問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん

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テスト勉強の合間に投降しました。




審議決議

 

 

 

 

「それでは、これよりギフトゲーム、『The PIED PIPER of HAMELIN』の審議決議を執り行います」

 

黒ウサギの宣言により、審議決議が始まった。ホスト側には蘭丸が接触した斑少女とジン達が接触した白装束の女性、十六夜が接触した軍服姿の男である。

対するプレイヤー側には“サラマンドラ”からサンドラとマンドラ。“ノーネーム”から十六夜、ジン、蘭丸の計五名である。

 

「まず、ホスト側に問います。今回のゲームですが…」

 

「不備は無いわ」

 

と斑少女は黒ウサギの質問を遮り、不備は無いと主張した。

 

「…受理してもよろしいので?黒ウサギの耳は箱庭の中枢とも繋がっているのですよ?」

 

「ええ、それを踏まえた上で忠告しておくけど、私たちは今無実の疑いでゲームを中断されている。貴女は神聖のギフトゲームに横槍を入れた。此方の言いたいこと、わかるわよね?」

 

「不備が無かったらそっちに有利な条件でゲームを再開させろと?」

 

蘭丸は斑少女に聞き返す。

 

「そんな所ね。ルールを加えるかは後で考えましょう」

 

「分かりました……黒ウサギ」

 

黒ウサギは耳をピクピクと動かせ箱庭の中枢と連絡をとっている。暫くして黒ウサギは神妙な顔を浮かべている。

 

「箱庭の中枢から通達が届きました。今回のゲーム、不備不正はありません。白夜叉様の封印も正当なルールでの封印だそうです」

 

「当然ね。ルールは現状維持ね。次は再開の日取りを決めましょう」

 

「日を跨ぐと?」

 

サンドラは不思議に聞き返す。それもそうだろう、わざわざ不利なプレイヤー側に時間を与えるのだから。

 

「最長でいつまで伸ばせるの?」

 

「え?最長ですか?そうですね…今回の場合だと、一ヶ月位かと」

 

「なら、一ヶ月で手を打ちましょ……」

 

「「「待ちな(待ってください!)(ちょっと待った)」」」

 

今度は十六夜、ジン、蘭丸の三人が斑少女の言葉を遮る。

 

「何?時間を与えてもらうのが不満?」

 

斑少女はあからさまに嫌そうだった。

 

「いや、有難いぜだけど場合による。俺は後でいい。御チビか蘭丸、先に言え」

 

十六夜は二人を一瞥する。

 

「俺もいい、多分ジンと言うことは同じだろうしな」

 

蘭丸もジンの方を見る。ジンは一瞬驚いた様にするが、直ぐに相手に視線を変える。

 

「ホストに問います。貴女の両脇にいる男女が“ラッテン”“ヴェーザー”だと聞きました。そして闘技場に現れた白い巨兵はシュトロムだと。となると、貴女の名前は“ペスト”では無いですか?」

 

ジンの言葉に斑少女、ペストは目を開いて驚いた。

 

ペスト…黒死病の名を持ち、その高い致死性で十四世紀にヨーロッパで八千万人の死人を出した人類史上最大の疫病

 

「そうか、だがらギフトネームが“黒死斑の魔王”(ブラック・パーチャー)!」

 

「ああ、間違いない。そうだろ魔王様?」

 

十六夜はニヤリと笑う。

 

「ええ、そうよ。ねえそこの貴方?貴方の名前とコミュニティは?」

 

「…“ノーネーム”のジン=ラッセルです」

 

ペストも少し驚いた表情を浮かべていた。まさかそこまでの明確の頭脳の持ち主が“ノーネーム”であったのだ。

 

「覚えとくわ。だけと確認が遅かったわね。私達はゲーム再開の日取りを左右できると言質を取ってるわ。勿論、参加者の一部に病原菌を潜伏させている。ロックイーターのような無機生物や悪魔でもない限り発症する、呪いそのものを」

 

「ジャ、ジャッジマスター‼︎彼等はゲーム中断時に意図的にゲーム説明を伏せていた疑いが…」

 

「駄目ですサンドラ様‼︎もし彼等が説明を伏せていたとしても、彼等にその説明責任はありません!また不利なルールを押し付けられるだけです!」

 

サンドラは悔しそうにジンの言葉を受け入れる。

 

「ねえ、此処にいる全員が主力って事でいいの?」

 

突然ペストが聞いてきた。

 

「ああ、正しいと思うぜ」

 

ペストの言葉にヴェーザーが答える。

 

「ならこうしましょう。此処にいる全員と白夜叉が“グリムグリモワール・ハーメルン”の傘下に入る。それで他のコミュニティは見逃してあげるわ」

 

「なっ?」

 

「私、貴方たちのこと気に入ったわ。サンドラは可愛いし、ジンは頭良いし。それに……」

 

とペストは蘭丸を凝視する。

 

「ん?俺?」

 

「そうよ。貴方は強いし、私好みのイケメンだし」

 

淡々と話すペストの頬にはうっすらと赤みを帯びていた。

 

「それは褒め言葉として受け取っておくよ」

 

蘭丸はフッと笑ってそれに応じる。

 

(ヤハハハ…まさか魔王にまで惚れられるなんてな)

 

(蘭丸さん…確かに蘭丸さんは結構…いえ、かなり魅力的な方ですが…まさか魔王まで蘭丸さんの事を……」

 

十六夜は不謹慎だと思いながらもこの状況を笑っている。

黒ウサギも声には出さず落ち込んでいた。

 

「私の捕まえた赤いドレスの子も良い感じですよ♪」

 

「⁈」

 

ラッテンの言葉で飛鳥が魔王側に捉えられている事が分かった。

 

「ホストに問います。“グリムグリモワール・ハーメルン”は新興のコミュニティではないかと聞きましたが、どうなのですか?」

 

「答える義務はないわ」

 

ジンの質問に対しペストは答えない。

 

「新興のコミュニティだから優秀な人材が欲しい。どうだ?違うか?」

 

「………」

 

「答え無いということは肯定と捉えさせてもらうぞ?」

 

蘭丸は腕を組みながらペストに確認する。

 

「だったら?私達が譲る理由は無いわ」

 

「いいえ、あります。何故なら貴女達は僕たちを無傷で手に入れたいはずですから。もしも、一か月も放置されたら、きっと僕たちは死んでしまいます。死んでしまえば手に入らない。だから、貴女はこのタイミングで交渉を持ち掛けた。実際に三十日が過ぎて優秀な人材を失うのを惜しんだんだ」

 

ジンは物怖じせずに話を進める。その目は立派なリーダーらしくなっていた。

 

「なら、二十日後にすればいいだけよ。それなら、病死前の人材を得ることはできるわ」

 

「なら、発症したものを殺す。例外は無い。サンドラだろうと“箱庭の貴族”であろうと私であろうと殺す。“サラマンドラ”の同士に、魔王へ投降する脆弱なものはおらん」

 

「おいおいマンドラ。そんな事をする必要は無い」

 

 

蘭丸は自決覚悟のマンドラを宥める。

 

「黒ウサギ。ルール変更はまだ可能か?」

 

「へ?……Yes!」

 

「こうしようぜ“黒死斑の魔王”俺達はルールに“自決、同士討ちを禁ずる”を付け加える。だから再開を三日後にしろ」

 

「却下。二週間よ」

 

十六夜の提案はバッサリと切られる。

 

「なら黒ウサギをつける。黒ウサギは“審判権限”を持っているからゲームに参加できない。だがお前らが参加を認めれば手に入る可能性は高い。どうする?“箱庭の貴族”を手に入れるチャンスだぜ?」

 

ペストは暫く考える仕草を取る。そして目を開けると

 

「十日よ。これ以上は譲れない」

 

「「ゲームに期限をつける(つけます)」」

 

と蘭丸とジンが同時に話す。蘭丸は今度は自分に言わせてくれという表情をジンに目配せをする。ジンもそれを了承した様に頷く。

 

「ゲーム再開は一週間後。ゲーム終了はその二十四時間後。終了と同時にホスト側の勝利とする」

 

「本気?蘭丸。こっちの総取りを覚悟するの?」

 

「ああ、一週間は黒死病の症状が現れるギリギリの時間。それ以上は精神的にも、肉体的にも俺等は持たないだろう。だからプレイヤー側は無条件降伏を呑む」

 

ペストは不満そうに顔をしかめる。自分の思い通りにいかずこちらに流れが傾いているのが気に食わないのだろう。

しかし、条件的には主催者側が有利。

 

「ねえ蘭丸。もし一週間生き残れたとして、貴方は私に勝てるの?」

 

「ああ、勝てるさ」

 

ペストの質問に蘭丸は即座に答える。

 

「そう……………」

 

ペストは立ち上がると蘭丸に不敵な笑みを浮かべる。

 

「宣言するわ。貴方は必ず、私の物にする」

 

「楽しみにしておくさ」

 

それに蘭丸も不敵な笑みを浮かべて返す。

 

「お待ちください‼︎」

 

黒ウサギの叫び声に全員が驚いて黒ウサギを見る。

 

「蘭丸さんは……渡しません‼︎」

 

その言葉にシーンとなった。黒ウサギも自分のやったことに気付き、

 

「〜〜///‼︎こ、これにて審議決議は終了します!なお休止期間中は双方ともに相手への干渉は禁止です‼︎」

 

と黒ウサギは勝手に審議決議を終了し、いつも以上のスピードでその場を去った。

 

「…………あいつは……すまんな。あれでも“箱庭の貴族”だからさ」

 

蘭丸はペストに謝罪した。

 

「ええ、構わないわ。それにしても貴方……鈍いのね」

 

 

「は?」

 

「分からなくていいわそれじゃあ」

 

と言うとペスト達は本拠を後にした。

 

「どういう意味だ?それに黒ウサギはなんで俺に反応したんだ?」

 

蘭丸は本気で悩んでいる。やはり鈍いようだ。

 

「蘭丸…お前本気で言ってるのか?」

 

十六夜は半笑いで蘭丸に尋ねる。

 

「だったらどうだってんだ?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

「???」

 

蘭丸は本気で分かっていなかった。

 

そして皆は思った。

 

(コイツ…鈍過ぎる‼︎)

 

 




審議決議でも蘭丸の鈍さは健在です。

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