「はあっ……! はあっ……!」
少女は、息を切らして走っていた。
友人たちが後を追ってきているが、そんなことは彼女にはどうでもよかった。何か、特大の嫌な予感が彼女の胸に重くのしかかっていた。
原因は、あるたった一つの人物の『消失』だった。
たった一人だが、彼女にとってはそれが何よりも重要な人物だった。その人物と向き合う為に、少女は友人の力を借りて、失意の底に叩き落された精神を奮い立たせていたほどに。
「どこよ、どこに行ったのよ……!」
少女は焦燥感に眉をゆがませて呟く。ついにスタミナが切れて足が止まり、友人たちが追いついて来た。褐色赤毛の『親友』が何か少女を咎めながら追いついてきたが、彼女に耳を傾ける余裕はなかった。
少女は、小さく、それでいて隠しきれない焦りと恐怖を露わにして呟く。
「一体、何を考えているの……? ……シズリ……!」
***
第一八章 静けさの中、降り注ぐ閃光 What_visits_Before_the_Storm.
***
タルブから数日かけて帰還したルイズ達は、まず学院長のところにやって来ていた。
今回の一件はルイズに対する『ご褒美』という扱いで許可が出ていた為、まずは学院長に挨拶することが先決になっていたのだ。しかし、挨拶しにいった先では学院長のオスマンが何やら苦い表情を浮かべていた。
「どうしたんですか学院長。今回の旅行なら、ちゃあんと許可はもらってますけど?」
「いや、そうじゃないんじゃよミス・ツェルプストー。チト面倒なことになってのう」
オスマンはあごひげを右手でしごきながら憂鬱そうに眉を顰めた。この老人がこんな表情を浮かべたことなど一度も見たことがなかった。それだけで、おそらくかなりの想定外が巻き起こっているのだろうことは想像に難くない。
「実はのう、おぬしたちが旅行に出ている数日間のうちに、『土くれ』のフーケが現れたのじゃ」
「ふ、フーケですって!?」
困ったように眉を顰めたオスマンの言葉に、ルイズは目を剥いた。土くれのフーケ――と言えば、どんな防備だろうと関係なく潜り抜けて物を盗むと言われるメイジの怪盗だ。魔法学院の『破壊の槍』を盗もうとしている、という噂を耳にして以来、ぴたりとその活動を止めていたが……。
「で、ですがオールド・オスマン。魔法学院の宝物庫には、スクウェアメイジがかけた『固定化』の魔法があるって聞いたことがあります。フーケは大体トライアングル程度のメイジだったという話では……」
「じゃが、現実に『土くれ』は宝物庫の壁を突破した。『固定化』をかけたメイジ――つまりわし以上の魔法力を、フーケは持っているのじゃよ……おそろしいことに」
オスマンは、肩を竦めてそう言った。
ルイズ達は、言葉を失う。この髭の老人の腕前の程は、正直なところ三人の誰も知らない。使い魔としているのはただの鼠である為力量はさほどでもないと思われがちだが、本当に使い魔が実力を表しているのであれば彼に学院長など務まりはしないだろう。数十年前から少しも歳を取っていないという噂もあるほどである。
『メイジの実力を見るにはまず使い魔を見よ』なんて格言があるが、この老人はそのセオリーに真っ向から反抗しているイレギュラーなのだ。
「盗まれた物は『異彩の駒』『聖なる兜』『破壊の槍』『異界の書』『封印の杖』『竜王の爪』。じゃが、それは問題ではない。盗まれた品々は取り戻せば良いからの。問題は、その後だったのじゃ」
それこそ気が重たそうに、オスマンはそう言って言葉を一旦切る。
キュルケとタバサが次の言葉を待っているその時、ルイズはふっと疑問に思った。何故、この場に麦野がいないのだろう。彼女はルイズの使い魔だ。戻って来たときに色々と生徒と話したりもしたし、彼女のことだからどこからか話を聞きつけて戻って来てもおかしくない。
まして『土くれ』のフーケなんて盗賊が近くにやって来たのだ。ルイズのことを大事な『
「……実は、ミス・ムギノが失踪したんじゃよ」
「……っ、何ですって!?!?」
「落ち着け、ミス・ヴァリエール。レディがそんなはしたないことしちゃいかんぞ」
ルイズは、思わず立ち上がった。オスマンはそれを宥めるようにして座るよう促す。
ルイズが一応落ち着いたのを確認したオスマンは、改めて仕切り直して話を始めた。
「ミス・ロングビルを引っ張ってのう……。事が発覚したのは、そのミス・ロングビルの書置きからじゃった。フリッグの舞踏会前後から二人の仲が急接近しておったのはわしも知っておったのに、それに気付けぬとは、最近彼女が落ち着いていたせいで油断しておったわい」
「そ、それで、ミス・ロングビルの書置きには何と!?」
「『ミス・ヴァリエールが聞いたならすぐにでもフーケ討伐に出向くのは想像に難くないから、そのリスクを潰す為に旅行に出向いている間に始末をつけてくる』――とミス・ムギノが言っていたと書いておったよ」
「…………、」
「ミス・ヴァリエール。悪いがわしはミス・ムギノに同意じゃよ。彼女は確かに狂暴な一面を持っているかもしれぬが、彼女が相手ならそうそう不覚をとることもあるまいて。ぶっちゃけ、あの子わしが逆立ちしても勝てそうにないしのう」
そう言って、オスマンはおどけて見せる。しかし三人の少女からしてみたら、あのオールド・オスマンでさえ『逆立ちしても勝てそうにない』という麦野の実力に怯えざるを得ない場面だった。顔色を失っている三人の少女を見て自分の失言を悟ったオスマンは、こほんと咳払いをする。
「ともかくじゃ。お主らは此処で待機して、ミス・ムギノの帰還を待つことじゃ。それでなくとも、休暇の間に溜まった課題があるし、のう?」
「……げ」
「ほっほほ、それでは堅苦しい話はこれでしまいじゃよ。それぞれ自分の部屋に戻って、旅の疲れをいやしておきなさい」
オスマンの好々爺めいた笑いに背中を押され、三人の少女達は学院長室を辞した。麦野が動くとあれば、オスマンの言う通りフーケが捉まるのは時間の問題だろう。裏街道を生き抜いて来た経験を持つ麦野と何かと有能なロングビルのコンビがいれば、フーケの潜伏先を特定することだって容易なはずだ。
問題はフーケの死体が残るか否かというところだが、それに関してはロングビルの手綱捌きに期待するしかない。尤も、フーケが『消えて』もマジックアイテムさえ無事であれば問題はないのだから、そこは重要ではないかもしれない。
そんな感じで、既にキュルケとタバサの表情から一刻を争うような危機感は失われていた。キュルケに至っては『脅かすようなこと言いやがってあのエロジジイ』という憤りすら滲ませている始末だった。
――しかし、その中でただ一人。
ルイズの表情だけは硬く、ただ前を見据えていた。
***
そして、それからほどなくしてルイズは学院からの逃亡を企て、そして冒頭に戻るのだった。
「ルイズ、一体どうしたって言うのよ!? あんたの使い魔は黙っていても戻って来るわ! あの女に限って不覚を取るなんてありえないでしょう!? なんでそこまで焦っているのよ!!」
「あんた達は、分からないの!?」
ルイズは、そう言ってキュルケの方に向き直った。ルイズは、信じられないものを見るような表情を浮かべている。何故、キュルケが慌てないのか理解が出来ない――そう、目で言っていた。
「何を、言っているの……?」
「シズリ達が出て行った、
「は? ルイズ、あんた一体何を言って、」
「もう、良い!」
ルイズは、キュルケの手を振りはらって走って行ってしまう。
……ルイズは今、『とあるインスピレーション』に突き動かされていた。
麦野がロングビルを伴って学院から出て行ったと聞いたとき、直感で理解できてしまったのだ。『麦野沈利は、フーケの討伐になんか向かっていない』と。
何故、オスマンにも黙ってロングビルを同行させたのか。地理や情報収集に詳しい人材なら、他にもいるはずだ。オスマンに依頼しても良いし、コルベールに依頼しても良い。どちらにしてもそれなりに――少なくともロングビルよりは有能な人材だし、彼ら自身が動けずともそれに準じる有能な人材を紹介してくれるはずだ。それに、そもそも学院の人材でなくともワルドあたりなら、ロングビルよりずっと有能であろう。
それに、黙って行ったのも不可解だ。学院の中でフーケ討伐に出向く度胸のある人材の心当たりを考えれば、麦野がフーケ討伐に出向くと言えば頭ごなしに制止したりはしないだろう。にも拘らず、何故黙って、そしてロングビルを伴って出たりしたのか。先程も挙がったがワルドあたりを連れて行けば、そもそも麦野の失踪自体発覚は遅れていただろう。それこそ、ルイズが帰って来るまでは発覚しなかったはずだ。
まるで――
そう思った時、ルイズの中ですべてのパズルが組み合わさった。
何を企んでいるかは、分からない。
だが、麦野は確実に、何かを企んでいる。フーケ討伐に向かったと見せかけて、何かをしようとしている。だとしたら、そもそもこのフーケの事件自体、ただの狂言かもしれない。麦野の能力ならば固定化など無視して穴をあけることなど造作もないし、それで断面に土くれを錬金しておけば、『土くれ』のフーケの仕業だと誰もが思い込むだろう。
麦野なら――――きっとそうする。
そんな確信にも似た『インスピレーション』が、ルイズの中に芽生えていた。
何のヒントもない情報から一直線にそんな発想に至れたことがまず不自然だったが、ルイズはそんなことに頓着する余裕がない程、その発想そのものの意味することに衝撃を受けていた。
この一件が狂言なのだとしたら、麦野は宝物庫の中からわざわざ無数のマジックアイテムを回収して失踪して、麦野は一体何をするつもりなのだろうか。彼女は『ガンダールヴ』だ。マジックアイテムもまた『武器』だとするなら、一見すると意味不明な武器だって使い方を理解し、扱うことができるのかもしれない。あれほど強いのに、この上さらに武力を蓄えるなんて、一体何をするつもりだというのだろうか。
「『戦争』……」
走りながら、何故だかルイズはそんな確信を持っていた。
麦野沈利は、戦争を起こそうとしている。
どこと、かとかそんな詳しい事情は分からない。だが、麦野はきわめて大きな争いを勃発させようとしている。あるいは、その争いを前倒ししようとしている。
そして、それはやらせてはいけないことだ。
彼女のやることなのだから、短い目で見れば良いことかもしれない。ルイズだってトリステインだって彼女の所業を有難がるかもしれない。だが、それは一時的なモノだ。最終的には、それによってルイズが、トリステインが、この世界全体が真綿で首を締めるようにじわじわと追い詰められていく。
「止めなきゃ……止めないと……! 他でもない、わたしが!!」
ルイズの呟きは、いつしか叫びになっていた。
祈りにも似た、叫び声。
「でないとアイツ、きっと取り返しのつかないことになっちゃう!!」
ルイズの胸に去来した、インスピレーション。
それが予見したのは、この世界の悲惨な未来だけではない。
とある少女の、永遠の孤独の確定。
ルイズが何よりも許せないのは、たった一つ、その事実だけだった。
***
「……何で、貴女がこれを持たないんです?」
馬を駆りながら、ロングビルは麦野に尋ねていた。
彼女達二人組の姿は、異様と言うほかなかった。
まず、ロングビル。白いフードのようなものを被り、二メートルになろうかという長い杖――地球人なら、それが『刀』と呼ばれる長剣であることが分かる――と三つ又の槍をクロスするように背中に携えている。服装も白いフードに合わせて新調したのか、白を基調としてところどころに金のラインの入った線の細い印象の修道服だった。動きやすいようにスリットが入っているのが、清楚な中に色気を感じさせる。
これだけでも異様だったが、その印象を真っ向から打ち砕くのが、麦野のいでたちだった。彼女は服装こそ平民の服を学園都市風に着こなしているいつもの姿だが、杖を突くようにして持っている『物』が異常だ。
ズリザリザリザリ……と、馬の動きに従って地面を真一文字に抉っていく、それ。
全長三メートル以上にも及ぶ、巨大すぎるほど巨大な剣。
その側面の根元には、紋章が取り付けられていた。青の上に緑を重ね、ドラゴンとユニコーンとシルキーが三つ巴を構成する、とある傭兵の紋章だった。
「私は『魔術』は使えない。コイツだって『ガンダールヴ』の力がなければ振り回すことだって出来なかったろうしね。『〇次元の極点』が完成するまで、私は根本的に近距離戦が苦手だ。だからコイツは使うけど……他のものに関しては、『魔術』を使えるお前が持っておくべきでしょう」
「まあ、確かにレクチャーは受けましたが……」
そう言って、ロングビルは肩を竦めた。
彼女は、麦野に付き従ってガリアに向かっていた。その為の戦力を集める為、宝物庫に侵入して風変わりなマジックアイテムを集めていたのだが、どうやらこれは麦野の故郷にあったものらしい。
「しかし、何の因果かしらね。『前の世界』で私がぶつかった連中の持ち物ばかりが呼び出されてやがる」
「戦ったんですか?」
「ああ。全員殺した」
「…………」
この大剣の持ち主も殺したのか――とロングビルは改めて目の前の女性のバケモノ具合を再確認していたが、それよりも気になることが彼女にはあった。
「……一体、どうして私を連れだしたのですか?」
「質問が多いわね」
麦野が溜息を吐くと、ロングビルは困ったように肩を竦めた。『質問が多いのではなく、お前の説明が足りないのだ』――と言っているようだった。麦野は軽く苦笑し、
「バックアップよ」
あっさりと、そう答えた。
「私の戦力は、元の世界において『一個大隊に匹敵する』という判定を受けてる。……私としちゃあ五個大隊くらい余裕で平らげられるんだけど、学園都市の武器を仮に数百数千と持って来られたら、流石の私も負けはしないまでも無傷じゃ片付けられないと思うのよ」
多分に自惚れに満ちた見解だったが、ロングビルはそもそも麦野が地力の差で苦戦する様というのが想像できない。慢心してピンチに陥る光景なら簡単に目に浮かぶのだが。
「だから、戦力の強化が必要だった。強力なマジックアイテムを扱う仲間に、ガンダールヴのブースト。それさえあれば、一国を落とすことだって容易でしょう?」
実際に不可能ではない、と言い切れないのが恐ろしい限りだった。
「とはいえ、本当に一国を落とすつもりはないわ。適当に国力を削いで、トリステインでも戦争になる程度にするのが今回の目的だからね。ただ、繊細なコントロールっていうのはお互いの力が拮抗していては難しいものよ。だから、ここまで戦力を蓄えた」
「……盤石な布陣すぎて恐ろしくなってきますね。何かの間違いで全てがひっくり返りそうで」
「生憎、私にフラグは立たないわ」
麦野は笑いながら答える。『フラグ?』と聞き慣れない言葉に首を傾げるロングビルはスルーして、麦野は馬を駆る。学院を発ってから数日。そろそろ、ガリアとトリステインの国境――ラグドリアン湖近くだ。
馬に揺られながら、麦野は笑う。
戦争は、すぐそばまでやって来ている。
麦野の目的も、成就の時はすぐそばまで来ていた。
***
ルイズは学院から馬を引っ張り出して走っていた。キュルケ――そしてタバサ――は追いかけていないようだった。今追いかけたとしてもルイズがまともに話を聞く状態ではない、と判断したのだろう。それは賢明だし、ルイズにとっても有難かった。今キュルケに話しかけられても、冷静な対応が出来る自信がない。
「シズリ、シズリ……っ!」
うわ言のように呟きながら、ルイズは馬を走らせる。
麦野とロングビルは数日前には学院を出たという。馬に乗っているのだとしたら、もうトリステインから出ているかもしれない。もはや、一刻を争う事態だった。
日は既に傾き、太陽の代わりに二つの月が地上を照らしていたが、ルイズはそれでも馬を走らせ続けた。
何故だか、ルイズは馬を走らせる方向に迷いがなかった。行先はガリアだ。何となく、そんな気がした。理由はない。ただ何となく、そうとしか思えない感覚が湧いて来たのである。
一人で宝物庫のマジックアイテムを持った麦野とロングビルを止められるか、と問われれば、ルイズは正直自信がない。あの旅で自分のしたいことについて自覚は芽生えたものの、だからといってルイズが急に強くなるわけでもない。まともに戦えば、ルイズなんて一瞬で蹴散らされてしまうだろう。
ひゅん、と風を切る音が聞こえた。
ルイズは咄嗟に『ロック』と呟き、地面から爆風を発生させる。
吹き飛んだのは、一本の矢だった。ルイズは慌ててもう一度爆発を起こして塹壕を作り、その中に馬ごと避難する。
夜盗だった。
見ればあたりには人がいないし、旅の準備もしていない女の子が一人。これで狙われないわけがなかった。麦野に意識が行き過ぎていて、そんな単純な事にも気付けなかったのか……とルイズは歯噛みした。どうやら、ルイズは自分で思っている以上に取り乱していたらしい。
「よう、お嬢ちゃん。トライアングルメイジのようだが、この数を相手にするのは無謀すぎるだろ? 大人しく杖をこっちに投げて降参すりゃあ、身ぐるみ剥ぐだけで許してやるよ」
夜盗から声が聞こえて来る。
……確かに、状況は厳しい。だが、『虚無』の力を以てすれば完全でなくとも夜盗くらいなら蹴散らせる。その為には戦略が重要だ。どうやって此処を乗り切ろうか――そう、考えていたまさにその時だった。
轟!! と暴風が席巻し、夜盗たちを吹き飛ばしてしまう。バサバサと何かが羽搏く音が聞こえ、ルイズは空を見上げた。
そこにいたのは、一頭のグリフォンだ。
「……やあルイズ。夜の散歩かい? 奇遇だね、僕もなんだ」
夜盗をものの一秒で殲滅したその男は、グリフォンの上から顔を覗かせて、悪戯っぽくウインクした。
「……ジャン?」
「ああ、そうだルイズ」
ワルドはグリフォンを緩やかに着地させると、馬よりも巨大なその身体の上からルイズを見下ろす。
「――ミス・ムギノを追っているようだね」
「……! あんた、何でそれを……」
「僕は……彼女の本当の目的を知っている」
ワルドはそこまで行って言葉を切った。
ルイズの心に、希望が広がる。どうやら、ワルドは麦野が戦争を起こそうとしていることまで掴んでいるらしい。そしてここに来たということは、麦野のたくらみを阻止しようとしているルイズに共感してくれたのだろう。
ルイズ一人なら、麦野には歯が立たないかもしれない。だがスクウェアメイジの中でも特に有能なワルドの助けがあれば、あるいはそれをこなすことができる可能性だって出て来る。
ぱあっと顔を明るくさせ、ルイズはワルドに駆け寄ろうと馬を下りようとして、
「ジャン、ありが、」
「
次の瞬間にかけられた言葉の意味が理解できず、思考が空白に染まった。