問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん
決勝戦開始までもう僅かとなっている頃、会場では誰が優勝するか、その話し合いが行われていた。
「俺は“クイーンハロウィン”の剣士だと思うぞ?」
「いや、“天下泰平”の幸村じゃないのか?」
「やはりランスロット卿だろ。なんせ“円卓の騎士”の副聖騎士長だしな」
「“ノーネーム”の子もさっきは強かったがこのメンツ相手にはな……」
と流石に蘭丸は勝てない思っていた。いくら強くてもやはり“ノーネーム”というのは戦う前からそう決めつけられていた。
「さあ‼︎強者揃いの決勝戦、栄冠は誰の手に⁈それではプレイヤーの紹介です。まず“クイーンハロウィン”の寵愛者、“仮面の騎士”ことフェイス・レス‼︎」
顔の半分を舞踏用の仮面で覆っている女性の騎士、フェイス・レスは淡々と歩み出る。
「そして!“天下泰平”の二番隊隊長!その気迫から“赤鬼”と称される、真田幸村‼︎」
そして、真田の家紋と同じ六文銭のハチマキを巻き、身軽そうな格好の真田幸村は会場に手を振りながら登場している。
「そして、我ら“円卓の騎士”副聖騎士長、ランスロット卿‼︎」
ランスロットの登場に一番会場が盛り上がった。ランスロットは銀の鎧を見にまといランスを抱えていた。
「最後は、予選ブロックを圧倒的な強さで勝ち上がった。今回の台風の目となる存在!“ノーネーム”の二宮蘭丸‼︎」
蘭丸にも割れんばかりの歓声がかけられた。少なくとも彼が“名無し”であると馬鹿にする者はいない。
「さあー‼︎決勝戦。開始です‼︎」
ジャーン‼︎
ドラの音を合図にフェイス、幸村、ランスロットの三人は一斉に蘭丸へと向かった。
「へ?」
キィィン!
「おおっと⁉︎いきなり蘭丸選手を狙い始めた!これは蘭丸選手を先に沈めてしまおうということでしょうか⁈」
だが蘭丸も、三人の攻撃を槍一つで防ぐ。そして三人を振り払うと不機嫌そうに声を上げる。
「おい!いきなり三人がかりなんて、予選と言い、お前ら俺に何の恨みがあるんだよ‼︎」
その言葉にフェイスは銀色のポニーテールを靡かせ、蛇蝎の連接剣を構える。
「恨みはありませんよ。ただ戦略的に貴方を潰すのが一番早いかと」
幸村も三叉の槍を乱舞し、型を整える。
「某も同じでござる!」
ランスロットは無骨に頷きながらランスを構える。
「……覚悟‼︎」
またもや三人は蘭丸に襲いかかる。それに蘭丸はキレた。
「……っあぁぁぁ‼︎めんどくせぇ!こうなったらお前ら全員纏めて叩きのめしてやるよ‼︎」
蘭丸は声を荒らげると槍を振る。振った後には鎌鼬が出来ており、その鎌鼬は空間を飲み込んで行く。堪らず三人は防御の体制に入る。
……が防ぎきれないと判断した三人はそれを躱す。すると客席はスッパリと裂けた。幸いそこに観客はいなかったがその威力にフェイス、幸村、ランスロットは冷や汗をかいていた。
(今のはまともに受けていたら一撃でやられていたでしょうね)
(それにこのゲームの契約が無ければ胴体は繋がっていなかった…)
(…なるほど…こいつはヤバイな…)
「オラァ‼︎どんどんいくぞ‼︎」
さらに蘭丸は三人一斉に倒すつもりで突っ込む…と見せかけて二体分身を出現させ、一体を幸村に、一体をランスロットに向かわせた。
そして自身はフェイスの下へ向かった。
フェイスは剣を居合い切りの要領で抜刀するが蘭丸はそれをあっさりと躱す。フェイスはもう一撃を繰り出すが蘭丸の槍に阻まれる。
(この間合いにおいての槍は不利なはず、なのになぜわざわざ……っ‼︎まさか‼︎)
フェイスが警戒したこと、それは蘭丸の槍術以上の威力のある接近戦である。その一撃を食らってはただじゃあすまないと感じ取ったフェイスは後方にステップする。
だが蘭丸はニヤリと笑い、
「かかったな!」
「⁈」
蘭丸は槍を捨てると太刀に持ち帰るとフェイスの鎧の隙間に太刀を斬りつけた。それによりフェイスのバッチは砕け、フェイスの敗北が決まった。
「…まいりました。完敗です」
「そうでもないさ」
蘭丸はフェイスをねぎらい他の二人を見ると分身は倒されていた。
「蘭丸殿、御旗頂戴いたす!」
「殺しはご法度だぜ?」
幸村の槍を槍で受け止める。そして幸村は高速で槍を突く、蘭丸はそれを簡単に躱す、幸村は何度も槍を突くが蘭丸には当たらない。
「クソッ!……」
「今度はこっちだ!」
蘭丸は槍を掻い潜ると首元に蹴りを食らわせた。吹き飛ばされた幸村はそのまま起き上がらず失格となった。
「ゆ、幸村選手ここで失格‼︎残るはランスロット卿と二宮選手だけ!さあ、この勝負、どちらが勝利を収めるか⁉︎」
ランスロットと蘭丸は互いに一定の距離をとっていた。
「…二宮蘭丸。その槍さばきに体術、尊敬に値する。俺はお前に敬意を表し、一撃で鎮める」
ランスロットはランスを捨て、ギフトカードから剣を取り出した。
それを見て蘭丸はその剣に目を奪われていた。
「それは…アロンダイトか?」
「そうだ、どんなに刃を交えても刃こぼれしない。エクスカリバーに並ぶ名剣だ」
ランスロットはアロンダイトを蘭丸に振り下ろす。蘭丸は槍で迎え撃つが、槍は真っ二つに折れてしまった。
今まで戦ってきたが蘭丸の槍はなんの恩恵も宿っていないただの槍であった。
「あら?俺ちまったか…」
蘭丸はおどけるように肩を竦める。ランスロットはアロンダイトの刃先を蘭丸に向ける。
「どうやら俺の勝利のようだな」
「まさか、俺も切り札を使わせてもらう」
蘭丸はギフトカードを掲げ、槍を召喚した。その槍を見てランスロットは驚愕した。
「そ、それは“ロンギヌスの槍”⁈」
「そ。まあもちろんレプリカだけどな」
蘭丸はロンギヌスを軽々と振り回す。
“ロンギヌスの槍”はキリストの死を確認するために使われた槍と呼ばれ、その槍を持つ者は世界を支配する力を持つと言われている。そのレプリカは世界を支配する力はないが神力が弱量宿っている。
「く、くっそおぉぉぉ‼︎」
「終わりだランスロット‼︎」
ロンギヌスはランスロットを貫き、ランスロットのバッチが砕けた。
「ラ、ランスロット卿戦闘不能だぁぁぁぁ‼︎よって優勝は“ノーネーム”の二宮蘭丸‼︎」
蘭丸の優勝に会場は今日一番の大歓声が起きた。その中央に立つ蘭丸はまだ余力を残している。
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「これより優勝者に聖杯と希望する恩恵の授与を行う!“ノーネーム”の二宮蘭丸は前へ!」
アーサーの進行により表彰が行われていた。蘭丸は聖杯を受け取った。
「蘭丸よ。お前の望む恩恵は何だ?」
「ああ、俺は…………」
「うむ、分かった。その恩恵は出来次第“サウザンドアイズ”に送る。楽しみにしておけ」
アーサーはニヤリと笑う。それにつられ蘭丸もニヤリと笑った。蘭丸は聖杯をギフトカードに収納すると、空を見て、十六夜達の事を考えていた。
(さて、あいつらはどんな成果を上げてるんだろうな)
蘭丸はそれを楽しみに思いながら会場を後にした。
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