬢様と春日部に至っては口開いて呆然としてるじゃねえかよ!
「“聖杯”はコミュニティに安置して魔除けに使うとして。土地で俺の店を作る予定だ。これでコミュニティの財政も助かるな」
ハッ!やっぱこいつはとんでもねえぜ!こいつといつか戦いたいもんだぜ。
「ら、蘭丸さん!蘭丸さんも凄いのです!」
今度こそ黒ウサギが蘭丸に抱きついた。おしっ!作戦成功だ。だが白夜叉が満足してるあいつも惚れてんじゃねえのか?
「…おい白夜叉。お前は?」
「いや、私は下世話の方に回ろうと思ってな。それの方が面白いしな」
ヤハハハ!確かにな暫くはこの光景を見るか。レティシアは赤くなって固まってるし、あの鈍チート野郎は面白いぜ。
ちょっと最近グダグダです………
白夜叉はサブヒロイン兼下世話担当二号(ちなみに一号は十六夜です)になりました。彼女をよろしくお願いします。
では誤字、感想、お待ちしております。