神綺の物語....はじまります。
「それじゃぁ、まず......ウチの昔のことね」
「わかった」
「実はウチの両親って、転勤族なんだ」
「....それで?」
転勤か....
「小学校の頃から転校ばっかで....友達がやっと出来たと思ったら転校....それが何度も続いてね。その内に友達作りはやめて、一人で過ごしてきた」
「....辛いからか?」
「そう。折角仲良くなったのに、友達になれた時には転校......もう何が楽しいのかもわからなくなっちゃってね」
「....でも今はこうして親から離れて穂乃果達と過ごしている」
「そう......転校ばっかでもう疲れちゃってね.....ウチの居場所が欲しかったの」
居場所....か。
「だからお父さん達を説得して、受験もして、ここに残って生活してるの」
「......見つけられたのか?居場所」
「うん。もうとっくにね」
「そうか.....」
「最初はね?音ノ木坂に通っていても友達なんてできなかったの」
「....それで?」
「でもクラス自己紹介の時に....絵里ちに出会った」
「絵里に?...あいつからお前に話しかけたのか?」
あの時の性格じゃぁ厳しそうだが....
「ううん。ウチの前の席だったの。その時の絵里ちを見て.....ウチは驚いたんだ」
「驚いた?」
「うん。周りと距離を取って、みんなと溶け込めない人を」
「....なるほどな」
やっぱりあいつ浮いてたのか....変わらねぇな。
「そんな絵里ちを見て、ウチと似てるな~とも思ったね」
「.....たしかに、その時の希と絵里を見たら、俺も似たもの同士だと思うよ」
「それから何度か話したりしているうちに仲良くなって、友達になったんだ。音ノ木坂での初めての友達」
「そっか.....」
友達か....
「そしてある日、絵里ちからある男の子の話をされたんだ」
男の子?あいつに彼氏なんていたのか?てか友達いたのか?
「んで?」
「その男の子の話をしている時の絵里ちの顔がね?とっても眩しかったんだ~ 今でも忘れられないよ」
「眩しかった?楽しそうにってことか?」
「そう。ウチと一緒にいても見せてくれない笑顔でその子とのことを話すんよ.....その内にウチはその子に嫉妬をした。ウチよりも、絵里ちを笑顔にすることができる子がいることにね」
「.......」
「誰だかわかる?その男の子」
「....わからない。あいつに俺以外に男友達がいただなんて.....てか知ってるのか?」
「勿論、だって....神綺のことだよ?」
「.....は?」
「鈍いなぁ。そこまでわかっててなんで自分だと思わないのよ....」
「いや、...え?俺のこと?」
「そうだって言ってるじゃん」
まじで?
「いや、確かに俺以外の男とつるんでるのは見たことないが....俺の話を笑顔で?」
どゆこっちゃ。
「そう。中学の頃は楽しかったって、神綺のお陰で世界が変わったって」
「.....大げさな」
「でも絵里ちはそう今でも思ってるよ?神綺のお陰で今の私がいるって」
「.....俺は何もしていないさ。ただあいつへのいじめが気に入らずにストレス発散に相手を鎮圧しただけだ」
「たしかに...あの時の神綺は怖かったって言ってたね」
「いつもなら受け流して鎮圧するが、あの時はワザと痛めつけたからな.....やっぱり怖がってたか」
「でも絵里ちはその恐怖以上に感謝してるらしいよ?今までずっと一人だと思ってたのに、助けに来てくれる子がいたって」
「そりゃぁ....目の前でいじめ見てていい気はしないだろう」
「普通の子なら見て見ぬ振りするよ。それを止めに入ったことがどれだけのことか....」
「そんなもんかねぇ.....でもそれだけだぜ?他にはなにも....」
「その後に絵里ちと何回か遊んでるでしょ?」
「....連れ回されたの間違いじゃねぇか?」
「ま、まぁ....それでも絵里ちにとっては初めて一緒に遊べる友達ができたんだ~って言ってたよ」
「初めての友達....か」
「うん。ダメな時はちゃんと叱ってくれるって、それと容姿のことも言ってたなぁ」
「....もういいだろ?んなことずっと言われても...本題に戻せ」
「....はいはい。わかりましたよ.....それでね?ウチは神綺の名前は知ってたけど....どんな顔かも知らなかったんだよ」
「そりゃそうだ」
知ってたら怖えぇよ。絵里が俺の写真見せりゃぁ話は別だが。
「それである日、ウチが明神で巫女さんやっている時にフッとランニングをしている男性を見かけたんだ」
「....それって俺?」
「今度はわかったんだね。そう。神綺だった。でもわかったのはもっと後だね、知ったの自己紹介した時だし」
「そうだったのか」
「それで自己紹介の時....内心ではびっくりしてたんだ~ 絵里ちの言っていた男の子がこの人なのかって。だからちょっと鎌掛けたんよ。遠まわしに絵里ちの特徴を挙げてね」
「それで俺は答えてビンゴ...と」
「そゆこと。それで穂乃果ちゃん達とよく話すようになって....絵里ちとウチがμ'sに入って....今になるね」
「.....結局の所、相談ってなんだ?」
「急かさないでよ。これからこれから。......前ににこっちがスクールアイドルやってたのは知ってるよね?」
「あぁ」
「その時もね、穂乃果ちゃん達みたいにビラを配ったりしててね。その様子を絵里ちと何回も見てたんだ」
「.....」
「その後も真姫ちゃんとか、花陽ちゃん達だね.....やりたいという気持ちはあるのだけれど...後1歩がどうしても踏み出せない。そんな時に、穂乃果ちゃん達がね。1歩を踏み出した子達が出てきた」
「キッカケさぇあれば動けるところまで来てたみんなは穂乃果ちゃん達に引っ張られて踏み出したんだよね。それでやっと...9人でμ'sができた」
「それでかな.....私に夢ができたんだ」
「ほぅ....どんな夢なんだ?」
「いつかこのμ's9人で...ううん。神綺を入れた10人で、なにかを残したかったんだ」
「俺も?」
「そうだよ。神綺も立派なμ'sの一員、コーチだよ?」
コーチか。
「そういえばそうだな.....それで?その夢は....今は達成できそうなのか?」
「それはね....もう達成してるんだ」
「....というと?」
「もうね。μ'sはとっくになにか大きなものを編み出していると思うんだ....だから私はそれで満足.....まぁ、歌という形になればよかったんだけどね.....進んでないんでしょ?海未ちゃん達」
「...知ってたのか?」
「見てればわかるよ。.....ちょっと強引だったよね....急にラブソングだなんて....」
「なるほど。希は歌でもラブソングで残したかったのか?」
「そういうわけではないんだけど.....でも、心の中ではそう思ってるのかも」
「そう......じゃぁ、明日にでもみんなで集まるか」
「え?」
「もう一度話し合おうぜ、中間報告ってやつだ。なんなら今俺に言ったことをみんなに打ち明けてもいいんだぞ?」
「それは....心の準備をさせてほしいな」
「そうか。ま、取り敢えず集まろうぜ」
「決まりなの?」
「だって、もう2組も俺とのお出かけ終わってんだぞ?元の目的忘れちゃいかんでしょ」
「それもそうだね.....あ....結構な時間になっちゃったね....」
「あぁ...もうこんな時間か」
そういえばなにも食ってねぇ....
「ごめんね。こんな時間まで話すつもりなかったのに...」
「でも少しはスッキリしたか?」
「.....うん。した気がする」
「ならよかった....それじゃぁ俺は帰るよ」
「ぁ....ううん。じゃぁね!」
.......。
「...寂しいのか?」
「っ.....わかる?」
「そんな顔すればな。......なぁ、この家には食器って何人分ある?」
「え?....3人分...お母さんとお父さんの分....」
あるのか。
「...ならそれ貸してくれないか?」
「え?....どうして?」
「いやぁ、実は俺昼食ってなくてね。家帰るよりこっちで食べたほうが我慢する時間少ないし」
ちょーっとキツイ言い訳かな。
「....ふふっ。わかった。用意するよ」
見え見えか....そりゃそうか。
「まじで?助かるよ。勿論、俺も手伝うがな」
「働かざるもの食うべからず、だね」
「だな」
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「なぁ...希」
「ん?」
「さっきの相談さ....なんで俺にしたんだ?絵里でも良かったんじゃないか?」
「絵里ちはもう殆どのことお見通しなんだ~。それに...変に相談して絵里ちに抱え込まれても困るから....あとは...」
「...後は?」
「...秘密や♪」
「は?」
ここで秘密?
「いいやんそんなこと!まぁ....ありがとぅな。話したらスッキリした」
「....そうか。まぁ、また何かあれば気軽に電話でもくれ....夕飯ご馳走様」
「ええんよ。久しぶりに誰かと食べて楽しかったし」
「そっか....じゃぁな。また明日」
「うん!また明日♪」
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