問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん
保存日時:2014年10月26日(日) 00:00
北側へ行く為に十六夜達は白夜叉に交渉すべく“サウザンドアイズ”の支店に来ていた。
「お帰りください」
店先で掃除をしていた女性店員に一蹴されていた。飛鳥は困った様に頭を抱える。
「そこそこの常連客なんだからもっと愛想良くてもいいのでは?」
「常連客とは店にお金を落としていってくれるお客様の事で毎度、換金しかしない者は取引相手と言うのです」
と飛鳥と女性店員が言い争っていると
「やっふぉぉぉぉぉ‼︎ようやく来おったな小僧‼︎」
嬉しそうな声を上げて、空中でスーパーアクセルを決めて着地した白夜叉。
「やれやれ、ぶっ飛んだ登場しか出来ないのかここのオーナーは」
十六夜は苦笑を浮かべながら白夜叉を見ていた。女性店員は頭を抱えていた。
「…招待ありがとう。でもどうやって北側に行こうか迷ってて…」
「よいよい、全部分かっておる。まずは中に入れ。条件次第では路銀は全て私が払ってやる。……秘密裏に話しておきたい事もあるしな」
白夜叉が一瞬ニヤリと笑う。
「それは面白いの?」
耀が白夜叉に問う。
「さあの。まあおんしら次第だ」
と問題児+ジンは白夜叉の私室に案内される。女性店員は不機嫌そうにそれを見ていた。
「さて本題に入る前に聞いておきたいことがある。おんしらが魔王関係のトラブルを引き受けているとの噂を耳にしたのだが本当か?」
「ええ、本当よ」
「それはコミュニティのリーダーとしての方針かジンよ」
白夜叉がジンの方を見る。
「はい。僕らは名も旗も無いのでこうして名を広めるしか方法がありません」
「ふむ、だがかなりのリスクを負うことになるぞ?」
「覚悟の上です。今の僕らでは上層には行くことが出来ません。だからこうして魔王に出向いてもらい、迎え撃つつもりです」
「まあその中で関係の無い魔王と戦うことになるがそれは望むところだ!と言うよりその方が面白いしな」
白夜叉に問い詰められていたが十六夜とジンの言葉を聞いて白夜叉は納得したかのように座り直す。
「そこまで考えとるなら良い。では、そのコミュニティに東のフロアマスターとして正式に依頼をしよう。よろしいかな、ジン殿?」
「は、はい!謹んでお受けします」
白夜叉のいつになく真剣な表情に戸惑いを見せるジンだがすぐに引き受ける。
「まず、北側の階層支配者(フロアマスター)の一角が世代交代は知っているか?急病で引退とか。此度の大祭は新たなフロアマスターである、火龍の誕生祭での」
白夜叉はさらに続ける。
「所でおんしらはフロアマスターについては何処まで知っておる?」
「私は全く知らないわ」
「私も」
「俺は少しは知ってる」
三人が三人それぞれの回答をした。十六夜に関しては流石博識であると言える。
階層支配者(フロアマスター)とは下層の秩序と成長を見守る者の事で魔王が現れた際には率先して戦う義務を設けられている。その義務と引き換えに主催者権限(ホストマスター)を与えられている。
「今回共同を依頼して来たのは北の階層支配者の一角、“サラマンドラ”のコミュニティでな」
「“サラマンドラ”⁈」
「知ってるの?」
「先代の時に親交のあったコミュニティです」
「ついでに言うと蘭丸は“サラマンドラ”にいるぞ」
「何?」
十六夜は驚く。
「あやつには私の代行として先に向かわせた。ついでにおんしらの事も売り込んでいるだろうな」
「それはそうと一体誰が火龍を襲名したのですか?」
ジンの補足
「次女のサンドラだ」
その名前にジンが驚く。
「そんな…っ‼︎彼女はまだ十一歳ですよ⁈」
「ジン君だって十一歳で私達のリーダーじゃない」
「それは…そうですが……」
ジンは恥ずかしそうに俯く。
「それで、今回の誕生祭は次代マスターのサンドラのお披露目も兼ねておる。じゃが、まだその幼さ故、東のフロアマスターの私に共同の主催者を依頼してきたと言うことだ」
「ちょっと待って。それなら他の北の階層支配者に頼むべきじゃないの?」
飛鳥ぎ疑問を白夜叉に向ける。白夜叉は困った様に頭をかく。
「それは…のう、少々わけがあってな」
「幼い権力者をよく思わない組織がある…そんな所だろ?」
「まあそれもあるが他にも色々と事情があっての…」
十六夜の台詞に否定とも肯定ともとれない言葉で返す白夜叉。
「ちょっと待って白夜叉。その話長くなる?」
耀が何かを思い出したかのような顔をしていた。
「そうだのう…短くてもあと一時間くらいかの」
マズイ!と言った表情の問題児達。ジンは立ち上がり
「白夜叉様!どうかこのまま「ジン君『黙りなさい!』」
飛鳥のギフトでジンは無理やり口を閉ざされた。
「白夜叉、今すぐ北側へ向かってくれ!」
「構わんが…内容は聞かなくてもいいのか?」
「構わねえ。事情は追い追い話す。……第一その方が面白い」
十六夜のセリフに白夜叉はニヤリと笑う。
「そうか面白いか…娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。ジンには悪いが、面白いならば仕方がないのう」
ジンは絶望仕切った顔をしている。
やはり不憫である。
白夜叉はパンパンと二回柏手を打つ
「ほれ、北側に着いたぞ」
「「「「は?」」」」
四人は何が起きたのか分かっていない。980000kmの距離を一瞬で移動したと言うのを信じられるはずがない。
十六夜達は直ぐに支店の外に出る。そこには赤壁の境界壁、鉱石で彫像されたモニュメント、ゴシック調の尖塔群のアーチ、巨大な凱旋門、色彩鮮やかなカットグラスで飾られた歩廊と東側とは全く違う景色が広がっていた。
「今すぐ降りましょう!あのガラスの様なものも見て見たいし。いいでしょう?」
飛鳥が目を輝かせている。
「ああ、構わんよ。続きは後にでも……」
「見つけたのですよおぉぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」
爆音を連れ黒ウサギが現れた。
「ふ、ふふ、フフフフ、ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方!」
黒ウサギのその様は帝釈天の眷属と言うより仁王そのものである威圧感があった。
「逃げるぞ‼︎」
「え、ちょっと、」
「待って私も…」
十六夜が飛鳥を抱えて逃走し、耀も遅れながらも空中に飛んで逃げようとするが黒ウサギに足を掴まれた。
「捕まえたのですよ耀さん!アトデタップリトオセッキョウナノデスヨ…!」
「りょ、了解」
黒ウサギの迫力に耀は怯えていた。そして黒ウサギは耀を白夜叉にぶん投げた。
「グハァ⁉︎おい黒ウサギ!おんし最近礼節をかいておらんか⁈これでも私は東側の階層支配者…」
「耀さんをお願いします。黒ウサギは他の問題児様方を捕まえなければなりませんので」
「そ、そうか…何かは知らんが…頑張れ黒ウサギ」
黒ウサギは街の方へと猛スピードで消えて行った。
今回は短めです。
蘭丸が出ていませんがそこは気にせず!
「一応俺主役だぞ?」
………そこは気にせず!
「はぁ……次回をお楽しみに」