問題児たちと時空間の支配者が異世界から来るそうですよ? 作:ふわにゃん
とある手紙
「くあ…」
艶やかな桃色のポニーテールの少年、二宮蘭丸(にのみやらんまる)は公園のベンチで欠伸をしていた。
「もう学校終わったからな…退屈だ」
彼は昨日高校を卒業して、退屈になっていた。ちなみに三年間皆勤である。
「仕方ない。今日の運勢でも見るかな」
蘭丸は何処からともなく空間に穴を開けて水晶玉を出現させて、それを手に取る。
「今日は健康運はまあまあで、金運もそこそこ、恋愛運は…相変わらず駄目…総合運は…駄目か。あーあ、凄い暇だ」
蘭丸は水晶玉を再び空間に穴を開けてそこに戻した。
「さてと、何処か遊びに…ってあれ?これは?」
蘭の目の前に、一通の手紙が降ってきた。その手紙を手に取り、その手紙を簡単に調べると『二宮蘭丸殿へ』と書いてあった。
「俺宛か…これが空からって…俺の様な空間や時間を操る力を持ってる奴でもいるのか」
彼は自分と同じ能力を持つ者がいるかもしれない事に驚きとまではいかないが興味が湧いていた。彼は空間を操作したり、空間を移動などができる。他にも予知能力や念動力などを使えたり、時間を操ったりなどができる。
「さてと…俺宛って何が書いてあるのかね」
蘭丸は手紙がどの様にして届けられたのかは考えるのをやめて手紙の中身を確認することにした。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの"箱庭"に来られたし』
「は?ギフト?箱庭?一体なんのこと…」
その瞬間、蘭丸は公園から姿を消した。
(どうしてこうなった…)
現在蘭丸は遥か高い上空に来ていた。そして同時に落下。
彼らが見たものは地平線と世界の果てを彷彿させる断崖絶壁。
そう、完全無欠の異世界だった。
箱庭二一〇五三八〇外門居住区画、第三六〇工房………
「上手く呼び出せたかな、黒ウサギ」
「ですねぇ。ジン坊ちゃん」
黒ウサギと呼ばれる、ウサ耳を着けている少女とジン坊ちゃんと呼ばれるダボダボのローブを来た少年はそれぞれ違う表情を浮かべていた。
「何から何まで任せて悪いけど…彼らの迎えをお願いできる?」
「承りましたのですよ!」
「本当に彼らの来訪は、僕らのコミュニティを救ってくれるのかな…」
ジンは不安な表情で黒ウサギに問う。
「さあ。ですが主催者曰く彼らは…
人類最高峰のギフトの保持者だと」
黒ウサギとジンがそんな話をしている時に彼らは落下中であった。
「「「ど、何処だ⁈此処」」」
突然のことにら以外の三人はそれぞれ個人差はあれど、驚きを述べていた。
(ふむ、緩衝材の様な者が空中に張っているのか…)
落下中のさなか、蘭丸は現状の把握をしていた。
(他にも三人いるな、見た感じ空を飛べそうにもなさそうだしな…)
蘭丸は他の三人を見て空中を飛翔したり浮遊したりできないと考える。
「……仕方ない…むん!」
蘭丸が三人に向けて集中を高める。そうすると三人の体は空中で止まった。
「え⁈」
「こりゃあ…」
「どうなってるの?」
三人は自分が空中で体が止まってる事に驚きを隠せないでいた。
三人はおそらくだろうと思われる落下中の少年を見ていた。
そう…落下中である。
「ふう…なんとか間に合っ…ぶぶっ⁉︎」
他の三人に気を取られすぎた蘭丸、自分の身の心配をすっかり忘れていてそのまま大きな水柱を立てた。
「「「あ…」」」
彼が水に落ちたのを境に他の三人もそれぞれ水に落ちた。
「し、信じられないわ!いきなり呼びたしといた挙句、空に放り出すなんて」
福を絞りながら不満をこぼす、お嬢様風の少女。
「右に同じだクソッタレ。下手すりゃその場でゲームオーバーだぜコレ!これなら石の中に呼び出された方が親切だ!」
金髪の学ラン姿の少年も同じ様に文句を言っている。
「いえ、石の中に呼び出されたら動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう…身勝手ね」
「此処…何処だろう」
猫を抱えた少女は小さめな声でつぶやいた。
「さあな、世界の果てっぽいのが見えたし、何処ぞの大亀の背中なんじゃねえの?」
四人は少し黙った後に金髪の少年が見回しながら話し始めた。
「一応確認しておくが、お前らにもあの変な手紙が?」
「ええ。それと、そのお前って呼び方訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気をつけて、そしてそこの猫を抱えている貴女は?」
「…春日部耀。以下同文」
お嬢様風の少女、久遠飛鳥の呼ばれ方に不満があるのか少しムッとした顔で簡潔に自己紹介を済ませるとまた猫よ方に向く。
「そう、よろしく春日部さん。そしてそこの野蛮で凶暴そうな貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪、快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用量と用法を守った上で適正な態度で接してくれよ、お嬢様」
金髪の少年、逆廻十六夜は飛鳥に明らかに喧嘩を売る様な物言いであった。
「そう、取り扱い説明書を用意してくれたら、考えてあげてもいいわ十六夜君」
「ヤハハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しておけよ」
流石はお嬢様と言ったところだろうか、十六夜の言葉を簡単に受け流した。
「それとそこの貴方は?」
飛鳥はジャケットを絞っている蘭に声をかけた。
「俺は二宮蘭丸、よろしく、飛鳥さん」
「そう…よろしく」
飛鳥は初対面でいきなり名前を覚えられたことに少し驚くがすぐに落ち着きを取り戻した。
**
(うわあなんだか問題児ばかりですねえ)
黒ウサギは物陰から四人を眺めていた。
心からケラケラと笑う逆廻十六夜
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せずと無関心を続ける春日部耀
湖で水晶玉を洗う二宮蘭丸
彼らが協力するとは到底思えなかった黒ウサギは静かにため息をした。
「んで呼び出されたのはいいけど、なんで誰もいないんだ?そろそろ説明役が出て来てもいい頃だろうが」
「そうね、説明なしじゃ動き用がないものね」
「…この状況で落ち着きすぎているのもどうかと思う」
「その言葉そっくりそのまま君に返すよ」
(ごもっともです‼︎もう少し慌ててくれないと黒ウサギが出辛いではありませんか)
「仕方がねえ。こうなったらそこに隠れてる奴にでも聞くか」
覚悟を決めて出ようとした、黒ウサギは心臓を掴まれた様にビクッと驚いて再び木に隠れた。
「あら、貴方も気づいていたの?」
「当然、かくれんぼじゃ負けなしだぜ。そこの猫を抱えた奴も水晶玉を磨いてる奴も気づいてるんだろ」
「…風上に立たれたら嫌でもわかる」
「普通に見えるさ」
「へえ?お前ら面白いな」
どんどん四人の機嫌は悪くなり、空気も悪くなっている。
「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「どの口が言ってんだ?」
「あっは、取り付くシマも無いですね♪」
黒ウサギは降参のポーズをとっていたの。
(どうやら肝っ玉と勝ち気だけは及第点ですね。この状況でNOと言えるとは…扱いずらいのが難点ですね)
黒ウサギが冷静に四人を値踏みをしていると、黒ウサギの後ろを耀がとって
「えい」
「ふぎゃ⁉︎」
思いっきり耳を引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますがいきなり黒ウサギの素敵耳を引っこ抜きにかかるとはどの様な了見ですか?」
「好奇心の為せる技」
「自由すぎるのにも程があります‼︎」
黒ウサギは耀から離れるが
「へえ、このウサ耳本物なのか」
右耳を十六夜が
「じゃあ私も」
左耳を飛鳥が
「ちょ、ちょっと」
黒ウサギは涙目で蘭丸を見る。
すると黒ウサギは十六夜と飛鳥のところから消えて、黒ウサギは蘭丸のいたところにいた。
「あ、ありがとうござ…ひゃん⁉︎」
黒ウサギが感謝を述べようとしたら蘭丸は黒ウサギの耳を撫でていた。
「このウサ耳凄い触り心地いいね♪」
蘭丸は目を爛々とさせながら黒ウサギの耳を撫でる。
「あは…ちょ、ちょっと……」
黒ウサギの壊れた様な笑い声は森に響き渡った。
今回はこの辺にします。
テスト近くてヤバイ………