問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ?   作:ふわにゃん

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“火龍誕生祭”

 

「くあっ……」

 

明け方、まだ日が登らない程の時間に二宮蘭丸は目を覚ます。そこからトレーニングウェアに着替え、外に出るとストレッチを始める。

 

「さて、今日は腕立て五百と腹筋五百、スクワット五百に一時間半のランニングだな」

 

今日もいつもの通りのハードメニューから彼の一日は始まるのであった。

 

「ふっ!ふっ!ふっ!ふっ!……」

 

一時間半かけてゆっくりと筋トレをした後、蘭丸は“サラマンドラ”の街を走っていた。ちなみにそのスピードは一般的なランニングとは比にならない速さである。

 

「ふう〜。取り敢えず今日は此処までだな………ん?」

 

蘭丸は息を整える為に歩いていると、ネズミと道化師の描かれたステンドグラスであった。

 

「このステンドグラス……昨日言っていた“ハーメルンの笛吹き”のやつか……そう言えば、走っている間とかこの間黒ウサギと十六夜を止めた時にも数枚同じやつを見かけたが」

 

蘭丸は見覚えのあるステンドグラスを凝視している。出典コミュニティは“ノーネーム”と書かれていた。

 

(そう言えば展示品の輸送の手伝いをしてた時にも同じやつを見たな……確か…百枚位だっけかな?祭りが終わったら白夜叉にでも聞いてみよう)

 

蘭丸は疑問を胸の奥にしまい込み、“サウザンドアイズ”の支店へと向かった。

 

**

 

「蘭丸さん⁈どこへ行っていたのですか⁈」

 

戻ると黒ウサギが蘭丸に詰め寄って来た。だが蘭丸はまだ皆寝てると、黒ウサギを鎮めた。

 

「どこって、いつものトレーニングをやってただけだけど…」

 

蘭丸は黒ウサギが持っていた水の入っているコップを取るとそれを一気に飲み干した。

 

「あっ!」

 

「ん?どうした?」

 

黒ウサギが驚いたことに蘭丸も少し驚いた。蘭丸は水を飲んだだけで何を?と思っている。

 

(く、黒ウサギの飲み掛けの水を…///)

 

つまり蘭丸は間接キスをしていたのだ。

 

「ああ!これ黒ウサギが飲もうとしてたのか?悪い黒ウサギ!」

 

蘭丸は黒ウサギにコップを返すと直ぐに謝った。

 

「い、いえ……むしろボソボソ…………///」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「な、なんでもありません‼︎///」

 

黒ウサギは顔を真っ赤にしてその場を逃げる様に去った。

しかしその顔は少し嬉しそうなのは黒ウサギしか知らない。

 

蘭丸は何が起きたのか分からずその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長らくお待たせしました!これより火龍誕生祭のメインギフトゲーム“創造主の決闘”を行いたいと思います。進行、及び審判は“サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染みの黒ウサギが務めさせていただきます」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ‼︎月の兎が本当に来たあぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「黒ウサギイぃぃぃぃぃぃぃ‼︎お前に会う為に此処まで来たぞおぉぉぉぉぉ‼︎」

 

「今日こそ、スカートの中を見て見せるぞおぉぉぉぉぉ‼︎」

 

と狂った様に騒ぐ観客(当然男)に黒ウサギは笑みをうかべるも自慢の素敵耳をへにょりとさせていた。

 

「すごい人気だな。黒ウサギって」

 

「人気があるって言うの?あれ」

 

それを見て蘭丸は黒ウサギが人気があると勘違いしており飛鳥はそんな蘭丸に呆れていた。

 

 

「そう言えば白夜叉、黒ウサギのスカートを見えそうで見えない様にしたのはどういう了見だ?チラリストなんて趣味が悪過ぎる」

 

十六夜が不服そうに眉を寄せる。白夜叉は呆れながら笑う。

 

「やれやれ。おんし程の男が真の芸術を理解せんとはな。それではあそこの有象無象と変わらんな。所詮おんしもその程度の男なのか?」

 

「へえ、言ってくれるじゃねえか。つまりお前にはスカートの中を見えなくする事が芸術的になるのか?」

 

「「考えてみよ。おんしら人類の最も大きな動力源はなんだ? エロか? なるほど、それもある。だがときにそれを上回るのが想像力!未知への期待! 知らぬことから知る渇望‼︎小僧よ、貴様ほどの男ならばさぞかし数々の芸術品を見てきたことだろう!その中にも未知という名の神秘があったはず! 例えばそう!モナリザの美女の謎に宿る神秘性! ミロのヴィーナスに宿る神秘性!星々の海の果てに垣間見えるその神秘性!そして乙女のスカートに宿る神秘性!それらの神秘に宿る圧倒的な探究心は、同時に至ることの出来ない苦汁。その苦渋はやがて己の裡においてより昇華される。そして私は気づいた。真の芸術とは…己が宇宙の中にある‼︎」

 

「己が宇宙の中…………だと?」

 

十六夜は雷が落ちたかの様な驚愕の表情を浮かべている。

 

「そう!そしてそれは乙女のスカートの中も同じ事。見えてしまえば下品な下着も、見えなければ芸術だ!」

 

「見えなければ………芸術か‼︎」

 

「さあ若者よ。今こそ世界の真実を確かめようぞ。おんしならそこに辿り着けると信じてる」

 

「白夜叉…」

 

十六夜と白夜叉は双眼鏡で黒ウサギのスカートを追い始めた。そのやりとりをサンドラはなんとも言えない表情をしていた。

 

「し、白夜叉様?何か悪い物でも食べたのですか?」

 

「見るなサンドラ。馬鹿が移る」

 

「さて、そろそろ耀の試合が始まるぞ」

 

と蘭丸は既にそのやりとりを感心は無く耀を見ていた。

 

「ら、蘭丸……おんしも男ならそういう物に興味があったりしないのか?」

 

白夜叉は少し不安気に尋ねる。

 

「いや、大丈夫だ。俺はそう言うの気にしないし仮に大切な人が特殊性癖があっても俺は気にしないからな。安心して芸術を鑑賞してろ」

 

蘭丸はこう心に決めていたのだ。

 

“こいつらは流すのが一番”だと。

 

こうして“造物主達の決闘”が始まった。“ノーネーム”の相手は北の六桁のコミュニティである“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスとジャック・オー・ランタン出会った。

 

始めは耀のゲームメイクで戦況を優位に進めていたがアーシャの補佐であるジャックが耀の足止めをした。不死を持っているジャックに耀は勝てないと判断し、降参した。

 

 

 

 

 

 

 

「いやはやなかなかのゲームメイクだったのぅ」

 

「ああ、不死の相手によくやったよな」

 

「ええ、とても素晴らしいゲームだったわね」

 

「まあこれもいい経験になっただろうな」

 

四人はそれぞれの感想を述べていた。

 

「取り敢えず…………ん?っ‼︎おいおい!」

 

蘭丸が空を仰ぎながら驚く。それに続き十六夜達も空を仰ぐ。そしてその中の一枚の封書を取り読む。

 

【ギフトゲーム名 『The PIED PIPER of HAMELIN』

 

・プレイヤー

現時点で三九九九九九九外門、四○○○○○○外門の境界壁、舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ

 

・プレイヤー側ホスト指定ゲームマスター

太陽の運行者、星霊白夜叉

 

・ホスト側勝利条件

全プレイヤーの屈服、殺害

 

・プレイヤー側勝利条件

一、ゲーマスターの打倒

 

二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ

 

・宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

“グリムグリモハーメルン”印】

 

 

会場には一瞬沈黙が訪れたが直ぐに観客から叫び声が上がった。

 

「魔王が………魔王が現れたぞおぉぉぉぉぉ‼︎」

 

「来たか……」

 

蘭丸は表情を顰め、椅子から立ち上がった。




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